地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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スペインのガリシア地方にある元貴族の居城を改築したレストランその2
長かった様な短かった様なガリシア地方滞在も終わりバルセロナに戻って来たんだけど、8月中にやらなきゃいけない事が溜まりに溜まってて、帰って来てる筈なのにバルセロナには殆ど居ないという状態が続いています(悲)。実はこのエントリも空港から書いてて、「地中海に帰ってきた途端に忙しさと暑さで日常生活に引き戻されるのもチョットなー」とか思うので、しばらくは楽しく快適だったガリシア滞在を思い出して書いてみる事にします。



ガリシア地方にはローマ時代に作られた遺跡だの中世に繁栄を誇った貴族の居城なんかが所々に残ってるんだけど、と言うのもこの地方はスペインの中において最も貧乏な地域に分類され、慢性的な貧困に苦しんできたが故に都市開発を行う為の資金が無く、偶々それらの遺産が残されたという背景があるんですね(地中海ブログ:パン屋さんのパン窯は何故残っているのか?という問題は、もしかしたらバルセロナの旧工場跡地再生計画を通した都市再活性化と通ずる所があるのかも、とか思ったりして)。高い山々などが連なり、それら豊かな自然が他地域との断絶を促したっ言う背景もあるんですけどね。



僕が滞在していた村から車で20分くらい行った所にも、昔の居城を改築したと見られる4つ星ホテル兼レストランがあって、暇を見つけてはコーヒーを飲みに行ってたんだけど、「たまには」と思い、滞在中にランチを楽しんできました。と言うのも、去年このお城を発見した時に食べたランチが非常に美味しく、又とてもお値打ちだったので今年も訪問してみたという訳なんです。



何がそんなにお値打ちなのかと言うと、実はこのレストラン、かのミシュラン推薦のレストランなのに、お昼の定食メニューが何と15ユーロという超お値打ち価格なんですね。パン、飲み物、デザートに食後のコーヒーまで付いてこの値段っていうから驚きです。で、何より僕が気に入っているのがこのレストランを取り囲んでいるこの風景:



裏側には緑溢れる中庭空間が広がっていて、それを取り囲む様にホテルの個室やら、家族で過ごせるコテージなんかが配置されているんですね。



更にその広大な敷地内には、昔この地方で使われていたと見られる農具なんかが鏤められていたりして、気分はもう中世って感じ(笑)。その中でも面白かったのがコチラです:



Horreoと呼ばれる、この地方によく見られる昔ながらの穀物庫を再現したモノっぽいんだけど、ネズミや小動物が穀物庫の中に入って来られない様に、柱にネズミ返しが付いています。



「支えるもの」と「支えられるもの」と言う関係性を見事なまでに視覚化しつつ、それがそのままこの建築のデザインにもなっている。‥‥なんだか思いっ切り脱線しそうだからこの話はここで止めにしておこう。と言う訳で早速ランチを頂こうと思い席に案内してもらったんだけど、前回はお城の雰囲気を味わおうと室内で食べたんで、今回はテラス席で食べてみる事に。



この日は気温が35度近かったんだけど、日陰に入るとカラッとしていた上に、吹いてくる風が大変心地良かったので、大変気持ち良くランチを取る事が出来ました。という訳で先ずはパンから:



3種類のパンはどれも中身がギュッと詰まってて、非常に美味しかった。そして今日のワイン:



名前は‥‥忘れた(笑)。何度も書いている様に、ガリシア地方というのはワインの名産地で、どんなワインを飲んでも本当に美味しい!‥‥という事で誤摩化しておこう(笑)。で、今日の一皿目がコチラです:



で、出たー!去年も頼んで、その味が忘れられなかったCecina de Leon con Pimientos asados del Bierzo!コレ、一体何かと言うとですね、ガリシアの直ぐお隣のレオン地方の特産品である牛の干し肉にピーマンの付け合わせなんですね。



早い話が牛の生ハムみたいなものかな。って言っても、豚ちゃんをベースにした生ハムとは風味も旨味も全く違って、大変美味しゅうございます!‥‥ふと思ったんだけど、今から20年くらい前に放送してた料理の鉄人での岸朝子さんのキャッチフレーズが「料理記者歴40年」だったから、今なら料理記者歴60年かー。60年もやってるって事は、地球上に存在する美味しいもの、殆ど食べたんだろうなー。で、今日の2皿目がコチラです:



ガリシア牛のステーキ!ガリシア地方って海が近い事から「お魚」ってイメージが強いんだけど、実はガリシアの牛と言うのは「スペインで最高の牛肉」って言われる程の質を誇ります。つまり言ってみればスペインの神戸牛って事。ちなみにスペイン語で牛はVacaなので、スペイン人は神戸の事を「バカ(牛)の都市(la ciudad de las vacas)」と言っています(笑)。



このお肉はステーキソースではなく、粒の大きい塩を振りかけて食べるんだけど、柔らかくジューシーで、もう最高!言う事はありません。



何時もの事ながら、ここまでで本当にお腹が一杯だったんだけど、デザートには今日のオススメと言う苺のムースを頼んでみました。これが又、苺のエッセンスだけを取り出したかの様な、そんな濃厚なムースでこの上なく美味しかった。で、締めは勿論コチラで:



食後のコーヒーです。以前のエントリでも書いたんだけど、ガリシア地方ではコーヒーミルク(Café con leche)を頼むと、バルセロナで言う所のコルタード(コーヒーにミルクを少しだけ入れたもの)が出てきます(どうでもいいガリシア地方のマメ知識終わり)。で、上述した様に、これだけ食べて飲んで、お値段は15ユーロぽっきり!信じられません!15ユーロですよ、15ユーロ!



