2008.11.18 Tuesday
レセップス広場改修工事(Remodelacion de la Plaza Lesseps)に見るバルセロナモデル(Barcelona Model)の本質
今日の新聞(La Vanguardia, 18 de Noviembre 2008)にバルセロナで進行中のプロジェクト「レセップス広場改修工事(remodelacion de la Plaza Lesseps)」に関する記事が載っていました。レセップス広場はバルセロナの中心からちょっと北へ行った辺り、丁度我が子のようにかわいいグラシア地区(el barrio de Gracia)の上方に位置します。
観光客に大人気のグエル公園(parque Guell)に一番近い地下鉄駅、レセップス駅(L3 Lesseps)前だけあって毎日沢山の人がレセップス広場を訪れるのですが、この広場はお世辞にも気持ちの良い広場だとは言えなかったんですね。その一番の理由はココに集中している交通事情によるものだと思います。何時行っても車、車、車の嵐。駅と広場は大きな道路で遮断されていて、渡ろうにも渡れない。広場にいても車の騒音と排気ガスでなんだか落ち着かない・・・。という訳で広場の改修と同時に交通計画の見直し、そしてこの地区の生活の質を上げる為に文化施設である図書館が計画されました。
ちなみにこの図書館は今バルセロナで乗りに乗ってる建築家、ジョセップ・リナス(Josep Llinas)によって設計され、2006年度のFAD賞(Fomento de las Artes Decorativas)に輝いています。
さて、今日の記事を取り上げようと思ったのは現在のレセップス広場改修工事を取り巻く状況が「バルセロナモデルの秘密」を物語っている様に思えたからです。
世界的に見て日本ほど「バルセロナモデル」に興味を抱いている地域は無いと思うので、当ブログでもバルセロナの都市計画には結構言及してきました。そこで僕が何時も強調してきた&したいと思ってきた事は近隣住民組合の存在と彼らの都市に対する意識の高さだったんですね。バルセロナでは住民の一人一人が「自分の街だ」という意識を持っていて、市がする事に対しては何時も鋭く目を光らせています。建築家が何かしようものならすかさず声を上げる。
依然聞いた話にヨーロッパのお国柄事情を説明する面白い冗談がありました。イギリス人とフランス人、そしてスペイン人を比較したものなのですが、「イギリス人は走る前に何故自分が走るのか考える。フランス人は何故自分が走っているのか、走りながら考える。スペイン人は何故自分が走ったのか、走った後に考える。」特にカタラン人、全くそうだぎゃー。
都市に関して、こういう口うるさい市民が常に目を光らせているというのは建築家にとってはかなりプレッシャーのはずです。なんせ、下手な事をしたら命取りになりますからね。しかしこのようなプレッシャーがあるからこそ、建築家はそれこそ命懸けで良い物を創ろうと思うし、全力を持って市民を納得させようと思う訳です。だからこそ、建築とは「そこに住む人達が思っていながらナカナカ形に出来なかった思いを一撃の下に表す行為」なんですね。そしてこのような途方も無い一つ一つの積み重ねがヨーロッパの都市と風景を形創ってきました。
夏に僕の尊敬する中村研一先生にお会いした時に、「都市は基本的に前衛にはなりえない」と言われていた事を思い出します。そう、都市とは基本的に保守的なんです。それはヨーロッパに住んでいるとよーく分かります。それでも都市は前進しなければならない。その歩みは本当に少しずつですが、僕らは前へ進まなければならないのです。その為に必要な人、基本的に保守的な人々を纏め上げ納得させる事が出来る能力を持った人、その人の事を僕らは建築家と呼ぶのだと思います。
それにしても建築家と近隣住民の衝突は見てるだけでもスリリングです。ちなみに今日の新聞を飾っていた建築家に対する言葉の数々はこちら:
「来月完成する新しい広場はデザインの無秩序地帯だ(Desconcierto por el diseno de la nueva plaza, que se inaugurara en un mes)」
「鉄のスクラップ広場(La plaza de la chatarra)」
「市は我々がヴィジュアルインパクトの強い建築エレメントが嫌いな事を知ってるはずだ。しかも約束した緑地スペースは小さいし(El distrito sabe que no nos gusta el impacto visual de los elementos arquitectonicos. Ademas, hay menos verde del que nos prometieron)」
こんな事を公然と言われたら僕だったら凹みますね。担当したのはバルセロナでも屈指の建築家、アルベルト・ビアプラーナ(Albert Viaplana)。
80年代にサンツ駅前広場(Sants Estacio)のデザインでパブリックスペースデザインの新潮流を創り出し、建築デザインでもバルセロナ現代文化センター(CCCB)の大変見事な空間構成でその実力をまざまざと見せ付けた実力派。
