地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
スペイン総選挙2011その2:スペイン社会労働党の後継者争い
今週一週間は何処を見ても、何処に行ってもスペイン人達が話している話題と言えば総選挙の話ばっかりでした。特に民衆党(PP)が歴史的な大勝利を収め、未だかつてない程の権力を持った事は、伝統的に労働者の街だったバルセロナを中心とするカタルーニャ地方や、スペイン社会労働党のお膝元、アンダルシア地方の人々にとってはこの上ない脅威となって降りかかっている模様で、そんなピリピリムードが話の端々から感じられた毎日だったんですね(地中海ブログ:スペイン総選挙2011:中道右派、民衆党(PP)の歴史的勝利とその背景)。

反対に民衆党にとっては夢にまで見た政権奪取、しかも2000年のアスナール政権を超える程の絶対多数というオマケ付き。2004年そして2008年と負け続けたマリアーノ・ラホイ氏は、その勝利の余韻に浸りまくってて、挙げ句の果てにはメルケル独首相に:

「どうでもいいけど、早く経済対策やってね」

みたいな催促の電話を受ける程(苦笑)。と言うのも、彼が正式に首相の座に就くと見られている12月中旬辺りまで、民衆党は今後の政策やら閣僚リストやらを公表する気はない!みたいな事を繰り返し公言しているからです。

まあ、それは良いんだけど、問題は今回の総選挙で歴史的な大敗北を喫してしまったスペイン社会労働党(PSOE)の方ですね。こちらはハッキリ言って「再起不能なんじゃないの?」と思う程の痛手を負ってしまいました。それでも党を再建しなければならないという事で注目が集まっているのが、「サパテロ首相の後を継ぐ事の出来るリーダー」の選出です。

サパテロ首相の後継者争いについては以前のエントリで少しだけ書いたんだけど、今回の総選挙の立候補者を擁立する為に、フェリッペ・ゴンザレス(Felipe Gonzalez)政権で閣僚経験もあるベテラン政治家、アルフレッド・ルバルカバ(Alfred Perez Rubalcaba)氏と、スペインの将来を担う若きリーダー、カルメン・チャコン氏が物凄い火花を散らした結果、ルバルカバ氏がサパテロ首相の後継者という事で一応の決着を見たという戦いは記憶に新しい所だと思います(地中海ブログ:カルメ・チャコン(Carme Chacon)スペイン防衛相の予備選不出馬の裏に見えるもの)。

しかしですね、個人的な意見を言わせてもらうと、今回ルバルカバ氏がとった戦略というのはいささか腑に落ちなかったかなー。何故なら彼の選択は、始まる前から既に(そして明らかに)積み将棋だったからなんですね。今回の総選挙でスペイン社会労働党が負けて政権を奪取される事は分かり切ってた事で、そんな負け戦に何故(実力者であり大物政治家でもある)ルバルカバ氏が名乗りを挙げなければならなかったのかが僕には理解出来ない!多分彼にとっての最良の手というのは、今回の総選挙では誰かしらに代表の座を譲っておいて、敗北の責任を取らせた上で、彼が再建者として現れるというのが最良の手だったはず。彼ほどの実力者なら黙ってても首相の座は約束されてたのに、それまで待てなかった彼の「焦り」が今回の非常に困難な状況を招いたと言えるかもしれません。

その一方でルバルカバ氏のライバルと見なされていたスペインの若きリーダー、カルメン・チャコン氏は一体どうだったのか?(カルメンさんについてはコチラ:地中海ブログ:スペイン総選挙その2:カタルーニャのヒロイン、カルメ・チャコン(Carme Chacon)

実はカルメンさんはカルメンさんで、彼女が選挙前に思い描いていたシナリオが、それこそ音を立てて崩れていく様を見ているしかなかった一週間だったんですね。彼女が思い描いていたシナリオ、それは今回の総選挙で唯一勝てる見込みがあったカタルーニャ州の獲得票を後ろ盾に、一気に書記長の座まで上り詰めようという戦略だったと思います。

しかしですね、蓋を開けてみてビックリ!今まで総選挙では一度も負けた事の無かったカタルーニャ州が大負け、しかもバルセロナさえも今まで維持してきた25議席の内11議席も失うという大敗北を決してしまった訳ですよ!こうなるともう、カルメンさんが書記長に立候補しようにも出来ない状況になってしまいました。

つまりは、スペイン社会労働党は、今回の総選挙での大負けを通して、党を再建出来ると期待をかけていた2人の人材にさえも暗い影を落とす事となってしまった訳ですよ!

こんな状況下で「一体誰が出てくるのか?」という所に国民の関心は移ってるんだけど、うーん‥‥という感じでしょうか。

考えられる人材としては、バスク州で2008年に大勝利してナショナリストの牙城だったバスク地方に左派政権を打ち立てた立役者、パッチ・ロペス氏って手も(ちょっと前までは)あったんだけど、この線は無くなりました。

と言うのもバスク州では、今までは左派民族主義政党に票を入れたかったんだけど、テロ活動が活発だった事などから投票するのを自粛していた人達が、先月公表されたETA(テロリスト集団)の永久武装解除宣言を受けて、Amaiurという左派民族主義政党同盟に票を投じた結果、現政権を脅かす程の勢力を持って勃興してくるという現象が起こったからです。その事に危機感を感じているパッチ・ロペス氏はバスク州内の安定を図る為に、中央政権に干渉してくる余裕は先ず無いと思います。

ちなみにサパテロ首相の右腕として現副首相の座に就いているホセ・ブランコ(Jose Blanco)氏は今回の総選挙の結果を受けて、今後は政治の第一線から離脱する事を昨日のインタビューで明らかにしたし、スペイン経済立て直しの貢献者であり、現経済・財務大臣のElena Salgado氏も、今季限りで引退、来年からは欧州投資銀行の頭取に就任する事が噂されています。もう一人の現副大臣であり、アンダルシアで絶大なる権力を行使してきたManuel Chavez氏は、政権に入った途端、余り使い物にならない事が露呈してしまいましたしね(苦笑)。

こうなると、本当にスペイン社会労働党には「適切な人材がいない」という空白の状況が出来る訳ですよ。 こうなったら仕方が無いので、「ルバルカバ氏にこのまま続投してもらうか」という声が強まってる様だけど、今回の総選挙で彼にまとわりついてしまった「負のイメージ」はそう簡単には拭い切れないだろうなー。そうは言っても、もうここまで来てしまったら、「彼の続投が一番良いのかな?」なんて思わない事も無いかな。

