地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ガリシア地方で過ごすバカンス:田舎に滞在する事を通して学ぶ事
ちょっと重たい建築ネタが続いたので、今日は少し気分転換という事で。

現在僕が滞在しているスペイン北部ガリシア地方のド田舎というのは、オウレンセ地方を流れるSil川の湖畔に佇む大変美しい人口500人足らずの小さな小さな村です。



周りにコレと言った観光要素も無い為に、村内では外国人は勿論の事、他県からのスペイン人すら殆ど見掛ける事はありません。この村に居る人と言えば、元々この村で育ち、今は隠居生活を送っているお爺ちゃん、お婆ちゃん、もしくは彼らの息子や娘が夏休みで実家に帰省している場合が99%を占めるんですね。残りの1%は、僕の様な「知り合いの知り合い」みたいな人達だと思うんだけど、そんな人は本当に稀なので、翌日にはカフェでのおしゃべりのネタにされている事間違い無し!噂話が1時間で村中に知れ渡る、それくらい小さな村なのです。



この様なヨーロッパの田舎に来ると、「みんなで集まって住む事の起源」みたいなものが、その村の構造を通して垣間見える様な気がします。そもそもヨーロッパにおける村というのは、常に教会の周りに発達してきたんだけど、何故かと言うと、悪魔の存在が信じられていた遥か昔においては、鐘の音が聞こえる範囲は浄化されていて「悪魔が近寄る事が出来ない」と思われていたからです。だから(ドラクエに見られる様に)悪魔と言うのは常に森の中で出会う事になる訳ですよ!

そんなド田舎での生活は教会の鐘の音、そして鶏の「コケコッコー」という鳴き声と共に始まります。そして何をするかというと、基本的に何もしない(笑)。そう、生産的な事は何もしない、これこそスペイン人達の究極のバカンスの過ごし方なのです!で、僕も度々挑戦してるんだけど、コレが結構難しいんだなー(笑)。そんな「毎日ぼーっとする事を心掛けている(笑)」最近の僕の楽しみがコチラです:



この村に一軒だけあるパン屋さん、そこに焼きたてのパンを買いに行く事が毎日の日課になりつつあるんですね。何故こんな事をしているかというと、実はこのパン屋さん、今では非常に珍しくなった昔ながらのパン窯でパンを焼いているんです(パン窯と都市計画についてはコチラ:地中海ブログ:パン屋さんのパン窯は何故残っているのか?という問題は、もしかしたらバルセロナの旧工場跡地再生計画を通した都市再活性化と通ずる所があるのかも、とか思ったりして)。



去年この村に初めて来た時に「あ、パン窯だ!」と、僕があまりにもジロジロと見てたものだから、「パン窯がそんなに珍しいの?良かったら中見てみる?」みたいな感じで見せてもらったのですが、このパン屋のおばちゃんが僕の事を覚えててくれて、「あー、今年も来たの?パン窯見てく?」って言ってくれたので見せてもらう事に!で、今年は結構奥の方まで見せてもらったんだけど、このパン窯が結構奥深い事にビックリ!



ほら、窯の奥の方まで奇麗にパンが並べられているのが分かるかと思います。こちらには今正にパン窯に入ろうとしているパン達が!



で、何時も12時45分くらいに来ると、窯から出したパンをそのまま袋に包んでくれるからアツアツ!しかもしっかりと小麦粉が練り込んであるのでパンが重い!こんなに重いパン、ちょっと珍しいと思います。ちなみにこのパン1つ1ユーロ!



外はカリカリ、中は熱々のふわふわ!このパンを切って口に入れる瞬間ほど幸せな一時はありません。更にこのパンをこちらと一緒に食べるともう最高!



じゃーん、生ハム!しかも丸ごと一本!生ハムの発明はスペイン人が人類にした最大の貢献だと思います。僕がノーベル賞委員会だったら、絶対にノーベル賞あげますけどね(笑)。そしてそして、ガリシアと言えばコレを食べない訳にはいきません:



ガリシア風タコ煮!ガリシア人、本当にタコが大好きなんですよねー。どれくらい好きかと言うと、村の広場に毎日の様にタコの屋台が立って、そこでタコ煮を販売してるくらい!そして勿論トラックのデコレーションもタコ(笑)!



そんなタコとパン、そして近所で分けてもらったワインを食卓に並べると、もうそれだけで一流レストランも真っ青の豪華な昼食の出来上がり〜。



実はこのワイン、近所に住んでるアントニオさんから分けて貰ったんだけど、ガリシア地方では幻のワインと言われていて、と言うのも何年も連続でガリシア州のワイン部門最優秀賞を受賞しているにも関わらず、普通のマーケットで買う事がほぼ不可能と言われているからなんです。何故ならこのワインはアントニオさんが趣味で作ってるだけなので毎年作る本数が少ない上に、その殆どを知り合いのレストランなどに出荷、手元に残った1割程度を地元の仲の良い人達に分けているからなんだとか。



「そんなに人気があるワインなら、もっと機械を導入したり人を雇ったりして生産性を上げればもっと儲かるんじゃないの?」とか、現代人である僕なんかは思ったりしちゃうんだけど、どうやらそういう考え方は都市部に住む人の考え方らしい。彼曰く、自分が飲む分と、知り合いに分ける分、そして来年のワインを作るのに必要な資金を得るだけのワインがあれば十分なんだとか。何故なら彼がワインを作っているのはお金を儲ける為なのではなく、知り合いに「美味しかったよ」って言ってもらう、その一言が何より幸せなのでやっているからなんだそうです。



‥‥もしかしたら一年に一回くらい、こういう全く違う時空間の中で「人間らしく」生きている人々の中に入り込んで人生を見つめ直すって言う事も必要なのかな、と、そう思わされる日々が続いています。

とか書いてたら、今日も0時を告げる教会の鐘の音が聞こえてきました。何時もならここから文章を書いたり、本を読んだり、Youtubeを見たりして寝るのは朝方になるっていうのが日常のサイクルなんだけど、郷に入れば郷に従え。虫達が素晴らしいハーモニーを奏でる中、草の香りのするふわふわのベッドの中に潜り込む事にしよう。
| バルセロナ日常 | 06:31 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
ただただ、うらやましいかぎりです。
| Shu Katagishi | 2012/08/10 7:38 PM |
Shu katagishiさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
都会を離れて、全く違う時間感覚の中で生活するのはナカナカ楽しいものです。長い人生の中においては、たまにはこういう時間も必要なのかなと、ここに居るとそう思わされます。
| cruasan | 2012/08/12 4:02 AM |
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