地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
EUプロジェクト最終プレゼンテーション前夜
今日(9月24日)はバルセロナの聖人であるメルセを祝う祝日です。既に先週からお祭りムードに入っているバルセロナは今夜にかけて絶頂を迎えます。そんな中、僕は明日開かれるEUプロジェクト(欧州プロジェクト)の最終ミーティングに向けて昨日からダブリン、ヘルシンキそしてバルセロナの各パートナー達と最終調整に入っています。今日も朝から皆で会議のはずが・・・バルセロナのパートナーが誰も居ない・・・。しかも今日渡された欧州委員会の人達の前でのプレゼンテーション予定表を見てビックリ。各都市の紹介とか言う20分間のプレゼンテーションの欄:ダブリン市、ダブリン工科大学のJさん、ヘルシンキ市、ヘルシンキ市役所のIさん、バルセロナ市・・・、cruasan、「え、僕ですか!!!」。

あのねー、カタラン人の皆さんねー、あなた方、幾らお祭りが好きだからって人に仕事を押し付けてメルセ際行くのやめましょうよ。そりゃ、僕だって見たいですよ、あの巨大人形がクルクル回る所とか。

昨日の夕食の別れ際に、「明日はプレゼン前の最終日だからコレまでの3年間の集大成として皆で力を合わせて乗り切ろう、オー」とか言って、「今生の別れ」くらいの勢いでした強烈なハグとベソ(ほっぺにするキス)は一体何だったのでしょうか?

いつもは怠け者のカタラン人でも、「やっぱりやる時はやるんだよな」とか、一瞬でも見直した僕が馬鹿でした。ちなみにパートナーの一人である某スペイン電話会社のJ君に電話したら留守電になってて、しかもそれが、「もしもし、Jです。御用のある方は、下記の番号を押して下さい。♪ウノ(一番)、ブレイキンダンス、ドス(2番)、・・・・、」ってあんた、チキチキダンス(Baila el Chiki-chiki)か!

この音楽は今年のユーロビジョンのスペイン代表のロドルフ・チキリクアトレ(Rodolfo Chikilicuatre)が歌ってスペインではいろんな意味で評判になった歌です。(詳しくはココ:ユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest)に見るヨーロッパの多様性と政治状況



でも、ちょっと面白かった。こういう洒落っ気と一般市民のデザインセンスには時々感心させられます。コレ聞いたらなんか怒る気無くなってきたし、いつもの事だし、まあ、一人でがんばるか。
| EUプロジェクト | 18:13 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ICING最終イベント:ePractice.euワークショップ
今週の水曜から金曜にかけてICINGプロジェクトの一環として行われたePractice.euのイベントに参加してきました。ePractice.euというのは何かというと、まあ早い話が各国・各都市に散らばっている専門家同士が知り合う機会を提供する場、もしくはお互いのプロジェクトを発表する場をオンライン・オフラインで創り出すプラットフォームのようなものですね。このような場が公共の資金で積極的に創出されているという事は非常にありがたい。今の時代、インターネットで幾らでも情報は探せるけど、「イザ一緒にプロジェクトを」、と言った時にはオフラインでの信頼がモノを言うという事は言うまでも無い事です。

さて、今回のワークショップ兼カンファレンスを実質的にオーガナイズしたのはバルセロナ市役所内情報部門責任者のJさんと彼の秘書Cちゃん、そして僕です。大規模なイベントをオーガナイズするのは初めての経験だったのでかなり苦労しました。裏を言っちゃうと、結構てこずったのがゲストスピーカーの人選でした。せっかくの機会だから世界中から未来都市に関して提言を行っている人達を呼ぼうと言うのは当然の事だったんですけど、膨大な候補者の中から人選をするのもコレマタ大変だったんですね。そこで候補者を絞り込んでいく為に、取り合えずアジア・ヨーロッパ・アメリカの三大陸からそれぞれ一人ずつ代表者を選ぼうという事になりました。そしてその代表者にそれぞれの大陸で進行しているプロジェクトを語ってもらい、それらを比較する事によって今世界で何が起こっているかの輪郭を掴もうという事になりました。

アジアから来て頂いたのはユビキタス社会の実現に向けた巨大プロジェクトが目白押しの韓国からJu Young Byunさん。現在韓国で進行中のu-Cityプロジェクトについて語って頂きました。

U-city vision and projects in Korea
Mr.Ju Young Byun(Directore of u-City Policy Division of IFEZ, Korea)