スペイン社会労働党は、今日11月26日土曜日に、緊急ミーティングを行い、そこで次期リーダーを誰にするか?を話し合い決定するそうです。まあ、あまり期待せずに見守ろう。
| スペイン政治 | 04:57 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
スペイン総選挙2011:中道右派、民衆党(PP)の歴史的勝利とその背景
昨日の総選挙から一夜明け、街が普段の生活リズムを取り戻すのとは裏腹に、各種メディアはこぞって今回の選挙の詳細データとその分析、ひいてはスペインがこれから何処へ向かうのか?といった予測などを書き立てています。普段は新聞を2紙(El PaisとLa Vanguardia)しか買わない僕も、今日ばかりは地元カタルーニャのポピュラー紙として知られているEl Periodicoも購入して3紙で内容を比べてみました。ざっと見た感じ、僕が考える今回の総選挙の特徴は以下の3点かな。



先ず一点目は民衆党(Partido Popular(PP))の歴史的な大勝利(wikiではPartido Popularの事を国民党と訳しているけど、外務省では民衆党と訳しているので、そちらを使う事にします)。二点目はスペイン社会労働党(PSOE)の歴史的な大敗北。そして三点目は各地方におけるナショナリストの弾頭です。今回の総選挙ではこれら3点が際立った特徴として現れていたと思うんですね。

先ず第一点目なのですが、今回の総選挙で民衆党は絶対多数(176議席)を大幅に上回る186議席(得票率44.6%)を獲得し大勝利したという事が挙げられます。この数字は前回の獲得議席数(154議席)は勿論の事、スペイン民主主義史上、民衆党の獲得議席数が最も多かったアスナール政権時(2000-2004)における183議席よりも上をいっています。更に驚くべき事は、今回の総選挙の結果と今年5月に行われたスペイン統一地方選挙の結果を合わせて見た時に現れる、民衆党が獲得した圧倒的な勢力図です(地方選挙についてはコチラ:地中海ブログ:スペイン統一地方選挙2011:バルセロナに革命起こる、地中海ブログ:スペイン統一地方選挙2011その2:バルセロナ市内の詳細データと文化施設への影響について)。



上の図は1983年(右)に行われた選挙と今年の5月(左)の選挙結果(青色が民衆党で赤色が社会労働党が勝った地域)を比べてみたものなんだけど、こうして見るとその違いが一目瞭然だと思います。独裁政権直後と言ってもよい地方選(1983年)では、スペイン中で左派が圧倒的多数を占めていたのに対して、それから30年後の現在では右派がその勢力を隅々まで行き渡らせているのが分かるかと思います。



ちなみに上の図が今回の選挙の結果(青が民衆党で赤が社会労働党が勝った地域)なんだけど、得票率で見ると、ほぼ全ての県で民衆党が勝っている事が分かります。唯一色が違うのが、カタルーニャ州(バルセロナ市)とバスク州、そしてアンダルシアのセビリア県だけっていうのはちょっと凄い。

これら2つの地図が如実に物語っている事、それは民衆党が獲得した圧倒的な権力です。つまり今回の総選挙で勝った事によって、民衆党は国会(中央)と各自治州(地方)という両方を押さえてしまった訳ですよ!これはスペイン民主主義史上初めての事で、1982年の総選挙で202議席を獲得したフェリッペ・ゴンザレス(Felipe Gonzalez)政権(1982-2000)ですら各自治州を掌握するまでには至りませんでしたからね(この時の地方選挙の結果が上の1983年の図)。

では何故今回の選挙では民衆党がこれ程躍進したのか?というと、それが今回の総選挙の第二の特徴である、スペイン社会労働党の歴史的な大敗北と関係がある訳です。これがどれくらいの敗北かというとですね、前回の獲得議席数が169議席だったのに対して、今回は110議席、得票率にしたら43.9%(2008)から28.7%という、スペイン社会労働党史上最悪の結果となってしまいました。彼らにとって特に衝撃的だったのは、総選挙では今まで一度も負けた事が無かったカタルーニャ州と、社会労働党のお膝元、セビリア(アンダルシア)で大敗した事でしょうね。

そして今回の総選挙第三の特徴が各地方におけるナショナリストの弾頭です。具体的に言うと、カタルーニャ州におけるCiU(カタルーニャ保守の民族主義連合)、そしてバスク州におけるAmaiur(バスク左派の民族主義連合)が、はっきりと目に見える形で弾頭してきた事が挙げられます。

民主化後のカタルーニャの歴史の中において、総選挙でカタルーニャ社会労働党(PSC)が負けた事は今まで一度たりともありませんでした。それが今回あっさりとカタルーニャ保守であるCiUに負けてしまったんですね。カタルーニャ全体の得票率で見ると、CiUが29.3%で16議席を獲得しています。これは前回の10議席(20.9%)からは大幅な躍進で、半年前の地方統一選挙での圧倒的な勝利と共に総選挙でも歴史的な勝利を収めるまでになったという訳なんです。それに対してカタルーニャ社会労働党の得票率は前回(2008年)が45.4%(25議席)だったのに対して、今回は26.6%(14議席)っていう惨敗もいいとこ。

選挙結果をもう少し詳しく見てみると、カタルーニャ州にある4県の内で唯一社会労働党が勝ったのがバルセロナ県なんだけど、それだってもう本当に僅差で、やっとって感じ。バルセロナ県に限ってみれば、労働左派が27.8%(前回は46.8%)、二番手のCiUが27.1%(前回は19.6%)っていうんだから、これがどれ程の僅差か分かるというものです。ちなみに第三勢力につけているのは民衆党で、得票率は20.9%、7議席を獲得しています。カタルーニャにおいて民衆党が力を持ち始めているという事は、それはそれで凄い事なんですけどね。

そしてこのカタルーニャ州におけるナショナリズムの弾頭と時を同じくして頭角を現してきたのがバスク州におけるAmaiurなんですね。この政党はちょっと謎に包まれていて、ここで名言する事は避けたいと思うんだけど、ハッキリしている事は、今まで殆どヘゲモニー状態を維持してきたバスク州の右派ナショナリスト政党であるPNVの立場を脅かす程になってきたという事です。得票率で見ればAmaiurは第二位なんだけど、割り当てられた議席数は6議席とPNVの5議席を抜いてトップに立っています。

これら3点が今回の総選挙の主な特徴だと思うんだけど、実はもう一点、もう少し違う角度で見た時に浮かび上がってくる非常に重要な側面が今回の総選挙にはあります。それがヨーロッパという視点で見た時のスペイン総選挙の位置付けなんですね。前述した3紙の内、この事に触れていたのはEl Pais紙だけでした。さすがだなー。

