地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
<< スペインを代表する知識人でありバルセロナ現代文化センター館長ジョセフ・ラモネーダ(Josep Ramoneda)氏解任に関する波紋 | TOP | スペイン人に教えてもらった、誰にでも出来る美味しいパエリアの作り方 >>
バルセロナ現代文化センター(CCCB)館長ジョセフ・ラモネーダ(Josep Ramoneda)氏解任に関する波紋その2:インタビュー記事全訳
前回の記事の続きなのですが(地中海ブログ:スペインを代表する知識人でありバルセロナ現代文化センター館長ジョセフ・ラモネーダ(Josep Ramoneda)氏解任に関する波紋)、今日の新聞(El Pais, 17 de Diciembre 2011)にバルセロナ現代文化センター館長であるジョセフ・ラモネーダ氏のインタビュー記事が載っていました。内容は勿論、政権交代による解任劇とその裏事情。その行間からは彼の苛立ち、悲しみ、ひいてはこの先バルセロナが何処へ行こうとしているのか/もしくは何処へ行ってしまうのか?などが読み取れて、大変興味深い内容となっています。バルセロナの文化政策などに興味のある方は必見です!



以下の訳文はEl Pais紙(2011年12月17日)のP51に載った文の全訳です。

Q=インタビュアーの質問
R=ジョセフ・ラモネーダ氏の回答
赤字=訳者メモ

「バルセロナを牛耳っている現政権CiU(カタルーニャ地域主義政党)は、私の館長解任を通して、バルセロナ市の政治的変化が文化部門にも及んでいるという事を視覚化しようとしている」
"Con mi salida, CiU visualiza el cambio cultural"

ジョセフ・ラモネーダ
Josep Ramoneda


Q: あなたが去った後、バルセロナ現代文化センター(CCCB)に一体何が起こるのでしょうか?
Q: ¿Qué pasará con el CCCB?

R: これから一体どんな事が引き起こされるのか?それは私には分かりません。ただ分かっている事は、館長としての私の契約が更新されず、12月31日をもってCCCBを去らなければならないという事だけです。通常、文化センターなどの館長が変わる際には、次の館長が就任するまでの空白期間を前館長が補填するというのが慣習なのですが、個人的に現政権のやり方には納得がいかないので、それはしない事にしました。まあ現政権も頼んではきませんでしたけどね。間違ってもらっては困るのですが、民主主義的な手続きを踏んでバルセロナ市の政権を任せられたカタルーニャ地域主義政党(CiU)は私を解任する権利を持っているし、政権交代による公的機関のトップ交代などは何処の社会でも普通に行われている政治的ゲームの一部なので、その事を批判したり非難したりするつもりは毛頭ありません。ただ、そうするならするで、別のやり方があったと思うのです。

バルセロナ現代文化センターは他の諸機関には見られない特別な特徴を持った機関であり、そのユニークな個性を存続させる為には、スムーズな移行、特に前館長と次期館長の間における密なコミュニケーションに基づいた移行が必要とされるのですが、今回に限っては、その様な移行は行われない事になりました。代わりに、この机の上に現在行われている展覧会やカンファレンスなど全ての活動に関する諸情報と、それらについての私なりのメモを残していきます。これが今回の館長交代における移行であり、この様な移行こそ、現政権が望んでいる移行なのです。たった一つのファイルがね。

何故この様な解任劇が起こったのかについてなのですが、個人的な分析に依ると3つの可能性が考えられるかと思います。一つ目は、政治の世界においては常に付いて回る政治家達の怠慢が原因であると言う事、二つ目は政治家達の文化センターに対する配慮の無さと無関心、そして最後の一つは意図的に練られた戦略政策と言った所でしょうか。それらの内、どれが今回のケースに当てはまるのかは分かりませんが。
R: A día de hoy solo sé que no me renuevan y que por lo tanto el próximo día 31 yo me voy, y tal como han ido las cosas, no aceptaría una prórroga de interinaje. Tampoco me lo han sugerido. Quiero dejar claro que tienen todo el derecho a destituirme; forma parte de las reglas del juego, pero se podía haber hecho de otra manera. Esta institución tiene unas características peculiares que exigen una buena transición y en cambio, aquí, sobre la mesa, solo quedará una carpeta con los proyectos que hay en funcionamiento y una nota mía con informaciones que puedan serle útiles al futuro director. Esta será la transición. Que sea por una cierta desidia que a veces se da en el mundo político, por una falta de conciencia de la importancia de la institución o por una razón estratégica más deliberada, esto es algo que yo desconozco.

