地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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世界の観光動向とカタルーニャの観光動向2008
昨日の新聞(El Pais, 1 de Febrero de 2009)に世界の観光動向(El turismo tira los precios,negocios p89)とカタルーニャの観光動向(La caida turistica pasa factura a los museos catalanes, p5)が載っていました。別々の記事だったのですが、「一緒に見ると面白いなー」とか思ったのでココにデータを並べて見る事にします。

個人的に観光の強大な力は使い方次第で良くも(景観、建築保存など)悪くも(ジェントリフィケーションなど)なると思っているので、コノ手の情報には以前から注目していたんですね。というか、今、ヨーロッパ都市の中心市街地で起こっているほとんどの出来事は、何らかの形で観光に関連していると言っても過言では無いと思います。一見、何の関係も無いような風景だって、よくよく読みこんでみれば、実はその裏には観光の影がチラホラしていた、何てことはザラです。(フランクフルト旅行その2:未来都市としての広告都市:地中海ブログ)

世界観光機関(World Tourism Organization)によると、2008年に全世界で観光を楽しんだ人の数は前年比2%の増加で9億人(924,000,000人)だったそうです。9億って、途方も無い数で想像も付きませんが、これは全世界のGDPの10%前後に当たるそうです。

しかしながら、こんな昇り龍の如くの観光産業にも近年の経済危機の陰りが見えてきたというのが、今日の記事のテーマ。今年は昨年まで右肩上がりだった成長率がマイナスに転じる予想がなされています。世界平均ではマイナス2%−3%(減少)。地区別に見ると、ヨーロッパがマイナス3%(減少)、アジアが0−3%(増加)、アメリカがマイナス1−2%(減少)、アフリカが1−4%(増加)、近東が2−6%(増加)と予想されているんですね。

そんな中でも、観光業がGDPの11%を占めるスペインに限って見てみると、事態はかなり深刻である事が分かります。

スペインを訪れる観光客は50%が国外から、残りの50%が国内からの訪問者という割合を取っています。2008年に国外からスペインを訪れた観光客は前年比で2,6%減少したそうです。しかしこれはたいした事じゃありません。世界平均となんら変わらないし。問題はですね、国内からの観光客、つまりスペイン人観光客の動向です。2008年にスペインの各都市を訪れたスペイン人旅行者に限ってみると、前年比10%減と言う事が明らかになりました。

これはまずい!何故か?

スペイン人というのは夏などに1ヶ月の長期休暇を取って、海や山などに家族ぐるみで繰り出します。しかも毎年決まった所に行く、もしくはセカンドハウスを持っていて、夏の間そこで過ごすというのが伝統だったりします。だからスペイン各地で観光業を営んでいるような村などは、こういう、いわば固定客からの収入を期待している所が大きいわけです。今回のデータが示しているのは、このような固定客を大幅に失った事を指し示しているんですね。

さて、我がカタルーニャはどうか?というと、観光業がGDPの14%を占めている(バルセロナ)事から、この産業の影響力はスペインの諸都市よりも大きいと言えそうです。カタルーニャでは昨年の観光客数は6,7%の減少で1400万人(14,200,000人)でした。それでもスペインではNo1の地位を保っているのはさすがと言えばさすが、か。

ホテルの宿泊者数で見ると、バルセロナ市は2008年を通して500万人(5,200,000人)を受け入れましたが、コノ数字は前年比で4,9%減少だという事です。同じく昨年の市内ホテルの占有率は、例えば去年の12月で43%、前年比で11,2%減少です。この数字は低いなー。

面白いのは美術館別の入場者数データです。

2008年の美術館入場者数トップは前年と変わらずサグラダ・ファミリア(Sagrada Famila)。圧倒的に強くて、入場者数は270万人(2,731,690人)。しかしながら、この数字は前年比で3,7% の減少だそうです。2位のピカソ美術館(Museo Picasso)の入場者数が130万人(1,313,086人(約半分))である事を考えると、如何にサグラダ・ファミリアが強いかが分かると思います。

この第二位につけたピカソ美術館なのですが、驚くべき事に14,6% の増加を示しています。一昨年に館長の任命を巡り、スペインの大物政治家との間に疑惑があっただけに、美術館側としてはコノ数字はうれしいんじゃないかな(祝)。

3位にはフィゲラス(Figueres)にあるダリ美術館(Museo dali de Figueres)がランクインしました。バルセロナから電車で3時間とかなり不便な立地にも関わらず、他を押しのけての上位ランクインはダリの人気振りを思わせます。僕も何度か足を運んだ事があるのですが、僕のお薦めは隣接の宝石美術館ですね(ダリ宝石美術館(Teatro-Museo Dalí: Dali Jewels):地中海ブログ)。ちなみにダリ美術館すらも前年比2,1% 減(1,274,554)だそうです。

ミロ美術館(Fundacion Joan Miro)、カサミラ(La Pedrera)カタルーニャ美術館(MNAC)もそれぞれ、3,7%, 5,6%, 8,6% 減を示しています。

そんな中、検討しているのが銀行系の美術館であるカイシャフォーラム(Caixa Forum)とコスモカイシャ(Cosmo Caixa)ですね。10,8%, 15,2% 増加だそうです。そしてバルセロナ現代美術館(MACBA)とカサ・バッリョ(Casa Batllo)もそれぞれ20%, 19,6% という大幅なアップを示しています。

観光が今世紀の巨大産業であり、都市の収入源における大きな割合を占める事には変わりが無いのですが、「黙っていても観光客が来てくれる時代」は終わったような気がします。これからは各都市がどんな戦略を練り、如何に遺産を活用していくか、つまり、観光の最適化、ロジスティックが要求される時代に突入したと言えそうです。
| バルセロナ都市 | 18:32 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
いつも楽しく読ませていただいています。

日本も国土交通省内に観光庁ができたのだから、今こそバルセロナを見習い、円高不況に負けない世界から観光客の呼べる創造的文化都市を計画する時ですね。
オリンピック開催都市を目指している東京は、これを期に観光都市も同時に考えれば、少しは無駄に税金を使わないで済むと思いますがどうでしょう?
| ユーイチ | 2009/02/04 1:51 AM |
ユーイチさん、コメントありがとうございます。

全く同感です。日本なんて観光客を呼べる資源に溢れているのだから、それこそ後はヤル気だけだと思うんですよね。超現代的な風景に加えて、伝統的な風景も残しているし、最近流行の「食観光」に関して言えば、ジャンクフードの質で日本に太刀打ち出来る国は先ず無いと思います。だから、後はこれらの資源をどう活用し、どういう戦略を展開していくかだけだと思うのですが・・・。

その点、バルセロナはヤル気に満ち溢れていますよね。時には空回りしてる事もあるけど(笑)。都市の売り方(都市マーケティング)や、開発した際の弊害とか見てると、「ちょっとやりすぎじゃないの?」とか、思う事もしばしばですが、それでも日本が学ぶ事はマダマダ山程在ると思います。

僕も今自分がやっている事、学んでいる事が将来的に日本の再活性化に生かせれば、生かさねばと日々思って生きています。
| cruasan | 2009/02/04 6:41 AM |
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