地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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EUプロジェクト、ICING (Innovative Cities for the Next Generation)最終レビュー
9月25日、バルセロナ都市計画局・情報局にある「バルセロナの部屋」にて3年近く続いたEUプロジェクトの最終レビューが行われました。ちなみにこの部屋、関係者以外立ち入り禁止なのですが一見の価値あり。







床一面がバルセロナの地図で多い尽くされていて、しかもそれが光る仕組み。



壁にはバルセロナ市が受賞したデザイン・都市計画関連の表彰状がずらりと掛けられています。ちなみに上の写真はハーバード大学が1987年にバルセロナの公共空間プロジェクトに送った、かの有名なGraduate School of Design Prince of Wales Prize in Urban Design賞の表彰状です。

さて、今回のレビューは最後とあって、ヨーロッパ3都市から全てのパートナーの代表11人が勢揃い。みんなで集まったのはプロジェクト初日以来かな?という気がします。そしてEU委員会からPさん、プロジェクトを批評する3人の外部専門家を加えて午前9時に最終レビューがスタートしました。

さて、今回のEUプロジェクトの総括として、気が付いた事を幾つか書いておきたいと思ったんですが、前のエントリを見たら結構巧く纏めてあったのでそれをコピーする事にします。(今日はちょっとお疲れモードなので・・・)一つだけ付け加えたいのは、昨日の夕食会でたまたま隣の席になったオーストリアから来たレビューアーが言っていた言葉です。

夕食の長テーブルを見つめながら、「見てごらん、一つのテーブルを囲んでココに幾つの文化が存在していると思う?こんな機会でもなければ絶対に知り合う事の無い人々が、一つのプロジェクトを通してこんなにも和気藹々と語り合う姿は滅多に見る事が出来ない。違う文化や言語を操るもの同士、一つの事を達成するまでには様々な困難やジレンマがあったと思うけど、僕はこの風景こそがEUプロジェクトの成果だと思う。」

彼の言う通り、この3年間は苦しい事の連続だったと言っても良いかもしれません。ヘルシンキの誰々が返事をくれないとか、ダブリンの事務所がいつまで経ってもデータを送ってこないとか、そんな苦労ばかりが思い返されます。でもプロジェクトが終わった今となっては、それらも良い思い出。来週からは毎日30通以上届いていたメールや引っ切り無しに掛かってきていた電話が鳴らないかと思うとちょっと寂しさすら感じます。

ヨーロッパで最先端のプロジェクトに関わりながら、日本人として文化の多様性というヨーロッパの真髄に直接触れる事の出来た幸運。昨日の夜見た風景を僕は生涯忘れる事は無いでしょう。


EUプロジェクトを通して見えるEUの戦略:二つのEUプロジェクト・ミーティングを通してから抜粋

" しかしながら、いちパートナーとして実際にEUプロジェクトに参加していて気が付いた事は、これらEUプロジェクトには、この表向きの目的の他にもっと大切な裏の目的があるんじゃないかと言う事です。それは一つのプロジェクトの実現を通して各都市の結束を固め、都市間のコミュニケーションを円滑にし、その結果、創造性を増幅する事によりEU全体の競争力を高めるという裏目的が存在するような気がしてしょうがないんですね。

一つのプロジェクトを様々な文化と専門のバックグラウンドを持ったパートナー達と実現していくという事は決して楽な事ではありません。話す言語は違うし、扱う専門用語も違う、働き方も違うし思考形態も違うパートナー達と一緒に働いていていると、仕事の生産性という観点から見た時、「自分達だけでやった方が楽なのに」と思う事はしばしばです。笑い合う事がある数だけ、「データが無い」とか「言語間の違い」とかで怒鳴りあう事がある事も事実なんですね。

しかしながらこのような仕事の生産性の指標だけでは計れない「何か」がある事も又事実です。それは明らかに文化間の違いが生み出す多様性に依っていて、プロジェクトを豊かなモノにしている。自分達とは違う文化圏の人の働き方や休息の仕方といった生活様式に触れる事によって、人間が成長するんですね。

どうも僕が見た感じ、EUはプロジェクトの生産物に期待するというよりは、プロジェクトを通した各国間・各都市間のコミュニケーション促進の方に期待しているのではないかと思えてきます。その結果、プロジェクトに投資した何倍もの見返りが、そこで構築されたネットワークから出てくる新しいプロジェクトや提案という形でEUに還元される訳です。実際ICINGプロジェクトからは草の根的に幾多のプロジェクトがパートナー間で既に生まれています。結果としてEU都市間の結束が固まり、EU全体の競争力の強化に繋がる訳です。

僕が関わっているもう一つのEUプロジェクトである、ロボットプロジェクト(URUS Project)ではその傾向というか、EUの戦略性はより明らかです。現在のロボット技術の強力なセンターは日本とアメリカだそうです。その2つの地域に比べて明らかに遅れを取っているのがヨーロッパ。そこでEUはEU各国からロボットのエキスパートを集めてコミュニケーション型ロボットを創るというEUプロジェクトを立ち上げました。ロボットを創ると言ってもロボットは色んなパーツや機能から成り立っているので各部分によってどの国のどの都市が優れているとかいう優劣があるわけです。その良い所取りをして最上級のロボットを創ろうというのが表の目的。

しかしですね、ココには明らかに裏の目的があるわけです。それは各国各都市でばらばらなプロトコルや基準、用いる言語などを今の内に統一して来る次世代ロボット戦争に備える為に、日本やアメリカに負けない強力なセンターを創り出そうという戦略が見えるわけですよ。一つの生産物を創り出すという目的に従って、定期的にミーティングを開き、技術的な問題を解決・EUで統一していく事に加えて、上述のような各国・各都市のコミュニケーションを促進する役割をも果たす、正に一粒で二度美味しい戦略。

こういう事って、紙の上に書かれた経過報告書やプロジェクトレポートといったオフィシャルな記録からは絶対に見えてこない事です。EUが正に結束を強めているこの時期に、日本人として、その中心に直にリアルタイムに関わる事が出来るというのは、この上ない幸せだなと思います。"
| EUプロジェクト | 20:29 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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