詳しい分析などは次回以降に譲ろうと思うんだけど、少しだけ書いておくと、実は2010年辺りから欧州各国で行われてきた総選挙において、政権交代に至った国は今回のスペインで既に6カ国目なんですね。しかもそれら殆どの国で、政権についていた与党が大敗北しているというオマケ付き。それらの国々というのは、イギリス、オランダ、アイルランド、ポルトガル、そしてデンマーク。そして来年にはフランスも大統領選を控えています。

この様な、ヨーロッパという大枠で見た時のスペインの位置付けや動き、そしてその中におけるスペイン国内の動きなどは今週一週間をかけて、もう少しじっくりと分析していきたと思います。
| スペイン政治 | 04:27 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
スペインの総選挙2011と速報:政権交代の裏側に見える隠されたメッセージ
今日11月20日(日曜日)はスペイン全土で、今後4年間の「この国のかたち」を決める大変重要な総選挙が行われています。ギリシャやイタリアで政権交代があった直後の市場の反応などを見るに付け、今日のスペインでの選挙結果がヨーロッパの将来に影響を与える事は必至です。そういう意味において、普段は(スペイン人とスペイン関連研究者)くらいしか注目していないスペインの総選挙なんだけど、今回だけは世界中の人々が固唾を飲んで選挙の模様を見守っている事だろうと思うんですね。



現在スペインを襲っている経済危機とその現状は本当に酷いものがあって、公務員の給料カットは当たり前、工事中だった都市計画や建築計画なんかが中止になったり、中小企業などへの助成金が削減されたり、更には大学や病院などへの予算削減の為、都市にとってはなくてはならない基本的サービスに支障が生じ始めたりしています(地中海ブログ:スペインの医療システムについて2:スペインの医者の驚くべき給料体系について)。今週の新聞には、救急病院に担架で担ぎ込まれた女性が、病院側の予算削減の為、当直医師の数が足りずに2日間も待たされた挙げ句に死亡するという最悪のケースが起こってしまった事が報道されたりしていました。

サパテロ首相もがんばってはいるんだろうけど、それがなかなか目に見える形で出てこないし、何よりも人々の生活がいっこうに良くならない。そんなこんなで溜まっていくのはスペイン人達の不満だけ‥‥(例えばコチラ:地中海ブログ:スペイン各都市で大規模デモ:「ジャスミン革命がスペインにも飛び火」って言われてるけど・・・)。そこで彼が意を決して打ち出したのが、今回の前倒し総選挙だったという訳なんです。



まあ、日本の新聞も大きな見出しで報じている様に、世論調査などありとあらゆるデータを見る限り、野党である民衆党(PP)が大差で与党(PSOE)を下して政権交代する事は先ず間違いありません。

そんな事は何ヶ月も前から分かってる事なので、今更驚くべき事でもないんだけど、それよりも何よりも、スペイン国民にとって今最も大事な事は、今回の選挙の裏に隠されたメッセージ、サパテロ首相からスペイン国民への、スペイン国民にしか分からない形で送られている隠されたメッセージをきちんと理解し、それにきちんと答える事だと思います。

実は今日、11月20日という日は、今から36年前、フランコ将軍が亡くなった日であり、スペインが独裁政権から民主化へと移行した大変重要な日でもあります。つまりサパテロ首相がわざわざ前倒し選挙をこの日にぶつけてきた事の真の意味、それはスペイン国民全員に

「民主主義とは一体何なのか?」、「たった36年前に我々が手にする事が出来た、もしくは独裁政権から勝ち取る事が出来た民主主義とは一体何だったのか?」

という事を国民一人一人に、もう一度良く考えてもらいたい、というメッセージなのです。そして勿論そのメッセージの先にあるもの、それは:

「民主主義の力を通して、国民みんなでこの未曾有の危機を乗り越えよう」

だと思います。

そういう意味において、今回試されているのは「選ばれる側の政治家」なのではなく、「選ぶ側の国民」なのかもしれません。このメッセージを生かすも殺すも国民次第。この先どういう「国のかたち」を作っていくのか/作っていきたいのかを決めるのも我々次第です。

その事をよく胸に刻み、スペイン人の皆さんには投票に行って欲しいものです。間違っても「面倒くさいから投票には行かない」みたいな、民主主義を根底から覆す様な愚直な行為だけは辞めてもらいたいですね。

追記:速報
2011年の総選挙は民衆党(PP)の歴史的な大勝利に終わりました。勿論政権交代なるです。労働左派が勝ったのはわずかにバルセロナとセビーリャだけ。バスク地方ではETAと関わりの深い政党が勝ち、カタルーニャでもCiUが勝つといった様に、全国でナショナリストが弾頭してきているのが今回の選挙の一つの特徴かなと思います。
| スペイン政治 | 20:16 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
速報:バスク地方の独立を目指す民族組織ETAがテロ活動を永久に停止すると発表
昨日からバルセロナはお祭りムードに入っています(って言っても、それは多分僕の周りだけの事だと思うんだけど・・・)。と言うのも昨日、欧州委員会がバルセロナの長年の夢だった「地中海の弧」を現実のものとすると公式に発表したからなんですね(地中海の弧についてはコチラ:地中海ブログ:地中海の弧の連結問題:ペルピニャン−フィゲラス−バルセロナ間の高速鉄道連結計画の裏に見えるもの)。具体的には2020年までに地中海に沿った鉄道網を完結させる為、5兆円相当の資金を投入し、その内約20%までを欧州委員会が補助すると発表しました。その為、昨日は中央政府からホセ・ブランコ勧業大臣やカタルーニャ州大統領、バルセロナ市長なんかも交えて、大規模なお祝いがされていたって言う訳なんです。

今日はその事について書こうかなと思っていたら、その矢先、午後19時頃の事だったと思うのですが、物凄いニュースが飛び込んできました。それが:

「ETA、テロ活動を永久に停止する事を宣言」

と言うニュースだったんですね。速報と言う事で、メモ程度に書いておこうと思います。

ETA、正式名称は「バスク祖国と自由 (Euskadi Ta Askatasuna)」。スペインのバスク地方の独立を目指す民族組織の事で、フランコの独裁政権に反発する形で結成されて以来、爆弾や暗殺といったテロ事件を数多く起こしていて、今までに殺害された人の数は800人にも上ります。

