地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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Super Science High Schools(SSH):スーパー・サイエンス・ハイスクール:バルセロナ
年末、一時帰国を利用して日本の3つの都市で、それぞれテーマの異なる3つの講演会をさせて頂きました。その第一弾が、大阪市立都島工業高校における「スーパー・サイエンス・ハイスクール(Super Science High-School)」講演会です。
←この高校、二川幸夫さんのご出身校だそうです。



スーパー・サイエンス・ハイスクールとは一体何か?
Wikipediaによると:

「スーパーサイエンスハイスクールとは文部科学省が科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定する制度のことである。SSHと略記される。…(中略)… 目的は「高等学校及び中高一貫教育校における理科・数学に重点を置いたカリキュラムの開発、大学や研究機関等との効果的な連携方策についての研究を推進し、将来有為な科学技術系人材の育成に資する」

とあります。

まあ簡単な話が、将来日本の科学(サイエンス)と技術(テクノロジー)を背負っていく人材を、(大学からではなく)高校という早い段階から育ててしまおうという取り組みなんだと思います。その一環で、実際に海外で働いている人達を招いて生の声を聞いてみよう、それらの話を高校生の皆さんに聞いてもらうことによって、海外へ興味を持ってもらうキッケケにしようということで僕に声が掛かったんだと思います(このお話を頂いたのは今から丁度1年前、2015年3月のことでした)。



この様な高校の研修というのはボストンには結構あって、というのもやはり、MITは工学系では世界一、更にボストンにはハーバード大学やウェルズリー大学など著名大学がひしめき合っているということもあり、「高校が研修という目的の為にボストンを選ぶ」というのは非常に無難な選択となっているからです(地中海ブログ:全米で最も美しい大学ランキング・ベスト10にランクインしているボストン郊外にある超名門女子大、ウェルズリー大学について、地中海ブログ:ハーバード大学の自然史博物館で飛行石を発見してしまった件)。



逆に言うと、高校が研修先にバルセロナを選ぶというのはそれほど普通のことではありません。というのも、バルセロナには世界ランキングに登場する様な著名大学はありませんし、学術系で世界をリードしている、、、と思われる分野もそれほど多くないと思われるからです(地中海ブログ:スペインの大学ランキング:総合ランキングではなく、学部間で競い合うというシステム)。
←というか、そういう評価軸とは別のものさしで動いているというだけなんですけどね。。。



しかしですね、バルセロナは、セルダを始め、歴史的に大変優れた科学者、技術者を輩出した都市であるというだけではなく、ローマ時代から脈々と続いている人類の軌跡が、「ヨーロッパの知」といった形で街角に体現されているということを鑑みるにつけ、「高校生の研修先としてバルセロナという街は大変優れているのでは、、、」と思わずにはいられません。



そう、バルセロナという都市の魅力は、街全体が「集まって住むという喜びに満ち溢れていること」、そういう人間の根源に関わる部分を、書籍からの知識ではなく、その土地に生きる人々の生活に触れることによって「体験として知ることが出来る」という点なのです(地中海ブログ:バルセロナ・オープンハウス2013:その地域に建つ建築(情報)をオープンにしていくということ、地中海ブログ:ガリシア地方で過ごすバカンス:田舎に滞在することを通して学ぶこと)。

今回、大阪市立都島工業高校さんがバルセロナを研修先として選んでくれたこと、そしてその様な試みに少しでも参加出来たことは僕の人生にとっても非常に稀有な体験だったと思います。



……丁度この文章を書いているいま、「研修から無事に帰ってきました」という報告メールを受け取りました。そして「生徒たちは、初めてのバルセロナに非常に興味を持った様子でした」とも書かれていました。

何年か経って、この時の体験のことを一瞬でも思い出してくれたら、講師としてそんなに嬉しいことはありません。

今回のバルセロナでの体験が、大阪市立都島工業高校の皆さんの人生にとって有意義なものであったことを心から祈っています。
| 大学・研究 | 09:42 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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