Q: 現段階では、いつ頃までバルセロナ現代文化センターの諸活動は決定しているのでしょうか?
Q: ¿Ahora mismo hasta cuando está programado el CCCB?

R: 2012年までは既にプログラムは決まっています。加えて2013年、2014年の為のプロジェクトなども動き出していますが、勿論それら全ての事は、新しい館長の意向によると思います。彼もしくは彼女が気に入らなければそれらはお蔵入りになるでしょうし。
R: 2012 está programado. Evidentemente habrá que ver lo que quiere quien venga, y hay muchos proyectos en marcha para 2013 y 2014.

Q: バルセロナ県のトップの方とはお話になったのでしょうか?((注)バルセロナ現代文化センターはバルセロナ県(75%)とバルセロナ市役所(25%)の出資によって運営されているコンソーシアムなので、館長任命などにはバルセロナ県の意向が強く出される。
Q: ¿Ha tenido contactos con el presidente de la Diputación?

R: 勿論です。彼はとても真摯で礼儀正しい方でした。私に対する今回の決定は、彼が決めた事ではなく、もっと上の方から手を回されて彼が決定させられた事だと思います。
R: Sí claro, es una persona muy cordial y muy correcta. Yo tengo la sensación de que ha ejecutado una decisión que le sobrepasaba, que venía de más arriba.



Q: バルセロナ現代文化センター設立当初(1994年)から言われ続けてきた事なのですが、CCCBにはナショナリズムの精神が欠如しているという批判が、特にカタルーニャ主義の人達から出されていますよね。その点については、右派(カタルーニャ地域主義政党)からだけではなく、前政権だった左派からも言われてきました。この事があなたの解任に繋がったのでしょうか?

Q: A lo largo de todos estos años ha habido una crítica permanente por parte del catalanismo, tanto de derechas como de izquierdas, al CCCB por su falta de espíritu nacionalista. ¿Ha jugado esto un papel en su destitución?

R: そうだと思います。その点については、あらゆる面における沢山の証拠がありますし、現政権の中には一部、強烈にナショナリズムを押し出すグループが存在するという事はスペイン人なら誰しも知っている事実です。間違ってはいけないのですが、それは現政権の中における「一部のグループ」だという事です。カタルーニャ地域主義政党の中には、それとは全く反対の事を推進している人達も存在しますので。問題はですね、そんなカタルーニャ・ナショナリズムを前面に押し出したい人達にとっては、私がCCCBに居る事が非常に厄介なのです。私を追い出さなければCCCBが本質的に持っているコスモポリタニズムという特徴を「現代ナショナリズム」という特徴を持つセンターに変える事は出来ませんから。更に私の解任は、バルセロナ市における政治の変化(政権交代)だけではなく、その様な変化が文化の面にも押し寄せてきているという事を視覚化する効果も伴っているのです。
R: Seguro que sí. Hay todo tipo de pruebas y todo el mundo sabe que había un sector de Convergència –un sector, porque otro pensaba lo contrario- que creía que era necesario que yo saliera del CCCB para que se “visualizara” que el cambio también había llegado a la cultura y que se tenía que sustituir el cosmopolitismo, esencialmente la etiqueta que se ha puesto a esta casa, por una cultura de nacionalismo moderno, por llamarlo de alguna manera.

Q: 現代ナショナリズムとは一体何なのでしょうか?
Q: ¿Qué es el nacionalismo moderno?

R: さっぱり分かりません。おそらく新しい館長が就任したら次第に明らかになるとは思うのですがね。(皮肉を込めて)そう期待しましょう‥‥。CCCBにとって本質的な事は、このセンターがバルセロナにあるという事、そしてその中でもRAVAL地区(バルセロナの歴史的中心地区)に存在すると言う事です。そんな環境で生まれ出たCCCBはその誕生から本質的にユニバーサルな雰囲気を持っていました。故に我々は今まで常に開かれたテーマを考えてきましたし、グローバルなテーマを扱ってきました。ローカルなテーマに優先順位を置くという事はしてこなかったのです。グローバルな視点を持ち、その中において自国の文化を捉えるというやり方こそ、私が「文化」を理解するやり方だからです。
R: Yo no lo sé, tal vez lo sepamos cuando otra persona tome el mando de esta casa… Nosotros solo teníamos presente que esta institución estaba en Barcelona, que estaba en el barrio del Raval, que es un elemento decisivo, y que su ámbito era un ámbito universal. Hemos intentado siempre pensar en temas abiertos y globales y no en priorizar lo local. Esta es la manera como yo entiendo la cultura.