そんな彼らは定期的に「停戦宣言」を発表してきたんだけど、それが今まで守られた事は一度も無く、停戦宣言の直ぐ後にテロ行為を繰り返してきた事などから、今回の第一報を聞いたスペイン人達の一般的な反応は、「又何か言ってるよー」だったかなとは思ったりもします。ただ、今回の彼らの宣言がちょっと違っていたのは、「テロ活動を永久に停止する」とした所だったんですね。

それを受けて先ずはすかさずサパテロ首相が「民主主義の勝利だー!」みたいな表明を発表しました。続いて各政治家達も次々に声明を発表し始めたんだけど、この裏には勿論、来月20日に迫った総選挙を見据えた戦略が見え隠れしています。そういう意味で、今の時点での政治家達の言動には常に冷静な目で見る事が要求されると思います。

まあ、今まで何年もかけてETA撲滅の舵取りをしてきたのは、社会労働党のルバルカバ氏である事に間違い無くって、彼が今回のETAの発表を受けて、それを選挙の「広告」として売り出していく事は目に見えているし、前述した「地中海の弧」の実現の為に暗躍し、欧州委員会から多額の補助金を取り付けてきたのも社会労働党(PSOE)。つまりはココに来てPSOEに追い風が吹き始めたかなとは思います。もっと言っちゃうと、この欧州委員会の決定を受けて、思わぬ冷え飯を食わされてしまったのが実は民衆党(PP)。PPが舵取りをする他の自治州では、中央との間に亀裂が走り始めている事は予想に難しくありません。

まあ、これらの追い風が吹けども、社会労働党の負けには変わりが無いでしょうけどね。来月の総選挙の争点はもはや民衆党対社会労働党と言う点にあるのではなく、「社会労働党がどうやって負けるか?」と言う点に移ってきています。そこを見間違えると、それこそ奈落の底に落ちる気がします。
| スペイン政治 | 06:09 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
スペイン前倒し総選挙の日付けの裏に隠された暗号
ちょっとした調べものをする為に、昨日はバルセロナ市内にある世界一美しい図書館(地中海ブログ:ポンペウ・ファブラ大学図書館(Unversitat Pompeu Fabra))に行ってたんだけど、夕方頃になって大雨と雷を伴う嵐に遭遇:



 「凄い雨だな」とか思ってたら、待ってましたとばかりの雨漏りが始まった!地中海って一年を通して毎日晴れてるから、都市や建物が自然災害に対応する様に出来て無くって、雨とか降ったらそこら中「雨漏りはするわ」、「道が洪水になるわ」、「地下鉄は止まるわ」でもう散々なんですね。そうこうしてたら図書館員のおばちゃんが来て、「今日は雨が凄いので閉館します」とか言ってる。雨が降ってきたから閉館って・・・「何かカメハメ大王みたいだな」とか思ってしまった。「風が吹いたら遅刻して、雨が降ったらお休みで〜」みたいな(笑)。さすがバルセロナ!

さて、今週スペインではサパテロ首相が11月に前倒し総選挙を行うと発表し各種メディアを賑わすという出来事がありました。彼の任期は来年3月までで、それまでは続投するだろうというのが大方の見方だっただけに、急な発表に皆驚きを隠せない様子だったんですね。

野党である民衆党(PP)は勿論大喜び。今日の新聞に載ってた最新の世論調査によると、現政権の労働社会党(PSOE)に投票すると答えた人は30.8%で、野党第一党である民衆党に投票すると答えた人が44.8%。その差、実に14%!まあ、ハッキリ言って、総選挙が何時であれ、民衆党の勝ちは揺るが無いでしょうけどね。それよりも、今、労働社会党が考えなければならないのは、「どうやって勝つか?」ではなくて、「どうやって負けるか?」、つまり、「どうやって負けを最小限に抑え、来々期の選挙へ向けて盛り返していくか?」と言う所でしょうか。

まあ、それはどうでも良いんだけど、それよりも注目すべきは、今回サパテロ首相が発表した総選挙の日付けです。それがズバリ、11月20日。ここで「あれ?」と思った人は、かなり鋭い。11月20日、そう、それは今から36年前、フランコ将軍が亡くなった日であり、スペインが民主化へ移行した大変重要な日でもあるんですね。

そんな重要な日に総選挙をぶつけてくる意味、それはスペイン国民全員に「民主主義とか一体何なのか?」と言う事をもう一度良く考えてもらい、今、スペインが直面している未曾有の危機をみんなで乗り越えようって言う、そういうメッセージなんじゃないのかな?

ハッキリ言ってスペインは今、「国が崩壊するんじゃないのか?」というくらいにまで追い詰められた状況にあります。経済は殆ど壊滅状態で、各自治州は何処も財政赤字に嘆き、とうとう教育と医療という、その国にとっては最も重要で基本的なインフラにまでメスを入れなければやっていけないような、そんな状態にまで陥ってしまったんですね。失業率は未だに20%を越していて、回復の兆しは全く見えていません。それに嫌気が差した国民達は毎日の様にデモを繰り返し、それが何時ギリシャの様に暴動に変わってもおかしくない様な緊張した日々が続いています。

こんな状況下において、サパテロ首相が下した決断、それが前倒し総選挙であり、それをスペイン民主主義の再出発の日に設定したと言う訳ですよ。

ここにはサパテロ首相の覚悟の様なもの、党の利益を超えた国を憂う気持ちが読み取れるような気がしてなりません。国の財政赤字や社会問題、そして5月15日からスペイン各地で始まった15−Mと呼ばれる大規模な市民達のデモを真摯に受け止め、それに最大限対応していこうという態度の現われだと見る事も出来るんですね(地中海ブログ:スペイン各都市で大規模デモ:「ジャスミン革命がスペインにも飛び火」って言われてるけど・・・、地中海ブログ:バルセロナで続いていた大規模デモに機動隊突入:100人以上の怪我人を出す騒ぎに発展)。

首相から発せられたこのメッセージをどう受け止めるのか?