驚いたのはその規模。街を丸ごと一つ創ってしまうくらいの巨大プロジェクトに潤沢な資金が注入されている。規模が大きい事から話は勿論マクロな方向からになっていて、個人的にはもう少しミクロな部分、具体的にどんなセンサーを使うのか?と言った部分が聞きたかったのですが、未来都市にかける韓国の意気込みが良く伝わってきました。

ヨーロッパから来て頂いたのはLiving Lab EuropeからEsteve Almirallさん。知識型エコノミーの中におけるインノベーションの重要性とそれに伴って勃興してきたシティ・リージョンの形成という話は違う文脈における僕の興味の在る所なので、非常に興味深く聞く事が出来ました。

How ICING fits with the European Network of Living Labs
Mr.Esteve Almirall(CatLab,i2Cat “member of the European Network of Living Lab”)

そしてアメリカから来てもらったのがMIT SENSEable CIty Labに在籍するFabien Girardin君。彼の研究は以前のエントリでも少し紹介しましたが、既存の交通調査などでカバー出来ていない非日常交通の実態や観光客の導線などをコレまでには考えられない程のミクロレベルで実現しています。

From sentient to responsive cities
Mr.Fabien Girardin(PhD candidate at UPF and Research Associate at the MIT SENSEable City Lab)

具体的に言うと世界最大のフォトアーカイブであるFlickerに投稿された写真に付けられたタグ情報などから、観光客がどのように都市を動き回ったかをピンポイントでトラッキングしているんですね。



彼の手法は非常に賢い。まるで個人が自分の為にブログを運営して質を高めようと努めているその裏で、実は僕達はグーグルに奉仕させられている、正にそんな感じ。自分のプロフィールを良くしようとFlickerに沢山写真を投稿すればするほど、自動的にFabien君のトラッキングシステムの質も上がって行くと言ったような。会場に居た何人の人が彼の手法の本質を深く理解出来たかどうかは分かりませんが、ビジュアルインパクトの強さから沢山の人が彼の研究に興味を持ってくれたようでした。

そして僕はというと、ICINGプロジェクトの一環として進められているBluetoothを用いたリアルタイム交通センサーとそれを実際に用いたバルセロナにおけるプロジェクトを紹介させてもらいました。

New tools for Urban Traffic Management
Mr.Yuji Yoshimura(BCN Ecologia Urbana, Project Coordinator)

僕のプレゼンは実際のデータを用いたものだったので分かりやすかったせいか、終わった後のコーヒーブレイクで沢山の人達から質問やらコラボレーションの可能性やらについて聞かれました。



とりあえず個人的にはプレゼンには大満足。そしてイベントにも大満足。あとは9月の欧州委員会の前での発表を残すのみで明日からはその準備と新たなる欧州プロジェクトの創出プロセスに追われる事になりそうです。
| EUプロジェクト | 18:14 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
Epractice プレゼンテーション終わる
ここ数週間はEUプロジェクトのパブリック・プレゼンテーションの為に本当に忙しくて土日も潰して働いていました。勿論ブログをアップする余裕なんて無かったわけで、それが2週間程ブログをアップしなかった理由です。

欧州委員会とヨーロッパ各都市から集まった代表の前でのプレゼンはかなり緊張しましたが、それもたった今終わりました。

詳細は後日書く事として、とにかく今日は休憩です。
| EUプロジェクト | 23:36 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
リスボン条約:アイルランド国民投票批准否決とEUプロジェクト
昨日(13日)アイルランド(Ireland)がリスボン条約批准を国民投票で否決したというニュースが飛び込んできました。リスボン条約とは27加盟国に拡大した為に沸き上がってきた諸問題を、EU意思決定手続きの効率化やEU大統領(EU理事会常任議長職)の創設など、既存の基本条約を改正する事によって解決しようとしたもので、2005年にフランスとオランダで国民投票により否決された欧州憲法条約の延長上に位置するEUの2度目の挑戦でした。

今日の新聞(La Vanguardia, 14 Junio 2008)によるとアイルランドの国民投票参加率は53,1%。その内、反対が53,4%、賛成が46,6%。条約の発効には加盟国全部の批准が必要な為、アイルランドの「NO」を受けてEUの機構改革はストップしてしまいました。アイルランドを除く26カ国は国民投票ではなく議会で承認する予定。何故かというと、2005年の苦い経験から政治的に確実に解決出来る議会を選んだんですね。既に18カ国が批准・批准承認を終えており、残る8カ国も速やかに承認する模様。何故アイルランドは国民投票をしたのか?というと、同国憲法規定で国民投票をしなければならなかったらしいです。