Q: バルセロナ現代文化センターは慣習的な美術館とは一線を画した存在となっていますね。何故でしょうか?

Q: El CCCB es una institución atípica que escapa a la práctica museística habitual…

R: バルセロナ現代文化センターは「新しい文化センターのモデルになる」という強い意志を持って立ち上げられた特異なプロジェクトだったからです。ここで行われている教育的な諸コース、お祭り、カンファレンスや会議、更には展覧会などといった諸活動は、各々が独立して存在している訳ではなく、全体と密接な関係をもって動いているものであり、そういう意味において「全」の中の「一」なのです。それら一つ一つの部分がなければ全体は成り立ちませんし、もしも一部を取り除いてしまったら全体が崩れ落ちてしまう様な、そんな大変複雑な均衡の上に成り立っているのです。

近頃、大変気にかかる話題が私の耳にも入ってきているのですが、現政権がバルセロナ現代文化センターの隣にあるバルセロナ現代美術館(MACBA)の一部機能を現代文化センターに移し、2つの機関を統合しようという動きがありますよね。おそらく、その提案は現代美術館にとっては有意義なものなのでしょうが、我々にとっては迷惑極まりない提案だとしか言いようがありません。ハッキリ言うと、CCCBの個性を殺してしまう様なものなのです。
R: Porque era un proyecto atípico que nación con la voluntad de crear un modelo. Hemos desarrollado un modelo de equilibrio complejo, del que es muy difícil mutilar una parte sin cargarse el todo, porque los cursos, los festivales, las conferencias y las exposiciones no van cada una por lado sino que forman parte del todo. Estos días he oído algunas cosas preocupantes, como señales de que el Macba [el vecino Museo de Arte Contemporáneo de Barcelona] quiere ocupar salas del CCCB.

Q: おそらく、現政権にとっての文化の定義とCCCBが考えている文化の定義の食い違いだと思うのですが。
Q: Tal vez no encaja en lo que CiU entiende por cultura.

R: 一般的に言って、政治には幾つかの特徴があると思うのですが、その中でも特に保守系政党に関して言えば、文化政策を歴史的建造物や彫刻、もしくは絵画などと言ったコレクションとして博物館などに展示されているものへと狭く定義する傾向があります。しかし文化とは、それら歴史的遺産を蓄積するという枠組みでくくる事が出来るものだけではなく、創造力に基づいて何かしらを創り出すという活動も含まれるのです。そして公的機関が、この様な創造に関する文化政策に深く関与する事は非常に重要な事なのです。それらクリエイティビティを生かした諸生産は将来的な可能性の扉を開く事になりますし、その様な創造に基づいた活動というのは、プライベートセクターだけでは保持する事が非常に難しいからです。
R: Creo que hay algo muy característico de la política en general y de la política conservadora en particular, que es la tendencia a reducir las políticas culturales públicas a lo estrictamente patrimonial. Pero es muy importante que haya políticas culturales públicas que jueguen a fondo la carta de la creación, porque se abren puertas y se mantiene viva una sensibilidad muy difícil de tener solo con el sector privado.



Q: この20年間における社会文化的な変化をCCCBからどの様にご覧になっていましたか?
Q: ¿Cómo ha visto desde el CCCB los cambios de las dos últimas décadas?

R: そうですね、非常に重要な3つの変化を我々の社会は体験したと言えると思います。一つ目は、政治に対する信頼感の喪失です。政治の文化に対する無関心さ無理解さという意味においてですが。二つ目は近年勃興してきた新しいテクノロジーによる我々の生活や人間自身への影響について。そして最後の一つは、それら技術革新による変化によって、我々の社会に一体どの様な新しい組織が生まれ出てきているのか、もしくはどんな組織形態が必要とされているのかを見極めると言う事です。現在我々の社会が直面している新しいタイプの経済危機に対して、古い言語や古い態度を持って対処していても、それは何にもならないのです。この様な変革の真っただ中において、新しい言語や組織形態を探し出す事こそ、現在CCCBが扱っている最も重要なテーマの一つなのです。
R: Diría que hay tres cambios importantes: la pérdida de confianza en la política, en el sentido de una menor relación con la política institucional; la perplejidad sobre los grandes cambios tecnológicos y su impacto sobre la antropología, sobre la propia especie humana, y la necesidad de ver qué nuevas formas de organización nacen de estos cambios cuando hay la sensación de que la crisis y sus efectos están siendo tratados con posturas y lenguajes completamente antiguos. Este es uno de los ejes centrales sobre los que está haciendo cosas el CCCB.
| インタビュー集 | 06:17 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
コメントする