地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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第8回モデルニスモ祭り:19世紀末にタイムスリップさせてくれる素敵な地区祭り
暑い、非常に暑い!バルセロナは先週辺りから急に暑くなってきて、日中なんかは25度を超える日が珍しくなくなってきました。アンダルシアや内陸部では35度を超えている所もあるんだとか。



そんな状況なもんだから、バルセロナのビーチは6月初旬と言えども結構な人達で大賑わい。もうホント、初夏の到来って感じです。

さて、バルセロナでは毎年この時期になるとハイシーズン(夏)の到来を祝う、Fiesta Mayorと呼ばれる地区祭りが市内の至る場所で企画され、街路が華々しく飾り付けられたり、交通を規制して即席のコンサート会場やテラス席が設けられたりして、それこそまるで街全体で初夏の到来を喜んでいるかの様な、そんな光景に出くわす事が出来るんですね(グラシアの地区祭りについてはコチラ:地中海ブログ:グラシア地区祭り:バルセロナの歩行者空間プロジェクトの責任者だったけど、何か質問ある?)。そんな中、今週末は毎年恒例の「モデルニスモ祭り」がGirona通りの一角にて開催されていました(去年のお祭りの模様についてはコチラ:地中海ブログ:第7回バルセロナ、モデルニスモ祭り(Fira Modernista de Barcelona 2011))。



まあ、お祭りというのはその地方の(民俗的な)個性が存分に現れる所に面白みがあると思うんだけど、このモデルニスモ祭りというのは、これが行われているバルセロナの新市街地の特性がハッキリ見えるという意味において大変興味深いものとなっていると思います。

どういう事か?

バルセロナ市内の各地区は「何とか自分の地区のお祭りを一番魅力的なものにしよう」と競っている側面があるのですが、「一体何が自分達の地区の魅力なのか、特徴なのか?」という事を考えに考えた挙げ句、この新市街地の住民達が捻り出したアイデア、それが自分の家の前のファサードに華を添えている「モデルニスム期の建築を有効活用しよう」というコンセプトだったのであり、それを発展させた「モデルニスモ祭り」という解答だったんですね。



当ブログでは何度も主張してきたんだけど、バルセロナが誇る建築的なお宝は何もガウディやムンタネールといった巨匠達によって創られたものだけではありません。



彼らの建築が素晴らしい異彩を放っているという事と、そこだけを取り上げて誇張するメディアの偏向によって日本では全く注目されないんだけど、この新市街地に散りばめられている有名/無名の建築家達による無数のモデルニスモ建築の共演こそ、バルセロナが誇るべきお宝中のお宝だと僕は思っています。故にその事に気が付いた少数の人達はこのエリアの事を「黄金の四角形」と呼んできた程なんですね。



そんなお宝満載のこのエリアの地区祭りでは、このエリアに住む人達がモデルニスモ期の衣装に身を包み、世紀末の風景と一体となる事によって、一歩このエリアに足を踏み入れると、恰もその時代にタイムスリップしたかの様な、そんな素敵な体験が出来ちゃう希有なお祭りとなっています。



まあ、早い話がこの地区全体を巻き込んだ世紀末コスプレ大会という事です(笑)。そしてこのコスプレ大会を特別なものにしているのが、何を隠そう上述したモデルニスモ建築群なんですね。逆に言うと、それらの建築群がこのお祭りの舞台背景を用意してくれているからこそ、モデルニスモ祭りの雰囲気が一味も二味も違う物になっているという事が出来るかと思います。そんな素敵なモデルニスモの建築は例えばコチラ:



1912年から14年に掛けて創られた薬局です。当時の雰囲気をありありと伝えていますね。外観だけではなくて、中もかなりキチンと修復保存されている:



こんな素敵な薬局で薬とか買ったら、それこそ病気なんて直ぐに治りそうだよな〜(笑)。正に「病は気から!」(地中海ブログ:リュイス・ドメネク・イ・ムンタネール(Lluis Domenech i Montaner)によるモデルニスモ建築の傑作、サンパウ病院(Hospital de la San Pau):病院へ行こう!どんな病気も直ぐに治るような気にさせてくれるくらい雰囲気の良い病院)。もしくはコチラ:



