地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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バルセロナの食べ歩き方:Casa Roura:「食事とはその場の雰囲気や空間など、5感全てを巻き込んだ総合芸術である」という事を思い出させてくれるレストラン
所用で、バルセロナから電車で1時間程の所にある小さな町、Canet de Marに行って来ました。



美しいビーチの前に位置しているこの町は、1時間もあれば端から端まで歩く事が出来ちゃうくらいこじんまりとしてるんだけど、何を隠そうこの町の至る所にはガウディと並ぶモデルニスモの旗手、ドメネク・イ・ムンタネール(地中海ブログ:リュイス・ドメネク・イ・ムンタネール(Lluis Domenech i Montaner)によるモデルニスモ建築の傑作、サンパウ病院(Hospital de la San Pau):病院へ行こう!どんな病気も直ぐに治るような気にさせてくれるくらい雰囲気の良い病院)やプッチ・イ・カダファルク(地中海ブログ:国際博物館の日(International Museum Day):世界屈指のロマネスク美術コレクションが凄いカタルーニャ州美術館(MNAC))の作品が点在しまくっているという、建築や美術好きには溜まらない町となっているんですね。



町の中心部にはドメネク・イ・ムンタネールが日常使っていた生活用品や、生前彼が収集したと思われる大変貴重な芸術作品などを集めまくったムンタネール博物館なるものが存在しています。



この剣なんて正にドラゴンクエストに出てきてもおかしく無いくらいの完成度!そう、正にここはリアル・ドラゴンクエストの世界そのものと言っても過言ではありません。



まあ、そんなドラクエ好きには溜まらなく素敵な町なんだけど(笑)、その中でも僕の関心を惹いたのが、この博物館の対角線上に建っている1892年にムンタネールが完成させた昔の貴族の館(Casa Roura)です。外観の秀逸さもさる事ながら、僕が最も驚いた事実、それはこのお屋敷、現在は現役のレストランとして使われていると言う点なんですね!



ヨーロッパの町へ行くといつも思うんだけど、何百年も前に建てられた建物を大切に大切に改修しながら使い続けていくその姿勢には毎回脱帽せざるを得ません。そんな所から自分の町への愛着が生まれ、はたまた、その人のアイデンティティというものが生まれてくる事になるのかなー?と‥‥つまりは町の原風景とは我々人間が生きていく為のアイデンティティの拠り所であり‥‥あー、又話が脱線してしまった‥‥。この話をし出すと長くなるので、又今度(地中海ブログ:ガリシア旅行その10:元貴族の居城を改修したレストラン:Pazo do Castro)。



僕がこのレストランの存在を知ったのは全くの偶然でした。



あれは忘れもしない4年くらい前の事、バルセロナから電車とバスを乗り継いで3時間近くを掛けてエンリック・ミラージェスが手掛けた図書館を見に行った帰り(地中海ブログ:バルセロナからの小旅行その2:エンリック・ミラージェス(Enric Miralles)とベネデッタ・タリアブーエ(Benedetta Tagliabue)(EMBT)のパラフォイス図書館(Biblioteca Publica de Palafolls):空と大地の狭間にある図書館)、思い掛けず時間が余ってしまった事などから、「せっかくこんな遠くまで来たんだし、帰り道で何処かに寄って行こうかな」くらいの勢いで偶々来たのがこの町だったんですね。



で、着いたのが丁度お昼時(15時くらい)で、「観光する前に何処かで昼食を」と思い、町中をぶらぶらとしていた時の事、偶然にも目に入ってきたのがこの建物だったという訳なんです。



では一体、このレストランの何がそんなに凄いのか?言い換えると、僕の心をそこまで惹き付けた要因は一体何だったのか?

ずばり言います。それは、このレストランへ来ると「食事というのは料理の味だけではなく、それを食べる空間的な質、そしてそこに流れる雰囲気が非常に重要なんだ」という事を教えてくれる点に尽きます。そう、食事とは味覚や嗅覚だけでなく、知覚や触覚、ひいては聴覚までをも総動員して楽しむ総合芸術なのです。



日々の忙しさに追われている我々現代人は、ともすればそんな基本的な事をも忘れがちなんだけど、このレストランへ来ると、そんな我々人間が生きていく上で「非常に重要な何か」を思い出させてくれるかの様なのです。

と言う訳で、仕事をさっさと済ませて今回も早速行ってきたと言う訳なんですね。軽やかなステンドグラスで彩られたドアを開けると、僕達を出迎えてくれるのがこの風景:



2層吹き抜けの高い天井に、まるで天まで上っていくかの様な階段の登場です。



この直ぐ脇には家族や友人達とちょっとしたプライベートな雰囲気で食事を楽しむ事が出来ちゃうスペースが用意されていました。



この空間が又凄くって、例えばこの天井の素晴らしい事!



モデルニズム建築の特徴の1つ、壁を覆っているタイルや鉄細工といったもの全ての要素が一体となり、一丸となってこの空間を非常に特別なものにしている事が分かります。



ちなみに2階もあって、こちらはこれまた大変落ち着いた雰囲気の空間となっていました。‥‥と、そうこうしていたら僕の席の準備が整ったとの事。案内されるがままについていくと、そこに展開しているのがこの風景:



じゃーん!圧巻の大空間の登場〜!



