2010.06.14 Monday
サラゴサの都市戦略とかサラゴサ万博跡地とか
とあるプロジェクト・ミーティングの為に今日は朝からスペイン高速鉄道(AVE)に乗って、サラゴサ(Zaragoza)に来ています。
以前のエントリで書いたように、サラゴサはバルセロナとマドリッドの丁度真ん中(マドリッドからは1時間15分、バルセロナからも1時間30分)、そしてバレンシアとビルバオの間に位置している為、その地の利を生かして物流(Logistics)の中心になろうという動きがあるんですね(地中海ブログ:サラゴサ(Zaragoza)の都市戦略)。何故か?簡単な事で、都市と都市の交差点には常に人とモノが集中するからです。そして「それらモノを集めて保管・管理し、スペインの各地へと再分配する最大のプラットフォームを創ろう」というのがサラゴサの都市戦略なんですね。
前回のエントリとも少し関連するかもしれないんだけど、近年益々バルセロナモデルへの注目度が高まり、バルセロナで成功した都市モデルを安易に自国へと適応させて成功を収めようとする都市が多く見受けられます。そんな中においてサラゴサの様に、「自分の都市の利点や特徴とは一体何なのか?」と言う事を真摯に分析し、そこから独自のモデルを見つける努力をしている姿などは賞賛に値すると思いますね(それが成功しているかどうかは別として)。
もっと言っちゃうと、サラゴサという都市は大変戦略的な都市で、このようなアイデアを更に進める為に、ボストンのMITと契約を結んで、サラゴサ大学と共同プログラム(修士課程のプログラム)を展開したり、都市計画の顧問などにMITの教授を起用したりと、都市マーケティングの熱の入れようには目を見張るものがあるんですね。2008年に行われたサラゴサ博覧会で、その全体企画やパビリオンの配置計画を含んだ全体計画の責任者の一人にMITメディアラボのウィリアム・ミッチェル(William J.Mitchell)が就任していたり、MITの建築・都市計画学科の教授陣が多く起用されていたりしていた事は何も偶然では無いと言う事です。
さて、こんなサラゴサなのですが、今日は仕事で来ていた事もあって、街を見て回る時間はほとんど無かったのですが、それでも見たい数箇所のポイントには行ってきました。先ずはコレ:
ザハ・ハディド(Zaha Hadid)によるサラゴサ万博の為に創られたブリッジ・パビリオンです。名前から容易に連想出来る様に、コレは橋でもありパビリオンでもあるという、云わば、一粒で二度美味しいというやつですね。
外から見るよりも中の空間が面白そうだったんだけど、今は土曜日、日曜日そして祝日のみ開館中なのだとか。残念!
スペインでは今年の4月にスペインのジャーナリスト、Llatzer MoixによるArquitectura
Milagrosaと題する、スター建築家による大金を注ぎ込んだ、(一般的には)奇怪な形をした建築が一体どのように生れたのか?という経緯が詳細に書いてある書籍が出版されたのですが、その中で批判されていた建築の一つが実はこのザハ・ハディットによるブリッジ・パビリオンでした。その当時、公開コンペが行われ、その結果ザハ・ハディットの案が選ばれたそうなのですが、実はザハ自身はコンペ前に敷地を一度も見に来なかったのだとか。それどころか、橋が完成するまでに3回しか現場を訪れなかった事などが暴露されています。・・・この書籍、読み方によっては結構面白いかもしれません。
そしてこの橋の前にあったのがコチラ:
Nieto and Sobejano ArquitectosによるCongress Buildingです。・・・特に感想は無し。
この建築の前には人を象った巨大人形(?)が置いてあったんだけど、こちらも意味不明。顔とか半分欠けてるんだけど、これはワザとなのか、劣化しちゃったのか・・・不明です。
今回のサラゴサ訪問は本当に時間が無くて、これくらいしか見る事が出来なかったんだけど、僕が万博跡地を訪れた感じでは、この辺りは全く再利用がされておらず、はっきり言って「死の地区」と化していました。バルセロナのForum2004でもそうなんだけど、大型イベントを誘致して未開地区を開発したは良いけど、施設等のその後の使い道がハッキリせずに、市民に非難されている都市がかなり多いようですね。大型イベントを誘致して都市の活性化を行う事は、バルセロナを初め、近年の都市が戦略的に考え始めている事なのですが、その後の活用法を考えないのはちょっといただけないなー。バルセロナが施設を創らずに、Mobile World Congressのような大型イベントだけを誘致してきているのは、実はそのような問題を避けようという意図がその裏にあるからなんですね(地中海ブログ:バルセロナのイベント発展型都市戦略とGSMA2010(Mobile
World Congress 2010))
帰りの高速鉄道に乗る為にサラゴサ駅に戻ってきたのですが、この新しい駅はカタラン人建築家であり、今年のスペイン建築大賞を取ったカルロス・フェラテール(Carlos Ferrater)によってデザインされました。
うーん、それなりではあるとは思うんだけど、敢えてコメントする程でも無いですね。次に期待しましょう。