地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ボストン美術館に再現されているカタルーニャ・ロマネスク教会
今年はガウディが設計したカサ・ミラ(La Pedrera)が竣工して100周年になるらしく、先週末バルセロナでは曲がりくねったカサ・ミラのファサードに3Dマッピングを映写するという記念行事が行われていた模様です。
 

その様子が地元の新聞La Vanguardia紙にアップされていたので見てみたら、これが意外と面白かった!2ヶ月くらい前にはカサ・バトリョで、そのちょっと前にはサグラダファミリアで3Dマッピングがされたっていう報道がされてたと思うんだけど、最近流行ってるのかな、3Dマッピング?



さて、ボストンにはボストン美術館という世界有数の規模を誇る美術館があるのですが、毎週金曜日の午後にはこの美術館でゆったりと美術鑑賞をするって言うのが最近の僕の日課となりつつあります。



フランス印象派や古代彫刻、はたまたアジア美術コレクションなど世界各地から集められた素晴らしい作品が目白押しなんだけど、僕が毎週ココに通う理由、それは‥‥タダだからです(笑)。実はこの美術館、ボストン市内の幾つかの大学と提携を結んでいて、MITのIDを持っていると入館料が無料になるんですね(嬉)。



ちなみに一般入館料は幾らかっていうと、これが無茶苦茶高くて、その額なんと20ドル(驚)!いつもお世話になってるパリのルーブル美術館ですら15ユーロ、ヨーロッパ3大美術館に数えられるマドリッドのプラド美術館だって12ユーロなのにボストン美術館20ドルって、ちょっと取り過ぎじゃないですかね?まあ、それにしても「20ドルが無料になるのは大きい!」と言う訳で「行ける内に出来るだけ行っちゃおう」っていう貧乏根性丸出しの理由から(苦笑)毎週の様に通っているという訳なんです。



美術館がある場所は、これ又いつもお世話になってるNortheastern大学の真ん前。1876年開館というだけあって、結構格式高い建築が僕ら来館者を迎え入れてくれます。



何でもこの美術館、最近増改築されたらしく、現代美術の為の真新しい展示室があったり、緑に囲まれた中庭があったかと思うと、奇麗でお洒落なレストラン兼カフェに出会したりと、1日いても楽しめる空間構成になっているんですね。



その中でも僕が非常に驚いたのが(上の写真の)贅沢な大空間に配置されたレストラン兼カフェ。何がそんなに驚いたかって、金曜日の夜7時頃になると大音量のBGMが流れ出し、明らかに「ゆったりと美術鑑賞しに来たという格好じゃない人達」で溢れ出し、あっという間にクラブに変わっちゃうからなんです。「こんな美術館の使い方は見た事が無い」という意味において、結構斬新かなーとは思う。



一方収蔵品の方はどうかというと、この美術館の売りの1つは「充実したフランス印象派絵画」らしく、確かに2階には「印象派の部屋」なるものがあって、ルノアール、モネ、ゴッホなんかが所狭しと並べられてるんだけど、個人的には同じ部屋に展示してあったロダンの彫刻の方がよっぽど僕の眼を惹いたかな(ロダンについてはコチラ:地中海ブログ:パリ旅行その5:カミーユ・クローデル(Camille Claudel)の芸術:内なる感情を全体で表している彫刻作品、もしくは彼女の人生そのもの)。



あとはターナーが2点、前々から見たかったモネによる「ジャポネーゼ」は貸し出し中なのかどうなのか知らないけど、展示されてなくて残念と言った所。続いて古代彫刻の部門を歩いていたら珍しいものを発見。あ、あれはー:



アテナだー!何故アテナがこんな所に!6年程前、ギリシャに行った際にアテネ国立考古学博物館で見て以来でしょうか(地中海ブログ:ギリシャ旅行その2:パルテノン神殿とエレクティオン神殿)。



