地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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カタルーニャが独立を宣言したらバルサはスペインリーグでプレー出来なくなるらしい。
なんか毎年のことなのですが、この時期は日本からのお客さんが非常に多くて、今週はパエリアを7回も食べました(苦笑)。



手長エビちゃんのピースにはちょっと笑ったけど、一週間に7回はちょっとキツイ。
←バルセロナが誇るパエリアの名店、Can Majoの特性パエリアでーす。

さて、最近巷を賑わしている話題と言えば、今月27日に行われるカタルーニャ州議会選挙のことで、僕自身も、地元の政治家や研究者、市民団体なんかに呼ばれては、「外国人として長くカタルーニャに住んでいる君の意見を聞かせてもらおう」とか言われてミーティングに駆り出されることが非常に多くなってきています。



さて、では何故こんなにも選挙の話ばかりするのか?

実は、今回の選挙では独立派(現政権)が絶対多数を獲得すると見られていて、現カタルーニャ州政府大統領が、「選挙に勝ったら即座に独立を宣言します!」と公約しているからなんですね。いままでは「独立、独立」と騒いではいても、その前に何かしらの壁が立ちはだかり具体的な話にまではいかなかったんだけど、今回はそこが違う。



まあ、とは言っても、マドリードが憲法を盾に「独立は違憲だ」と言ってたり、欧州委員会が「カタルーニャが独立するならEUからは出ていってもらう」と宣告したり、はたまたスペインの銀行がこぞって、「独立するならカタルーニャにある(銀行の)オフィスを他の都市へ移す準備をする」と異例の声明を発表したりと、反対派もかなり具体的な動きを見せる様になってきつつあります。


カタルーニャ銀行のクレジットカード。カタルーニャの国旗を上手く取り入れた魅力的なデザインに仕上がっていると思う。

そんな中、僕の立場はというと、、、「独立したければすれば良いんじゃない」っていう感じかなー。

数年前までは、「ど、独立!!何考えてるんだ!主要産業ないのに、どうやって生きていくの?」とか、「ど、独立!確かにスペインのGDPの20%以上をたたき出してるけど、それ以上の借金があること、忘れてるの?」とか色々な事を思ってたんだけど、それももう止めました(地中海ブログ:(速報)カタルーニャ州議会選挙2012:カタルーニャ分離独立への国民投票は実施されず!、地中海ブログ:もう一つの9月11日:カタルーニャの場合:グローバルの中に息づくローカリティ、地中海ブログ:何故バルセロナオリンピックは成功したのか?:まとめ)。

独立とかそういうことは、「この地に生まれ、この地で育った人たちが決めることであって、彼らの総意なら、それはそれでいいんじゃないか、、、」と、今では心からそう思っています。



だから地下鉄でこんなパンフレット(独立擁護派が作った広告)を見つけても、「あはは、、、微笑ましいなー」とか、結構余裕で笑ってたりするんですね:

「カタルーニャ独立に関する7つの回答」

1.なぜ独立するのでしょうか? →独立はより良い国家を作る唯一の手段であり、みんなにとって平等な社会が待っているから。

2.独立してもEUに残れるのでしょうか? →はい、残れます。

3.独立後も年金は受給できるのでしょうか? →はい、出来ます。

4.独立後の経済はどうなるのでしょうか? →すごく良くなります。

5.独立後も「スペイン人」であることは可能なのでしょうか? →はい、可能です。

6.独立後、政治家(と政治)の質は良くなるのでしょうか? →はい、とっても良くなります。

7.何故我々(カタルーニャ)には国家が必要なのでしょうか? →カタルーニャ国は社会的に平等であり、経済的にもっと豊かになり、より良い民主主義が待っているからです。

個人的にはNo.5が最高(笑)。

「独立後もスペイン人であることは出来るのでしょうか?
Podre seguir essent espanyol?)」
→→→ 「勿論です!スペイン人であることは、カタルーニャの独立を支持する事と両立します。独立後もスペイン国籍を保持する事は可能ですし、カタルーニャ国籍を保持する事は勿論、両方を保持する事すらも可能です。」
Es clar que si... Ser i sentir-se espanoyl es compatible amb voler la sobirania politica de Catalunya... Es podra mantenir la nacionalitat espanyola, la catalana o ambdues.