それにしてもこの批准否決でアイルランドはEU内でものすごく過酷な立場に立たされる事となってしまいました。元々ボロボロだった経済をEUへの参加をきっかけにして「ケルティック・タイガー(Celtic Tigre)」と呼ばれるまでの驚異的な成長を遂げ、世界で最も競争力の高い経済圏にまでなった今、その恩を忘れて今度はEUの敵に回るのかと。

今回の出来事は僕にとっても人事ではありません。何故なら僕が担当しているEUプロジェクトのプロジェクトリーダーは何を隠そうダブリン市(Dublín City Council)ダブリン工科大学(Dublin Institute of Technology)だからです。それに加えてダブリンを拠点とする多数の私企業やアイルランド政府とも一緒に苦楽を共にしています。更に偶然と言えば偶然なんだけれど、今月末にはユーロシティ会議(Eurocity)を含む、欧州委員会との直接ミーティングがバルセロナで予定されてもいるんですね。

欧州加盟各国から300人程の政治家や関連企業人を招きプロジェクトの進行状況を発表するその場では、ダブリンや僕達に逆風が吹くのは必死。もしくは反対に政治的には失敗したけど、プロジェクトレベル(草の根的)では協力して欧州の統合を進めよう、という方向に動くのか。どちらにしても、今月末にかけて忙しくなりそうです。
| EUプロジェクト | 18:43 | - | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
EUプロジェクトを通して見えるEUの戦略:二つのEUプロジェクト・ミーティングを通して
ミラノ旅行から帰ってきてから今週はちょっと忙しい。月曜から水曜まではICINGプロジェクトのミーティング、木曜と金曜はもう一つのEUプロジェクトであるロボット・プロジェクト(URUS Project: Ubiquitous Networking Robotics in Urban Settings)のヨーロッパ委員会によるプロジェクト審査会(Project Review)がバルセロナで予定されています。

という訳で先ずはICINGプロジェクトから。(このプロジェクトの概略についてはこちら)今回のミーティングの目的は6月のヨーロッパ委員会(European Comisión)の前での最終プレゼンテーションに向けての調整というのが第一の目的。今回はヘルシンキ組みのヘルシンキ市役所(Helsinki City Council)のIちゃん、ヘルシンキ芸術デザイン大学(University of Art and Design Helsinki)のJちゃんとR君がスケジュールの関係でバルセロナに来る事が出来なかったので彼らはヘルシンキからビデオカメラを通した参加となります。

カタルーニャのシリコンバレーこと、22@BCN地区内某所に集まったメンバー達と朝から夕食後のコーヒーまで、今までに無くかなり真剣なディスカッションが進んでいる。僕はこのEUプロジェクトであるICINGプロジェクトに幸運にも日本人として参加している(所属は勿論バルセロナの公的機関として)のですが、だからこそ、他のヨーロッパ人参加者には見えない特別な視点から、プロジェクトとEUの戦略的位置付けみたいなのが出来ると思うんですね。つまり、EU圏の人間では無く、圏外の日本人の眼から見たEUプロジェクトの意義みたいなのをココに書いてみたいと思います。

先ず、EUプロジェクトというのは、簡単に言うとEU圏内の3カ国以上の都市が集まって何か革新的なプロジェクトを提案した時に、ブルッセルにあるEU委員会がEUプロジェクトとして承認してお金を出すというプロセスを取ります。(かなり簡略化してますが)表向きは、一つの機関や都市では実現出来ない実験やサービス、製品を幾つかの機関や都市に属するスペシャリストが集まって協力しながら実現していくという、アカデミックエリアでは結構普通にやられているコラボレーション方式ですね。

しかしながら、いちパートナーとして実際にEUプロジェクトに参加していて気が付いた事は、これらEUプロジェクトには、この表向きの目的の他にもっと大切な裏の目的があるんじゃないかと言う事です。それは一つのプロジェクトの実現を通して各都市の結束を固め、都市間のコミュニケーションを円滑にし、その結果、創造性を増幅する事によりEU全体の競争力を高めるという裏目的が存在するような気がしてしょうがないんですね。

