地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ベルニーニ(Bernini)の彫刻その3:サンタンドレア・アル・クィリナーレ教会(Sant'Andrea al Quirinale):彫刻と建築の見事なアンサンブル
ベルニーニ(Bernini)が自身で代表作と認めているサンタンドレア・アル・クィリナーレ教会(Sant'Andrea al Quirinale)へ行ってきました。この教会はボッロミーニ(Francesco Borromini)によるバロック建築の傑作、サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォターネ教会(San Carlo alle Quattro Fontane)から歩いて5分の所に建っています。



先ず入り口をくぐって驚くのがその平面ですね。



この教会、奥行きよりも横幅の方が長い楕円形をしています。コレは珍しい!教会っていうのは「四角い」っていう思い込み、そして横幅よりも奥行きの方が長いという刷り込みがあったので・・・。

それと同時に我々の視線を釘付けにするのが真正面に掲げられている聖アンドレアの像です。





楕円ドームのあちこちにいる天使達に祝福されるかの様に、天に向かって両手を広げています。まるで天に昇って行っているかのようですね。





天使って読んで字のごとく「天の使い」なんですね。多分、死んじゃった人を天国に導く役割を与えられてるっぽい。亡くなった人の体から魂を抜いて天国へ連れて行く場面は良く見かけます。フランダースの犬の最終回でネロが死んじゃう場面なんて正にそのイメージ通り。



(ちなみにネロが、死ぬ程見たかったというルーベンス(Rubens)の「キリストの昇架(The raising of the Cross)」と「キリストの降架(The descent from the Cross)」はアントワープの聖母大聖堂(Antwerp Cathedral, Belgium)にあるそうです。今年の春先辺り、暇を見つけて是非行ってみたいですね。)

そうか、そうするとこの教会で視覚化されているのは、正に今、天国へと上がって行っている場面な訳だ!で、天井に空いている、あの穴は霊体だけが通る事の出来る、空とかに開くっぽい、天国への入り口って訳か!



ほら、現に何人かの天使は既に天国への入り口を上がってるし。「早くおいでよー」みたいな。なるほどー!



建築の表現としては、ドーム部分を比較的暗くしておいて、ドームの上に黄色系のステンドグラスで目一杯明かりを取り、天国を「光溢れる場」のように表現しているのは大変巧いですね。しかも良く見ると、ドーム部分の始まる地点が下の壁との連続で垂直になっている:





普通なら地上界と天上界を区別するエンタブラチェアの直ぐ上にドームを直接載せれば良いようなものなのに、ベルニーニはわざと窓と共に垂直部分を残している。空間的にはこうする事で教会の垂直性が劇的に増し、上に載せられたドームと共によりドラマチックな風景を醸し出していますね。

さて、見るべきはココ。



主祭壇の上部、天国への入り口部分です。狭い天国の入り口に向かって沢山の天使達が我先にと昇って行っています。一目で分かる事なのですが、ココの彫刻は他のどの部分よりも細かい彫刻が施されています。



細かいというよりは、むしろ過剰とも言えるくらいの密度です。何故か?それは天井から降り注ぐ光の粒子を視覚化する為なんですね。

ローマ滞在中に死ぬ程美術館を訪れて、死ぬ程絵画を見たけど、みんな何を描いているか?というと、キリストの姿であったり、大天使ミカエルが聖母マリアにお告げを告げる場面であったりと、「見えないモノを可視化」しようとしているんですね。でも、そういうのって、「キリスト」だとか「天使」だとか、擬人化出来る対象だったら、さほど困難じゃ無い事は想像出来ます。しかしですね、これが抽象的な「光」となると話は全く別。どうやって表象するんだ?ってかなり悩んだはずです。しかも現実空間において今、目の前に見える光を可視化しろなんて、無茶苦茶高度な問題な訳です。

ベルニーニなどの彫刻家はその答えに「彫刻の表面を細かく彫りこむ事で、そこに反射する光の強弱によって「見えない光」を視覚化しようと考えたんだと思います。

それがココ:



ほら、上からの光が下に来るに従って段々と弱くなっていくのがはっきりと分かると思います。だからココに(教会の主祭壇に)、「これでもか!」というぐらいの細かい彫刻があるのは何も偶然じゃあ無いんですね。

このようにして、この教会では彫刻と建築が一体となって一つの物語を創り出しています。聖書が読めない昔の人って、こういう視覚化された情報からキリストへの畏敬の念を深めていったんですね、多分。こんな素晴らしい空間なら、説得力ある事間違いなし。しかもこんな荘厳な空間で聖歌とか歌われた日には、もうそれだけで信者になっちゃいそうな、そんな素敵な空間でした。
| 旅行記:建築 | 17:00 | comments(3) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
この前は幣ブログにコメント、有難うございます。
ローマに3年前に行ったときに、この教会も訪れたのですが、天井の穴とかアーチにそんな解釈があるんだとは思いもせず、勉強になりました。
今回、カリフォルニアを旅行している時も、スペインから来たミッションがたくさんあり(カリフォルニア・ミッションとかいって有名らしいです。)それぞれの建築様式とかあいている穴などにも意味があるらしいんですが、どういう意味なのかはよく分からなかったです。

以前、日本舞踊をやっている友人に、舞踊の動き一つ一つには全て意味があるんだよ、と教えられて、世界観が変わったことがあります。
それに近いものを感じましたね。

今度行く時は、この記事を思い出しながら、もうすこしゆっくり観察してみようかな、と思いました。


| Lilac | 2009/01/17 4:53 AM |
Lilacさん、こんにちは。
ローマ行かれたんですか?最高ですよね、あの街。歩いてて面白いし、買い物してても面白い。更に食べ物も美味しいときて、正に一大エンターテイメントシティですね。ヨーロッパの都市って生き残る為には、将来的に確実に観光に依存していかなければいけないので、ディズニーランド化するしか道は無いのですが、そういう意味で言うとローマは僕達に「都市の未来の片鱗」を見せてくれるような気がしました。

スペインって「無敵艦隊」とか「日の沈まない国」とか、さすがにスペイン帝国時代に世界を支配していただけの事はあって、世界中に影響力があった跡を見る事が出来ます。ブログに掲載されていた写真を見させて頂きましたが、ヨーロッパの様式が土着様式と混じり合って、変形様式を作り出している辺り、とっても興味深いです!

建築って、中に人が住むっていう機能と同時に、「時代や社会を表象する」っていう機能も持っている芸術なので、楽しんで見る事が出来ます。そんな眼を持って、訪れた街などで気軽に街角などを観察していると、ちょっと得した気分になって人生楽しくなる事、間違い無しです。
| cruasan | 2009/01/17 8:47 PM |
お返事有難うございます。
あれは、変形様式なのですか。どのあたりがヨーロッパで、どのあたりが変形なのだろうとか、というのがまだ私にはわからんのですが、どういう歴史的経緯で土着様式と混ざっていったのだろう、と思うと興味が尽きませんね!
カリフォルニアは1840年までメキシコ領だったので、メキシコのアステックなどの影響を受けているのだろうか...

今度はボストンの建築物もいろいろレポートしようと思います。
私も何度かヨーロッパを訪れたことがあり、ベルギー・オランダなど北側とフランス、そしてドイツで大分様式が違うのは分かるのですが、ボストンの建築物はベルギーやオランダなどに近い印象を受けました。
スコットランドもまたちょっと違いましたが、それに近いところもあります。
ただ、まだなんとなく「雰囲気で」そう思うだけで、どこがどう違うのかとか全く分からないんですが...
是非またコメントで教えてください。
| Lilac | 2009/01/19 3:03 AM |
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