しかしですね、こんな余裕で構えていたぼくの前に、大変重大なニュースが飛び込んできました!それがこちら:


「カタルーニャが独立を宣言したら、バルサはスペインリーグから出て行ってもらう
(El Pais紙)」


えーーーーーーー!!!!!
そうなのー!!!!!!!!!!
これはさっぱり予想してなかったぞー!!!!

新聞記事(El Pais, 19/09/2015)をよく読むと、どうやらスペインには「スペインリーグで戦う為には、クラブはスペイン国内の連盟に登録する必要がある」という法律(スポーツ法)があるらしく、スペインフットボール連盟(RFEF)は、スペインの各州の連盟に所属していないクラブの登録を受け付けていないらしいんですね。これはどういう事かというと、カタルーニャが独立した場合、自動的にFCバルサは「外国のクラブ」ということになるので、スペインリーグには所属出来ない、、、という事態に陥ることを意味するのです。しかも注意しなくてはならないのは、「独立が認められた時」ではなく、「独立を宣言した時」だという点です。つまり、独立派が選挙に勝って、その瞬間に「独立を宣言します」と言った瞬間からバルサはスペインリーグでは戦えなくなるということなのです。

←勿論例外はあります。例えばアンドラのチームはスペインの地域リーグに属していますが、それは「交渉の結果認められた」ということであって「自動的にそうなった」ということではありません。つまりカタルーニャが独立した場合も交渉の余地が残されている事は確かなんだけど、今回の独立はスペイン国、もっと言っちゃうとEUとの喧嘩別れなので、「サッカーだけは別」みたいな都合の良い交渉が成立するかどうかは、かなり微妙、、、



これは勿論、「バルサ」という大変強力な武器を使った「独立反対派の脅迫」なんだけど(地中海ブログ:FC Barcelona(バルサ)のマーケティングがスゴイ:バルサ・ミュージアムに見る正に「ゴールは偶然の産物ではない」)、そんなことよりも、バルサの試合といえば、ぼくが毎日仕事から帰ってきて、ちょっとづつ切っては食べている生ハムと同じくらい重要な、人生を楽しむ為の一部なのに、それが無くなったら、どうするんだー!!
←悲しいなんてレベルじゃないです。



経済危機に端を発する独立への盛り上がりは、今のシルバー世代にとっては、「市民戦争前の第二共和制を思い出す」だとか、フランコを始めとするマドリードに虐げられてきたカタルーニャがやっと解放され、「我々自身の言語、我々自身の社会文化をやっと謳歌出来る」みたいな感じで感情論に突っ走り、それがその地域の運命すらも変えてしまうという大変危険極まりないものであることに間違いはありません(地中海ブログ:カタルーニャの夢、地中海の首都:地中海同盟セレモニーに見る言語選択という政治的問題)。



そんな時、少し引いて冷静かつ論理的に事態を見据え、皆を導くリーダーが現れてもいいと思うんだけど、いかんせん、そんな資質のある人は現在のカタルーニャにはおらず。。。(地中海ブログ:国際オリンピック委員会(IOC)前会長のフアン・アントニオ・サマランチ(Juan Antonio Samaranch)氏死去)。



このまま何も考えずに独立に走り、カタルーニャに居を構える国際機関が一斉にバレンシアに流れ、銀行や大企業のオフィスも他都市へと移り、残ったのは借金だけ、、、という状況になることは目に見えていると思うんだけど、上述したように、それはこの地に生まれ育った人達が決めることなので、僕はそこにあまり口を出そうとは思っていません。

、、、が、しかしですね、独立を宣言することによってバルサがスペインリーグから追い出されるというのなら話は別です!

これは一大事です!
ど、どうしよう。。。。(苦笑)。

追記:
スペイン中央銀行が「(今週末行われると見られている)カタルーニャ州の独立宣言は、預金封鎖の引き金となる可能性がある」と指摘(21/09/2015, El Pais)。

Financial Timesが「独立への投票率が50%を越えたらなら、その事実をEUは無視出来ないだろうし、マドリードは憲法改革を通してカタルーニャの自治権を拡大すべきである」と指摘(La Vangurdia, 21/09/2015)。

26/09/2016: バルサの命運が決まるまであと1日!いままで色んな人達にインタビューしたけど、皆一様に「バルサよりも独立の方が重要だ」と言っていた事が印象的だった。
| バルセロナ歴史 | 06:21 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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