一つのプロジェクトを様々な文化と専門のバックグラウンドを持ったパートナー達と実現していくという事は決して楽な事ではありません。話す言語は違うし、扱う専門用語も違う、働き方も違うし思考形態も違うパートナー達と一緒に働いていていると、仕事の生産性という観点から見た時、「自分達だけでやった方が楽なのに」と思う事はしばしばです。笑い合う事がある数だけ、「データが無い」とか「言語間の違い」とかで怒鳴りあう事がある事も事実なんですね。

しかしながらこのような仕事の生産性の指標だけでは計れない「何か」がある事も又事実です。それは明らかに文化間の違いが生み出す多様性に依っていて、プロジェクトを豊かなモノにしている。自分達とは違う文化圏の人の働き方や休息の仕方といった生活様式に触れる事によって、人間が成長するんですね。

どうも僕が見た感じ、EUはプロジェクトの生産物に期待するというよりは、プロジェクトを通した各国間・各都市間のコミュニケーション促進の方に期待しているのではないかと思えてきます。その結果、プロジェクトに投資した何倍もの見返りが、そこで構築されたネットワークから出てくる新しいプロジェクトや提案という形でEUに還元される訳です。実際ICINGプロジェクトからは草の根的に幾多のプロジェクトがパートナー間で既に生まれています。結果としてEU都市間の結束が固まり、EU全体の競争力の強化に繋がる訳です。

僕が関わっているもう一つのEUプロジェクトである、ロボットプロジェクト(URUS Project)ではその傾向というか、EUの戦略性はより明らかです。現在のロボット技術の強力なセンターは日本とアメリカだそうです。その2つの地域に比べて明らかに遅れを取っているのがヨーロッパ。そこでEUはEU各国からロボットのエキスパートを集めてコミュニケーション型ロボットを創るというEUプロジェクトを立ち上げました。ロボットを創ると言ってもロボットは色んなパーツや機能から成り立っているので各部分によってどの国のどの都市が優れているとかいう優劣があるわけです。その良い所取りをして最上級のロボットを創ろうというのが表の目的。

しかしですね、ココには明らかに裏の目的があるわけです。それは各国各都市でばらばらなプロトコルや基準、用いる言語などを今の内に統一して来る次世代ロボット戦争に備える為に、日本やアメリカに負けない強力なセンターを創り出そうという戦略が見えるわけですよ。一つの生産物を創り出すという目的に従って、定期的にミーティングを開き、技術的な問題を解決・EUで統一していく事に加えて、上述のような各国・各都市のコミュニケーションを促進する役割をも果たす、正に一粒で二度美味しい戦略。

こういう事って、紙の上に書かれた経過報告書やプロジェクトレポートといったオフィシャルな記録からは絶対に見えてこない事です。EUが正に結束を強めているこの時期に、日本人として、その中心に直にリアルタイムに関わる事が出来るというのは、この上ない幸せだなと思います。
| EUプロジェクト | 20:25 | comments(1) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ICINGプロジェクトと Bluetooth Scanning
前回のエントリで書いたように昨日はICINGプロジェクトのヴァーチャル・ミーティングがありました。疲れたー。しかも3時間では全てを話す事が出来ずに、来週もう一回という事になってしまった。

そんなこんなで、来週の準備をしている所でこんな面白い論文を見つけました。

V. Kostakos, T. Nicolai, E. Yoneki, E. O’Neill, H. Kenn and J. Crowcroft: "Understanding and Measuring the Urban Pervasive Infrastructure". to appear in Journal of Personal and Ubiquitous Computing, Springer, 2008

内容は近年の各種携帯機器の普及による、新たなる都市分析の可能性という僕の領域にドンピシャな内容。この領域では近年、携帯機器を動くセンサーと見なして、人の軌跡を追うものや、特別なアプリケーションをインストールする事によって環境センサーとして機能させるものなど、様々な使い方が提案されているんですね。

そして、これらの新しいセンサーは従来の社会ネットワーク分析に取って代わる・もしくは補完する可能性があると大きな期待が寄せられています。何故か?何故なら、従来の社会ネットワーク分析は、統計学的に全人口を代表する人達を選び出して一人一人に質問状を送ったり、直接インタビューしたりといったように、かなりの手間暇をかけていました。これは何を意味するかというと、膨大なお金と時間が掛かる事を意味するんですね。

そんなところへ現れたのがワイアレスで繋がる事によって空間データを残してくれて、膨大な計算も既にデジタル化されているが故に楽な携帯機器。これを用いない手は無いという事で、世界中でどうやって社会分析に適応するかが考えられ、論文が生産されているという訳です。

ワイヤレスと言っても様々な特徴を持った様々な機器が存在する為に、各種データによって使い分ける必要が出てくる。この論文上ではこんな風に考えられています。

For example, GPS gives insight into spatial behaviour while Bluetooth scanners emphasise social behaviour.