これからの4ヶ月間はスペインにとって、そしてスペイン国民にとって、「この国の形」を決める、この数十年間で最も大事な時期に差し掛かってくると思われます。そういう意味において今回試されているのは政治家の側ではなく、実は国民の側なのかもしれません。このメッセージを生かすも殺すも国民次第。がんばれスペイン!!
| スペイン政治 | 00:04 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
選挙に勝った直後に自分の給料を軒並み引き上げるって言う、スペイン政治家の何とも分かり易い政策
先月末に行われた統一地方選挙において、現政権についてる労働左派党(PSOE)が大敗し、野党第一党である保守系政党、民衆党(PP)が全国で勝ちまくった事は以前のエントリで書いた通りなのですが(地中海ブログ:スペイン統一地方選挙2011:バルセロナに革命起こる)、それから一ヶ月程経った先週中頃、ようやく全国各地の自治州や市役所の政権構成も固まり、各政党における政策の方向性なんかも見え始めてきました。

スペインでは政権が変わるとそれまで進んでいた政策やプロジェクトなんかが止まったり、酷い時にはオジャンになったりするのはよくある事なんだけど、そんな政治的混乱に乗じて、と言うか隠れて、「自分の給料を上げている市長がいる!」って言う俄には信じられない噂を聞きつけ、興味本位でちょっと調べてみたんだけど、出てくるわ、出てくるわ(笑)。

とある情報筋によると、今回の選挙で勝った90%以上の新市長が何らかの形で自分の給料を上げているとか何とか。しかもスペインでは現在、現政権に不満を募らせている若者なんかが全国各地でデモを引き起こし、たびたび暴動にまで発展するって言う非常事態に陥ってるにも拘らずですよ!(地中海ブログ: スペイン各都市で大規模デモ:「ジャスミン革命がスペインにも飛び火」って言われてるけど・・・)こういうのを、「思い切り空気読めてない」って言うんでしょうね。

ちなみにサパテロ首相は、スペインが経済危機に陥った当初、公務員の給料削減案を提案すると同時に、自分の給料を真っ先に減らすと言う、全く持って尊敬に値する行動を示しました(地中海ブログ:スペインの各自治州政府大統領の給料について)。もひとつちなみに、彼の給料は78.000ユーロ(日本円にして約850万円程度)で、この数字はカタルーニャ州政府大統領の約半分、カタルーニャ州政府高官よりも下となっています。

で、今回自分の給料を2倍にした人なんかをずばり発表しちゃうんだけど、先ずは、Valladorid州にあるPenafiel市の市長、Roberto Diezさん!彼は政権に就いた途端、市の財政支出を削減する事を発表したと同時に、自分の給料をいきなり2倍に跳ね上げたって言う強者!続いては、カタルーニャ州のCalonge de Segarra市の市長に就任したJordi Solerさん。彼の場合は倍とはいかないまでも、自分の給料を35%上げちゃいました。その一方で、彼の掲げる政策は勿論「経費削減」ですからね(苦笑)。で、ですね、今回もっとも非難されるべきなのがこの人:



元サパテロ政権ナンバー2だった、Maria Teresa Fernandez de la Vegaさん!!彼女なんて、今回の選挙で何処かの市長になった訳でもなく、ましてや選挙に勝ったんでもなく、強いて言えば負け投手のくせして自分の給料を上げてるって言うんだから驚きです。しかも今まで73.486ユーロだった自分の給料をなんと2倍の142.357ユーロに引き上げちゃいました!

この様な情報って、何も今になって公開され始めた訳じゃなくて、昔から「市民が知る権利」として情報公開されていたとは思うんだけど、そこに辿り着く為には色んな障壁があったりして、辿り着ける人って言うのは極々一部だったと思うんですね。更にその極々一部の人が得る事が出来た情報を一般市民に広めようと思っても、それは殆ど不可能だった訳ですよ。

しかしですね、「ジャスミン革命」を見るまでもなく、今やソーシャルネットワーク全盛の現代においては、そんな情報、何処からでも手に入るし、手に入った情報を世界中に広げる事なんてワンクリックで実現出来る時代に突入した訳ですよ(地中海ブログ:チュニジアやエジプトのデモでSNS革命と言うイメージが捏造されていったのは一体何故なのか?)。そしてその様なソーシャルメディアを駆使した一般市民による政権への圧力にかけては、スペインは間違い無く先進国だと言う事は以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:東さんの「SNS直接民主制」とかマニュエル・カステル(Manuel Castells)のMovilizacionとか)。

先月の選挙以来、スペインでは現政権に不満を抱いている若者を中心としたデモが絶え間なく続いていて、殆ど暴動に発展しそうな緊張が走ることもしばしばになってきたんだけど、そんな彼らが出来る事、それは今回の様な政治家達の傍若無人な振る舞いをチャックすると言う、本来ならメディアが果たしてきた役割を担う事なんじゃないのかな?

少なくとも、その可能性はあると思いますけどね。

関連情報:今回の選挙後、自分の給料を上げた政治家リスト 名前:都市:所属政党:上昇率:給料

Roberto Diezさん:Penafiel市長(Valladolid): 民衆党(PP):100%:40.000ユーロ

Jordi Solerさん:Calonge de Segarra市 (Barcelona):CiU:35%:62.000ユーロ

Josep M. Puigbetさん:Bisbal del Penedes市 (Tarragona):ERC:33%:44.000ユーロ

Bernat Grauperaさん:San Andres de Llavaneras市 (Barcelona):CiU:31%:54.000ユーロ

Carlos Lavinさん:Penagos (Santander):Union Penagos:25%:25.500ユーロ

Tomas Foleさん:Villagarcia de Arosa(Pontevedra):PP:20%:60.000ユーロ

Angel Hurtadoさん:Almoradi (Alicante):PP:12%:52.500ユーロ Francisco

Toscanoさん:Dos Hermanas (Sevilla):PSOE:15%:61.100ユーロ

Josep Monrasさん:Mollet del Valles (Barcelona):PSOE:10%:65.000ユーロ

Fidel Prietoさん:Cajar (Granada):PP:12%:42.000ユーロ

Alberto Fabraさん:Castellon:PP:2%:77.500ユーロ
| スペイン政治 | 19:35 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
カルメ・チャコン(Carme Chacon)スペイン防衛相の予備選不出馬の裏に見えるもの
今週は激動の一週間でした。何がって、勿論先週の選挙結果を受けての事なんだけど、毎日毎日それこそ普通の週だったらその話題だけで2週間くらいは騒いでいられる様なビックニュースが目白押しだったんですね。そんな中、終に出ました!この数日間で最も大きく、そして最も重要なニュースが一昨日のお昼頃に飛び込んできたのですが、それがコチラ:

