地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
<< eGovernment Mobile Services Workshop | TOP | エンサンチェ(Ensanche:新市街地)セルダブロック中庭開放計画その1: Jardins de Maria Merce Marcal >>
グスタボ・ジリ社( La Editorial Gustavo Gili)とFrancesc Munoz: UrBANALizacion: paisajes comunes, lugares globales
昨日は朝から一昨日の続きでEU-practiceに参加。一昨日の夕食も夜中まで付き合わされた上に、今日も遅くまで続くんだろうなーとか思ってたら昼前に終わった。ラッキー。昼食を長々と取った後、6月のEU委員会へのプレゼンで会おうと誓い合って皆とお別れ。てっきり夜まで、下手したら明日もとか思ってた僕にとっては、久しぶりに出来た自由時間。天気も良いし散歩でもしようと思いセルダブロックがあるエンサンチェをぶらつく。

セルダブロックで知られるエンサンチェ(新市街地)の一番左側に位置するエリアをぶらぶらしていると、ふとこの辺りにグスタボ・ジリ社(La Editorial Gustavo Gili)があった事を思い出す。この辺りかなと思って行ってみたらやっぱりあった。約130メートルある辺を隅から隅まで住宅がびっしりと並ぶ中にぽっかりと開いた穴。





この秘密の洞窟っぽい通路がグスタボ・ジリ社屋へのアクセス路です。壁には矢印とシンボルマークのGGがかっこよくデザインされている。



グスタボ・ジリ出版社屋はカタルーニャに残る最良のモダニズム建築の内の一つとされています。前にも書いたように、僕が知っているグスタボ・ジリは創業者グスタボ・ジリの息子です。「親子で同じ名前付けるなよ、ややこしいな」とか思ってしまいますが、こちらではそういうものらしい。現グスタボ・ジリ社を取り仕切っているのはお姉さんであるモニカ・ジリさん。

今でも忘れられないんですが、初めてモニカさんに会った時の事、最近の出版業界の低迷とグスタボ・ジリ社への影響などを話してくれました。その中でバルセロナにある出版業界の新興勢力であるA出版社の勢いと、その出版社に勤める日本人Tさんの事を「小さな巨人」と話されていました。1,2回しかお会いした事はありませんが、僕がスペインで唯一尊敬する日本人Tさん。何時か僕もああなりたいものです。



さて、息子のグスタボ・ジリはカタルーニャで注目の若手建築家としてがんばっています。GG社屋の前にあるアパートは彼の設計によるものだそうです。GG社屋の中は現在、本屋さんになっているので自由に入る事が出来ます。ただ撮影は禁止。というわけで中の写真はありません。(写真を撮ってはいけないという所では写真は撮らないというのが僕のポリシーなので)

中は優しい光が包み込む透明感溢れる空間に仕上がっています。本屋さんで何か無いかなと物色していたら旧友のFrancesc MuñozによるUrBANALizaciónが発売真近とあるじゃないですか!3年前から出版する、出版すると言っていた彼だったのですがとうとう出版にこぎつけたか!何故かというと、プロローグをサスキア・サッセンに頼んだのに全然返事をくれないとの事だったのですが、無事解決したのですね。おめでとー。

彼は何を隠そうあのイグナシ・デ・ソラ・モラレス(Ignasi de Sola Morales)の最後の弟子です。地理学者である彼は元々マニュエル・カステル( Manuel Castells)やサスキア・サッセン( Saskia Sassen)などのネットワーキングシティに関心を持っていました。アンダルシアから出てきた彼はその主題と論文を持って当時カタルーニャに帰郷したばかりのマニュエル・カステルに近付こうとしたんだろうと思います。その間に居たのがイグナシ。フランセスクの類まれな才能に気が付いたイグナシは彼の耳元でこうささやきました。

「これからはサステイナブルシティという名の下に、コンパクトシティのモデル都市としてバルセロナモデルが輸出される事になるだろう。一見正しく見えるこのモデルにも弱点がある。何故なら伝統的にコンパクトな集住を可能にしてきた地中海都市においてさえもアーバニゼーションの力に抵抗する事は出来ないからだ。現にバルセロナはこの10年間でコンパクトどころか、反対にどんどんと拡散が進んでいる。バルセロナがコンパクトに見えるのはエンサンチェの活気が与える幻想に過ぎない。もし将来バルセロナがコンパクトシティという地位を守りたいんだったら、逆にどれだけの都市化が進んだかという定量的なデータと共に批判的な立場からモデルを擁護する必要があるだろう。」

こんな事言ったかどうか知りませんが(多分言ってないかな(笑))、彼の主題はカタルーニャにおけるアーバニゼーションに決まりました。更に、そのような低密度居住が現代文化とどう関係しているかという視点を盛り込み、英語の「表層的な」という意味のBanalと合わせてUrBANALizacionとなったと言うわけです。この時彼の頭にあったのはSharon ZukinのLandscape of Powerだったと思いますね。彼はかなり早くからZukinに注目していたし。

ここには明らかにイグナシの影響が見られます。彼は「経済、社会、風景、この3つの要素は何時も一緒に変化していく」と言っています。逆に言えば、これら3要素を一緒に分析しなければどのような都市現象も正しく理解する事は出来ないと言っているんですね。

フォーディズムが到来した時、その核心にあったのは「労働者が自社の製品を買ってくれる消費者にも成り得る」という視点でした。だからフォードは当時としては法外な賃金を労働者に払ったわけです。こうして先ずは工場の周りに労働者の住居が出来ました。そこで豊かになった人達は自分達が生産した車を購入し、郊外へと引っ越していきました。こうして社会と共に経済、風景も変わっていったのです。

このような基本的な考えをベースにSharon Zukinの理論などを巧みに利用しながらカタルーニャにおける低密度地域の再生産のプロセスを解き明かしたのがUrBANALizacionです。3年前に行われた彼の博士論文公開審査にイグナシは来る事が出来ませんでしたが、彼のお兄さんであるマニュエル・デ・ソラ・モラレス(Manuel de Sola Morales)がジュリーとして出席し、最大の賛辞を送っていた事が、昨日の事のように思い出されます。
| バルセロナ歴史 | 15:19 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
コメントする