つまり位置確認などはGPSでやりつつ、Bluetooth(BT)の相互コミュニケーションログ機能を、誰が誰と通信したかという社会活動方面の分析データに用いるという訳ですね。

典型的なBTの利用例が例えばコレ:

Eagle,N., Pentland,A.(2006): Reality mining: sensing complex social systems. Pers Ubiquitous Comput 10(4):255-268.

100人にBluetooth機能付きの携帯電話を渡してその行動を6ヶ月観察した結果、Bluetoothが提供する相互コミュニケーション機能とログなどから、誰が何時誰と何処で近付いたかなどが分かり、その結果が社会ネットワーク分析に応用出来るという事を示した論文。

話は逸れますが、世界中でBluetoothが普及していないのは日本くらい。これは海辺美和さんが言われている「パラダイス鎖国」の弊害ですね。

Bluetoothの機能についてちょっとココで補足しておきますが、コレは主に携帯機器間で写真や音楽の交換をワイヤレスでするために開発されました。通信距離は様々で1メートルから、広いものでは100メートルくらいまでで、通信を行うには両者の間で承認が必要となります。しかしBluetooth機能をオンにしておくと、他の人からの信号を承認無しで受け取る事が出来るんですね。このような機能を利用して、近年ヨーロッパではBluetooth広告なるものが流行っています。そして都市分析の文脈で語られるBluetooth Scanningとは、スキャニング機を街中に設置しておいて、そこの近くを通ったBluetooth機能がオンになっている携帯機器を発見するというものです。

ここで問題になってくるのが、じゃ、一体何人の人がBluetooth機能をオンにしているのか?という事です。それについてはこの論文で大変に興味深いデータが載っていました。(いずれも歩行者を測定)

Bath in UK 7.5%
Bremen in Germany 3.5%
San Francisco in USA 13.5%

なるほど、都市によってこれほどの違いが出てくるのか。

さて、前置きはこれくらいにして、この論文で僕にとって興味深い点は主に2点。一つはBluetooth Scanningを用いたデータ収集方法。bluetoothと wifi信号を受信する機械を街の幾つかの場所にセットして置き、別々の場所で確認された固有ログからその固有機器を持っている人が、街中でどのように動いたかを分析する事を暗示しています。bluetoothと wifiが提供してくれるデータは、このように人の移動軌跡を分析する為に用いる時、一番効力を発揮すると思います。

そしてこれは僕達がICINGプロジェクトで既に実現した手法なんですね。この計画に基ついて、バルセロナでは更に進んだプロジェクトが進行中です。

もう一つの興味深い点は、スペース・シンタックスの歩行者シミュレーションに対する提案を行なっている所です。スペース・シンタックスの場合は純粋に街の形態(街路構成)が、その街に中心性を与えていて、それが店舗出展数に決定的な影響を与えているという理論に依っているんですね。これに対して、bluetoothや wifiから得られる新たなるデータを用いる事によって、スペース・シンタックスのシュミレーションに重み付けを行なう事を提案している。

先ず第一印象としては面白い。だけど次の瞬間に「多分難しいかな」という直感が働く。具体的にどのように重み付けをするか書いてないから何とも言えませんが・・・

予想するに、line of sightの情報と経路情報を組み合わせるといった所でしょうか。上で書いたように、bluetoothや wifiデータが提供してくれる一番大きな特徴は何かというと、断面人数データでは無くて、経路情報なんですね。つまり人が何処から来て何処へ行くかという情報です。それに対してスペース・シンタックスのシミュレーションは「ある地点から人が何処まで見通せるか」に基ついて線を決定し、その線の交わりの数で中心性を決めている。
その線の事をline of sightと呼び、人の経路選択には視線の影響が大きいとしているんですね。だからココで経路情報を用いてline of sightに重みをつける事が出来る・・・と言った所でしょうか。

余談ですが、スペース・シンタックス(Space Syntax)の使っている手法(Integration)は、伝統的な構造社会学で用いられている分析手法であるClosenessと同じである事が最近指摘されています。

