地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂から盗まれたカリクストゥス写本(Codex Calixtinus)発見!
一昨日(7月4日)のお昼頃の事だったのですが、ビックニュースが飛び込んできました!約一年前にサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂から盗まれたお宝中のお宝、カリクストゥス写本が発見されたという、思ってもみなかった大変嬉しいニュースが舞い込んできたんですね。



実はその数時間前に「写本を盗んだとされる容疑者逮捕!」の速報がスペイン中を駆け巡り、「と言う事は写本も見つかったのか?」という淡い期待を齎したのですが、それも束の間、その時点では「犯人は逮捕したものの写本は見つからず‥‥既に売却済みか?」という失望感が関係者達の間を覆い始めていました。スペイン中がガックリと肩を落としている正にその時、容疑者宅のガレージを調べていた一人の捜査員がゴミ袋に包まれた写本を見つけ出し、即座に大聖堂側に本物かどうかの確認をしてもらった所、その真証性が確認されたという大ニュースが駆け巡ったと言う訳なんです。



先ずはこの事件の事を良く知らない人達の為に少し解説をしておくと、カリクストゥスの写本とは12世紀に描かれた「サンティアゴの道を歩く為のマニュアル本」で、世界で初めて書かれた旅のガイドブックの事なんですね。つまり元祖「地球の歩き方」という訳(笑)。



ちなみにこの写本が人類にとってどれほど価値があるものなのか?という事は、この事件が起こった当時、各国の新聞がこぞって記事にしたという事実に如実に現れていると思います。その中でもワシントンポストはプラド美術館の至宝、ラス・メニーナスと比較してこんな記事を載せていました:

計り知れない価値を持つカリクストゥス写本を警察が捜索
Busqueda policial de la obra de valor incalculable


ワシントンポストは、今回起こってしまった盗難の原因の捜索と、既に写本がスペインの国境を超えた場合を想定して、警察が国際的な警報を発した事を大々的に報じている。アメリカ合衆国の新聞は、今回の盗難はプラド美術館からベラスケスの代表作ラス・メニーナスが盗まれるのと同等に値する事件であり、写本に値 段を付ける事は不可能であると説明している。
El Washington Post resalto la investigacion policial a raiz del robo y la alerta internacional para tratar de localizerlo fuera de Espana, en el caso de que haya cruzado la frontera. El periodic norteamericano explica a sus lectores que la sustraccion equivale al hurto de Las meninas del Museo del Prado y que es imposible ponerle precio al codice.


そんなお宝中のお宝がサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂の宝物庫から消えている事が発覚したのが去年の7月5日の午前中の事。その日の午前・午後を通して関係者達が全員で大聖堂内を探しまくったんだけど結局見つからず‥‥。仕方が無いので大聖堂側が警察に通報したのがその日の夕方頃で、その1時間後には大事件として大々的にスペイン中に報道される事になったと、まあ、そんな訳なんです(地中海ブログ:サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂から12世紀に記されたカリクストゥスの写本(Codex Calixtinus)盗まれる!)。



偶然にも去年の今頃、僕は夏のバカンスの真っ最中で1ヶ月ほどガリシア地方に滞在していました。つまり恵まれた大地の中で美味しいタコと白ワインを嗜みながら毎日を暮らしているガリシア人達の間に走った衝撃をリアルタイムで実感しちゃったという訳なんですね。事件が起こった直後には「一体誰が犯人なのか?」は勿論の事、何の目的で、そして写本は一帯何処にあるのか?などについて様々な憶測が飛び交い、それが又、現場の混乱に拍車を掛けているかの様ですらあったかな。



ちなみに僕はその事件が起こった1週間後、所用でサンティアゴ・デ・コンポステーラ市を訪れる機会があったんだけど、市内へのアクセスは厳しく制限されていて、市内から出て行く車一台一台を厳しく検問していたり、街中では警官の姿が異様なほど見られたりと、普段とは一味も二味も違うサンティアゴ・デ・コンポステーラ市の姿を見る事が出来ました(地中海ブログ:ガリシア旅行その6:アルヴァロ・シザの建築:ガリシア美術センター(Centro Gallego de Arte Contemporaneo):複雑な空間構成の中に隠された驚く程シンプルな原理)。それら一連の騒動の中でも僕が度肝を抜かれたのがコチラです:



事件が発覚した明後日に新聞にデカデカと載っていた、スペインが誇る伝説的な大泥棒、Erik el Belgaさんのインタビュー記事なんですね(地中海ブログ:スペインの石川五右衛門こと、伝説的な大泥棒のインタビュー記事:サンティアゴ大聖堂から盗まれたカリクストゥス写本について)。実はスペインには日本で言う所の石川五右衛門こと、伝説の泥棒ちゃんが存在し、その彼が何かしら大きな事件が起こる度にメディアから意見を求められ、更に緊急時には警察にも協力するという、まるで漫画か映画の世界の様な事が行われている訳ですよ!勿論今回の事件が起こった直後にも各種メディアが彼の所に取材に行き、結構な頻度で新聞やテレビを賑わせていたのですが、その時に彼が繰り返し言っていた事がコチラです:

