地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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シティ・リージョンという考え方その2:エレスンド・リージョンの要、交通インフラの重要性と利便性について:宇宙戦艦ヤマトのコックピットの様なフェリーにちょっと驚いた
前回のエントリの続きです。今回バルセロナからの直行便で到着したのが、スカンジナビア航空の拠点であり、ヨーロッパのハブ空港の一つとして知られるコペンハーゲン国際空港です。でも、まあ、ハブ空港とは言っても、デンマークの人口は400万人足らず、コペンハーゲンに限って見れば50万人強、つまりは国単位で見ても中京圏に及ばない程なので、ハブ空港という割には「結構こぢんまりしてるな」っていうのが僕の第一印象かな。



飛行機を降りた直ぐの待合ロビーは全面がガラスで覆われ且つ、要所要所に木材が使われている為、開放的であると共に、非常に暖かみのある空間となっています。


スペイン語でSolは太陽、Marは海。つまりこのバスは「太陽と青い海」行き

北欧の人達と聞いて真っ先に僕が思い浮かべるのは、太陽と青い空を求めて南欧に来ては、それこそ真っ赤に日焼けするまでビーチで寝転がってる姿なんだけど、そんなイメージが頭の片隅に媚びり付いてるものだから、一面ガラス張りのデザインとか見てしまうと、彼らにとっては「短い日照時間の間に降り注ぐお日様の光ほど大切なものはないんだろうなー」と、そう思ってしまいます。



さて、空港という機能は都市間競争が日に日に激しさを増す中において現代都市にとっては無くてはならない機能であり、空港の効率性こそが正に「都市の命運を握っている」と言っても過言ではない時代に我々は突入してきています。もっと言っちゃうと、都市が自身の空港との関係をどう戦略的に位置付けているのか?空港から市内まではどんな交通機関が利用可能で、どれくらいの頻度で運行され、何分で着くのか?等が非常に重要な問題として浮上してきているんですね。そしてこの様な都市へのアクセッシビリティは確実に我々の「生活の質」に影響を与え始めてすらいます。

この様な観点に立脚しつつ、当ブログでは事ある毎に各都市のアクセッシビリティ評価というものを試みてきました(地中海ブログ:都市化する空港と効率指標としてのアクセッシビリティ)。と言う訳で、今回はコペンハーゲンのアクセッシビリティ評価をしてみたいと思います。



先ずコペンハーゲン国際空港においては、空港に到着して税関を出た直ぐの所に電車乗り場があります。しかも地下鉄、バス、タクシーと、コペンハーゲン市内まで行く手段は全部整ってますね。今回は電車を選んだのですが、市内までの料金は36,00 DKK、つまり日本円で500円あまり(2012年1月現在)。これは安い!



とか思いつつ、電車を待っていると直ぐに来た。しかも時刻通り!どうやら空港とコペンハーゲン市内を結ぶ電車は15分おきくらいに出てるそうです。電車の外見は素晴らしく汚かったんだけど(笑)、車内は清潔そのものに保たれていました。こういう時、一つの指標となるのがトイレの清潔度だと思うんだけど、デンマークの車内トイレ、もうピカピカ!「さすが北欧」とか思ってたら、何かアナウンスが流れてきた:

ポンポンパンポーン、もう間もなくコペンハーゲン中央駅です」

「あ、あれ?未だ10分ちょいしか経ってないよ?」。そ、そーなんです!実はコペンハーゲン国際空港からコペンハーゲン中央駅までは何と所要時間10–15分程度で着いてしまうんですね。これは早い!今まで僕が見てきた中でも最高ランクに位置する程のアクセッシビリティの高さです。その近さに加え、頻度は10−15分おき、値段は500円程度‥‥ハッキリ言って今までナンバーワンの座を守ってきたフランクフルト国際空港と同等と言っても過言ではありません。 



さて、今回は特別編として、コペンハーゲンとスウェーデンを結んでいるスンド海峡を渡ってみる事にしました。何故なら公共交通機関のインフラ整備とその効率性こそ、エレスンド・リージョンの要だと思われるからです。


