地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ゲーリー(Frank Gehry)のサグレラ駅周辺(Entorno de la Sagrera)プロジェクト、経済危機の為ストップ
昨日の新聞(La Vanguardia, 11 de marzo 2009)にゲーリー(Frank Gehry)の進めているサグレラプロジェクト(Entorno de la Sagrera)が経済危機の為にストップしたという記事が載っていました。以前から巷で囁かれてはいたのですが、公式に発表されたのは初めてだと思います。

都市戦略という観点から見たサグレラ周辺計画の意味付けや、ゲーリーの建築が表象する社会文化的な意味などについては、以前のエントリ等で散々書いた気がします。(バルセロナの新たなる都市戦略:ビルバオから学ぶバルセロナ都市圏再生の曙:地中海ブログ、フランクフルト旅行その2:未来都市としての広告都市:地中海ブログ、ビルバオ・グッゲンハイム効果とジェントリフィケーション:地中海ブログ、Berlinその4:広告としての建築・建築化する広告その1:地中海ブログなど)

なんだかんだ言っても、ゲーリーは今世紀を代表する巨匠ですから、知らず知らずの内に結構彼の建築には言及してるんですね。

昨日の記事では何故計画がストップしたのか?と言う事について「お金が掛かり過ぎる上に、用途が明確では無い」と言う事が挙げられていました。「え、用途って明確じゃ無かったの?」と、驚き桃の木なのですが、何でもオフィス60%、ホテル40%(もしくはその逆)というくらい、大雑把な決め方だったらしい。その上、4億ユーロ(1ユーロ=120円で計算して480億円)も掛かるんじゃ、そりゃストップするわな、と言う感じでしょうか。



さて、このゲーリーによるプロジェクトには興味深い事に「花嫁(La Novia)」というあだ名が付いています。一番高い高層棟を人と見立てた時に、その後ろに段々と低くなっていくビル郡があたかも花嫁のウェディングドレスの様に見えるかららしいんですね。そして少し離れて建つジャン・ヌーベル(Jean Nouvel)のアグバー・タワー(Torre Agbar)を男性のシンボルと見立てて、「新婚初夜」とか言ってバルセロナっ子ははしゃいでいます(笑)。



ちなみに建設中のアグバータワーは、こんな風になってて、「コンドームをはめた様だ」と皆言っていました(笑)。

プラハ(Praha)に行った時に同じくゲーリー設計の建築を見たのですが、この建築にも「ダンシングビル」というあだ名が付いている様です。







多分、クネクネとうねった躯体を指して色んなあだ名が付いたとは思うのですが、これらの名前はともかく、「あだ名が付く」という現象が面白いですよね。

僕達の子供の頃を思い出して見ると良く分かると思うのですが、僕達が何かにあだ名を付ける時、他とは違った特徴を取り出して、それを誇張するかのように付けるのが一般的だと思われます。そしてそれらの特徴は誰が見ても納得する程のモノであるという所がキーポイント。そう、あだ名とは皆が皆、無意識下に感じていた事を巧く言い当てた時、とても普及するものなのです。

さて、コレを僕達の関心に読み替えるとどうなるか?

都市というコンテクストに対してこのようなあだ名が一般に普及すると言う事は、その下地となる都市への認識を市民一般が共有していると言う事を表していると思うんですね。上述の建築を男性・女性に見立てた遊びは一見馬鹿げた遊びに見えますが、良く考えてみるとコレは結構高度な都市認識が無いと成り立たないんじゃないのかな?



何故ならあそこにあんな形のビルが建ち、あそこにはあんな形の塔があるので、ココとココを結ぶとまるで花嫁と花婿のようなイメージになる、というのを頭の中で描く為には、都市の全体像が頭の中に入っていて、パッとイメージ出来なければ不可能だからです。

つまりそれだけ都市に対する意識が高く、市民一般の間で、ある程度の都市像が共有されていると言う事です。もしそのような共通認識が無かったなら、「あだ名」は「あだ名」足り得ないし、誰も話題にはしないと思うんですね。ちょっとすごいなー、と思うのは、こういう話題を皆がカフェで議論している事、出来てしまう所ですね。

多分ココには「都市のイメージ」とかメンタルマップとか、色んな要因が入ってきて、今日のエントリは結構複雑且つ長くなりそうだなー・・・とか思ってたらナルトが始まっちゃった!と言う訳で又今度。

追記:

ちなみにバルセロナの代表的なメンタルマップがコレ:





(Rubio,A. (1995): la imatge mental de lEixample de Barcelona. In Semiotica de lEixample Cerda, Barcelona, Edicions Proa, p33-43)

特徴としては常に山が上(北)で海が下(南)に描かれている事。これは明らかに事実とは違って、バルセロナの東西南北はこんな感じになっています。



そして市内を斜めに横断するディアゴナル通りとサグラダファミリアなど、幾つかのモニュメントは描き込まれていますね。

追記その2:
2011年9月2日の事なのですが、敷地を掘ってたらローマ時代の遺跡が出て来たらしいです。これで又、この計画がストップする可能性が出てきましたね。
| 建築 | 21:38 | comments(9) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
>cruasan様、私的小さな意見ですが・・・

おはようございます。
ゲーリープロジェクトがまた、ストップですか・・?

