地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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スペイン語の難しさに見るスペインの多様性:ガリシア語とカステリャーノ語
とある国際会議出席&新しいプロジェクトミーティングの為、明日から1週間ほどデンマークとスウェーデンへ行きます。以前、ヘルシンキ市役所やノキアなんかと共同プロジェクトをしていた時は、よくフィンランドへは行ってたんだけど、実はフィンランド以外の北欧の国に行くのは今回が初めて。デンマークと言えば勿論アルネ・ヤコブセン(Arne Jacobsen)!という事で今からかなりワクワクしてるんだけど、そんな反面、プレゼンの用意やら打ち合わせなんかが積もり積もって今週は大忙しの毎日でした。そんな訳で余り時間が無いんだけど、ちょっと気になった事があったので、メモ程度に記しておきたいと思います。



先週日曜日(1月15日)、スペインの大物政治家マニュエル・フラガ(Manuel Fraga)氏が亡くなりました。89歳でした。フラガ氏はフランコ政権時代から閣僚を歴任し、民衆党の前身に当たる国民同盟(Alianza Popular)の創設者であり、78年に制定されたスペイン憲法の起草者の一人でもあったというスペインを代表する政治家。

勿論フランコ政権閣僚という地位に居た事などから国民の間でも賛否両論あったんだけど、彼がフランコ政権、民主化移行期そして民主化達成後と3つの時代のスペインを生き、更にそれら3つの時代の中枢でスペインの舵取りをしてきたという事に変わりはないと思います。そしてそういう意味において、彼はやっぱり大物中の大物政治家だったんだなーとも思いますね。

マニュエル・フラガという政治家が成した事、成さなかった事などについては後日ゆっくり書く事として、今日はそんなフラガ氏に関する面白く、そして「大変奥が深い冗談」を発見してしまったので、ちょっと紹介したいと思います。この冗談が書かれたのは彼が未だガリシア州政府大統領の地位にあった2000年代前半の事だったんだけど、この短いやり取りの中にはスペインという国が育んできた多様性の奥深さみたいなものが垣間見える様な気がしてなりません。それがコチラ:



フラガ:「私が死んだら皆、寂しいだろ。泣いてくれるよな!」
Fraga: Cuando yo me vaya. Me llorarán!

民衆:「勿論、とっても寂しいです!」

Público: Si Senor. Melloraremos!

上の会話はスペイン語入門編くらいのテキストに出てきそうな、スペイン語を習った人なら誰でも理解出来るほど簡単な会話だと思いがちなのですが、ところがドッコイ!実はこの会話の意味を正しく理解するのはそれほど簡単な事ではありません。何故ならその為にはスペイン政治に関するある程度の知識と、スペインという国が置かれている社会文化的な状況、更にはガリシア州民の性格なんかを理解する必要があるからなんですね(フラガ氏がガリシア州出身で、15年という長期政権を維持し、最後期には州民はウンザリしていて、更にガリシア州民というのは非常に皮肉を言う事で有名な民族だという事とか)。

そういう事が分かっていると、この漫画の舞台がガリシア地方であり彼がガリシア州民に向かって話しているという事が理解出来るかと思います。

で、ここからがミソなんだけど、という事は「この会話はカステリャーノ語ではなくて、ガリシア語で読まなければいけないのでは?」という事が分かってくる訳ですよ!

するとどうなるのか?

実はme lloraránという単語(発音)はカステリャーノ語では「泣く」という意味なのですが、ガリシア語では「喜ぶ」という意味を持つ単語(mellorarán)なんですね。つまり全く同じ単語の発音がカステリャーノ語とガリシア語で「泣く」と「喜ぶ」という正反対の意味合いになる訳ですよ!そういう事が分かってくると、上の会話の様相は一変してきます:



フラガ:「私が死んだら皆、寂しいだろ。泣いてくれるよな!」
Fraga: Cuando yo me vaya. Me llorarán!

民衆:「勿論、とっても嬉しいです!」

Público: Si Senor. Melloraremos!

コレは面白い!

勿論ここには言葉遊びとしての要素がふんだんに鏤められているんだけど、それよりも何よりも、こんな事が可能になる背景には、スペインという国が今まで育んできた多様性、地域毎に展開している文化的な豊かさがあるからだと思うんですね。

スペイン語の難しさと同時に、この国の奥深さの一端に触れた様な気がしました(ガリシア語が置かれた状況についてはコチラ:地中海ブログ:ガリシア語の危機
| スペイン政治 | 22:11 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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