"As such, integration turns out to be nothing else than a normalized C (Jiang and Claramunt, 2004), the well known closeness centrality index defined since the early fifties by structural sociologists".(Porta, 2005)

更にこの後考えられるシナリオとしては、この重み付けした修正シュミレーションの断面人数データと実際の断面データを比較する事によってカリブレーションを実現するというのが考えられる。前にも書いたのですが、シュミレーションで大事なのは現実とシュミレーションの間に何%のエラーがあるか?というカリブレーションです。

一見うまくいきそうなのですが、やっぱりちょっと難しいかな。歩行者シュミレーションにトラフィック・シュミレーションのような経路選択モデル(Discrete Choice Model)は適応出来そうに無いし、単純断面データを用いたカリブレーションにどうやって経路情報を適応するかという問題もある。

経路情報と最小費用理論やエージェント・ベース・シュミレーションを用いて、ある一つの都市内の一つの地域を時間限定で詳細にシュミレートする事は出来るかもしれないけど、普遍性を持たせるのはちょっと難しそう。

でも魅力的なテーマである事は間違いないですね。
| EUプロジェクト | 12:31 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
EUプロジェクトICING(Innovative Cities for the Next Generation):ヴァーチャル・ミーティング
明日はICING(EUプロジェクト、FP6)のスカイプを通したヴァーチャル・ミーティングが予定されています。昨年の11月に続いて2回目なのですが、コレが結構緊張する。音声だけで英語を理解しなければいけないというのは、結構しんどい。集中力の問題だと思うのですが、4時間とか続くと精神的にかなり疲れます。それと、ヴァーチャル・ミーティングの直前までスペイン語をしゃべっていて、パッと切り替えるというのはナカナカ難しい。フィジカルに海外に行くミーティングなら、空港やホテルなどで慣らしておいてというのが出来るのだけど、スペインに居ながら急に英語というのは僕の場合、脳がナカナカ切り替わらない。

さて、3年前から始まったこのプロジェクトも残り3ヶ月程。今まで一緒にやってきたパートナー達とももうすぐお別れと思うと感慨深いものがあります。

このプロジェクトは僕にとって始めて自分でコーディネートしたEUプロジェクトだっただけに本当に大変でした。

各都市、各企業を代表して来ているヨーロッパ人の面々の前で、自分の所属機関の立ち位置を守り存在感を出すというのは、口で言うほど簡単では無い。ましてやヨーロッパ連合がヨーロッパ人の為にお金を出しているプロジェクトにおいて、日本人として参加しているからには、何故に日本人なのか?という暗黙のプレッシャーがあり、ヨーロッパ人以上の事をしないとなかなか認めてはもらえなかった時期もありました。

そんなつらい時期を乗り越える事が出来たのはバルセロナのパートナー達のおかげだと思っています。普段はムチャクチャ腹が立つ事が多いカタラン人達だけど、困った時、助けてくれたのも又、彼らでした。特にBarcelona MediaのRさん、スペイン最大手電話会社TelefonicaのA君、T-SystemのP君、バルセロナ市交通局のBさん、バルセロナ市情報局のIさん、22@BCNのJさん達には何度も助けられました。

3年という長い時間をかけて出来ていくもの。長い時間をかけないと出来ないもの。それが信頼であり、人と人との絆だと思います。これこそインターネット万能社会の中において、グーグルのような世界最高のコンピュータにさえ出来ない事であり、人間が人間である証だと思うんですね。そんな事を実感させられるプロジェクトでした。(まだ終わってない)
| EUプロジェクト | 22:21 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
eGovernment Mobile Services Workshop
今日は朝からeGovernment Mobile Services Workshopに参加してきました。このワークショップは、現在バルセロナで進行しているEU2大プロジェクト、ICINGとP2Pプロジェクトの紹介と両プロジェクトに参加しているパートナー同士の情報交換を目的として開催されました。

バルセロナ、ダブリン、ヘルシンキ、ブルッセル、スロベニアなど政府関係者から新進企業まで多彩な顔ぶれで行われた今回のワークショップからは得るものが多かったです。特にこのようなミーティングの一番の魅力は世界中に同じような興味を持った人達とコネクションが出来る事ですね。ネットを通して世界中の人と繋がる事は出来るけれど、同じ時間と空間を共有した体験は互いの信頼関係をより深める事は間違いありません。

