地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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フランク・ゲーリーの建築その2:スタタ・センター(Stata Center)の内部空間
最近のボストンはめっきり寒くなってきて、未だ9月下旬だというのに朝晩はジャケットが必要なくらいの冷え込みになってきました。暖かいバルセロナの気候に慣れた僕からしたら、「12月とかの冬本番になったら、一体どうなるんだ?」って、正直今からちょっと怖いくらいです。



現在僕が住んでいる地区(仮住まい)は、ボストン市に隣接するブルックライン市という所なのですが、何でもこのエリアは全米でも上位にランキングされる公立学校(中学高校)があり、教育レベルが非常に高い事などから、比較的裕福な人達がこぞって住むエリアなんだとか。そう言われてみると、確かにボストン市と比べ歩道は奇麗だし驚くほど緑は多いし、何より安全!



バルセロナに長く住んでいると、危険エリアや危険な雰囲気をいち早く察知する「危険センサー」なるものが知らず知らずの内に身に付き、イザという時にはそれが作動するのですが、ブルックライン市ではそのセンサーが感知する様なものは全く無くて、ハッキリ言って「日本よりも安全かも」と、そう思うくらいの環境が周りには広がっています。しかしですね、そんな超安全エリアにおける唯一の危険物、と言うか、毎朝僕が家を出る度に闘わなくてはならない相手、それがコチラです:



そう、何でか知らないけど、家から駅に向かう途中にいつも4匹の野生の七面鳥がいて、どういう訳か彼らは人を追っかける習性があるらしく、毎朝この七面鳥に追っかけられながら駅へ向かう訳ですよ(苦笑)。大体、野生の七面鳥が生息してるって言う所からして驚きなんだけど、これが又相当デカイんだな!最初は無視してたんだけど、くちばしが僕の腰の辺りまであるので(ちなみに僕の身長は175センチ)、実はかなり怖い(苦笑)。って言うか、何で追っかけてくる訳???



街路の至る所には、「七面鳥に気を付けて!」という表示が‥‥。豊かな自然が広がるこの辺りには、七面鳥の他にもリス、スカンク、そして狐や狸と言った小動物まで出るそうです。



さて、前回のエントリでフランク・ゲーリー設計によるMITのスタタ・センター(Stata Center)を取り上げたのですが(地中海ブログ:フランク・ゲーリーの建築:MITのスタタ・センター(Stata Center))、最近仲良しになった深見嘉明さん(慶応大学からスタタ・センターの中に入ってるWorld Wide Web Consortium (W3C)にいらっしゃってる方)と山田宏樹さん(インターネット・アカデミー、ボストン商品開発研究所、所長で同じくW3Cに訪問滞在されている方)が、「もし良かったら中を案内しましょうか?」と声を掛けてくださり、「これはチャンス!」とばかりに図々しくもお願いする事に。と言う訳で、今回は「内部の人じゃないと絶対に知らない&入れない所(MITの学生なら立ち入り可能エリア)」にまで入らせてもらっちゃいました。



今回の訪問で教えてもらったんだけど、実はこのスタタ・センター、内部は事実上3つの建物に別れてて、それらが複雑に入り組み合っているんだそうです。だから予め道筋を知らないと迷う事間違い無し!と言う訳で、深見さんと山田さんのご案内の下、ルンルン気分で最初に訪れたのが7階です。エレベーターを降りると、先ず目に飛び込んで来るのがこの風景:



前面ガラス張りの共有スペースなんですね。



大変気持ちの良い大きな大きなガラス窓からは、様々な素材と色、そして形で仕上げられた形態達と、それらが醸し出すハーモニーを存分に楽しむ事が出来ます。各階の各研究室にはこのホールからアプローチすると言う空間構成になっているので、この空間が事実上の「顔」。そういう意味において、入った瞬間に前面ガラスからカラフルでダイナミックな形態の共演が目に入ってくると言うのは、演出としてはそれほど悪くは無いと思います。そんな事を思いつつ、ちょっと左手方向を見たら、何やら珍しいものが置いてある‥‥あ、あれはー:



巨大なチェス版!さ、さすが数学大好きなMIT(笑)。「虚数だけが僕の友達さ〜」って言ってる学生が多いって言う噂もあながち嘘じゃないかも(苦笑)。



で、その脇には木を素材とした大変魅力的なクルクル階段がー!前回も書いたんだけど、この建築はアルミなどと言った「寒い素材」を多用している様に見せつつ、実は要所要所に木を使ってて、それが内部空間に暖かみを醸し出し、外観とは好対照を成す事に成功していると思います。そしてこの階段の上から下階を見下ろすと、先程の巨大チェス版がこんな風に見えるんですね。



