地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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リチャード・ロジャース展覧会(Richard Rogers + Arquitectes: De la casa a la ciudad)
先週からバルセロナ、スペイン広場(Plaza Espana)にあるカイシャ・フォーラム(Caixa Forum)にて「リチャード・ロジャース+建築家達:住宅から都市まで」と題した展覧会が開催されています。

先週木曜日の展覧会オープニングに合わせてリチャード・ロジャース氏が講演会を行ったのですが、あいにく仕事の関係で開演の18:00には間に合わず、ちょっと遅れて到着してしまいました。何時もなら問題無く会場に入る事が出来るのですが、なんとその日は立ち見が出る程の超満員。それでも入り切らなくて美術館の至る所で立ち話をする人などを多く見かける程だったんですね。遅れて到着した僕は当然入る事が出来ず・・・その後に予定されていた展覧会のオープニング・パーティーには2時間もあったので、仕方無く、泣く泣く帰るという結果になりました。(なんかさっき「バルセロナ建築漫遊記」みたら、マラガル前市長(Pasqual Maragall)もオープニングに駆けつけたようですね。やっぱり行きたかったなー。)

と言う訳で、日曜日は敗者復活戦をしてきました。



先ず、何故この時期にリチャード・ロジャースなのか?という所から始めた方が良いと思うのですが、実は彼は今、バルセロナが抱えている目玉プロジェクトの内の一つ、闘牛場改修計画を実行中だからというのが大きな理由かと思われます。





この計画の大枠としては、レンガとタイルで出来た闘牛場のファサードだけを残して、中はショッピングセンターや娯楽施設に変えるというもの。(詳しくは「バルセロナ漫遊記」さんがレポートされていますのでコチラ:バルセロナのアミーゴ R.ロジャーズの建築展





この計画には僕も早い時期から注目してて、ちょくちょく現場を見に行ったりしていたのですが、近年のR.ロジャース作品の中ではダントツに良くなる気配十分ですね。まあ、膨大な時間とお金をかけてファサードを残すくらいなので、気合の入れ方が違うのでしょうが。

さて、リチャード・ロジャースと言えば建築だけではなく、近年ではサステイナブルシティの支持者の急先鋒としても大変に知られる所となりましたよね。そのロジャースが深く関わっている都市が、実はバルセロナなんです。1999年に出版された「アーバン・ルネッサンスへ向けて(Towards an urban renaissance)」の序論で彼はこんな事を述べています:

「都市デザインと都市戦略の質という点において、我々(ロンドン)は多分、アムステルダムやバルセロナに20年は遅れている」。

" in the quality of our urban design and strategic planning, we are probably 20 years behind places like Amsterdam and Barcelona" ("Introduction", in Towards an urban renaissance, Great britain urban task force (ed.), London, E&FN Spon)


更に同じ序論に、当時のバルセロナ市長だったマラガルも招待されるという絶賛振り。ちなみにマラガルはこの小文の中で、バルセロナの成功の秘密を「ローカル・ガバメントの重要性 」、「コンセンサスの構築」、そして「市当局と建築学校の幸せな結婚を通した公共空間のデザインの質("the happy marriage between city hall and the school of architecture)」を挙げています。("Foreward", in Towards an Urban Renaissance, p.5-6, London, E&FN Spon)

それよりも僕にとって面白いのは、この序文の中でロジャースがバルセロナとマンチェスター(Manchester)の都市再生事例を比較している事です。勿論、前者〔バルセロナ)が成功の事例として、後者(マンチェスター)が失敗の事例として引用されているのですが。

マンチェスターというのは、良く知られているように19世紀の終わり頃にかけて産業革命を通して急激な発展を遂げた都市の代表格、いわゆる、その時代の都市モデルでした。スペインで唯一産業革命を成し遂げたバルセロナはスペインのマンチェスターと言われていた程です。

しかしそれから約一世紀後の今日、その立場は逆転したように思われます。つまり、産業革命時にはバルセロナにとっての都市モデルだったマンチェスターが、ポスト産業時代の今日では、バルセロナがマンチェスターの都市モデルになりつつあるという逆転現象が起こっている。

さて、話を戻したいと思うのですが、今回の展覧会ではロジャース初期の小さな住宅から、街を丸ごと1つデザインしてしまうスケールのものまでナカナカ見応えのある内容になっています。

まあ、色々と語りたい事はあるのですが、僕はやはり彼のデザイン力に注目したい。ロンドンのロイズ・オブ・ロンドン(Lloyd´s of London)やパリのポンピドゥー(Centre Pompidou)の例などを出して以前のエントリにも書いたのですが、ロジャースの、あの一見、超派手な建築パフォーマンスは、実はものすごく緻密な彼のデザイン力に支えられていると思うんですね。(ロンドン旅行その5:Richard Rogers(リチャード・ロジャース)の建築:Lloyd´s of London:地中海ブログ)

逆にそのデザインという部分において、誰にも負けないという自信があるからこそ、あのような派手な事が出来るのでしょうね。そういう基本的な所無しに、派手さだけで売っているのならば、それはもうピエロとなんら変わらないのですから。

多分、僕達はこういう所をこそ見ないといけない。表面を覆いつくしている派手な形態の下に潜んでいる途方も無いデザインセンス。

間違えちゃいけないんだけど、これは「ディテール」とは違う問題です。そうじゃなくて「デザインセンス」という問題なんですね。つまり何を良いと思うかという感性の問題。こればっかりはどんなに優秀な先生でも教える事は出来ません。長い年月をかけて自分の中で醸成させるしかない。その為には出来るだけ良いものを沢山見る事だと思います。そして自分で発見する事。

日々鍛錬ですね。
| 建築 | 19:38 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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