 「カルメ・チャコン防衛相、サパテロ首相の後継者を決める予備選不出馬を表明」

そうなんです!今回の統一地方選以前から、「2012年の総選挙には立候補しない」と宣言していたサパテロ首相の後継者を巡って、社会労働党(PSOE)内では激しい激しい後継者争いが繰り広げられていたんだけど、その最有力候補の一人と見なされていたカルメ・チャコン氏が、予備選への出馬を辞退すると発表したんですね。ちなみにカルメ・チャコン氏と言うのは、スペイン史上初となる女性の防衛大臣で、2008年の総選挙の時に彗星の如く現れてきたスペインの若きリーダー(1971年生まれ)。3年前程前にはウォール・ストリート・ジャーナル誌(The Wall Street Journal)のWomen to watchにてヨーロッパで最も影響力のある女性政治家ナンバー2に選ばれた事もある程のスペイン期待の星。実はカルメさん、昔、ご近所だったんですよねー(地中ブログ:スペイン総選挙その2:カタルーニャのヒロイン、カルメ・チャコン(Carme Chacon)、地中海ブログ:スペイン国防相(La ministra de Defensa)カルメ・チャコン氏(Carme Chacon)の出産とスペインの女性労働環境)

一方、このカルメ・チャコン氏のライバルと見なされ、党内からも厚い支持を集めているのが、フェリペ・ゴンサレス(Felipe Gonzalez)時代から大臣の要職を歴任し、現在はサパテロ政権下で内務大臣の座にあるベテラン政治家、アルフレッド・ルバルカバ(Alfred Perez Rubalcaba)氏。何時如何なる時もその豊富な経験から、的確な判断と決断力で、スペインにおいて最も信頼出来る政治家の一人として市民の間でも人気を博しています。

この2人のどちらかがサパテロ首相の後継者と見なされていたんだけど、それを決めるに当たって、今週、スペイン労働党内が真っ二つに分裂すると言う状況が起こりました。口火を切ったのは、バスク州政府大統領のパッチ・ロペス(Patxi Lopez)氏で、「後継者を決める為に年内に党大会を開くべきだ」と。その一方で、サパテロ首相などから「党大会は必要ない。予備選で行こう」と言う声が上がっていたんですね。

これをどう読むか?つまりロペス氏の策略とは一体何なのか?

ロペス氏の目的は明らかで、それは次期後継者にはルバルカバ氏を推したいと言う一点に尽きます。その為に持ち出したのが、「党大会を開き、党の代表を決めなおすべきだ」と言う「脅し」だったんですね。

これが何故脅しになるのか?

何故なら党大会を開催すると、必然的に党代表の座に立候補するのはサパテロ首相とルバルカバ氏、そしてチャコン氏となるのですが、この時、党内で急速に吸引力を失いつつあるサパテロ首相が負けるのは目に見えています。そうすると、ルバルカバ氏、チャコン氏、どちらが勝つにせよ、野党からの「首相を変えろ」要求には耐えられず、サパテロ首相辞任と言う道しか無い訳ですよ。

これは結構怖い話で、と言うのも、これは社会労働党だけの問題ではなく、実はスペイン全体に及ぼす影響が非常に大きくてですね、今、サパテロ政権が頓挫したら、ようやく良い感じで進んでいる経済構造改革がストップし、直ぐにでもEUから破産宣告を受け、資金注入なんて事態に陥る危険性が非常に高いからです。

こうなると非常に苦しい立場に立たされたのがカルメ・チャコン氏で、このまま立候補を続ければ、それは社会党内部を分裂させ、ひいてはスペインの政治経済状況を不安定にさせる。その一方で、何ヶ月も前(2月にはサパテロ首相に次期後継者争いに立候補すると密かに伝えていたそうです)から着々と準備を進めてきたと言う事情もあり、そう簡単にはその道を諦める事も出来ない・・・と言う複雑な状況の中での、彼女の決断だったんですね。

個人的な意見を言わせてもらうと、今回のカルメ・チャコン氏の決断は英断だと思ってて、と言うのも、彼女のこの勇気ある決断によってサパテロ首相が救われたのは勿論の事、彼女はスペインすらも救ったんじゃないのかな?そして一見、今回の騒動で負けたのはチャコン氏、勝ったのはルバルカバ氏に見えるけど、長い目で見ると、どうもそう簡単には事が運ばない様な気がする。

前回の自治州選挙、そして今回の統一地方選挙で明らかな様に、スペインでは現政権の社会労働党の力が急速に弱まり、その反対に野党である民衆党が確実に力をつけてきています。このまま行くと、2012年の総選挙で社会労働党が負けるのは先ず間違いありません。そうすると、今回予備選に勝ったルバルカバ氏は負け党首になる事が必死なんですよね。と言うか、そんな事は彼も多分分かってるだろうから、もしかしたら既に2012年の事は頭に無く、2012年の総選挙で社会労働党の負けを最小に抑えつつ、その成果を評価してもらった上で2016年の総選挙で首相になる事を考えてるのかもしれないけど・・・その間に何が起こるとも限らない。

そう考えると、今回の一連の出来事で本質的に勝ったのは、実は負けたかに見えたチャコン氏なんじゃないのかな?と思う訳ですよ。彼女は今回の立候補辞退で、党内は勿論、市民の間にも、「個人の利益よりも国の事を考える政治家」と言う大変強いイメージを植え付けました。そして何より、これでサパテロ首相に大きな大きな貸しが出来ましたよね。

そして今回もう一つ露呈してしまったのが、カタルーニャ社会労働党(PSC)の中央政府における発言力の急激な低下です。2008年の総選挙で社会労働党が勝てたのはカタルーニャ社会労働党のおかげと言っても過言ではなく、サパテロ首相もその事をかって、チャコン氏やコルバッチョ氏と言った、カタルーニャ出身の政治家達を大臣に起用しました(地中海ブログ:スペイン、サパテロ新内閣(Jose Luis Rodriguez Zapatero):セレスティーノ・コルバッチョ(Celestino Corbacho)労働・移民相(Ministro de Trabajo e Inmigracion)とスペインの移民問題)。つまりPSCが中央政府に非常に強く出れる状況が続いていたんですね。その様な状況が変わってきたのが去年の11月、自治州選挙で政権をCiUに取られた時からです。この時も書いたのですが、もう既に、去年の11月の時点で「左派の終わりの始まり」が見え初めていました(地中海ブログ:カタルーニャ州議会選挙その2:スペイン、そしてヨーロッパ左派の終わりの始まり‥‥かもしれない。)。今では中央政府の方針に大きく影響を与えているのは明らかに、マドリッドーセビリアービルバオの軸ですね。

