地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
<< アルヴァロ・シザ(Alvaro Siza)の建築:コルネリャ・スポーツセンター(El Parc Esportiu Llobregat de Cornella)その2:行き方 | TOP | 手打ちラーメンの店:斎心面館II >>
アルヴァロ・シザ(Alvaro Siza)の建築:コルネリャ・スポーツセンター(El Parc Esportiu Llobregat de Cornella)その3:シザの新たな建築形態言語での不思議な空間体験
前回のエントリ、アルヴァロ・シザ(Alvaro Siza)の建築:コルネリャ・スポーツセンター(El Parc Esportiu Llobregat de Cornella)その2:行き方の続きです。前々回のエントリ、アルヴァロ・シザ(Alvaro Siza)の建築:コルネリャ・スポーツセンター(El Parc Esportiu Llobregat de Cornella)では主に僕が考えるシザ建築の特徴と、コルネリャスポーツセンターの簡単な外観分析を書きました。



今回は主に内部空間の分析を書きたいと思っているのですが、今回、実際にこの建築を訪れてみて、今までに味わった事の無い大変不思議な空間体験をしました。

受付空間を入った所、左手側は体育館に出入りする人々を受け止める為の大きなホワイエ空間となっています。



白色を基調色としながらも、人の背の高さぐらいまでをグレーのカベがグルッと覆っている。大変に趣味の良いこの組み合わせはポルト大学(Universidade do Porto)やセラルヴェス現代美術館(Serralves Museum of Contemporary Art)の外壁などで採用されたデザインですね。地面からの立ち上がりをいきなり白壁にするのでは無く、こうする事で地面とそこから立ち上がる垂直のカベの触媒として働いています。又このグレーゾーンは、同一平面状における異なる素材の切り替えデザインの大変良い例でもあります。出来る事なら今回のスポーツ施設でも御影石を採用したかったはずなのですが、予算的に無理という事だったのでしょうか。

この直方体の大きな空間を抜けた先にこの建築のメイン空間と思われるプールがあります。



シザがアヴェイロ大学の図書館(University of Aveiro)で見せた天井に空いた無数の丸窓のデザインです。このデザインは明らかにアールト(Alvar Aalto)から来ていると思うのですが、シザのすごい所は、その借り物のアイデアが何時の間にか彼の建築になっている所です。まるで人の技は全て自分のものにしてしまうというサッカー小僧、翼君のよう。

丸天窓から降り注ぐ光が水面に光の斑点を創り出している。そしてその斑点が水面の微妙な動きに伴ってゆらゆら揺らめいている。



つい先日、バルセロナ在住の日本人の友達、Mさんと食事していた時の事、シザのこの建築の話になり、「あれって水玉模様でキレイですね」って言われて「はっ」としました。そんな事さっぱり考えた事も無かったけど、言われてみれば確かにこれは水玉模様だ!そしてそれがごく普通の人が持つ普通の感覚なんだと思います。案外建築家に必要なのは普通の人が持つ普通の感覚なのかもしれない。そしてそれは結構難しい。

さて、受付ホールからこのプールに至るその繋ぎ空間が今日の主役です。それがコレ。



写真で見ても良く分からないかもしれないのですが、受付ホールにおいてある全体模型で見た所がコレ。







口ではちょっと説明しにくいこの形態。あまり見た事が無い形態であり、大変不思議な形をしています。この形態が初めてシザのデザインに登場したのはアムステルダムの市立美術館拡張計画(Extension to STEDELIJK MUSEUM, 1995)だと思います。しかし長い議論の末、この計画は潰れたんですね。(当時シザがこの美術館のスケッチに足を付け足して、美術館計画が逃げていったという事を皮肉に表していたのは大変愉快でした。)この計画がおじゃんになった後、この形態を含む建築が実際に建設されたのはこのスポーツセンターが初めてだと思います。(この辺、どうなんですかね、アツシさん?)

さて、なんでこんなわけの分からない形態の話をするかというと、これが驚くべき空間体験をもたらすからなんですね。





大きなホワイエホールから連絡路としての小さな空間に入る時に、向かって左側が円を描きながら少し膨らんでいます。更にこの「膨らみ」を受け止める反対側の壁が、あたかもその力を受け、その力によって変形しているかのように逆側にカーブを描きながらへこんでいるんですね。そして先っぽに行くに従って空間は細くなっています。



言葉にするとただこれだけであり、連絡路である事からこの空間は非常に小さいものとなっています。だからこの体験を表立って「建築における空間体験」と言うには余りにも大袈裟なのかもしれない。しかしここで体感する空間は明らかに他の何処にも無い類の空間だと思います。ちょっと言い過ぎかもしれないけれど、この部分を体験する為だけに、ココに来ても良いんじゃないか、そう思わせるくらいの何かしらの魅力をこの形態は持っている。

この規模からするとシザはここでこの形態の空間を確認して、後で他の所で拡大して使用するつもりなんじゃないのかな?いずれにしても、シザの新しい建築形態言語の萌芽と見る事が出来るんじゃないかと思います。
| 建築 | 00:17 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
コメントする