地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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バルセロナに東方の三博士来る2012
2012年がつい先日明けたかな?と思ったら、早いものでもう一週間が過ぎようとしています。スペインのカレンダーでは1月1日は元旦でお休みなのですが、翌日の2日からは休日でも何でもなく、通常営業日となっている為、街中のカフェやレストランは勿論の事、多くのスペイン人にとっては今週が仕事始めの週となった人が多いのでは?まあ、とは言っても、スペインでは1月6日が祝日となっているので、人によっては12月24日から年越しを挟んで1月7日(今年は7日が土曜日なので9日の月曜日まで)2週間程度のバカンスを楽しんでいる人も多いとは思うんですけどね。



「では何故スペインにおいて1月6日は祝日となっているのか?」

これが今日のお題なんだけど、実は1月6日というのは、スペイン中の子供達が一年の内で最も心待ちにしている日であり、「まだか、まだか」と心をときめかしている日でもあるんですね。そう、何を隠そうその日はスペインにおけるサンタクロースこと、「東方の三博士」達が遥か遠くから子供達の為にプレゼントを運んで来てくれる日という事になっているのです(詳しく言うと、プレゼントは前日の夜に各家庭に運ばれる事になっています)。

「えー、じゃあクリスマスは何にも貰えないのー?」というと、その辺は家庭の事情によりけりで(苦笑)、クリスマスと1月6日、2回プレゼントを貰えるラッキーな子もいる事は居るかな。ちなみにこの間、お子さんをお持ちの知り合いに聞いた所では、最近では「敢えて」12月24日にプレゼントを渡す家庭も少なくないんだとか。何故かと言うと、冬休みが終わってしまう1月6日にプレゼントを渡すと、そのオモチャで子供達が冬休みに遊べなくなるからという、かなり実際的な問題認識かららしい(笑)。


写真はボッティチェリの傑作、「東方三博士の礼拝」

で、子供達にプレゼントを運んでくる「東方の三博士」、日本人の皆さんにはナカナカ馴染みが無いとは思うんだけど、「メルキオール(Melchior)」、「カスパール(Casper)」、「バルタザール(Balthasar)」と言えば聞き覚えがある人が多いんじゃないでしょうか?

 

そう、何を隠そう、東方の三博士とはエヴァンゲリオンに出てきたスーパーコンピュータ、MAGIシステムに付けられていた名前でもあるんですね(どうでも良いマメ知識終わり)。ちなみにエヴァンゲリオンの中ではこれらの3博士は、それぞれが「人間の持つジレンマを表している」と設定されているのですが、聖書に登場する3人の博士はそれぞれ青年、老年、壮年、といった3世代、そしてコーカサス人、アジア人、アフリカ人という3人種を表していて、そんな彼らがイエスを礼拝するという事は、人類全てがキリストの教えの元に入るという事を表しているんだそうです。

「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。わたしたちは東方でその方の星を見たので、拝みに来たのです」(マタイの福音書2章2節)

この辺の話は、ヨーロッパの子供達が人生にとって大切な知識やら常識やらを「聖書」や「哲学」などから学ぶのに対して、日本の子供達が「漫画」や「アニメ」から学ぶっていう話に繋がっていって大変興味深いんだけど、その話をしだすと長くなるので又今度。

で、ここからが面白い所なんだけど、この様な子供達の夢を「何とか記憶に残るイベントにしよう」と、毎年スペインの各都市では1月5日の夕方から夜にかけて大々的なパレードが行われるんだけど、それがちょっと凄いんです。何が凄いって、子供達の為に「東方の三博士がやって来る!」っていう物語を「街ぐるみ」で捏ち上げ、様々なセクターを巻き込みながら盛大に行うっていう情熱の掛け方が半端無いんですよ!ちなみに到着した東方の三博士を出迎えるのは現職市長の大変重要な仕事であり、こういうちょっとした行事から子供達は「市長っていうのは偉い人なんだ!街にとってのヒーローなんだ!!」という事を身を以て体験し、知識として体に刻み付けていく事になるんですね。



そんなかけがえのない東方の三博士達は、毎年1月5日の午後17時頃、プレゼントを一杯積んだ大きな船に乗ってバルセロナ港に上陸する事となります。



ちなみに内陸部の都市などでは東方の三博士は電車に乗ってきたり、はたまたヘリコプターで来る所なんかもあるんだとか。(上の写真はカタルーニャ内陸部に位置するレェイダ市の模様で、王様達を出迎えているのは、レェイダ市の現市長さん)。つまりは、東方の三博士というのは、「何処かは知らないけれど、遥か遠い所からやってくる」っていう、その点が重要な訳で、それを体現する為に船やら電車やらといった乗り物が使われていると言う訳なんです。