まあ、カルメさん、焦る事はありませんよ。未だ若いんだし、あなたがスペインのリーダーになるのは間違いなんだから。今はその時の為にゆっくりと力でも付けておくのが良いと思いますけどね。
| スペイン政治 | 06:18 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
バルセロナで続いていた大規模デモに機動隊突入:100人以上の怪我人を出す騒ぎに発展
現在のスペインの置かれた社会経済状況に不満を持つ若者などが、スペイン各地で大規模デモを引き起こしていると言う事は前回のエントリで書いた通りなのですが、今日5月27日午前9時30分頃、とうとうカタルーニャ州政府の機動隊が、座り込みを続けていた若者などと衝突、多数の怪我人を出す事態となってしまいました(地中海ブログ:スペイン各都市で大規模デモ:「ジャスミン革命がスペインにも飛び火」って言われてるけど・・・)。

 

今までカタルーニャ広場を占拠していた市民達は、暴力に頼るのではなく、平和的に現在の政権に不満を示すと言う、これまでとは全く違った大変可能性を感じさせるやり方を押し通してきたんだけど、今日の午前中になって急に州政府の機動隊が彼らを強制排除し始めたんですね。理由、と言うか、機動隊側の言い分としては、「明日行われるチャンピオンリーグの為に、広場をきれいにする為」なんだそうです。確かにバルサの大事な試合がある日には、ファンがカタルーニャ広場に集まって、そこに大型テレビなどが設置され、みんなで一緒にバルサを応援するって言うのが伝統となってるんだけど、今回の州政府側の強引なやり方にはちょっと首を傾けざるを得ません。

 

この件について最高責任者であるFelip Puigカタルーニャ州政府内務大臣が緊急会見し、「機動隊は座り込みを続けている若者を排除しようとしたのではなく、あくまでも広場を掃除しようとしただけ」と主張していますが、ビデオなどを見る限り、機動隊がかなり乱暴に誰それ構わず殴りまくってるのが見て取れます。この騒ぎで121人もの人達が怪我を負ったと言う事です。

又、現在フランスで行われているG8の記者会見において、サルコジ仏大統領が今日起こってしまったこの事態に触れ、「バルセロナで起こっている事はジャスミン革命とは全く違う」なんて言うコメントしてたけど、そんな事は最初から分かってる訳で、問題はこの様な衝突がバルセロナだけでなく、他都市にも伝染するかどうか?と言う点だと思うんですね。今の所、他都市では「バルセロナの同志達の為にもう一度団結を呼びかける」と言う行動は起こっているみたいなんだけど、カタルーニャ以外でそれが暴動や衝突に発展している所は無いようです。まあ、諸都市の市当局もそんなに馬鹿じゃないから、今回、カタルーニャ州政府がやらかした様な「失策」はしないでしょうけどね。

現在の段階(午後22時現在)では、州政府の対応に不満を持つ市民達がカタルーニャ広場に再び集まり始め、内務大臣の辞任を要求すると言う行動に出ている模様です。今の所、大きな衝突や暴動と言った事態には至ってはいませんが、今夜から明日にかけてが山かなとは思います。
| スペイン政治 | 05:09 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
スペイン統一地方選挙2011その2:バルセロナ市内の詳細データと文化施設への影響について
先週日曜日(5月22日)にスペイン全土で行われた統一地方選挙なのですが、一夜明け、二夜明けと言う様に日が経つにつれ、現代スペインにおける歴史的とも言える政治的変化の様子が段々と明らかになってきました。前回のエントリで書いた様に(地中海ブログ:スペイン統一地方選挙2011:バルセロナに革命起こる)、バルセロナでは独裁政権後、現在まで32年間もの間、市政を掌握してきたカタルーニャ社会労働党(PSC)が負け、今回初めて、(カタルーニャでの)右寄りのカタルーニャ同盟(CiU)の勝利に終わったんだけど、市内の何処でどの様な票の入り方をしているかを見るにつけ、コレ又、大変興味深い事実が浮かび上がってきたんですね。とりあえず、バルセロナ市における選挙結果は以下の様になっています(カッコの中の数字は前回の選挙時の獲得議席数):

カタルーニャ同盟:CiU: 15 (12)
カタルーニャ社会労働党:PSC: 11(14)
民衆党:PP: 8(7)
ICV 5(4)
Unitat per Barcelona 2 (4)

繰り返しになっちゃうんだけど、驚くべき点は、カタルーニャ社会労働党が与党の座から落ちたと言う事。そしてもう一点は、民衆党(PP)が市内においてキー政党として伸し上がってきたと言う点だと思います。つまりは連立を組むに値する政党としてと言う事です。これは結構驚くべき事で、何故ならカタラン人達は、フランコ政権と関連がある民衆党の事を「これでもか!」と言うくらい嫌っているからなんですね。実は2008年の総選挙前、バルセロナ市内では大問題が勃発しまくっていて、例えば1週間近くに渡り市内の数箇所で大停電があったり、トンネル工事をしている地区で、急にその周辺の住宅の地盤が崩れたりと、信じられないくらいの問題が起こりまくってたんだけど、市民はその責任を当時の政権与党にあったカタルーニャ社会労働党に向け、大規模なデモが何日も続くと言う様な状況でした。そんな状況だったから、「次回の選挙ではカタルーニャ社会労働党危うし」みたいに言われていたんだけど、蓋を開けてみれば社会労働党の大勝利(驚)。では一体何故、この様な驚きの結果になったのか?と言う点については、以前のエントリで書いた通りなんだけど、その理由を掘り下げていくと、実はカタラン人達の中に根強く残っている民衆党嫌いに行き着くと言う訳なんです(地中海ブログ:スペイン総選挙その3:ジョセプ・ラモネーダ(Josep Ramoneda)の選挙分析、地中海ブログ:スペイン総選挙その2:カタルーニャのヒロイン、カルメ・チャコン(Carme Chacon)

“・・・この点について昨日、ジョセフ・ラモネーダが大変に鋭いコメントをしていました。それは「カタルーニャ人は民衆党が嫌いだから」だという事です。それだけ?とか思ってしまいますが、良く考えてみるとこれはかなり根の深い問題である事に気が付くはずです。

過去にフランコの手痛い仕打ちを受けた記憶からカタルーニャ人は民衆党にだけは絶対に政権を渡すまいと思っています。だから幾ら社会労働党がひどい舵取りで、市内の電気が消えたって、水道が出なくなったって、明日食料が尽きようとも、カタルーニャ人が民衆党に乗り換える事は無い訳です。何故なら「嫌いだから」なんですね。“