この空間に身を置いてゆったりと食事を楽しんでいると、やはり食事というのは料理の質だけではなく、それを楽しむ空間も非常に重要な要素なんだなという事を思い出させてくれます。そう、料理とは味覚だけの問題なのではなく、その場の雰囲気や環境が非常に重要な要素となってくる総合芸術なんですね。



良く考えたら僕はこの様な「食事の楽しみ方」というものを、小さい頃からごく自然に学んできた様な気がします。と言うのも僕の家族は「食べるの大好き家族」で、休日になっては、やれあっちだ、やれこっちだと、色んな所に強制的に連れて行かれ(笑)、美味しいものを食べ歩いていたからです。で、これ又何でか知らないけど、彼らが好んだのは「美味しいものを見つけ出す」というだけではなく、そこに展開している風景や情景、はたまたそこに辿り着くまでの道のりや、ちょっと趣向の変わった場所を敢えて選んでいた様な気がするんですね。



‥‥小さい頃、毎年の様に行っていた川岸のレストランがあったんだけど(小さかったからそのレストランが何処なのかは不明)、そのレストランは大きな大きな川の向こう側に、まるで竜宮城か何かの様に川に身を乗り出す様にして建っていました。で、そのレストランがちょっと変わっていたのはアクセス方法で、と言うのも近くにはアチラ側へ渡る橋も何も無い為に、川のコチラ側に車を止めてから、無線か何かで「着いたよー」みたいに連絡をすると、そのレストランの船乗り場から小さなボートが出て、それに乗ってアチラ側の岸まで行くというアプローチ方法だったのです。

今思えば、多分駐車場はアチラ側のレストランの真ん前にもあったとは思うんだけど、そのボートに乗るのが一興だったみたいで、「敢えてコチラ側に車を止めボートを呼んでいた」様な気がします。しかもそのボートが川を渡っている間、大音量で歓迎の音楽が流れたり(笑)、レストランの軒先を見ると、女中さん達が皆で旗を振って「ようこそー」みたいにやってたり(笑)、帰る時は「蛍の光」が流れ、軒先を見るとみんなで「サヨナラー」とか言って旗を振りまくってるという、全くもって近所迷惑も甚だしい(笑)、非常に「変わった」レストランだったんですね。

何故変わっているのか?

何故ならレストランというのは元々食べる事が目的であって、その機能だけに特化してみれば、上述の様な演出はネガティブでこそあれ、ポジティブに働く事など全く無いと思われるからです。いちいち客をボートなんかで渡してたら、それこそ時間の無駄だし燃料費も馬鹿にならないし、そこを効率化する事によって客の回転率を上げる事だって十分に可能な訳ですからね。



しかしですね、実はそういう「無駄」と思える様な演出こそが、レストランでの滞在を非常に楽しいものにし、そこで味わう料理にも特別の味わいを加味しているのかな?と、子供心にもそんな事を思っていました。ひいては、効率だけでは推し量れない生活の質とは、「早く食べられる」とか、「ご飯だけ食べてサヨウナラ」とか、「出されたご飯が美味しかった」とか、そういう事ではなく、「実はこういう無駄の中にあるのでは?」と言う事を、こんな日常生活の中から「体験として」学んでいった様な気がします。



今思うと、あのレストランは客を船に乗せて川を渡らせる事で、「ここからは日常の世界とは違う非日常的な世界に入って行くんだぞ!」という、今で言う所のディズニーランドも真っ青の物語創出を試みていたのでは?と思います。そして食事というのは、何も味覚だけで楽しむという問題なのではなくて、それを目的としつつ、そこに至るまでの一連の物語、風景をも含めた演出が非常に重要な要素であるという考え方を僕に教えてくれたりもしました。



このガリシア地方のど田舎のレストランで食事をしていると、そういう、結構基本的な事なんだけど、最近ではなかなか出来なくなった「食事を楽しむ」と言う体験、味覚だけではない5感全てを使った総合芸術という体験を僕に思い出させてくれます。

こんなスペインのド田舎、日本人の皆さんは多分行く様な事は無いとは思うんだけど(笑)、もしO Barcoという町の近くに行かれたら是非寄って頂きたいレストランです。

星三つです!
| 地球の食べ歩き方 | 07:13 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
>cruasan様、東京の建築家の遠藤泰人さんとFBフレンドになったのですが、バルセロナの鈴木祐一さんを紹介され、承認していただきました。お逢いしたらよろしくお伝え下さい。ガリシアはぶどうの美味しい産地なのですね〜ゆっくり、休暇・・・いいですね〜大阪は毎日
35℃以上です。雷、雨、風で災害は続出しています。毎回、ブログを
楽しみにそして「いいね!」を押してしまいます。よろしく!
| mory's | 2012/08/20 11:09 PM |
読んでるうちに娘と(マドリ在住)にも行きたいと、、
もう十数年前にバレンシアのハベアのあるお宅にて、
食べたお料理を思い出しました。
楽しく読ましていただきました有難う!
| acacia | 2012/08/23 5:54 AM |
mory'sさん、こんにちは。

何時も何時も僕のブログを見て頂いていて、本当にありがとうございます。

鈴木さんはバルセロナに住まわれている建築家の方ですね。一度食事をご一緒した事があります。

日本は酷暑だそうで。今年はバルセロナもかなり暑くてまいってます。早く涼しくなると良いですね。お体にはお気を付けください。
| cruasan | 2012/08/27 1:45 AM |
acaciaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

スペインは未だ未だ我々が知らない美味しいものが一杯ありそうな予感がします。僕ももっと美味しいもの食べたいです!
| cruasan | 2012/08/27 1:47 AM |
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