地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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地中海連合(Union pour la Mediterranee)の常設事務局はバルセロナに
昨日は世界的に歴史的な日であり新聞もテレビもオバマ(Barack Obama)一色だったのですが、その影に隠れるようにバルセロナではもう一つ重要な出来事が報道されていました。もしアメリカ大統領選挙と重ならなければ各種メディアの一面を大々的に飾っていたであろう程のニュース、それが地中海連合(Union pour la Mediterranee)の常設事務局にバルセロナが選出されたというニュースです。おめでとー、バルセロナ。

バルセロナにとっては喉から手が出る程欲しかった常設事務局であり、13年越しの夢だったんですね。今でこそ地中海連合の構想は現フランス大統領のサルコジ氏が選挙中に構想を発表し、2008年7月13日に晴れて第一回地中海連合首脳会議が43カ国参加の下行われたという事になっていますが、その元となったのは1995年にバルセロナで開かれた「バルセロナプロセス(Barcelona Process)」です。

バルセロナプロセスはカタルーニャが生んだ大政治家パスクァル・マラガル(Pasqual Maragall)が主導し呼びかけた会合であり、バルセロナ現代文化センター(CCCB)で行われた初回には27カ国からの参加があり、地中海という地理を共有した「国という枠」を超えた連合が夢見られたんですね。

元々バルセロナという地域はこのような「地中海の軸:地中海の弧」にかなり意識的な地域です。フランスの公的機関、DATARによって1989年に大西洋の弧(Atlantic Arch)、地中海の弧(Meditteranian Arch)そしてブルーバナナ(Blue Banana)が発表され(Brunet,Roger(1989): Les Villes Europeennes, Rapport pour la DATAR, Reclus, La Documentation Francaise.)、それ以来、ヨーロッパの各地域が地理的な連携を目指す様になったのですが、バルセロナはずっとそれ以前から地中海の弧を意識していました。オリンピックを活用したバルセロナ都市戦略のブレーンだったジョルディ・ボージャ(Jordi Borja)は当時を回想してこんな風に語っています:

「・・・数ヶ月前、元リヨン市長のレモン・バールが、バルセロナに滞在していました。・・・曰く「リヨンとバルセロナ間は、実際約600キロも離れているけれども、高速列車に乗れば3時間もかからない。つまり両都市は同じ都市連携軸上にある。しかもこのリヨンとバルセロナのような強い都市を結ぶ軸上には、少なくとも100キロごとに中規模都市がある。」

・・・都市戦略の観点からすると、このような「バナナ」や「弧」が、戦略的に提唱されることがグローバル化なのです。つまり、競争力のある結束した地域を目指して連携していくわけです。

・・・私達が「バルセロナ第一次戦略計画」を立てた時、一連の文化施設は絶対に不可欠なものとして盛り込み、ヨーロッパ南部でいちばん魅力的な都市にしようと考えました。

・・・われわれの望んでいた文化的なプログラムには、1500万人の人口が必要でした。どう考えてもバルセロナにも、その周辺にも、カタロニア全土を見渡しても、1500万という数字は出てこない。カタロニアの全人口はせいぜい600万ですから。ならばどこを対象に地域戦略を立てたら良いのか、と自問自答を繰り返しました。そこで私たちは、人口1500万という数字が見込めるところまで範囲を広げていき、最終的にはこの広域圏全体をターゲットにしました。

・・・地域は単に自治体とか、県、郡といった公式の地域単位、すなわち行政上の区分だけではなく、地域とは戦略の産物でもあるのです。」

都市はグローバリゼーションにいかに応答するかージョルディ・ボージャ、p318−319、計画からマネジメントへ


ジョルディ・ボージャは長年のパートナーであるマニュエル・カステル(Manuel Castells)と共に都市戦略に関する書物, Local and Global (Borja,J and Castells, M, London, Earthscan, 1997)を1997年出版していますが、自身が長年に渡り経験した事が元になっているだけに、かなり説得力のある一冊となっています。(当ブログでは何度かマニュエル・カステルについて取り上げたのですが、彼ってカタラン人なんですよね、驚くべき事に)

更に1999年には上述のパスクァル・マラガルがニューヨークやローマで行った「バルセロナ・モデル」や「国という枠を取り払った都市間連携」に関する講演を元に編集した、Europa proxima, regiones y ciudades(Pasqual Maragall(ed.), Barcelona Edicions, 1999)を出版しているんですね。その中でマラガルは「国に代わり都市が地域を引っ張るモーターになるべきだ」と主張し、「EUという大宇宙の中に輝く都市という星星」をイメージしています。それを一撃の下に表しているのが、Josep Acebillo が出版したAtles ambiental de area de Barcelona(バルセロナエリアの環境地図)の最初のページに掲載された写真:



ヨーロッパの夜景を宇宙から撮った写真で、都市の周りに明かりが集中していて人がヨーロッパにどのように散らばって住んでいるかが一目で分かる大変きれいな写真です。

今、ヨーロッパは動いています。そしてその震源地は明らかに南です。その南の中心に果たしてバルセロナがなれるのかどうか?ここからが腕の見せ所ですね。
| バルセロナ都市 | 15:08 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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