地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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カルロ・スカルパ(Carlo Scarpa)の建築その2:クエリーニ・スタンパリア(Fondazione Querini Stampalia):空間の建築家カルロ・スカルパ:ものすごいものを見てしまった
ベネチア本島にあるクエリーニ・スタンパリア財団は図書館、美術館、文化センター、本屋とカフェなどが入った複合文化施設で、16世紀建造のPalazzo Querini Stampaliaを改修して現在に至っています。昔の遺産を巧く生かし現在に繋げる辺りはさすがイタリアといった所でしょうか。何でも財団の会長だったジュゼッペ・マッツリオール(Giuseppe Mazzariol)さんが、どうしてもと言う事でスカルパに改修を依頼したそうです。それを受けて、スカルパは1959年から1963年にかけて大々的な改修を行っています。

スカルパのこの改修は大きく3つの部分に分ける事が出来ると思います。

1. ブリッジ
2. エントランス
3. 中庭

この内、建物内部(エントランス)は写真撮影不可だったので写真を撮る事が出来ませんでした。残念。(ブリッジと中庭は外だったのでOKでした。)

さてこれらの中で僕が最も感動したのが中庭です。はっきり言って、ものすごいものを見てしまった。ものすごく小さいこの中庭には、スカルパの発展させたアイデアが凝縮されています。

アプローチはこんな感じ。



入り口の手前下に開口があり中を少し覗けるようになっている。



物語空間を創る時の常套手段、ちらちら見せるというやつですね。更に右手側がコンクリの高い壁によって視界を遮断されているのであちらにどんな空間が広がっているのか、分からないようになっています。逆に言えば、少しだけ見える隙間からの情報を元に想像力を掻き立てられる仕組みになっている訳です。



入り口はこんな感じでとてもそっけないけれど、あえて天井高を低く抑えて、その後の空間に強弱をつけようという意図が見えます。

そして、入り口に対する進行方向とは90度折れた方向に中庭が広がっている。

建築エレメントを使って人の動きをコントロールする手法は本当に巧い。このような好例から僕らが学ぶ事は山程あります。例えば、風除室の扱い方。その扱い方一つでその人の設計能力が良く分かる。風除室というのは人の動きをコントロールする大変重要な建築エレメントなんですね。例えば谷口さんの土門拳記念館の風除室は大変良く考えられていると思います。風除室を使ってわざわざ回り込ませ、あえて前面に広がる池の風景を人に意識させる事に用いている訳です。

あー、又脱線してしまった。
さて、入り口をくぐり90度曲がると今までの抑圧された空間とは打って変わって、大変開放的な空間に出ます。



右手下には先ほど見た「水を貯める噴水っぽいの」が見えます。(なんて呼ぶのか分からないので)



置石に沿ってテクテクと歩いて行き、入り口とは対角線上にあるライオン像、(お前、アルハンブラに居なかった?っていうくらい似ているライオンの像)の前まで来ると、ここで又建築的操作がなされている事に気が付きます。



階段です。この階段がある事によって、階段を下りた後と降りる前の景色がまるで違うものに見えるんですね。







前回のエントリで書いたように、このような視線の制御を用いた空間操作は絶妙ですね。そしてこれは、こんなに小さな空間に、どうにかこうにかして豊かな表情を与えようと熟慮した結果なんだと思います。

この階段を更に上がり、この物語の終点である入り口まで帰ってきて、「今回の旅も終わりか」と思っていた所へ、やってくれました、スカルパさん!!コレです。見てください。



この「水を貯める噴水っぽいの」の水深が異常に深いんですね。



ここでようやく、「そうか、ここがこの建築の物語のクライマックスか!」と気が付くわけです。これにはたまげました。そしてこの建築エレメントは人の足を止め、わざわざ覗かせるという行為を創発するんですね。スカルパはこれを明らかに確信犯的にやっていることに気が付きます。

先ず、アプローチ空間でわざわざ噴水を見せている。その次に入り口をくぐった後、右手側に噴水を見ると、光の関係で水面に建物が反射していてその深さが分からないんですね。こんな風に。



中庭を一周してきて、反対側から噴水を視た時にようやくその深さに気が付く訳です。

これはすごい。またもややられました。というか、こんな事、考えられるんですかね、人間の脳に?人間の想像力の限界に挑んでませんか、この人?こんな小さな空間に物語を一転も二転もさせる事が果たして可能なのだろうか?

この空間では、この壮大な物語を実現する為に、効果的にディテールが使われています。逆じゃ無いんですね。ディテールを実現する為に物語が創られているんじゃない。やはりスカルパは空間の建築家だという思いを強く持ちました。あー、それにしても良いものを見させてもらったなー。
| 旅行記:建築 | 23:14 | comments(3) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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| - | 2008/03/25 1:14 PM |
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| - | 2008/03/25 10:32 PM |
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