地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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エンリック・ミラージェス(Enric Miralles)の建築その3:バラニャ市民会館(Centro Civico de Hostalets de Balenya)に見る建築の質:実際に建築を訪れる事の大切さ
前回のエントリ、エンリック・ミラージェス(Enric Miralles)の建築その2:バラニャ市民会館(Centro Civico de Hostalets de Balenya)に見る建築の質:社会文化の表象としての建築:ミラージェスの場合、前々回のエントリ、エンリック・ミラージェス(Enric Miralles)の建築その1:バラニャ市民会館(Centro Civico de Hostalets de Balenya):行き方の続きです。

周りをぐるっと取り巻いているコンクリートの壁に沿って回り込むとエントランスに出ます。



3つの直線が少しずつズレながら上昇していくという表現を取っています。



一瞬見ただけで彼がこの建築で何がやりたかったのかが良く分かる。そしてそれが成功しているように見受けられます。まるで鉄骨が競って天に昇っていくようだ。大変ノビノビとしていますね。

そして外観で彼が最もやりたかったのがこちらからの眺め:



ビシッと決まっている。文句無くかっこいい。さてここで僕が注目したのが最上部の軒先です。



最下部の鉄骨と2番目の鉄骨は水平に並んでいるのですが、最上部の先端だけは少し下がっているように見受けられます。ほら、ココですね。



コレを見た時に思い出したのが槙さんがやられた東京体育館です。





東京体育館って2枚の葉っぱが互いに寄り添うように空間を包んでいて、あたかも内側から膨らんでくるような表現をとられていますが、あのデザインのポイントは外観のスカイラインを構成している沢山の線のうち最後の線がホンの少しだけ上がっている事だと思います。



そうまるで日本のお城のように。そうする事で全ての線が下に流されたまま終わるのではなくて、何かしら「ピシッ」としたスカイラインを形成する事が出来るんですね。リズムで言うと、「下、下、上」みたいな。

ミラージェスの場合はこっちから見ると良く分かるのですが、最上部の線は最初は上がり気味で最後部で少し下がっている事が分かります。



つまり上述の槙さんの場合とは全く逆バージョンなんですね。リズムで言うと「上(水平)、上(水平)、下」になります。目的は勿論、上に向いたまま流すのではなくてスカイラインを引き締める為です。一見大雑把に見える彼のデザインですが、その大雑把に見える表現を支えているのが、実はこのような繊細なテクニックなんですね。

さて、この形態ですが、エル・クロッキースの序文でウィリアム・カーティス(William J. R. Curtis)が指摘している通り、ココには明らかにロシア・アヴァンギャルド、コンスタンチン・メルニコフ(Konstantin Melnikov)の影響が見受けられます。


Konstantin Melnikov’s Soviet Pavilion at the Paris International Exhibition of Decorative Arts 1925 Model reconstruction by Henry Milner

だからどうしたという声が飛んできそうですが・・・。まあ、しかし以前のエントリ、アントニ・ガウディ(Antoni Gaudi)の建築:コロニア・グエル(Colonia Guell)その2:コロニア・グエルの形態と逆さ吊り構造模型で書いたように、建築のモデルが何処から来たかはあまり重要ではなくて、その建築が模倣を通り越して建築家の創造力と混ざり合わさった末に彼の建築に「ふっ」と成っている事が重要なんですね。

さて、そんな事を思いながらイヨイヨ中へ。この建築の見所空間は何と言っても3つの巨大な鉄骨が螺旋を描きながら上っていく大空間です。それがコレ:



週末にお祭りがあるのかなんなのか分からないのですが、天井にシーツのようなものが掛かっていて肝心の上昇空間が見えずらい・・・・。





それでも3つの天井が強い直線のスカイラインを切り取りながら上昇していっている様は圧巻です。そしてその内部空間があたかも膨らんできたかのように、外部空間の表現と見事な一致を見せている。見事な建築です。
| 建築 | 12:17 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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