地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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第1回神戸―バルセロナ国際ワークショップ終了〜

615日から17日に掛けてバルセロナ市内にある世界遺産、サンパウ病院(カサ・アジア)にて行われた第1回神戸バルセロナ国際ワークショップが無事終了しました!

総勢40名を超える方々を日本からバルセロナにお招きし、バルセロナのオープンデータ戦略や都市戦略といった話を「書籍から」ではなく、現場の担当者から直接聞いてもらうことによって、バルセロナの考えていることを「体験として直に感じてもらおう」と企画した今回のワークショップ、「非常に勉強になった」、「とっても楽しかった」、「来年もまた来たいと思います」など、企画者としては大変嬉しい反応が数多く届いています。

反対に日本の皆さんのプレゼンを見たスペイン人達からは、「我々とは全く違うアプローチで非常に興味深い」、「神戸市ではどんなデータをオープンにしてるの?」、「日本のデータ・ビジュアリゼーションを扱っている企業(スタートアップなど)の状況をもっとよく知りたい」など、多様で活発なコメントが届いていたりするんですね。

こうしたスペイン側から届いている膨大な数にのぼるコメントを全て紹介する時間もなければスペースもないので、ここではワークショップが行われた期間中に特に印象に残った場面を紹介して、日本のみなさんへのご報告に変えたいと思います。

僕にとって非常に印象的だったのが、ワークショップ2日目の午後、バルセロナ市役所代表として登壇してくれたメルセさんが、聴衆からの質問に回答をしてくれた場面でした:

 

質問者(聴衆):「なぜバルセロナ市役所はこれほどまでにオープンデータに力を入れているのですか?」

メルセさん(バルセロナ市役所):「オープンデータはもともと市民の皆さんの物だったデータを返すことだと考えています(El concepto de Opendata del Ayuntamiento de Barcelona es devolver a los ciudadanos los datos que en principio eran suyos.)」

あの場にいた総勢100名近くの皆さんがあの瞬間に何を考え、何を感じたのか、それは僕には分かりません。たぶん、あの場に居た多くの皆さんにとって、メルセさんが不意に発したこの言葉は何気ない一言であり、2日間の間に聞いた数多くのコメントの一つに過ぎなかったのでは、、、と推察するんですね。

しかしですね、この言葉は僕にとって、今後都市に対峙していく上で非常に重みのある言葉となり、都市におけるオープンデータを考える上で最も心に響いた言葉となりました。

……ここ数年、「都市のデータをオープンにする」というアイデア=都市のオープンデータ化について、「建築家という立場から」色んな可能性を考え続けてきました(地中海ブログ:バルセロナ・オープンハウス2013:その地域に建つ建築(情報)をオープンにしていくということ、地中海ブログ:観光MICEとオープンデータ:2020に向けて、バルセロナの失敗の学ぶ、データ活用による都市観光の未来)。

その一方で、「都市データのオープン化」を考えれば考えるほど、「都市のデータをオープンするのはいいんだけど、それは一体何のためにやるんだろう?」という根本的なところで自問自答を繰り返しながらも、あまりスッキリとしない状況が続いていたんですね。

今回のワークショップ、そして様々なことを感じながらも聴くことが出来たメルセさんの言葉は、なにか僕の中でうやむやになっていた「オープンデータの意義、目的」みたいなことを整理する上での「キーストーン(鍵)」のような気がしてなりません。

この言葉が聞けただけでも、「今回のワークショップを企画してよかった」と、そう思えるほど、僕にとっては価値のある言葉だったと思います。

そしてもう一つ、これはかなり個人的な感想になってしまうのですが、初日のワークショップで登壇してくれたフランセスク・ムニョスさんと、今回のワークショップを通して再び意気投合出来たことは、僕にとって「非常に嬉しい誤算」だったかな。。。

当ブログでは度々触れてきたんだけど、実は彼は僕がバルセロナに来た15年ほど前(こちらでマスターコースで学んでいた時に)一緒に机を並べて学んだ仲だったりするんですね。というのも、彼の博士論文の指導教官がイグナシ・デ・ソラ=モラレスだったからなんです(地中海ブログ:イグナシ・デ・ソラ・モラレス( Ignasi de Sola-Morales)とテラン・ヴァーグ(terrain vague)。

そんな彼も、もう押しも押されぬヨーロッパを代表する地理学者になってしまい、お互い超多忙という理由から、同じ都市に住んでいながらも、ここ数年は音信不通、、、という状況が続いていました。