「スペインには写本の購入者はいません。そんなに多くの書籍コレクターや、 それ程の額を支払う事の出来るコレクターが存在しないのです。・・・思うのですが、もしかしたら、この写本の最終目的地は日本と言う可能性が高いのでは?と思います。日本は世界でも有数の書籍コレクターの所在地なので。」

そう、スペインには写本を購入出来る様なコレクターは存在しないと言う事、写本を盗むには内部に協力者が必要だと言う事、そしてもしかしたら写本は日本にあるのでは?という事を繰り返し示唆していました。

この様な有益な意見や国際的な警察の協力の下、様々な角度から捜査が続けられたにも関わらず、これと言った進展もなく一年が経過しようとしていた、正にそんな時に突然訪れた急展開、それが今回の容疑者の逮捕と、それに続く写本の発見だったのです。



昨日の新聞によると、犯人は25年間もの間、大聖堂で働いていた電気技師で、近年の経済危機の影響から大聖堂を解雇された事に腹を立て犯行に及んだと供述しているそうです。つまりは個人的な恨みから今回の犯行に及んだという事らしいんですね。どうやら大聖堂のトップが最近変わったらしく、その人との相性が悪かった事などから解雇を言い渡され、更に退職金を要求したんだけど、それも拒否され、現在は大聖堂を相手取って裁判中なんだとか。

大聖堂側は彼の名前をかなり早い時期から警察に告げていたらしく、警察は極秘裏に彼の事を調べていたそうです。と言うのも、事件後直ぐに警察が入手した防犯カメラの映像から、7月4日に彼らしき人物が何かしら大きな包みを持ちながら大聖堂の宝物庫から出て行く姿が確認されたそうなんですね。まあ、とは言っても決定的な証拠が無い事などから、逮捕や強制捜査に持ち込む事は出来ず、彼が写本を売る為にマフィアや売人に接触するその決定的瞬間を抑え、そして逮捕!というシナリオだったらしい。しかしながら予想に反して彼は何も行動を起こさず、故に昨日まで逮捕が持ち越しになっていたという様な趣旨の事が書かれていました。

更に更に彼の家に踏み込んだ際、カリクストゥス写本と一緒に出て来たのが、大聖堂から盗まれたと思われる数々の重要文化財級の写本や文書、そして1億2千万円相当にも上る現金と大聖堂の鍵だったそうです。

それら貴重な文書や鍵は、以前から教会の司教の人達が、「あれは何処かへいってしまった」だとか、「鍵は無くしてしまった」だとか言っていたものだったらしい。つまり今回の事件が明らかにした事、それは誰でも大聖堂に入れて、誰でも何でも盗む事が出来るという教会側のずさんな管理体制と言う訳。

そしてそれ以上に問題なのが彼の家から発見された大量の現金!それらのキャッシュは殆ど全て大聖堂から盗まれたものと見られていて、中には500ユーロ札などの新札も含まれていた事などから、「それらの現金は一体何処から来たのか?つまりは大聖堂はそれらの現金を何処から手に入れたのか?」など、今度は教会側の税金逃れや闇取り引きという今まではベールに包まれていた部分へメスが入るかもしれない可能性を匂わせています。

今回の劇的な写本発見事件は思わぬ方向へ展開していきそうな予感がするんだけど、それにしても人類のお宝が無傷で戻って来て良かった〜。先ずは一安心です。
| スペイン美術 | 20:43 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
面白い!教会の闇の部分、もしメスが入ったら教えてください。
何となく闇のまま葬られて終わりそうな気が濃厚にしますが(笑)

それにしてもこの犯人の人、何で現金だけでもさっさと使うか、
別の方法で隠すかしなかったんでしょうかねー
| Toshi | 2012/07/09 2:10 PM |
面白い!いやいつも面白いですが、特に今回の記事はワクドキしながら読ませていただきました^^

なんとなーくこの犯人、憎めない感じがするのはわたしだけ?

しっかし、西の石川五右衛門、適当なこと言ってますねえ。。。
| ゆうこりん | 2012/07/14 12:19 AM |
Toshiちゃん、こんにちは。
あれから1週間近く経っていますが、予想通り、闇に葬られていそうな気がします(笑)。今月末からガリシアに行くので、ちょっと現地で調査してきます。
| cruasan | 2012/07/15 6:35 AM |
ゆうこりんさん、こんにちは、コメントありがとうございます。

教会の闇の部分を暴いたという意味に置いて、実はスペインでは密かに彼の事を応援している人がいるのでは?とはちょっと思います。今後どうなるか、個人的にはかなり注目している一件です!
| cruasan | 2012/07/15 6:37 AM |
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