地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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欧州統一通貨ユーロとヨーロッパの未来:ギリシャ再選挙
今日6月17日、渦中のギリシャではヨーロッパの統一通貨ユーロの未来、ひいてはヨーロッパの未来を決めると言っても過言では無いギリシャ再選挙が行われています。

世界経済に大打撃を与えかねない案件故に、日本でも連日報道されていると思うので知ってる方も多いとは思いますが、今回ギリシャで行われている再選挙では、財政緊縮路線継続の是非を巡って、緊縮擁護派、反緊縮派が激しく対立し、もし反緊縮派勝利なら「ギリシャがユーロ離脱を余儀なくされる」という見方が強まっているんですね。つい先日行われた世論調査では、選挙結果は五分五分、つまりどちらも勝つ可能性があるという結果が出ている為、ヨーロッパ各国の政府関係者を始めとする世界中の人々が固唾を飲んで見守っていると、そういう状況になっています。



奇しくも僕がヨーロッパに来たのはユーロが導入された正にその年でした。古い通貨(ペセタ)と新しい通貨(ユーロ)が混在するややこしい状況の中で、ヨーロッパ各国間の障壁が取り除かれ、正に「今からヨーロッパを創っていくぞ!」という活気の中に居たのが本当に昨日の事の様に思い出されます。



まあ、正直言って、来た当初はあまりの社会文化の違いに戸惑うばかりで、「自分の周りで一体何が起こっているのか?」という事がハッキリとは分からなかったんだけど、しかしそれでも「何かしら一つの新しい動きが勃興しつつある」という事、そして「我々はその喜びの真只中に居る」という事が、日々の生活の中からヒシヒシと伝わってくる、そんな刺激的な毎日だったんですね。

今思えば僕は本当に幸運にも、そんなEUの誕生からヨーロッパが一番幸せだった時期に、正にそのド真ん中で生きる事が出来、そしてその中枢で働く事が出来たと、そう言う事が出来るかも知れません。

そんなヨーロッパが今大転換を迫られています。

ヨーロッパがこれから何処へ行こうとしているのか?何処へ向かっているのか?それは僕には分かりません。しかしですね、毎日の様に新聞を賑わしている経済問題、政治汚職、軒並み上がってきている各国の失業率などを見ていると、僕の脳裏にはある一つの場面が繰り返し流れ込んできます。と言うか、この場面こそ本当に今のヨーロッパ、特に政府関係者の間に流れている空気みたいなものを表していると、そう思えてきさえするんですね:



漫画版風の谷のナウシカ。世界中の人々が自分自身の私利私欲の為に戦争を繰り返している一方で、突然変異の粘菌を救う為に次々と犠牲となって死んでいく蟲や王蟲達の意図にナウシカが初めて気が付いた場面です。ここで発せられるナウシカの言葉、この言葉こそ正に今ヨーロッパの政局全体に漂っている雰囲気なのではないでしょうか?



「もうなにもかも手遅れだ‥‥。こんなに世界は美しいのに‥‥こんなに世界は輝いているのに」

注意:手元にあるのはスペイン語版なので台詞はこんな感じだったかなという意訳


ちょっと悲観的過ぎるかも知れないけど、僕がこの数週間、各国から訪れてくる政府関係者、市役所関係者(研究者はちょっと置いといて)、私企業関係者の人達なんかと話していて感じたのは正にこのレベルの悲観的なものでした。

その一方で、街路レベルの人々の間には未だに楽観論が漂っていると言えるかも知れません(スペインだけかも)。つまりは僕が見た感じ、中央と街路でかなりの温度差、意見の2極化が見られるという事なんですね。まあ、僕の希望も兼ねて言っておくならば、この様な街路レベルに生きる人々の間に未だに楽観論が多数を占めているという事、みんな暗くならずに生きる意志を持っているという事、それこそがこの様な状況の中における唯一の希望であると、そう付け加えておく事にします。

さあ、ヨーロッパの未来を決める投票結果の開票が今から始まります。

追記:
たった今(21時)、選挙速報が出ました。開票率40%の時点で、右派(緊縮財政擁護派)の勝利確定だそうです。これで一応ギリシャはユーロ圏残留という方向性で動いていくと思います。
| ヨーロッパ都市政策 | 03:40 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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