ここからは想像でしかないんだけど、遥か太古の昔に、キリストの誕生を聞きつけて「東方」からラクダに乗ってやってきたとされる東方の三博士っていうのは、ベツレヘム市(イエスが生まれた場所)にとっての「遥か遠く」というのが、当時は謎に包まれていた「東方」だったのであり、徒歩で来る事が不可能な距離を移動するには、当時最高最速の移動手段だった「ラクダ」が必要だったと、そういう事だったんじゃないのかな?そう考えると、「遠くから来る」という事象を、「移動スピードが速そうな乗り物(船や電車)で暗示する」と言う事に未だに頼っている所を見ると、我々人間としての「想像力」と言うのは2000年経った今でもそれ程変わってないのかな?と、そう思ってしまいますよね。

さて、港で市長の出迎えを受けた東方の三博士達は、その後、約3時間程を掛けて市内をパレードする事になるのですが、これが見応え抜群なんです!それぞれの王様達が、プレゼントを載せた馬車やら部下やらを従えて街中を練り歩くのですが、その山車の凝ってる事、凝ってる事!そんな盛大なパレードは、馬に乗った兵隊達のトランペット演奏で幕開けです:



「う、馬だー!」。馬なんて真近で見る事なんて殆どないので、子供達よりも僕の方が大興奮(笑)。普段は無機質なオフィスとか、香水付けた人間とか、そういう管理された環境に慣れてしまっているので、不意に「自然」に出会ってしまうと、それはそれで心が躍ります。そうこうしている内に妖精達が登場してきました:



コチラは星の国から来た星人(?)かな(笑)。



更に何だか良く分からない足長星人達も:



と思っていたら、やってきました、最初の王様、メルキオールの登場です:



うーん、流石に王様らしく、物凄い馬車に乗ってる!で、その後ろには勿論コチラ:



王様が運んで来た贈り物の山、山、山!こういうのを見て、子供達は「あの箱の中に僕/私のプレゼントが入ってるんだー」とか想像する訳ですね。それが過ぎたら、今度は何やら蓮の花の妖精達がやって来た:



「音楽もアジア的〜」とか思ったら、アジア王、カスパールの登場です。



カスパール、もうノリノリで、馬車の上で踊りまくってました(笑)。



ちなみにこのパレードの最中に、山車から妖精達が見物客目掛けて飴玉を投げるんだけど、ただの飴だと思ってナメてたら大間違い。これが結構痛いんだな!飴って結構固いし、至近距離から投げて来ますからね。と言いつつも、今年は5個ゲットしました!

さて、カスパールが通り過ぎると、今度は又、雰囲気がガラッと変わって、巨大なキリンの登場:



結構大きくて迫力満点!キリンと言えばアフリカ。と言う訳で、アフリカ王、バルタザールの出番です:



バルタザールが登場した瞬間に、「キャー、バルタザール様〜!素敵―!!」みたいな黄色い声援がアチラコチラで飛んでました。実は去年も同じ様な現象が起こっていて、スペイン人に聞いた所、どうやらバルタザールは3博士の中でも一番人気なんだとか。ヘェー、そんなのあるんですね。で、このアフリカの王様の後ろにはコレ又、機械ラクダ(?)みたいなのが居てちょっと面白かったかな:



最後は、夢の国の妖精か何か知らないけど、「良い子の皆さんはもう寝ましょうね」みたいなのと、一年を通して行儀の悪かった子にはプレゼントの代わりに炭が贈られるという伝説がある事から、木炭で一杯の山車が来て締め括り。勿論子供達は大興奮&大満足!


 
バルセロナという都市の面白い点、それはこの様な都市全体を使った催しが頻繁に行われ、市民までもがそれに参加し、そしてそこにはチョットした洒落が利いているという所だと思います。交通規制や建物開放を市役所主導で大々的にやりつつ、昨日までは就業の地だった街が、一夜にして一大エンターテイメントの場に早変わりするっていう身のこなし方も魅力的。

そして何よりも大事な事、それは未曾有の経済危機という状況にも関わらず、この様な子供達にとっては非常に重要なイベントをきちんと企画し実行出来ている所ですね。つまりは予算は削るにしても、中止にはせずにきちんと子供達に夢を与える事を忘れないっていう所だと思うんですね。こういう事が出来る背景には、「3つ子の魂百まで」じゃないけど、子供の頃に体験した「忘れられないワンシーン」が、その人の一生を左右するくらい大切な記憶として残り、そういう一人一人の想像力/創造力の積み重ねが地中海都市の文明文化を成熟させてきたという事を、市民一人一人が良く分かっているという事の裏返しだと思います。そんな場面に遭遇した時ほど、地中海都市の懐の深さと言うモノを感じる瞬間はありません。

やはり僕達日本人がバルセロナから学ぶ事は未だ未だありそうです。
| バルセロナ都市 | 19:38 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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