地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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フランクフルト旅行その2:未来都市としての広告都市
今回の旅行の目的の一つである展覧会に行く途中にフランクフルト応用芸術美術館( Frankfurt Museum of Applied Arts)があったのでちょっと寄ってみる。



一目見ただけでソレと分かるデザインは勿論リチャード・マイヤー(Richard Meier) 設計の美術館です。真っ白なカベと透明感溢れるガラスの組み合わせは濃い緑の中において鋭いコントラストを成し一層映えます。唯、建築として見た時に、それほど成功しているとは言い難いというのも事実。内部もスロープを中心に光溢れる空間を展開しているけど、コレといった見所も特に無く、無難にまとめたという感じかな。



それに比べたらバルセロナ現代美術館(Museo de Arte Contemporáneo de Barcelona)は彼の傑作の内の一つに数えられても良いくらいの質を持っていると思います。





外観・内観共に建築家のやりたかった事と、物語が良く見えて大変気持ちの良い建築に仕上がっていますね。

さて、長々と同じ作者の2つの美術館を引き合いに出し比較したのには訳があります。何故ならこの質の違いこそ我々の時代の建築と建築家、そして表象の問題を包括しているからです。

建築って言うのは基本的に「広告」なんですね。ある時は権力の大きさを表したり、ある時は宗教の繁栄振りを現したりしてきました。(ヴェネチアのサンマルコ寺院 (Basilica di San marco)の装飾はその当時の繁栄と権力を他国に見せ付ける為の最も効果的な広告でした。)



マンハッタンやフランクフルトに竹の子のように林立している超高層ビルの多くは各企業の資本力を表したりしているわけです。(その高さが企業力を表している。)



このように建築が何を表象するのか?もしくは建築に何を表象させるのか?という問題は時代とクライアントによって変遷してきた訳です。

では我々の時代の建築は一体何を表象しているのか?もっと言うと、クライアントである都市は建築家や建築に一体何を表象して欲しいと思っているのか?それこそ僕が当ブログで何度も問題にしている「観光」な訳です。

都市間競争が激化する中、今都市が必要としているのは「観光客を惹き付ける事が出来る建築」です。コレが現在スペイン出身のエンジニア(建築家ではありません)カラトラバ(Santiago Calatrava 通称バカトラバ)の建築が売れに売れている理由なんですね。質も高尚さも全く違うゲーリーの建築が、唯、概観の派手さが似ているというだけで同じ俎上に載せられて議論されているという事実こそ、都市にとって大切なのは派手な外観であり、建築的質では無い事を如実に物語っています。(驚くべきはカラトラバ建築の浸透力です。リポイ(Ripoll)なんていうカタルーニャのクソ田舎にさえも存在するくらいなんですね。)



そして今正に我々の周りを取り囲んでいる環境全てが「広告化」しようとしています。以前にも書いたのですが、その事を大変良く象徴するような状況がバルセロナにありました。下記の写真はバルセロナの中心部、丁度上記のリチャード・マイヤーによるバルセロナ現代美術館の前の壁に描かれたグラフィティを撮影したものです。



プロも顔負けの実力に驚かされます。と同時に、やはりバルセロナはアートの街であり市民の芸術センスの高さにも驚かされるんですね。実際ココへ行くと沢山の観光客が一生懸命記念撮影をしている場面に遭遇します。

しかしですね、ココにグラフィティを書いている人というのは、その辺に居る若者なんかではなくて、市役所に登録して、場合によってはお金を払って書いている人達なんですね。言わばプロ、もしくはセミプロと言っても良い人達です。中には企業に雇われて書いている人も居ます。





何故都市がこんな事をするのかというと勿論目的は一つ。観光客に「デザイン都市」というイメージを植え付ける為であり、観光客を惹き付ける為です。

対照的に道を挟んだ反対側ではリチャード・マイヤー設計の美術館がこれでもかというくらい白く輝いています。こちらのカベには落書き一つありません。何故なら毎朝、掃除のおじちゃん・おばちゃんが一生懸命消しているからです。





何故か?何故ならこの白い壁はバルセロナの純白さを現していて「清潔な都市」というイメージを観光客に持って欲しいからです。

道を挟んで両側では一見、全く逆の行為が行われているかのようです。一方ではカベに落書きが日夜され、もう一方では描かれた落書きが日夜消されている。しかしですね、この一見逆の行為の目的はとても明確に一致しているんですね。何の為か?観光の為です。両行為とも都市のイメージを高める為に仕組まれている事なんですね。

一番効果のある広告とは見えない広告です。あからさまな広告より広告だと分からず我々の潜在下に訴えかける広告ほど効果的なものは無い。今、我々を取り巻く全ての環境が広告と化そうとしています。
| 旅行記:建築 | 18:10 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
MACBA 白い建物が印象的で写真を撮ったことを覚えています。昔は向かいのグラフィティは無かった気がします。10年間で色々変わってるんでしょうねバルセロナは! 
| パブロ | 2008/07/16 8:31 PM |
変わりまくってます。特にMACBAの辺りなんてちょっと行かないだけで新しい店がオープンしていたりして。グラフィティの壁は今はもうありません。CCCBの向かい側にバルセロナ大学の新校舎が建ったのですが、その工事中時にあった囲いの壁にグラフィティが沢山書かれていました。
| cruasan | 2008/07/17 3:31 PM |
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