ルーブルにもローマ時代に創られたアテナの彫刻が一体所蔵されていたと思うんだけど、首から上が失われた状態だったと思います。ボストン美術館に所蔵されているアテナ像は、これまた紀元前2−3世紀に創られたもので、大きさは1メートルちょっとくらいと結構大きめ(ちなみにパルテノン神殿に飾られていたとされるオリジナルは12メートルくらいあったそうです)。まあ、両腕が無いので右手に持ってる筈の勝利の女神ニケと、左手に握ってる筈の盾は見られませんけどね。


(アテネ国立考古学博物館のアテナ像)
でも、やっぱりアテナとか見ると興奮するなー。正に気分は聖闘士星矢(笑)。と、こんな感じで盛り上がってきた所で、次はボストン美術館が世界に誇るお宝中のお宝に接近ー!それがコチラです:



そう、何を隠そうボストン美術館は日本美術のコレクションでは右に出るものがいないと言われる程、質量共に充実している事で知られているんですね。

「‥‥って言っても、実家の近くにある徳川園には結構通ってて、国宝級日本美術には結構眼が慣れてるんだけどなー」とか生意気な事を言っていたのも束の間、ハッキリ言って度肝を抜かれました!ヨーロッパの主要美術館は殆ど行ったと思うんだけど、これ程のコレクションは見た事がありません。流石、フェノロサと岡倉天心が収集に関わったってだけの事はある。ちなみに今僕が住んでいるアパートは、MITとハーバードの丁度真ん中にあるCentral Squareっていう広場の近く、BIGELOWという街路に住んでるんだけど、BIGELOWという名、どっかで聞いた事がある様な‥‥って思った人はかなり勘が良い。


(ウィリアム・スタージス・ビゲローさん)
そう、近代日本の黎明期にフェノロサと共に日本に滞在し、日本美術をこよなく愛したが故に、浮世絵や絵画だけでなく、漆工や刀剣甲冑などをも収集し、ボストン美術館のコレクションの基礎を築いた人物、ウィリアム・スタージス・ビゲローその人なのです!(どうでも良いボストンのマメ知識終わり)。

で、ですね、ボストン美術館の日本美術コレクションの一体何が凄いのかって、僕が非常に感動した理由がコチラです:



大仏像などを展示する為に、お寺の一角をそのまま再現しちゃってる所なんですね。この為だけに設えられた展示室は真っ暗になっていて、その暗闇の中で、大仏やら不動明王やらが影と共に浮かび上がる訳ですよ!



今まで数多くの美術館を訪れてきて思う事なのですが、美術作品というものは、それが元々置かれていた雰囲気の中で見るのと、美術館の真っ白な壁(ホワイトキューブ)に行儀良く掛けられているのを鑑賞するのとでは、伝わってくるメッセージが全く違うと思います。理由は至極簡単で、建築家を始め芸術家というのは、その作品が置かれるコンテクストを計算した上で作品を創作するからです。



それは特にヨーロッパの宗教画に言えると思うんだけど、例えば光と闇の劇的なコントラストが見所となっているカラヴァッジョの絵画を美術館の展示室の中で見るのと、暗闇が支配する教会の中で見るのとでは大変大きな違いがあるという事です(地中海ブログ:プラド美術館の成した歴史的大発見:ピーテル・ブリューゲルの新作発見)。



やっぱりカラヴァッジョの絵画と言うのは、それこそロウソクの明かりしか無い様な雰囲気の中で不意に出会すのが良いと思います。薄暗がりの中でスポットライトを当てられた人物だけが微かに浮かび上がっているという、そういう所を見ないと彼の絵の本質というのは分からないと思うんですね。



全く同じ事が日本美術にも言えて、大仏像や阿修羅像を煌々と照明が炊かれた展示室の中で見ても、その本質というのは全く理解出来ないと思います。それは一度でも日本のお寺を訪れ、あのひんやりとした空気の中で奥の方に鎮座している仏像の姿を見た事がある人なら誰しも感じる所。