80年代後半から90年代前半にかけてマニュエル・カステル(Manuel Castells)サスキア・サッセン(Saskia Sassen)といった社会学者が、情報通信技術が進めば進むほどフィジカルな空間の重要性の低下というロジックに対する矛盾:都市のフィジカルな空間のより一層の重要性の増大を示したように、やはり顔を合わせた議論にはインターネットでは得られない体験が潜んでいると思います。

さっぱり関係の無い話ですが、サッセンが以前に書いていた文章で忘れられないフレーズがあるので紹介しておきます。



「(写真はイメージです。超高層ビルに入っている銀行のオフィス側から見ていると仮定して)この空間には2つのクラスが存在している。一つは暖房の効いたオフィス内で働くホワイトカラー。もう一つは空間の外で危険を冒しながらガラスを拭いているブルーカラーの労働者。同じ空間に属しながらもこの2つのクラスの間には見えない深い溝が存在している。この仕切り(ガラス)はとても薄く透明であるにも関わらず、決して乗り越える事の出来ない壁である。」

ワークショップは明日も続きます。
| EUプロジェクト | 22:21 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
EUプロジェクトとネット時代
シリコンバレーからの手紙で梅田望夫さんが「情報量が仕事量を規定
そんな時代の生存術とは」
を書かれています。EUプロジェクトを多数抱える自分にとって、大変切実で身近な問題として読みました。

27ヶ国で構成されるヨーロッパ大陸の時差は最大で3時間。故に日本とアメリカのような14−17時間の時差で仕事をされている方々のように夜昼が全く逆という事は無いのですが、参加国が多数なので仕事の進め方がどうしてもネットに頼ったものになってしまいます。

文化のモザイクであるヨーロッパでは仕事の進め方も様々。そうすると次のような事が頻繁に起こります。

例えば僕が文書を書いてプロジェクトページにあるフォルダーにアップして他のミーティングに出る。帰ってネットを見ると多数のコメントが寄せられている。それを一つずつ読み返信をしたり文章を校正したりする。一段落という所で仕事を終えて家に帰り、ネットにアクセスすると校正した文章に対して多数のコメントやメールが届いている。それを処理してから寝て朝起きて見ると又膨大な数のコメントが寄せられている・・・というように。

梅田さんが書かれているように、現在はもう仕事を終えて家に帰って次の朝オフィスに着いて昨日の続きをするという仕事モデルは成り立っていません。何故なら僕が何か別の事をしている間にもネット世界は動いていて、世界のどっかの誰かが何かやっているからです。この運動は永遠に続きます。そうするともう体力勝負になってくるんですね。

大変な時代になってきました。
| EUプロジェクト | 21:32 | comments(0) | trackbacks(35) | このエントリーをはてなブックマークに追加
ICINGプロジェクト締め切り間近3
今日はバルセロナ市役所インターナショナルオフィスにて交通局のBちゃん、22@BCNのJさん、SITMobileのMさん等とミーティング。コレマタ長かった。3時に始まった会議が終わってみれば19時。アー疲れたとか思いながらヌーベルがやったアグバービルの辺りを歩いていてちょっとビックリ。バルセロナが売り出し中の22@計画の第一期であるこの辺りが出来上がってきているじゃないですか!まあ、2008年完成予定を目指している事からすれば当たり前と言えば当たり前なんですが、かなり久しぶりに行った事もあって急激な変化にタダタダ驚くばかり。ちなみに第一期計画の公共空間プロジェクトは僕達がやりました。当然僕も参加しました。僕達が触れる範囲が公共空間に限られていたので建物には一切触れる事が出来なかったし、僕等が入った時には既にデザインまで決まっていたので何もする事が出来なかったんですが、完成予想図はかなりの高密度に仕上がっていました。良い意味ではなくて。大体バルセロナって水平に広がっている都市なんですが、その特徴を壊すかのような垂直型街区が立ち上がりつつあります。つまりボイーガスが言う所のアメリカ型都市街区ですね。

今丁度半分くらい出来た所なんですが、それでも十分に圧迫感を与えてくるボリュームです。さらにこの一角に19世紀の倉庫を改造したポンペウ・ファブラ大学が出来る予定なのですが、そこだけ低層で四方が高層に囲まれているという大変不均衡な計画になっています。
22@さん、もうちょっと考えた方が良いんじゃないでしょうかね?
| EUプロジェクト | 06:27 | comments(0) | trackbacks(0) | このエントリーをはてなブックマークに追加