地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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フランクフルト旅行その3:広告としての緑の都市計画
フランクフルトを散策していて驚いたのが緑の多さです。ドイツは環境先進国と言われていますが、今回の旅行でその事を実感しました。至る所に木々が植えられ、ちょっとした森林ゾーンが適度に配置されている。
「同じヨーロッパと言っても北と南でこうも都市に違いが出るものなのか!」と改めて実感させられます。これはどちらが良い・悪いという問題ではなくて、単に都市の特性が違うという事です。これこそ多様性を確保しているヨーロッパの強みなんですね。

例えば、フランクフルト国際空港から市内に入る途中にガラス張りの大変現代的な建築があり、その足元に緑に囲まれた小さな家が点在する村のようなエリアに遭遇します。



以前から気になっていたのですが、市役所の人に聞いたらどうやらコレはウィークエンドハウスだという事です。ドイツでは伝統的に月曜から金曜までは市内で暮らして、週末はのんびりと野菜でも作って静かに暮らすという事が行われているらしいです。





南の都市が海岸沿いに住宅を建てて日光浴に行くだけなのに対して、ドイツでは緑に囲まれた環境や菜園をわざわざ創り出して週末を過ごすという強い意図が見受けられます。こういう些細な所に何故にドイツが環境先進国なのかという理由が隠されているような気がしますね。

さて、フランクフルト観光案内所で貰った地図を眺めていたら面白い事に気が付きました。



中世の城壁の外側を取り囲むように緑の帯が展開しているんですね。

現代都市はこのような壁(見えない境界)を大きく分けて2種類創り出しました。

一つ目はヨーロッパ中の都市が例外無く実行している中心市街地歩行者空間の為の境界です。多くの場合、この境界は中世の城壁と一致し、この見えない境界(壁)を明確に決める事によって、都市はこのエリアに重点的に投資をし、中世風景の再現を目指しています。

もう一つの壁が今日のメインなんですけど、それが緑の壁です。ある一定の厚さ(数十メートルから数百メートルくらい)を持った緑の帯をぐるっと張り巡らせる事によって、その外側への都市の拡散や成長を抑制するというのが主な役割。



上記の写真はミラノ都市戦略の写真です。ミラノ都市戦略に関しては以前のエントリ:ミラノ旅行その7:ミラノの都市戦略その1:都市マーケティング政策、で少し書きましたが、近年は環境戦略にも力を入れている模様ですね。

もう一つ別の例を挙げます。



上記の写真はスペイン、バスク地方のビトリア都市戦略の写真です。ビトリアは都市の発展・拡散を食い止め、都市をコンパクトに保つ為に緑の指輪を創り出しました。何を隠そうビトリアの都市戦略・環境戦略を創ったのは僕達です。今はこの戦略プランに基ついて計画が実行に移されつつあります。

多くのヨーロッパ都市は中世の城壁を持っていました。その城壁は多くの場合、外敵から身を守る為に建設されたんですね。同時に都市をコンパクトに保つ為にも機能してきました。

それに比べて現在建設されている壁は見えない壁です。しかしこの緑の壁はアーバニゼーションという現代都市の病とも言える外敵から、都市自身が身を守る為に建設した第二の壁な訳です。

この堅固な壁から緑の壁への変化は、僕達の時代がエコの時代でありサステイナビリティの時代であるという事を象徴的に示している出来事だと思います。そしてこのような事例は至る所に見出す事が出来ます。



上記の写真は2005年に僕達が計画したバルセロナ・グラシア地区歩行者空間計画の市民向けパンフレットです。歩行者空間=公共空間となる所が緑色に塗りつぶされています。

公共空間と地図といえば、ネガ・ポジという概念の下、白黒を反転する事で公共空間を浮かび上がらせたノリーの図が有名ですが、僕らの時代にはそれが緑色に変わりました。

何故このような事が起きているのか?

それは現代都市最強の「広告」は「緑」、「サステイナビリティ」そして「エコロジー」を謳ったサステイナブル都市計画だからです。故にヨーロッパのどの都市も「緑」を前面に出して都市の居住性の高さを謳っているんですね。皆、毎年発表される都市ランキングに上位ランクされる事に頭を悩ませている訳です。

今の時代、我々を取り巻く全てのものが広告化しようとしています。そして良く目を凝らして見ないと、その広告は見えません。何故なら広告の本質とは「見えない事」にあるからです。
| ヨーロッパ都市政策 | 23:24 | comments(3) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
はじめてコメントさせていただきます。
ノリーの図を探しているのですが見つけられません。
もし情報を知っていましたら教えていただけたらと思います。
よろしくお願いします。
| kn | 2008/11/30 3:21 PM |
Knさん、はじめまして、こんにちは。
ノリーの図は確かに有名なんですが、実物にはナカナカお目にかかれません。僕も何年か前に探した時、結構苦労したのを覚えています。

とりあえず日本語で読めるものとしては、槙文彦さんの「見えがくれする都市」の中にちっちゃな図があったはすです。今手元に無いので何ページかは忘れてしまったのですが、当時、スキャンしたのを覚えているので収録されていると思います。

もっと簡単な方法としてはやはりネットですね。これは面白い所なのですが、日本語で「ノリー」や「公共空間」と入れても大した情報は出てこないのですが、英語でGiambattista Nolliと入れると膨大な情報が出てきます。Wikiもありました。

実は今さっき気が付いたのですが、このコメント欄にはURLを貼り付ける事が出来ないようです。と言う訳でお手数おかけしますが、GoogleにGiambattista Nolliと入れて頂いてwikipediaを開いてください。一番下のReferenceの所にThe Nolli plan of Romeというリンクがあって、そこにかなり充実した地図情報が入っています。是非試してみてください。

最近ネットでは「日本語の滅びる時」なんて本が各所で話題になっていますが、情報の蓄積量に関してみれば明らかに英語がダントツですね。
| cruasan | 2008/11/30 11:48 PM |
お返事ありがとうございます。
しかもこんなに丁寧に返答していただいて。
そうなのです、日本語で検索してみたのですが、全然出てこなくて、、
英語で検索してみたらいいのですね。やってみます。
槙文彦さんの本もぜひ読んでみます。
今建築の勉強をしていて、先生に教えてもらいこの地図の存在を知りすごく興味をもったのですが、全然みつけられなくて途方に暮れていたのです。
本当に助かりました。
| kn | 2008/12/02 11:14 PM |
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