地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ルイス・カーンのフィリップ・エクセター・アカデミー図書館(Phillips Exeter Academy Library):もの凄いものを見てしまったパート2:全く同じファサードが4つデザインされた深い理由
前回のエントリ、ルイス・カーンのフィリップ・エクセター・アカデミー図書館(Phillips Exeter Academy Library):もの凄いものを見てしまったパート1:行き方の続きです。ボストン市内北駅から電車で約1時間ほど行った所にあるExeter駅を出て、更に15分ほど歩くと僕達を出迎えてくれるのがこの風景:



緑豊かなキャンパスの中に、レンガ造の校舎と調和をなすかの様に建っている四角い形をしたごくごく普通の建築、これがルイス・カーンの傑作、エクセター図書館の佇まいです。一見何の変哲も無い、正に「何処にでもありそうな建築」なんだけど、よーく見てみると、その外観からしてもう既にこの建築が普通じゃない事が分かります。



各面を構成するファサードが恰も独立面であるかの様に本体部分から切り離され、それ自体で自立しているかの様な表現をとっているんですね。先ずはこの「独立面である」という事を強調するデザインが結構面白い。



四角形の隅と隅を直に合せず、「面である」という特徴を保持する為に一歩下がった所で斜めに2つの面を繋いでいます。この斜めに切られた部分には階段やらトイレやらと言った空間が収納されている事が容易に推測出来ます。外観から内観のプランを簡単に想像出来るという事、カーンはサラッとやってるけど、これはこれでかなり凄い事ですよね。このさり気無さが溜まらない(笑)。次にファサードの構成を見てみます。



規則的に並んでいる長方形の大きな大きな窓は、よく見ると、1つの窓が上下2つの部分から構成されている事が分かります。



上半分は大きな一枚ガラス、下半分はコレ又2つの部分に分割されていて、上部はガラス、下部は明るめの色の木で構成されています。



それらガラスと木が銀色のアルミを介して繋がれてるんだけど、赤褐色のレンガと温もりを感じさせる木が素晴らしいハーモニーを醸し出し、正に一本の線すらも動かし難い程のデザインクオリティを実現しています。



今度はちょっと離れた所から見てみます。ファサードは大きな窓を単位として、それが5層積み上げられる事によって構成されているのですが、それらの窓のデザインが一番上と一番下とで違う表現をとっている事に気が付きますね。先ずは上から:



レンガ造という一見重たくなりがちなその表現を軽く見せるかの様に、一番上の部分に開口が設けられ、そこから真っ青な空が見え隠れしています。



逆に足下に目をやれば、こちらには何やら列柱で構成されているコロネードが展開してるっぽい。



つまり、四角形の窓という単純な形の繰り返しを基本としつつも、そのリズムを崩さずに、上と下とで違う表現をとっている訳ですよ!これら全てが一体となり、図書館を取り囲む4つの面を「独立した面」として扱う事に成功しているのです。

フムフムと思いながら、取り合えず図書館の周りをグルッと回ってみます。実はこの図書館、遠くから見た所では、4面とも全く同じ形、同じファサードをしているので、何処に入り口があるのか分からない様になっているんですね。もう一度回ってみます。



‥‥やっぱり何も無い‥‥不思議だ‥‥。と言うのも、ルイス・カーンという建築家は(大変良く知られている様に)「建築の初源」というものをトコトン突き詰めた上で建築デザインをする事で知られているからです。そんな人が何故、その建築との出逢いにとって最も重要な機能とも言える入り口を隠したのか?

‥‥僕は腑に落ちない事があると分かるまで考えないと気が済まない性格なので、「何故だろう?」と思ってしまったら最後、その後1時間近くを掛けてこの図書館の周りをグルグルと周り始める事になっちゃいました(笑)。で、20週くらいした時の事、ふと思いました:

「あれ‥‥実はルイス・カーンって、僕が今しているみたいに、訪問者にこの図書館の周りをグルグルと回って欲しかったんじゃないのかな?」

と。そう、彼は多分、訪問者にアプローチから直接図書館の入り口へ向かって欲しかったのではなく、周りをグルグルと回って欲しかったのだと思います。

何故か?

それは、彼独特の建築哲学である「初源に返る」という事を考慮すると、「本との出逢いを深める為」もしくは、「本との出逢いの為に心を落ち着かせる為」と言う事になるんだろうけど、ここではちょっと別の解釈を試みたいと思います。もう一度回ってみます。先ずは正面から:



その裏側:



又その裏側:



最後の面:



全く同じでしたね(笑)。

ちなみに下の写真は上と同じ4面を夕方に見た所(僕は本当にねちっこい性格なので、朝昼夕と各1時間くらいずつグルグル回っていたのです。良い子のみんなは真似しない様に。変人に間違われます(笑))。先ずはこのエントリの一番上の写真と同じアングルから:



そしてその裏側から見た所:



何が違うか分かりますか?