もっと言っちゃうと、大仏像が金色で出来ている理由、それは真っ暗なお寺の一番奥に鎮座する事によって、入り口から入ってくる僅かな光をその身体全体で捉え、鈍く光る事で威厳を醸し出しているからなんですね。



そんな大仏像が「お寺というコンテクスト」を剥ぎ取られ、大仏様だけ日の元に晒されてしまったら、それこそ最近増えてきた中国系の100円ショップに並んでる金色の招き猫とそう変わらなくなってしまいます(苦笑)。

そして、そして、このボストン美術館の中で個人的に一番興味を惹かれたのがコチラです:



じゃーん、何とこの美術館、カタルーニャのお宝中のお宝、カタルーニャ・ロマネスクを所蔵しているのです!しかもロマネスク教会の壁ごと引き剥がしてきたらしい(苦笑)。作品プレートには、「Christ in Majesty with Symbols of the Four Evangelists, about 1150-1200」とある。ピレネーの山奥にある小さな「海の教会」の後陣から持ってきたものだそうです。



ロマネスクの保存方法については地元カタルーニャでも賛否両論が入り乱れてて、「雨風に露出している美術作品を引き剥がして展示室で保存する事がいいのか?」もしくは「美術作品と言えども元々あった場所からは動かさず、自然の理に任せて朽ちさせていく方が良いのか?」など非常に難しい所なのですが、展示方法という観点で見た場合、この様に教会堂の後陣を再現し、そこに壁画を展示するという方法は非常に秀逸だと思います(地中海ブログ:国際博物館の日:世界屈指のロマネスクコレクションが凄いカタルーニャ州美術館(MNAC))。



何故かと言うと、そうする事で、現地に行く事が難しい鑑賞者に少しでもロマネスク美術とそれが置かれていた雰囲気を理解してもらい、ロマネスクに関する鑑賞者の理解を多いに助ける事が出来ると思うからなんですね。



まあ、山奥の教会から壁画を引き剥がしてきたって事は(日本美術と同様)お宝流出と言えばそれまでなんだけど、カタルーニャに行く事の出来ない圧倒的多数のボストン市民の人達に、カタルーニャ・ロマネスクの素晴らしさを眼にしてもらう機会を与えているという意味においてボストン美術館には多謝したいですね。



このカタルーニャ・ロマネスクの前に展示されていたマリア像、実はカタルーニャのものではなくフランス地方のものであるって事には眼を瞑る事としよう(笑)。
| 大学・研究 | 11:38 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
わーいいなー、ボストン美術館だったら史上最強の画家(私の中では)・等伯や宗達も見れる。それもタダなんて〜、許せん(いやCruaさんだから許す)。

ところでビゲローさん、え?ひげ郎さん?って勘違いしたのは私だけではないはず。だってこの写真の下に説明だし。江戸川乱歩、みたいなモジリ日本名付けたおっちゃんなのかと思いました。

ボストン寒そうだけど、インドア生活もエンジョイしてなかなか楽しそうにやってるね!やっぱなんだかんだ言って都会なんだなあ。田舎のカタルーニャ国(じゃないよ、まだ)に戻ってくる気が失せた・・・なんてことはないよね?(図星だったりして)お茶友カムバック!
| ay | 2012/12/06 10:16 AM |
ayさん、お久しぶりです、お元気ですか?
コメントありがとうございます。

ひげ郎さん、かなり笑いました!そういう捉え方もあったんですね。いやー、さすがayさんです!

ボストンはとにかく寒いです。10月下旬だというのに雪が降ったり、12月初旬の今ですらフル装備なので、冬本番になったらどうやる事やら‥‥。

ボストンのインドア生活もなかなか楽しいのですが、こっちに慣れれば慣れる程、バルセロナの異常な程のエンターテイメント性、過ごし易さ、そしてあの都市の生活の質の高さが身に染みて分かってきます。いや、やっぱりバルセロナの活気は尋常じゃあないです。

という訳で帰る気満々です(笑)。3月に又お茶でもしましょう。今から楽しみにしています!
| cruasan | 2012/12/08 1:24 AM |
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