パン屋さんです。実は今、バルセロナでは昔ながらの窯で焼いたパンが密かに流行っていて、そんな窯が残っているパン屋さんの前には長―い行列が出来るという現象が起こっているのですが、勿論そんな希有なパン屋さんなんて市内でも数える程しかありません。何故ならそれらの窯は近代化(機械生産化)と同時に殆ど取り壊されてしまったからです。



で、ここからがポイントなんだけど、それらの窯を取り壊し、(当時としては最新式の)機械を取り入れる事が出来たパン屋さんというのは、当然「儲かっていたパン屋さん」なのであり、全く儲かっていなかったパン屋さんは機械の窯を入れる事が出来ず、今日まで昔ながらの窯でパンを焼く羽目になってしまいました。



‥‥それから百年後、当時は思いもしなかった事態が起こります。そう、昔は全く無価値だと思われていたパン窯に新しい視線が注がれ、それが「価値あるもの」として急浮上してきたのです。その結果どうなったかというと、昔は繁盛しまくってて最新機器を導入する事が出来た/してしまったパン屋さん、つまりは昔ながらの窯が残っていないパン屋さんが冷や飯を食わされる事となり、逆に、貧乏で貧乏で最新設備が買えなかったパン屋さんが棚ボタ的に儲かり始めるという逆転現象が起こってきている訳ですよ!

この話の本質は、実は「何故バルセロナの都市計画がバルセロナモデルとして成功したのか?」という話と通じる所があると思うので、以前のエントリで詳しく書きました(地中海ブログ:パン屋さんのパン窯は何故残っているのか?という問題は、もしかしたらバルセロナの旧工場跡地再生計画を通した都市再活性化と通ずる所があるのかも、とか思ったりして)。

いかん、いかん、又脱線してしまった‥‥。



さて、このお祭りには他にも、その昔市内を走っていたバスやタクシーが展示してあったり、街中で即効の演奏会が開かれていたりと、それこそ様々な角度からモデルニスモの雰囲気を市民に味わってもらおうと、連日何十という企画が用意されているんだけど、毎年参加してる僕の目から見ても大変珍しかったのがコチラです:



朝来た時はこの機会仕掛けの「おもちゃ」みたいなのが「でーん」と置いてあるだけで、「あー、これは世紀末に使ってた何かの仕掛けなのかなー」くらいに思っていたのですが、夕方頃にもう一度来てみたらビックリ:



何とこの機械仕掛けのおもちゃ、動いてるじゃないですかー!しかも子供達が乗っている‥‥。 そーなんです、実はこのおもちゃ、どうやら当時の遊園地にあった観覧車の原型みたいなものらしいんですね。幾つかある椅子みたいな所に子供を乗せて、それがグルグルと回転する様になっています。勿論動力はコチラ:



人力(笑)。回すのは結構大変らしく、この人、かなりゼーゼー言ってました(笑)。そりゃ、疲れるよなー。しかもかなり暑かったし。で、この観覧車の横にはコチラ:



世紀末のメリーゴーランド。勿論こちらも人力(笑)。



雰囲気を出す為なのか、その横では当時の衣装に身を包んだおじいさんが、一生懸命炭を燃やして煙を出してました(笑)。単に煙たいだけだったんですけどね。



又、このモデルニスモ祭りでは、バルセロナ市を始めとするモデルニスモ建築の遺産を持つ各都市が各々のお宝を宣伝するというマーケティング的な要素も強い為、それらの自治体が各々のスタンドに出版物やパンフレットなどを所狭しと並べ、一生懸命宣伝している様子を観察する事が出来ます。それら陳列品の中には書店では手に入らないものや、その町に行かないと買えないものなどが結構あったりする上に、時々無料で貰えちゃったりする訳ですよ!