そんなマエストロはこれまで幾多の困難をかいくぐってきた貫禄で新聞のインタビューに答えてました。だけど、まだ完成してもいないのに、上記のような言葉を浴びさせられるとちょっとかわいそうな気もしますね。
観光客に大人気のグエル公園(parque Guell)に一番近い地下鉄駅、レセップス駅(L3 Lesseps)前だけあって毎日沢山の人がレセップス広場を訪れるのですが、この広場はお世辞にも気持ちの良い広場だとは言えなかったんですね。その一番の理由はココに集中している交通事情によるものだと思います。何時行っても車、車、車の嵐。駅と広場は大きな道路で遮断されていて、渡ろうにも渡れない。広場にいても車の騒音と排気ガスでなんだか落ち着かない・・・。という訳で広場の改修と同時に交通計画の見直し、そしてこの地区の生活の質を上げる為に文化施設である図書館が計画されました。
ちなみにこの図書館は今バルセロナで乗りに乗ってる建築家、ジョセップ・リナス(Josep Llinas)によって設計され、2006年度のFAD賞(Fomento de las Artes Decorativas)に輝いています。
さて、今日の記事を取り上げようと思ったのは現在のレセップス広場改修工事を取り巻く状況が「バルセロナモデルの秘密」を物語っている様に思えたからです。
世界的に見て日本ほど「バルセロナモデル」に興味を抱いている地域は無いと思うので、当ブログでもバルセロナの都市計画には結構言及してきました。そこで僕が何時も強調してきた&したいと思ってきた事は近隣住民組合の存在と彼らの都市に対する意識の高さだったんですね。バルセロナでは住民の一人一人が「自分の街だ」という意識を持っていて、市がする事に対しては何時も鋭く目を光らせています。建築家が何かしようものならすかさず声を上げる。
依然聞いた話にヨーロッパのお国柄事情を説明する面白い冗談がありました。イギリス人とフランス人、そしてスペイン人を比較したものなのですが、「イギリス人は走る前に何故自分が走るのか考える。フランス人は何故自分が走っているのか、走りながら考える。スペイン人は何故自分が走ったのか、走った後に考える。」特にカタラン人、全くそうだぎゃー。
都市に関して、こういう口うるさい市民が常に目を光らせているというのは建築家にとってはかなりプレッシャーのはずです。なんせ、下手な事をしたら命取りになりますからね。しかしこのようなプレッシャーがあるからこそ、建築家はそれこそ命懸けで良い物を創ろうと思うし、全力を持って市民を納得させようと思う訳です。だからこそ、建築とは「そこに住む人達が思っていながらナカナカ形に出来なかった思いを一撃の下に表す行為」なんですね。そしてこのような途方も無い一つ一つの積み重ねがヨーロッパの都市と風景を形創ってきました。
夏に僕の尊敬する中村研一先生にお会いした時に、「都市は基本的に前衛にはなりえない」と言われていた事を思い出します。そう、都市とは基本的に保守的なんです。それはヨーロッパに住んでいるとよーく分かります。それでも都市は前進しなければならない。その歩みは本当に少しずつですが、僕らは前へ進まなければならないのです。その為に必要な人、基本的に保守的な人々を纏め上げ納得させる事が出来る能力を持った人、その人の事を僕らは建築家と呼ぶのだと思います。
それにしても建築家と近隣住民の衝突は見てるだけでもスリリングです。ちなみに今日の新聞を飾っていた建築家に対する言葉の数々はこちら:
「来月完成する新しい広場はデザインの無秩序地帯だ(Desconcierto por el diseno de la nueva plaza, que se inaugurara en un mes)」
「鉄のスクラップ広場(La plaza de la chatarra)」
「市は我々がヴィジュアルインパクトの強い建築エレメントが嫌いな事を知ってるはずだ。しかも約束した緑地スペースは小さいし(El distrito sabe que no nos gusta el impacto visual de los elementos arquitectonicos. Ademas, hay menos verde del que nos prometieron)」
こんな事を公然と言われたら僕だったら凹みますね。担当したのはバルセロナでも屈指の建築家、アルベルト・ビアプラーナ(Albert Viaplana)。
80年代にサンツ駅前広場(Sants Estacio)のデザインでパブリックスペースデザインの新潮流を創り出し、建築デザインでもバルセロナ現代文化センター(CCCB)の大変見事な空間構成でその実力をまざまざと見せ付けた実力派。
そんなマエストロはこれまで幾多の困難をかいくぐってきた貫禄で新聞のインタビューに答えてました。だけど、まだ完成してもいないのに、上記のような言葉を浴びさせられるとちょっとかわいそうな気もしますね。