建物は同じです。建築のデザインも同じです。何故なら建物は動かないし、そのデザインはどうやったって変わらないからです。しかしですね、その一方で、南側と北側、西側と東側とでは明らかにファサードの印象が違います。特に朝方と夕方とでは、そのファサードは全く違うものになっている事に気が付くかと思います。

何故か?

何故ならそれは建物の背景を成す自然が動いたからです。主役である筈の建物(図)の背景(地)が動いたから、全く動かない筈の建物の印象が劇的に変わったのです。

この建築を通してカーンは一体何が言いたかったのか?

それは「自然とは見方によってこんなにも違うんだよ」、「世界とは見る角度によって同じものでも全く違う様に見えるんだよ」と、そういう事を言いたかったんじゃ無いのかな?それが言いたいが為に、ルイス・カーンという建築家はわざわざこの図書館の4面を全く同じデザインにしたのです。動かない建築の周りの自然を動かす事によって、同じであるはずの建築ファサードに変化を付け、その様な差異を通じて、この世の摂理を教えようとしたのです。

間違っちゃあいけないのは、これはあくまでも僕の解釈であるという事、そして僕はこの様にしてこの建築を理解したという事です。



この解釈が合っているか?間違っているか?、何が正解で何が不正解なのか?なんて事は全くどうでも良い事なのです。そもそも建築の解釈に正解なんて存在しないのだから。大事なのは、この様な自分なりの解釈をどう自分の中に吸収し、それをどうやって今後の作品や人生に活かすかという点だと思います。

ルイス・カーンという建築家の建築を見ていると、不思議とそんな大それた事を考えてしまいます。いや、考えさせられてしまいます。この建築は一筋縄ではいかない、そう僕に思わさせてくれる程、奥が深い建築なのです。

ルイス・カーンのフィリップ・エクセター・アカデミー図書館(Phillips Exeter Academy Library):もの凄いものを見てしまったパート3:内部空間編に続く。

P.S.
さっき銀河鉄道999の最終回を見てたんだけど、そうしたらこんなやり取りがされていてビックリ:

 

メーテル:(手紙で)「鉄郎‥‥とうとうお別れの日が来ました。あなたが独り立ち出来た時が、あなたと私の別れの時でもあるのです。いつかは必ずこの日が来る事を覚悟しながら、私は旅を続けて来ました‥‥」

ナレーション:「人は言う、999は少年の心の中を走っている列車だと。鉄郎はふと思う。鉄郎の旅は、はじめから鉄郎一人の旅ではなかったのだろうかと。メーテルは鉄郎の青春を支えた幻影。沢山の若者の胸の中で生まれ、通り過ぎてゆく明日への夢。

いま万感の想いを込めて汽笛が鳴る。
さらば鉄郎。
さらばメーテル。
さらば銀河鉄道999。
さらば少年の日よ‥‥」


な、何―!メーテルは青春の幻影だったのか!若者にしか見えない時の中を旅する女だったのか! 永遠に生きられる機械の身体が良いのか?もしくは短いけれども、短いが故に一生懸命生きられる生身の身体の方が人間として幸せなのか?っていう、恐ろしく深いテーマを掘り下げている銀河鉄道999。ここにきて、メーテルまで青春の幻影だったとは‥‥。何処まで深読み出来るんだ、この漫画(笑)。

やっぱりもう一度きちんと読み直す必要あり。バルセロナに帰ったらゆっくりと読み直そう。
| 建築 | 09:49 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
ご無沙汰しております。
カーンの建築、見に行きたいです!
来年のゴールデンウィーク狙って、先ずはキンベルを見に行こうって考えてます。

このファサードの体感、パラディオのロトンダ見に行ったときに同じように感じました。同じファサードを繰り返すことって間違えると質素になりそうですが、様々な仕掛けが隠れているからこそ、傑作になるんですよね!

あぁ、カーン見たい!
| travelman | 2012/12/16 12:20 PM |
Travelmanさん、ご無沙汰です、お元気ですか?

カーン、僕も初体験だったのですが、かなり良かったです。と言うか、凄かったです!キンベル美術館!僕も今回の米国滞在中に是非行けたらと思っています。
| cruasan | 2012/12/24 12:28 AM |
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