今年はモデルニスモに焦点を絞った新聞と、現在バルセロナ市が結構力を入れてるセルダブロック中庭開放計画に関連した書籍などをゲット!特に後者は書店では売ってない結構貴重な本だと思う。



この様な街全体を巻き込んだお祭りを見ていると、「やはりスペイン人達は自分達の生活にリズムを付ける為、ひいては生活を楽しむ為に街を使うのが上手いなー」と感心しざるを得ません。そしてそこで繰り広げられる人々の生活、主人公としての我々の振る舞いに舞台を提供し、雰囲気を創り出してくれているのは、「街路を彩っている建築である」という、結構基本的なんだけど、ついつい忘れがちな事実を我々に思い出させてくれます。と言うか、そういう事が分かっているからこそ、この街の人達は一つ一つの建築を大事に使い続け、何百年も前から子々孫々に受け継いできているんだと思うんですね。それがこの街に住む人達の心に「街を思いやる気持ち」を芽生えさせ、ひいては彼らの自身のアイデンティティに繋がっていくのだから。
| バルセロナ都市 | 03:33 | comments(6) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
こ・・・これは、私的にすごくツボです〜!!
モデルニスモって、いわゆるアールヌーボのバルセロナ版とガイドブックに書いてあるんですが、あっていますか?
フランスでも散々アールヌーボの作品を見てきましたが、なんといってもバルセロナの街並みが一番素晴らしかったんですよ。肌に合うというか、すごく心動かされるんです。
今度は街並みを散策するだけで1週間欲しいと思っている位、好きです。

折角なので、このモデルニズモ祭りの期間に行くのが◎ですよね!
ただ、6月となると子供づれは難しいかな。。。(涙

先日友人にスペインとパリのアルバムを見せたんですが、それまで全然スペインに興味のなかった友人が「こんなに面白いものがあるならば是非行ってみたい!」と感動していました。「パリよりも面白い!」と。
日本のテレビ番組や書籍の切り口は画一的で、なかなかスペインの幅広い魅力が伝わっていないような気がします。

面白い情報ありがとうございました。
| いちごキッズ | 2012/06/03 5:37 PM |
なつかしー!!もう去年のお祭りから1年かー。
バルセロナをずっと楽しんでるcruasanさん、うらやましいです。
| Toshi | 2012/06/04 1:21 AM |
今回の催し、行きそびれました。
毎日アユンタミエントのサイトチェックしないといけません。
「日本のテレビ番組や書籍の切り口は画一的で、なかなかスペインの幅広い魅力が伝わっていないような気がします。」
本当にそう思います。
そしてどこへ行っても同じ町並みにならないようにバルセロナには
がんばってもらいたい!
| patronista | 2012/06/06 3:33 AM |
いちごキッズさん、こんにちは!

このモデルニスモ祭り、なかなか知られてないのですが、非常に面白いお祭りとなっています。こういうのが地域主体で、しかも未だに残ってるなんて、これこそバルセロナの魅力の一つだと思います。

日本メディアのスペインの取り上げ方における画一性、本当にそう思います。バルセロナにはもっと魅力的な場所があるのに‥‥と。このブログの目的は、そんなスペイン、バルセロナの魅力、メディアでは絶対に取り上げられない魅力を余す所なく紹介する事にあります。

これからも頑張っていきますので、宜しくお願いします!
| cruasan | 2012/06/13 1:44 AM |
Toshiちゃん、こんにちは。お久しぶりです。

そうですね、確か去年はこのお祭りに一緒に行きましたよね。で、しかもその後、その辺のバルでブラバスを一緒に食べた記憶が‥‥。な、懐かしいー!
| cruasan | 2012/06/13 1:46 AM |
Patronistaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

僕はこのお祭り、4年ほど前から毎年行っています。年々ちょっとづつですが、規模が大きくなって来ている様な。と言うか、出店しているお店の数が増えて来てるのかな?何はともあれ、この様な非常にローカル且つ魅力的なお祭りが息づいている所こそ、バルセロナという街の魅力であり、この街に住む喜びでもありますよね。
| cruasan | 2012/06/13 1:48 AM |
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