地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ロンドン旅行その5:Richard Rogers( リチャード・ロジャース)の建築:Lloyd's of London
ポンピドゥーセンター(Centre Pompidou)と並ぶハイテク建築の殿堂ともいうべきロイズ オブ ロンドン(Lloyd's of London)へ行ってきました。



場所はロンドン中心部にある金融街:シティ。先日のエントリーで書いたフォスターのスイス・リ本社ビルとほぼ対峙する形で位置しています。石造による建造物が多く残るこのエリアにおいて銀色に反射する質感と量感そしてそれらが創り出す無機質な表情は圧倒的な存在感を示しています。設備系を外に露出した大胆な外観は今でもインパクトがある。建設当時、その斬新なデザインを巡って大論争が起こったというのにも納得のいく異様感です。

僕が今回の旅行でロイズを訪れたのには実は訳があります。それは2年前に遡るんですがパリへ行った時の事です。ポンピドゥー・センターを見たんですね。ポンピドゥーなんてスーパー有名な建築、いくらでも写真や本で見たので格別見たかった訳じゃなかったんですが、まあ一応という事で見に行きました。



はっきり言ってあまり期待していなかったんですが、そういう時ほど心を打つ「何か」が待っているというのが世の常。そこには僕の予想をはるかに上回る事実が待っていました。観察すればするほど見えてくるのは、あの派手な外観とはまるで裏腹のデザインの誠実さという事実だったんですね。設備等やチューブといった飛び道具に頼るのではなく「とても真面目にデザインがされている」という事実に大変驚きました。



この写真はポンピドゥーを広場側から撮った写真です。手前側から建物に向かって緩やかな坂になっているのが分かると思います。その結果、右側の部分とは少し段差がある格好になっています。高さにして4メートルくらいでしょうか。ファサードに付いているブレースの起点はこの右手側のレベルが基準で始まっているのが分かりますよね。そうすると必然的に左側においてはブレースの終点デザインに食い違いが出てくる事になるわけです。(写真の赤線)



つまりブレースの交差点が左側では右側と同じレベルの所で終わる事になってしまうために地上4メートルぐらいの所=空中で終わってしまう大変に中途半端なデザインになってしまうわけですね。これを避けようと思ったら逆に左側の地上レベルをブレースの起点に持ってこなければいけないわけです。すると今度は右側のブレースの起点が中途半端で始まってしまう。どちらを起点にしようとも解決しようが無いわけです。それをピアノ&ロジャースは右側を起点としつつ左側のブレース終点を交差点で終わらせるのではなく、その交点を突き抜かせる事によって見事に解決しています。(写真の赤丸)



これを見た時に「なんてデザイン力なんだろう」と思ってしまいました。一見派手なデザインはこのような誠実なデザイン力によって裏打ちされているんだという事に大変に驚いたわけです。

今回ロイズを訪れたわけはポンピドゥーで見せた彼のデザイン力の片鱗が本物であるという事を確認したかったからです。派手な外観にだまされるのではなくもっと基礎的な何か・・・





この写真はロイズの足元周りの写真です。ステンレスパネルで腰壁を覆われた階段が下りてきて地上でどのように終わるかというところです。ここで全てを腰壁モードの階段で終わらしていない所がミソ。そうするとかなり重々しい表現になってしまう。最後の2つを線表現に切り替える事によって足元周りを軽くするだけではなく全体としても軽くする事に成功している。こうする事で足し算の建築ではなく引き算の建築にしている。物体がある時、その物体に何かを足していくのではなくて引いていった方が(穴を空けていったほうが)良い造形になる場合が多い。



又、最後から2つ目をいきなり線表現に切り替えるのではなく上との連続感を出すために腰壁表現を半分残している。だんだんと移行していくという表現にしているという事ですね。更にこの階段の方向とは90度違う方向に下へ行く階段が後ろ側に付いている。



階段や風除室というのは人の動きを制御するのに大変に都合の良い道具です。階段を近くに二つ配置する必要のある場合、90度ずらして置くというのが最も巧くいくデザインである確率が高い。わざわざ回り込ませて階段を使わせるという意図は周りの景色を見渡させるという意図が背後にあるはず。



素晴らしいデザイン的解決法だと思います。ロイズについてはカーンのマスター・サーヴァント空間でそのデザインを説明したり、表面に突き出た設備・機械系が目についたりと様々な角度から語られていますが、僕は些細な事かもしれないけれどこういう取るに足らないデザインにどうしても目がいってしまいます。何故ならこういう基礎デザインこそがその建築の質を決めるのだと思うし、その建築家の器量を測る指標になると思うからなんですね。

今回は大変に良いものを観させて頂きました。
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