地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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スペイン高速鉄道(Alta Velocidad Espanola:AVE)バルセロナ−マドリッド間開通一周年記念
2月20日はバルセロナーマドリッド間のスペイン高速鉄道開通一周年記念日でした。当ブログでは僕の実体験を含めて、何度かAVEについてはレポートしています。(スペイン高速鉄道(Alta Velocidad Espanola:AVE)に見る社会変化の兆し:地中海ブログ、マドリッド旅行その1:高速鉄道(Alta Velocidad Espanola:AVE)に乗ってきました:地中海ブログ)

と言うのも、鉄道インフラって僕達の生活に無くてはならない生活の基礎だと思のですが、バルセロナーマドリッド間の高速鉄道は、その革新性から両都市に住む人々の生活スタイルを変えたと言っても過言ではないと思うからなんですね。更に別の視点から見ると、各都市間を結ぶ交通手段というのは、そのネットワークとスピード、許容量がそのまま経済活動に直結するので、都市にとっては鉄道インフラは権力そのものという側面もあります。

例えば、欧州最大の取扱量を誇るロッテルダムの港(Haven van Rotterdam)とヨーロッパ北方のハブ空港であるスキポール空港(Schiphol Airport)を要するアムステルダムが高速鉄道で結ばれたランドスタット(Randstad)があんなに発展したのは何も偶然ではありません。又、地中海で最大規模の港を持つバルセロナにハブ空港建設計画が持ち上がった時、誰よりも声高に反対したのはマドリッドでした。更にそれらが高速鉄道で結ばれるなんて、マドリッドにとっては悪夢もいいところ。と言う事で、バルセロナのAVE開通にナカナカ首を縦に振らなかった訳です。(詳しくはコチラ:高速鉄道敷設に見る都市戦略:地中海ブログ)

その結果どうなったかというと、マドリッドーセビリア(Sevilla)間という訳の分からない路線が15年も前に開通しちゃったり、マドリッドーサラゴサ(Zaragoza)ーリェイダ(Lleida)間(2004年)とか、マドリッドーセビリア(Sevilla)ーマラガ(Malaga)間、マドリッドーセゴビア(Segovia)ーバリャドリッド(Valladolid)間がとっくの昔に開通するという、とても不思議な現象が起こる訳です。

ちなみにマドリッドーバルセロナ間が開通した去年の2月20日は、バルセロナでは誰もがそのニュースを知ってるお祭り状態だったんだけど、マドリッドでは「あ、そうなの、ヘェー」みたいな、まるで無関心だったらしい。一年前の新聞にはこんな見出しの記事が掲載されていました:

「無関心のマドリッド」
” Madrid, indiferente”, La Vanguardia, 20 de Febrero 2008


普段、カタラン人に何か言われるとすごく悔しくなる毎日だけど、マドリッドに馬鹿にされるともっと腹が立ってしまう僕は、実は何時の間にかカタラン人に洗脳されてしまっているのでしょうか・・・(苦笑)。

さて、昨日の記事(La Vanguardia, 21 de Febrero 2009)によると、AVEは開通1年で、それまでバルセロナーマドリッド間を独占していた飛行機のマーケットを約半分(48.2%)ももぎ取ってしまったという事です。

もうちょっと詳しく見ると、去年の3月の時点では飛行機が348.482人を運んだのに対して、AVEは163.821人となっています。これを飛行機対AVE比で見ると、68%対32%となります。6月にはコノ数字が59%対41%(316.199人対217.194人)となり、8月には57%対43%(168.491人対125.980人)、10月には53.5%対46.5%(290.657人対253.451人)となっています。そして開通一年後の現在では、51.8%対48.2%(202.942人対188.839人)とほぼ飛行機を飲み込みそうな勢いです。

又、2007-2008年の年間利用者が762.981人だったのに対して、2008-2009年の年間利用者は2.337.913人。なんと一年で206,4%増という驚くべき数字を叩き出しています。これに対して飛行機の方は4.852.272人(2007-2008年)から3.465.524人(2008-2009年)に激減(マイナス28.6%)。

この異常なAVE人気の秘密は、何と言っても時間の正確さだと言われています。この一年で定刻通りに着かなかったのは159ケースのみ。これは全体の0.82%を占めるに過ぎないのだそうです。ちなみに鉄道会社は15分遅れた場合は半額を、30分以上遅れた場合は全額返金を一つの売りにしてAVEの運行を始めました。これを最初に聞いた時、「おー、とにかくすごい自信だな。後で泣くなよ」とか思ったんですが、きっちり結果を見せてくれました。

この結果に気を良くしたマドリッドの勧業省(Ministerio de Fomento)のマグダレナ・アルバレス大臣(Magdalena Alvarez, la ministra de Fomento)、バルセロナの近郊鉄道網の改良と発展に40億ユーロ(1ユーロ120円として5800億円)を2015年までに注入する事を発表しました。この投資によって、現在の路線が25km伸び、9つの新しい駅が作られ、現状よりも更に8万人をカバーする事が出来るようになるそうです。

でもコノ話にはオチが付いてて、実は去年11月28日に承認された予算案によると、マドリッドの近郊鉄道網の改良と発展にはバルセロナよりも10億ユーロ多い、50億ユーロが投資されるらしい。やっぱなー、こんな事だろうと思ったよ。
| 都市戦略 | 15:29 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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