この階にも至る所に共有スペースが用意されていて、空間的に大変ゆったりとした作りになっています。‥‥個人個人が疑問に思った事を直ぐに同僚なんかと議論する事が出来、それがオープンスペースで行われるが故に、偶々それを見た別の同僚がアイデアを出していく‥‥その結果、お互いが相乗効果を生んで全く新しい案が生まれていく‥‥って言う、そういう物語がハッキリ見え、正に建築の空間構成がそれらを促進しているかの様ですらあります。そしてこの建築では「それが全てなのかなー」、と、そう思わない事も無いかな。



フロアを歩き回っていると気が付く事は、ところどころに様々な形のヴォイドが配置されていて、その下が大変広々とした研究スペースになっていると言う事です。そう、実はこの建築、2層一組のメゾネットタイプになっているんですよ!だから下階を歩いていると、天井が非常に高い研究室や共有スペースに出会し、逆に上階を歩いていると、様々な形のヴォイドに出会ったりすると言う訳なんです。そしてその事は、ここに展開されている空間が如何にバラエティに富んでいて、3次元的な空間が様々に入り組みつつ構成されているかという事の裏返しでもあるのです。



この階の突き当たりには、カンファレンスを開く事が出来る、これ又非常に天井の高い空間が用意されていました。丸やら楕円形やらと言った不規則な形をした空間と共に、オプションとして標準的な四角形の空間をも用意出来ている所は流石ゲーリーと言った所でしょうか。



こちらはもう1つ下の階のエレベータホール。先程の巨大チェスがあった空間とは一転、ぬいぐるみやヤシの木、そしてソファーなんかが置かれ、上階とは全く違った空間が展開されています。良く見ると、この階にはこんなオープンスペースが:



ホワイトボードを取り囲む様に椅子達が並べられ、今正に議論が終わったばかりと言わんばかりの雰囲気ですね。さて、ここで最上階の9階へ行ってみます:



エレベーターを降りると、コレ又目の前が前面ガラス張りの共有スペースに出会します。コチラのオープンスペースは、この建物に入ってる研究室みんなが使う事が出来る共有スペースらしく、直ぐ横には簡単なキッチンや冷蔵庫、コーヒーメーカーなんかが置いてあって、そこでコーヒーを勝手に作って休憩がてらここで飲むという事らしい。と言う訳で、僕も一杯頂いてきました(笑)。



さて、ここから一気に5階へと降りて行き、お隣の建物へ移動してみます。上述した様に、このスタタ・センターは3つの独立した建物からなっていて、それが内部通路で結ばれているんだけど、3WCからお隣の建物へ移動する際にはこんな感じのブリッジで移動する事になります:



色んな要素が一緒くたになり、正に遊び心満点って感じの空間と言った所でしょうか。そして見下ろすとこの空間:



前回のエントリでも紹介した、光が燦々と降り注ぎ、外装に使われているアルミなどの仕上げがガラス屋根で反転し、それがそのまま内部の仕上げになるというテクニックを使っている空間です。家具などには木を多用する事により暖かみを醸し出しつつ、大変リラックス出来る空間に仕上がっていると思います。



「あー、ゲーリーってこういう空間も創るんだー」と、そう思わされる瞬間です。丁度この裏側には簡単なカフェ兼レストランが用意されていて、簡単な食事やコーヒーなんかが支給出来る様になっていました。その内側にはこんな空間が広がっていました:



真っ青な空間の登場〜。閉じた空間に天窓から降り注ぐ光が、大変美しい青のグラデーションを創り出しています。



これがこの空間へ入る為に使ったエレベーター。



実はここもメゾネット方式になっていて、下を覗き込んでみると、出窓に花瓶が飾られた、ちょっとお洒落な空間が展開されていました。

総じてゲーリーのStata Centerは、外観同様、空間が非常にダイナミックに入り組み、3次元的に構成されていて、「次はどんな空間が待ち構えているのかな?」と、歩くのが非常に楽しみになる、そんな建築だと思います。又、1つのユニットを2層一対にする事によって、天井操作を可能とし、空間にメリハリを付ける事に成功していますね。

この様な、3次元的な立体構成センスはちょっと凄いと思う。



そして何度でも繰り返すんだけど、この建築の特徴を決定付けているのは、明らかに共有スペースの存在です。この建築のあらゆる所にあらゆる形と大きさで取られている共有スペース、そこへ自由に出入りして議論に花を咲かせている学生や先生達。この建築は、そんな彼らの活発な議論の背景となるべく存在している、そう思えてくる程です。

ゲーリー建築の内部空間をこれだけしっかりと見たのは今回が初めてだったんだけど、外観だけではなく、内部空間にもしっかりとした見所があると、そう僕に思わせてくれるに十分な質を持った建築でした。

追記:
慶応大学の深見嘉明さんからご指摘を頂いたのですが、今回ご案内して頂いた所は全てMITの学生なら見学が可能だと言う事です。と言う訳で、今回の訪問では、立ち入り禁止区域に入ったり、規則違反をしたりと言った事は全くしていませんのであしからず。

| 建築 | 23:08 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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