地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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彫刻と建築と:忘れられないワンシーンを巡る2つの表象行為:ベルニーニ(Bernini)の彫刻とローマという都市を見ていて
ベルニーニの素晴らしい彫刻を見ていて、「彫刻って何なんだろう?」という大変素朴なんだけど、簡単には答えが見つかりそうもない問題をずーっと考えていました。ローマ滞在中は勿論、帰りの飛行機の中、タクシーの中、仕事の合間、寝る前、そして今このエントリを書きながら。。。

今から、毎度の事ながら僕の独断と偏見で勝手な事を書こうと思っています(笑)。



彫刻の素晴らしさ、それは一瞬を凍結する事だと思います。何らかの物語の一コマ、その一コマをあたかもカメラで「パシャ」っと撮ったかのように凍結させる事、それが出来るのが彫刻です。建築家の言葉で言うと、「忘れられないワンシーン」を創り出す事ですね。



では何故、彫刻にこんな事が可能なのか...?



それはズバリ、彫刻は動かないからです。「そんなの当たり前だろ、ボケ!」という声が聞こえてきそうですが(笑)、これが結構重要だと思うんですよね。彫刻は時間と空間において動きません。だから僕達の方が彫刻の周りを回って作品を鑑賞しなければならないんですね。そしてもっと当たり前且つ重要な事に、彫刻は一度彫られた表情を変えないという特徴があります。だからこそ、彫刻の最大の目標は「動く事」にあると思います。



ベルニーニはこの問いに、「ドラマチックな一瞬を凍結させる事により、その瞬間から、まるでその前後の物語が走馬灯のように心の中を駆け巡る」という方法で答えました。例えばコレ:



サン・フランチェスコ・ア・リーバ教会(San Francesco a Ripa)にあるルドヴィーカ・アルベルトーニ(Beata Ludovica Albertoni)の彫刻です。以前のエントリでも詳しく書いたのですが、この彫刻を見ていると、「彼女は何故苦しんでいるのか?」、「神との一体化を喜んでいるのか?」など、彫刻されたコノ場面を中心に、それら前後の物語が頭の中に流れ込んでくるかの様です。

建築家である僕は(一応建築家です(笑))、ココである事に気が付きます。「これって建築、もしくは都市を創造するプロセスとは全く逆じゃん」という事です。どういう事か?



僕達が建築を計画する時、一体何を考えてデザインしていくかというと、空間の中を歩いていく、その中において「忘れられないワンシーン」を創り出していく事を考えると思います。

何故か?

何故なら建築とは空間の中を歩き回り、その中で空間を体験させる事が可能な表象行為だからです。だから建築や都市には幾つものシーン(場面)を登場させる事が出来ます。そう、幾つものシーンを登場させる事が出来るからこそ、我々は、「忘れられないワンシーン」を創り出そうと試みるわけなんですね。そして実際、僕達が旅行先から帰った時、もしくはホテルのベットに横になった時、ふとその日見た街中のワンシーンが連続写真の如く、心の中をよぎっていく事だろうと思います。

このように彫刻と建築は、その作品の体験プロセスにおいて全く逆の過程を経ます。

彫刻は「ある一瞬」から心の中に前後の物語を紡ぎ出す事を、建築は様々な場面から心に残る一場面を心に刻み付ける事を。しかしながら、それら、彫刻や建築を創り出す人が目指すべき地点は同じです。それは「忘れられないワンシーン」を創り出す事です。

ローマという都市のイメージが僕達の心に深く残るのは、実はこのような2つの表象が様々に織り交ざっているからなのではないでしょうか?街を歩いていくと、パッ、パッっと切り替わる風景に遭遇し、その先には劇的な空間が待っている。そこにおいて僕達は街を歩いている最中のリアルな場面を見つつ、「忘れられないワンシーン」を心に刻み付けます。逆に街の至る所にある彫刻を見るに付けては、その一瞬(リアル)から様々な場面(フィクション)を頭の中で連想します。

そんなリアルとフィクション、(そしてどれがリアルでどれがフィクションだか分からなくなる事をも含めて)、それらが織り交ざる事によって、僕達はローマという街のイメージ、ひいては永遠の都、ローマを心の中に刻み付けるのです。

ベルニーニの時代の教皇であったウルバヌス8世(Urbanus V)はベルニーニにこう言ったと伝えられています。

「お前はローマの為に生まれ、ローマはお前の為にある」


一瞬の中に永遠を見たベルニーニ。ローマという街がベルニーニを必要とし、正にその事によって永遠になったというのは、この街を訪れた人が誰しも感じる所だと思います。ベルニーニ、最高です。
| 旅行記:建築 | 22:56 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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