都市の再生や計画に最近ではスターアーキテクトの
出番で甦る構造となっていたのが、不況で見直し・?

日本では、郵政民営化で東京駅、大阪駅の一等地の
郵便局の建て直しで、鳩山総務大臣が解体、計画の
見直し(文化財として保存するのか・・・?)

今頃と思うのですが、やっと私事の小さな希望が
どのような形で決着がつくか楽しみです。

経済性と文化は相反するとは思いつつ、判断を下す
勇気は誰がするのだろう。

時の人、雇われ社長の決断が数十年先を決めてしまう
恐ろしさはたまったものではない。
| mory's | 2009/03/13 11:41 AM |

午後のニュースで東京中央郵便局の見直し案は
ほぼ決まり、919億円プラス50億円ですよ。

大臣の一声が50億円の追加・・・これで解決
だろうか・・・!
| mory's | 2009/03/13 2:46 PM |
mory's、日本の状況はネットで読むだけなので、詳しくは分からないのですが、日本もそろそろ都市の戦略を持って、長期的プランに基ついて計画を立てたほうが良いのでは?と真剣に思いますね。
| cruasan | 2009/03/15 6:54 AM |
日本では、都市戦略プランはむりだね。
やっぱ、土壌が成熟していないし、
文化もないから。アジアの一都市になる
運命でしょう。東京オリンピックを契機に、
エコを表向きに、と期待したいが、
むりでしょう。残念ですが。
| プルーデンス | 2009/03/15 7:41 AM |
>ブルーデンス様、

日本は土建国家だから(?)道路や河川の
治安・治水にけたはずれの税金を使うが、
歴史的に残る(?)気持ちや哲学のある
建築・都市計画には場当たりの思い付きで
進められているのだろう。

大阪は御堂筋くらいがましなほうだろう。

東京中心はいいのだけど、オリンピックは
リオ、マドリッド、シカゴと比べて、安全
都市としての位置付けで決まるのかも(?)
| mory's | 2009/03/15 9:47 AM |
たぶんですが、日本とヨーロッパの都市の骨格といいますか、都市の形成のプロセスが全く異なっている点、又、悪い意味で、日本が徳川幕府以降、最上級お江戸以下、同文の状況が現代まで続く流れだと思います。そんな同時代に、ヨーロッパにおいては、数々の領土分捕り合戦と都市の発展の競争が繰り広げられ、それは現代まで、脈々と続いています。また、EUの統合で起こってくるのは、都市の均一化でしょう。それを避けるには、必然的に、戦略的な都市戦略をおのずと考えなくてならない要因だとおもいます。いかに経済活動を呼び込めるか、いかにその素晴らしさを伝えるのか。いかに、貧しい人でも(ブルワーカー)暮らしていける事を戦略として考えていますよね。しかしながら、日本は今でも鎖国状態ですし。

オリンピックの件ですが、いがいとシカゴかも、だって、アメリカに明るい話題がないじゃないですか。こういう時って政治力が物を言う気がするんですよね。そうなると、日本は次点じゃないですか?そんな気がするんですが。
| mory's様 | 2009/03/15 3:42 PM |
すみません、上の文、MORY'S様へでした。
| プルーデンス | 2009/03/15 3:43 PM |
ここのブログのコメントは盛り上がっていていいですね。
海外から日本を見ていると今の状況は本当に心配になってきてしまいます。
なぜ、中央郵便局の保存の話も政治のネタに使われてしまうだけなのでしょう?マスコミはなぜ建築保存の専門家に意見を聞かないのでしょうか?少なくとも日本近代建築史の研究者はもっと声を上げてしかるべきです。藤森さんにその建築保存の重要性をマスコミに訴える良い機会だと少しは期待していたのですが残念です。
結局保存部分を20%から倍の40%として(それでも半分以上破壊している!)それで重要文化財にするという政治的茶番決着となってしまった。それに対して何も言えない建築保存の専門家とは何なのかという憤りを覚えています。
もっと日本の近代建築史家はしっかりしてほしいと言いたい。

そう、うちのイギリスの大学で建築を学んでいる息子が、フォスターは、Sirのナイトの称号よりも偉い爵位の称号Lordになったと言っていました。
ロジャースは今のところSirだそうです。
| ユーイチ | 2009/03/16 7:40 AM |
確か去年だったかに、東大の学長候補に鈴木博之さんが最終選考まで残っていたと聞きました。もしそこで通れば、今の建築保存の日本の状況も少しは違っていたのかも知れません。

オリンピックの件ですが、そうですねー、言われてみればシカゴが取っていくような気がしないでもないかなー。実はバルセロナで時々一緒に仕事をしている教授が、東京誘致の委員だかなんかをやっていて、良く日本の状況について聞かれます。面白いのは、マドリッドも立候補してるんだから、スペイン人としてそっちに手を貸せばいいと思うんだけど、それはやはりカタラン人としては許しがたいらしい(笑)。

ユーイチさん

そうなんですか!フォスターはどんどん偉くなっていくのですね。確かスペイン人の綺麗な奥さんまでいて、うらやましいったらありゃしない!
| cruasan | 2009/03/17 6:43 AM |
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