地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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スペイン総選挙2011:中道右派、民衆党(PP)の歴史的勝利とその背景
昨日の総選挙から一夜明け、街が普段の生活リズムを取り戻すのとは裏腹に、各種メディアはこぞって今回の選挙の詳細データとその分析、ひいてはスペインがこれから何処へ向かうのか?といった予測などを書き立てています。普段は新聞を2紙(El PaisとLa Vanguardia)しか買わない僕も、今日ばかりは地元カタルーニャのポピュラー紙として知られているEl Periodicoも購入して3紙で内容を比べてみました。ざっと見た感じ、僕が考える今回の総選挙の特徴は以下の3点かな。



先ず一点目は民衆党(Partido Popular(PP))の歴史的な大勝利(wikiではPartido Popularの事を国民党と訳しているけど、外務省では民衆党と訳しているので、そちらを使う事にします)。二点目はスペイン社会労働党(PSOE)の歴史的な大敗北。そして三点目は各地方におけるナショナリストの弾頭です。今回の総選挙ではこれら3点が際立った特徴として現れていたと思うんですね。

先ず第一点目なのですが、今回の総選挙で民衆党は絶対多数(176議席)を大幅に上回る186議席(得票率44.6%)を獲得し大勝利したという事が挙げられます。この数字は前回の獲得議席数(154議席)は勿論の事、スペイン民主主義史上、民衆党の獲得議席数が最も多かったアスナール政権時(2000-2004)における183議席よりも上をいっています。更に驚くべき事は、今回の総選挙の結果と今年5月に行われたスペイン統一地方選挙の結果を合わせて見た時に現れる、民衆党が獲得した圧倒的な勢力図です(地方選挙についてはコチラ:地中海ブログ:スペイン統一地方選挙2011:バルセロナに革命起こる、地中海ブログ:スペイン統一地方選挙2011その2:バルセロナ市内の詳細データと文化施設への影響について)。



上の図は1983年(右)に行われた選挙と今年の5月(左)の選挙結果(青色が民衆党で赤色が社会労働党が勝った地域)を比べてみたものなんだけど、こうして見るとその違いが一目瞭然だと思います。独裁政権直後と言ってもよい地方選(1983年)では、スペイン中で左派が圧倒的多数を占めていたのに対して、それから30年後の現在では右派がその勢力を隅々まで行き渡らせているのが分かるかと思います。



ちなみに上の図が今回の選挙の結果(青が民衆党で赤が社会労働党が勝った地域)なんだけど、得票率で見ると、ほぼ全ての県で民衆党が勝っている事が分かります。唯一色が違うのが、カタルーニャ州(バルセロナ市)とバスク州、そしてアンダルシアのセビリア県だけっていうのはちょっと凄い。

これら2つの地図が如実に物語っている事、それは民衆党が獲得した圧倒的な権力です。つまり今回の総選挙で勝った事によって、民衆党は国会(中央)と各自治州(地方)という両方を押さえてしまった訳ですよ!これはスペイン民主主義史上初めての事で、1982年の総選挙で202議席を獲得したフェリッペ・ゴンザレス(Felipe Gonzalez)政権(1982-2000)ですら各自治州を掌握するまでには至りませんでしたからね(この時の地方選挙の結果が上の1983年の図)。

では何故今回の選挙では民衆党がこれ程躍進したのか?というと、それが今回の総選挙の第二の特徴である、スペイン社会労働党の歴史的な大敗北と関係がある訳です。これがどれくらいの敗北かというとですね、前回の獲得議席数が169議席だったのに対して、今回は110議席、得票率にしたら43.9%(2008)から28.7%という、スペイン社会労働党史上最悪の結果となってしまいました。彼らにとって特に衝撃的だったのは、総選挙では今まで一度も負けた事が無かったカタルーニャ州と、社会労働党のお膝元、セビリア(アンダルシア)で大敗した事でしょうね。

