地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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サン・カルリーノ・アッレ・クアットロ・フォンターネ教会(San Carlino alle Quattro Fontane)から学ぶ歴史の重み:現地へ行ってみて初めて分かる事は山程ある
書こう書こうと思っていながら、今までナカナカ書けずにいたのが、バロック建築の傑作、サン・カルリーノ・アッレ・クアットロ・フォンターネ教会(San Carlino alle Quattro Fontane)についてです。

この建築は言わずと知れたバロックの三大巨匠の一人、ボッロミーニ(Francesco Borromini)によって計画されました。彼の代表作であり、建築関連の書籍には勿論、一般のガイドブックなどにも必ずといってよいほど登場する、バロック建築の代表作です。何と言っても特徴的なのが、その独特のファサード:



その辺の事については以前のエントリで書いたので、そこから引用します:

2層に重ねられた壁面が波打ち、波打たれる事によって、あたかも人をその空間に招いたり拒否したりしているかのようです。更にもっと興味深いのは、建築単体のファサードのデザインが街の空間にも影響を与えている事なんですね。この建築の目の前の空間は、あたかもその波動に伴って波打っているかの様です。バロック都市を歩く喜び:地中海ブログ)

そしてこれに劣らず感動的なのが内部空間です:



特に天井のデザインは驚きの一言。上に行くに従って、8角形と十字架の模様に遠近が付いているので、ものすごい上昇感が生まれています。

この天井のデザインがこの建築の一番のハイライトである事に間違い無いと思うのですが、面白いのはドラマチック性を高めようと、ガイドブックの写真などがかなり加工されている事です。コレを見てください:



この写真は「地球の歩き方07-08のローマ、p127」から取った写真なのですが、こんな風には絶対に見えません(笑)。ちなみに僕は午前、午後、各3時間ずつ、2日程粘りましたが、こんなドラマチックに見える時間帯には遭遇しませんでした。こんな風になる気配すら無かった。運良く、この教会堂の売店で働いているおじいさんと話をする事が出来たのですが、コレは明らかに「イメージの捏造」であって、現実では無いとおっしゃっていました。

まあ、別に建築家にとって「イメージの捏造」なんてのは日常茶飯事なので、取り立てて驚くべき事では無いのですが。ちなみにコルビジェ(Le Corbusier)の写真修正を通してのイメージ構築を暴いたビアトリス・コロミーナ(Beatriz Colomina)はバルセロナのカタルーニャ工科大学(Universidad Politecnica de Catalunya)に学んでいます。イグナシ(Ignasi de Sola Morales)がその後、テラン・ヴァーグ(Terrain Vague)など、都市の表象としての写真に興味を持っていったのは、実はコロミーナとの対話が始まりだったのではないのか?とか、かなり勝手な想像をしています。

あー、又話がズレてしまった。

さて、ファサードや内部空間の素晴らしさも去る事ながら、僕がこの建築で一番感動したのが、実はココ:



教会堂入り口に至る階段部分です。この教会は道路に面している為、教会堂入り口へは大理石で出来た3段の階段がしつらえられているんですね。この階段がすごいんです!





分かるかなー?階段の平面が窪んでるんですよ!まるで、ファサードが波打つように、階段も波打ってる(笑)。

何故、階段がこんなにも波打ってるかというと、明らかに訪れた人の重みで凹んだと思われるんですね。しかし、硬い大理石で出来た階段がこんな、波打つまでに変形するには、長い年月と、それこそ何億回、何十億回と踏み込まなければこうはならないと思います。

これは、これだけコノ建築が人々を呼び集めたという紛れも無い証拠だと思うんですね。

以前のエントリ、(ローマ(Roma)旅行2008その3:サン・ピエトロ大聖堂(Basilica di San Pietro)その2:ベルニーニ(Gian Lorenzo Bernini)の柱のツギハギに見るヴァチカンの真の力)で、「柱のツギハギに見るカトリック信仰の底力」みたいな事を書いたけど、今回のこの階段の歪みも正に人々の思いの強さが生み出した結果だと思います。

僕はこういう所にとても感動してしまいます。人間が創り出したもの(建築など)にも感動するけど、それをその後、人がどう使ったか?使用した痕跡が何処にどう見えるか?などにも、ものすごく興味をそそられてしまうんですね。こういう事は先ず本(専門書を含めて)には載っていません。現地へ実際に足を運んで、自分の目や耳で見たり聴いたりして初めて分かる事です。

何度でも言いますが、こういう生身の体験とその蓄積こそ、グーグルにだって絶対に検索出来ない情報な訳です。そして近い将来、そういう情報が途方も無い価値をもたらす日がきっとやってくると思います。そして、それはきっと僕自身のためだけではなく、日本の将来にとっても役に立つと信じています。だから僕は今、どんなにお金と時間がかかってもヨーロッパの都市を自分の足と目で渡り歩く事を続けようと思っています。
| - | 01:32 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
中に入れて素晴らしいバロックのドームが見ることができ良かったですね。

12年前にイタリア旅行に行きましたが、実はボロミーニのこの教会を一番見たかったのです。でも教会の入口が閉まっていて、出てきた神父を捉まえ、スペイン語で中を見せて欲しいと頼みましたがかないませんでした。それでも、クラウストロにだけは入ることができ、写真では味わえないその素晴らしい空間に感動しました。
コピー、キッチュではなく本物を見ることはそれだけでも価値があることだと思います。人間の五感に訴える情報量が違うのでしょうか。

おしゃべりではなく、物が語るのは説得力がありますね。
このような今の時代では大変なことですが、そのような建築を創って行きたいと思っています。
| ユーイチ | 2009/02/07 8:10 PM |
ユーイチさん、コメントどうもありがとうございます。
ローマの建築には本当に沢山感動させてもらいました。建築って、その場に行かないと分からない事が本当に多くて、僕は時間とお金の許す限り現地へ行って自分の目で見る事にしています。

今なんて、どんな情報でも手に入るので、有名建築は大抵行く前に頭の中にイメージが出来上がっていて、実は写真の方が綺麗だったなんて事が結構あります。しかし本当に素晴らしい建築って、写真には写らない質があるんですよね。僕が旅を続けているのは、そんな体験や感動をしたいからなのかも知れません。

僕も元々建築家で、一本の線で勝負する建築家になろうと思っていましたが、ひょんな事から都市計画の方へ近付いていってしまいました。又チャンスがあれば、建築の方へ戻って行きたいなー、とか思っていますが、もうちょっと先の事になりそうな予感がします。

今の時代、モノを創り続けるのは大変なご苦労が多いかと思われますが、是非がんばってください。影ながら応援しています!
| cruasan | 2009/02/08 6:52 AM |
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