今でもハッキリと覚えてるんだけど、当時の彼は非常に野心家&戦略家で、アンダルシアから大都市バルセロナに「留学」に来ていた彼の目的はマニュエル・カステルへの弟子入りでした(地中海ブログ:グスタボ・ジリ社( La Editorial Gustavo Gili)Francesc Munoz: UrBANALizacion: paisajes comunes, lugares globales)。故に彼の修士論文はドゥルーズ&ガタリをネットワーク理論から読み解く、、、みたいな離れ業を見せたりしてたんだけど(笑)、その才能にいち早く気が付いたイグナシが彼を囲い込んだという訳なのです。フランセスクさんにとっては、グローバルシティで頭角を表しつつあったサスキア・サッセンや(地中海ブログ:サスキア・サッセンと世間話で盛り上がったディナー、地中海ブログ:サスキア・サッセン(Saskia Sassen)のインタビュー記事:グローバルシティというアイデアは何処から来たのか?)、当時はほぼ無名だったシャロン・ズーキンなんかを次々とバルセロナに連れてきていたイグナシの吸引力は非常に魅力的に映ったんだと思います。

そんなフランセスクさんとは毎晩の様に飲みに行っては、ヨーロッパの状況や彼自身の人生戦略など、かなりの時間を一緒に過ごしてですね、、、いま思えば、その時期というのは僕の人生にとって非常にエキサイティングな時期であり、人生に置ける戦略、どのように自己ブランディングをしていくかという点において、そのほとんどを彼と過ごした日々から学んだと言っても過言ではなかったりするのです。

今回のワークショップを通して、そんな彼とまた連絡を取り合うことが出来た上に、日本とバルセロナ、両都市で具体的なプロジェクトが展開出来そうな予感がして、久々に心踊る時間を過ごすことが出来ました。

←ワークショップが終了した翌週、彼の住むグラシア地区にて神戸市役所の長井さんと共にインタビューをした時の写真。

←彼のやってるプロジェクトもグラシア地区で実験してるって言ってたし、なんだかんだいって、グラシア地区ってやっぱり革新的だなー(地中海ブログ:グラシア地区祭り:バルセロナの歩行者空間プロジェクトの責任者だったけど、何か質問ある?)。

 

バルセロナ市役所のメルセさんのコメントや、旧友フランセスクさんとの再会など、これらは全て「僕の個人的な体験」なんだけど、今回のワークショップの期間中、参加者一人一人の皆さんにとって、このような「ふとした出会い」、「何気ない気付き」が沢山あったことだろうと思います。

その様な「気付き」はもしかしたら、スペイン人登壇者の何気ない一言だったかもしれないし、視察で訪れた先で案内してくれた担当者の言葉だったのかもしれません。はたまた、真っ青な地中海を背にしながら食べた巨大なパエリアに圧倒された人もいるだろうし、日本では滅多にお目に掛かれないマテ貝の美味しさに心奪われた人もいることだろうと思います。

同じ場面に直面しながらも、そこで感じたこと、考えたことは一人一人全く違うはずです。とかく日本人は右向け右とばかりに、こういう場面に直面したら、こう考えなければならない、こう感じなければならない、、、と思いがちです。

しかしですね、我々の社会にたった一つの正解なんてありません。

我々の世界は多様です。色んな考え方をする人がいて、自分とは全く違う角度から社会を見ている。そんな多様な人達がいるからこそ、僕達の社会は輝いているのだし、世界は面白いのです。

そしてそのような多様性を担っているカケラの一つ、我々の世界に輝きを付け加えている社会がここ地中海にもまた一つ存在し、今回聞くことが出来た様々な意見や表現などは、それら全く違う考え方をする社会文化的背景から出てきたものなのだ、、、とそんな事を今回のワークショップを通して感じてもらう事が出来れば、企画者としてこれほど嬉しいことはありません。

今回のワークショップは日本、スペイン、両方の国々から本当に沢山の方々に助けてもらいながら進めることが出来ました。彼らの助けがなかったら、絶対に実現することが出来ませんでした。

今回のワークショップに参加してくれた皆さん、裏方で色々と動いてくれた企画側の皆さん、現地で色々と助けてくれた皆さん、本当にありがとうございました!

また来年会いましょう〜。

 

上記の写真は全て:by Iwao KOBAYASHIです。

| - | 02:07 | comments(1) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
久々にブログ覗いてみたら、なんかもう感無量!なのが文面から溢れ出てて、こちらまで目頭熱くなっちゃうじゃないっすか。感動マンなユ-ジさん、ステキ&#10084;(←このハ-トマ-ク表示されるかな?)
| ay | 2016/07/05 1:38 AM |
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