この空間の中央にはナカナカお目に掛かれないくらいの質を持った暖炉が置かれています。



初めてこの空間に通された時は、「え、ここで食事しても良いの?本当に?」とか、戸惑ってしまった事を今でも覚えています。それほど素晴らしい空間なんですよ!



美味しそうなワインもこんなに一杯!



で、今回はお昼のランチメニューを頼んだんだけど、この空間があまりにも素晴らしかったので、料理の写真取るの忘れた!何たる失態(悲)。料理記者歴4年程度の僕(料理記者歴40年の岸朝子さんには未だ未だ遠い!)が料理の写真を取り忘れるくらいこの空間が素晴らしかったと、そう思って頂ければ幸いです。で、唯一撮ったのがコチラ:



じゃーん!海辺の町の定番メニュー、海産物のパエリアでーす。海産物の出汁が凄く利いてて、久しぶりの「大変美味しゅうございます!」。



締めは勿論コーヒーで。



満足、大満足です!今日頂いた料理はどれも美味しく、一品一品の質だけを取り上げても、バルセロナを代表するパエリアの名門店エルチェに負けずとも劣らない質を持っていると思います。しかしですね、それ以上にこのレストランでの食事を特別なものにしているもの、それは紛れも無くこの建築に展開している空間の質だと僕は思います。



同じ料理を「まばゆいばかりの光りが燦々と降り注ぐ洗練されたデザイン空間の中で食べるのか」、はたまた「日も当たらない様な狭い空間の中で食べるのか」によって、その人の料理に対する満足度は確実に変わってくると思います。料理って、味だけでなく、どういう空間で食するのかっていう「空間的な要素」が非常に重要であり、そしてその評価を考慮に入れる必要があると思うんですよね。

そんな「感じが良い」とか「素敵な空間」と言った、今までは言葉でしか語られてこなかった事、それをキチンと数値化して定量化する事、云わば、建築をサイエンスの分野にまで引き上げる事、それこそ僕がこの数年間格闘している事でもあるのです。

そんな事を思わせてくれる非常に素敵なレストラン。星三つです!
| レストラン:バルセロナ | 22:21 | comments(8) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
すっごい内装のレストランですね!
たしかに「え、ここで食事していいの?!」って気分になりそう(笑)。
お金持ちのパトロンでもついてるんでしょうか。
ドラクエ3の王宮のロンドの曲がぴったりです。
レストランマークはゴーストバスターズのパクりかと思いましたw
| | 2013/03/25 9:23 PM |
こんばんは。
お初にお目にかかります、マナと申します。
此度は、はじめて訪問させていただきました。
大人びていて静寂な感じがするブログと感じ、またこちらのブログが好きになりました、

ともて綺麗なレストランですね、本当にcruasanさんの述べたようだと思いますが、もしも不慣れな人がレストランに入ってしまっては緊張をするのではありませんか?
それとも、ウェトレスさんが気さくなのでしょうか。

また、度々お邪魔させて頂きます。
突然のぶしつけな質問、失礼致します。
| マナ | 2013/03/26 11:52 PM |
お目にかかったことはないのですがブログは時々見せていただいておりますから昔からの知り合いのようです。カネットは外尾さんの家があるらしいのですが、そうではなく私もこのレストランを目指して食事に行ったことがあります。ドメネクの記念館も展示計画をやったのは、元スタッフのDavidだったりして、何か近親感のある街です。まだ実現していないのですが、外れにドメネクの手になった城がありますよね。あそこに行ってみたいと思っているのですが中々チャンスがありません。ボストンから帰ったら一度家にも遊びに来てください。
| tange | 2013/04/02 9:47 PM |
陽さん、こんにちは。コメントありがとうございます。

ドラクエ3!!正にそんな表現がピッタリのレストランです(笑)。しかもこの街には沢山のモデルニスモの建築がそこここに散在しているので、本当にドラクエの世界そのものです。
| cruasan | 2013/04/25 9:43 PM |
マナさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

ヨーロッパ、特に地中海のレストランというのはそんなに肩肘張った所はあまり無いと思うので、誰でも気軽に入れる所が多いと思います。特に今回紹介したレストランなどは、子供を連れた家族連れの方が多かったです。それでも気になる人は、個室もあったのでそちらで‥‥という事なのだと思います。

地中海のビーチが直ぐそばにあり、本当におすすめのレストランです!
| cruasan | 2013/04/25 9:48 PM |
Tangeさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

お目にかかった事はありませんが、Tangeさんの書かれた書物などを通して本当に沢山の事を学ばせて頂いております。ありがとうございます。

実は今日本に来ておりまして、バルセロナに帰ったら是非一度お目に掛かりたいと思っております。その際は是非宜しくお願い致します!
| cruasan | 2013/04/25 9:51 PM |
日本ではすれ違いでしたね。しかもIさんの教え子とは世間狭いですね。
| tange | 2013/05/03 9:26 PM |
Tangeさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

そうそう、日本では本当にすれ違いでした!
ハイ、Iさんには何時も大変お世話になっております。名古屋に帰ってくるたびに美味しいお店に連れて行ってもらい、本当に面白いお話など聞かせて頂いております。

ホント、世間は狭いです(笑)。
| cruasan | 2013/05/12 10:17 AM |
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