上の写真はコペンハーゲン中央駅

先ずはコペンハーゲン側からスウェーデン側の中心的な都市、マルメ(Malmö)へと電車で移動してみる事にします。僕が電車に乗ったのが午後17時過ぎ、と言う訳で外はもう真っ暗。本当なら見る事が出来る、両国間を繋いでいる欧州一長い橋も何も見えない‥‥(悲)。その代わりと言っては何だけど、車内を見渡すと、明らかに仕事帰りの人達でごった返しているのが分かりました。つまり皆、コペンハーゲンで働いて、住宅価格の安くて福祉が整っているマルメ(スウェーデン)に暮らしてるって事の現れだと捉える事も出来るんですね。

この問題については統計を取った訳ではなく、あくまでも僕が電車に乗り合わせた際の感想でしかないので詳しい事は言えないのですが、一つだけハッキリした事、それは2カ国間を渡る際にはパスポートチェックも何も無かったという事です。まるで普通の電車に乗ってるみたいに、すんなりとスウェーデン側へと入れてしまいました。つまりは2カ国間を移動する際の障壁や煩わしさはゼロだったという事です。

そして翌日、今度はエレスンド・リージョンを上の方で結んでいる公共交通機関を試してみる事に。こちらの方は、今回僕が滞在しているHelsingborgから対岸のHelsingorまでフェリーで渡る事となります。



Helsingborg側のフェリー乗り場は電車の駅と一緒になってるんだけど、この駅のデザインが結構目を惹いたかな。フェリーは片道35SEK、日本円で約400円くらい。このフェリーは約15分おきに出てるみたいです。



フェリー乗り場に到着して待つ事5分、「船が着いたよー」みたいなサインが出て、デッキを渡ってフェリーへと乗り込みます。



思えば船に乗るのも結構久しぶり。動いてない船の上で欧州委員会の人達と船上ディナーっていうのは2年くらい前にあった気がするけど(地中海ブログ:ロンドン出張その2:船上ディナー)、動くフェリーに乗るのは10年くらい前にジブラルタル海峡を見ながらモロッコへ渡った時以来かも。という訳で、船に乗るっていうだけで結構ドキドキしてきたりする。で、乗ってみてビックリ!



豪華客船並みじゃないですかー!す、凄い!カフェやレストランは勿論の事、お土産コーナーの充実振りとか目を見張るばかり!勿論、船内は清潔そのもので、デザインも細部までゆき届いています。



って、その豪華さに目を奪われてたんだけど、あ、あれ、ここでもパスポートチェック無かった‥‥普通に乗船してしまいました。



面白かったのは、やっぱり船の上というのは、何処の国にも属していない様な、ある意味無国籍な曖昧な空間なので、カフェやレストランなどの料金表示はデンマークとスウェーデン両方の通貨表示がしてあった事ですね。



自由席だったので、勿論陣取った席はど真ん中の一番前!で、ちょっと見てください!



まるで宇宙戦艦ヤマトの操縦席並みじゃないですかー!ガラスと窓枠が「くの字」にカクカクって曲がったその全面ガラス張りの操縦席からは見事な地平線が見渡せます。



今日は空が冴え渡ってて、気持の良いくらい青い空が高い!!そして到着〜。



こちらでも普通に船を降りて、普通にデンマーク側の駅へと入って行けました。つまりパスポートチェックも何も無し!ちなみにココまでの所要時間は20分弱。

これは凄い!エレスンド・リージョンの要、両国間を結ぶインフラの利便性は噂以上でした。この様な非常に効率の良い利便性があるからこそ、人々が2カ国間を自由に行き来し、この地域を一体とする事に成功しているのでしょうね。そしてこの様なインフラの存在こそ、地域を一つに纏め上げる事によって「一つの都市だけでは決して創り出す事の出来ない競争力」を創出するシティ・リージョンという考え方を担保している「縁の下の力持ち」なのです。

これらの事は勿論書籍で読んで知ってはいたんだけど、知識というのは実体験してみて初めて自分の血となり肉となるのだと思います。そういう意味において、今回の体験は僕の人生にとって掛替えの無い出来事であり、この上ない財産となったと思います。
| 都市戦略 | 07:13 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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