そして今回の総選挙第三の特徴が各地方におけるナショナリストの弾頭です。具体的に言うと、カタルーニャ州におけるCiU(カタルーニャ保守の民族主義連合)、そしてバスク州におけるAmaiur(バスク左派の民族主義連合)が、はっきりと目に見える形で弾頭してきた事が挙げられます。

民主化後のカタルーニャの歴史の中において、総選挙でカタルーニャ社会労働党(PSC)が負けた事は今まで一度たりともありませんでした。それが今回あっさりとカタルーニャ保守であるCiUに負けてしまったんですね。カタルーニャ全体の得票率で見ると、CiUが29.3%で16議席を獲得しています。これは前回の10議席(20.9%)からは大幅な躍進で、半年前の地方統一選挙での圧倒的な勝利と共に総選挙でも歴史的な勝利を収めるまでになったという訳なんです。それに対してカタルーニャ社会労働党の得票率は前回(2008年)が45.4%(25議席)だったのに対して、今回は26.6%(14議席)っていう惨敗もいいとこ。

選挙結果をもう少し詳しく見てみると、カタルーニャ州にある4県の内で唯一社会労働党が勝ったのがバルセロナ県なんだけど、それだってもう本当に僅差で、やっとって感じ。バルセロナ県に限ってみれば、労働左派が27.8%(前回は46.8%)、二番手のCiUが27.1%(前回は19.6%)っていうんだから、これがどれ程の僅差か分かるというものです。ちなみに第三勢力につけているのは民衆党で、得票率は20.9%、7議席を獲得しています。カタルーニャにおいて民衆党が力を持ち始めているという事は、それはそれで凄い事なんですけどね。

そしてこのカタルーニャ州におけるナショナリズムの弾頭と時を同じくして頭角を現してきたのがバスク州におけるAmaiurなんですね。この政党はちょっと謎に包まれていて、ここで名言する事は避けたいと思うんだけど、ハッキリしている事は、今まで殆どヘゲモニー状態を維持してきたバスク州の右派ナショナリスト政党であるPNVの立場を脅かす程になってきたという事です。得票率で見ればAmaiurは第二位なんだけど、割り当てられた議席数は6議席とPNVの5議席を抜いてトップに立っています。

これら3点が今回の総選挙の主な特徴だと思うんだけど、実はもう一点、もう少し違う角度で見た時に浮かび上がってくる非常に重要な側面が今回の総選挙にはあります。それがヨーロッパという視点で見た時のスペイン総選挙の位置付けなんですね。前述した3紙の内、この事に触れていたのはEl Pais紙だけでした。さすがだなー。

詳しい分析などは次回以降に譲ろうと思うんだけど、少しだけ書いておくと、実は2010年辺りから欧州各国で行われてきた総選挙において、政権交代に至った国は今回のスペインで既に6カ国目なんですね。しかもそれら殆どの国で、政権についていた与党が大敗北しているというオマケ付き。それらの国々というのは、イギリス、オランダ、アイルランド、ポルトガル、そしてデンマーク。そして来年にはフランスも大統領選を控えています。

この様な、ヨーロッパという大枠で見た時のスペインの位置付けや動き、そしてその中におけるスペイン国内の動きなどは今週一週間をかけて、もう少しじっくりと分析していきたと思います。
| スペイン政治 | 04:27 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
こんにちは。
Crisisのすべての責任を政治のせいにするわりに、実際若い人の選挙への関心は日本同様低いと聞きます。私の周りは「白紙投票する!」と言っていたので、まだ関心がある方かも…スペインは、日本のように年代別投票率って発表されるんですか??
| Ana | 2011/11/22 10:26 PM |
Anaさん、こんにちは。

年代別投票率、実は僕も探していたのですが、結局見つかりませんでした。あると物凄く良い情報源だと思うんですけどね。

確かに近年、若者の選挙への関心は低くなりつつあると思いますが、それでも一定のレベルは越しているのかなーとは感じます。日本の若者の状況は絶望的で、学生がデモもしない国なんて、ホント、日本くらいじゃないの?とか思っちゃいますね。
| cruasan | 2011/11/26 6:03 AM |
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