さて、今回の選挙結果をもう少し詳しく地区別に見てみると、これ又面白い事実が浮かび上がってきます。バルセロナ市内は10の地区に分けられていて、その内PSCはCiutat Vella, Horta-Guinardo, Nou Barris, Sant Andreu, Sant Marti, Sants-Monjuicと言った、6つの地区で今まで圧倒的な票を獲得してきました。それが今回、Sants-MonjuicをCiUに僅差(CiUは24.5%、PSCは24.1%)で取られた他、今まで大差を付けてきたCiutat Vellaですら、殆ど肩を並べられるくらいに追い込まれているんですね(PSCが23.5%、CiUが22.7%)。2007年の時はGracia地区をCiUに取られたんだけど、今回は「労働者のお膝元」と言っても過言ではないSants-Monjuicを取られるまでになってしまいました。又、各地区でCiU票が伸びてるんだけど、元々の陣地だったSarria-Sant Gervasi(42.3%から48.5%へ)や、Les Corts(31.4%から37.5%へ)などで票の伸びが激しいのが見て取れます。PSCが辛うじて保持しているのは、Horta-Guinardo, Nou Barris, Sant Andreu, Sant Martiなどですね。

そして実はこっからがちょっと大事な所なんだけど、これらバルセロナ市でのPSCの転落が余りにも劇的だったが故に誰も注目してない事があって、それが今回、CiUはバルセロナ県(Diputacio de Barcelona)の主権も把握したと言う点なんですね。バルセロナ県ってバルセロナに住んでる人ですら知ってる人は少ないと思うんだけど、実は結構重要な機関で、ここが出資してる公共機関ってのが結構多くてですね、代表的な所なんかではバルセロナ現代文化センターが挙げられます(バルセロナ県75%、バルセロナ市25%)。

で、バルセロナ現代文化センターと言えば、その創設時から現在まで館長を務めているスペインの誇る知の巨人、ジョセップ・ラモネーダ氏なんだけど、彼が館長である事が出来るのは、出資者であるバルセロナ県とバルセロナ市に任命されてるからであって、今回その出資者の構成が激変する事によって、CiUに根深い人が館長に抜擢される可能性が大な訳ですよ。そうすると、コレまで彼が15年くらいかけてバルセロナに根付かせてきた各種の大変魅力的な文化イベント、SONARやらCOSMOPOLISやらと言った、世界的にも知られる所となっている文化行事が消える恐れが出てくるんですよね(まあ、そう簡単にはなくならないとは思うけど、予算が削られ規模縮小するのは間違い無し)。唯一の救いは、と言うか希望は、昨年11月に突然PSCを抜け、カタルーニャ州政府文化大臣になったFerran Mascalleさんなんだけど、彼が何処まで影響力を発揮する事が出来るのかは不明。

これは一例に過ぎず、バルセロナ県やバルセロナ市関連の施設や機関では今後、かなりの人の動きと組織改変が予想されます。そして勿論、それとは別に、スペインを襲っている経済危機の影響から、文化行事には殆ど予算が付かないと言う状況が変わる訳ではありません。もっと言っちゃうと、CiUの政策の方向としては「文化は二の次」って言う方向性だから、バルセロナ市内での文化的ランドスケープは激変すると考えた方が良いと思います。

とか思ってたら、今度はPSOE内で後継者争いが又勃発したとかニュースで言ってるし・・・。ホント、激動の毎日です。
| スペイン政治 | 07:29 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
スペイン統一地方選挙2011:バルセロナに革命起こる
前回のエントリで書いた様に、昨日はスペインで統一地方選挙が行われました。本当は昨日の夜、結果が出た時点で選挙速報を書きたかったんだけど、こんな日に限ってネットが利用不可能状態に。契約してる電話会社(Telefonica)に電話したら、「技術的な問題が発生して、現在市内数箇所でネットが繋がらなくなってます」って言われた。・・・数日前からスペインの各都市では同時多発的にSNSによって呼びかけられた大規模デモが起こってたり、その事を(かなり間違った認識に基づいて)各国主要紙はジャスミン革命と比較してたり(地中海ブログ:スペイン各都市で大規模デモ:「ジャスミン革命がスペインにも飛び火」って言われてるけど・・・)、電話会社(Telefonica)は国営だったり・・・。この抜群のタイミングでネットが落ちるって、「コレって本当に偶然か?」とか思ってしまうのは僕だけでしょうか(苦笑)。

と言う訳で、昨日の夜は選挙速報が書けなかったんだけど、選挙結果を言うとですね、予想されていた通り、スペイン全土において、野党第一党である民衆党(PP)が歴史的な大勝利を収めました。まあ、それは数ヶ月前から殆どのデータが指し示していた事なので、それ程驚きじゃないんだけど、そんな中でも注目すべきはやはり、社会労働党(PSOE)の牙城であったバルセロナ市とセビリア市で社会労働党が負けたと言う点でしょうね。

特にバルセロナなんて、ジョージ・オーウェルを持ち出すまでもなく、伝統的に「労働者の街」として知られていて、独裁政権後、1979年から現在まで32年間もの間、社会労働党が市の行政を牛耳ってきたと言う背景があります。それが今回の選挙で初めて崩されました。これはハッキリ言って革命だと思います。で、社会労働党に代わって第一党に上り詰めたのは、現在のカタルーニャ州政府政権についてる、右寄りのカタルーニャ同盟(CiU)。第2党は社会労働党なんだけど、第3党に何と、カタラン人が大嫌いな民衆党(PP)が入ってきたんですね。これもちょっと凄い事です。バルセロナにおいて民衆党が力を持った事なんて未だかつて無かった事なのですから。

CiUは絶対多数には至らず単独政権は無理なので、今後1ヶ月くらいをかけて何処かの政党と連立政権を組む交渉に入っていく事になると思うんだけど、PPとの連立が最有力視されています。個人的には「PPとの連立か・・・」とか思っちゃうんだけどなー。

何度も繰り返しますが、バルセロナ市に限って言うと、この選挙結果は殆ど革命的だと言っても過言ではないと思います。この政権交代によって、今後バルセロナ市内のかなりの事、組織や制度、そしてプロジェクトなどが変わっていくと思うんだけど、それがどの方向に進んでいくのか?今後夏前まではバルセロナ政権の行方から目が離せそうもありません。

追記:

今回の統一地方選挙の投票率はスペイン全体では66.2%。これは前回(2007年は64.0%)に比べて2%程高い数字となっています。カタルーニャに限ってみると、今回の投票率は55.0%。前回(2007年)は53.9%だった事を考えると、コチラも2%程上昇していますね。
| スペイン政治 | 17:39 | comments(3) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加