地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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グラシア地区歩行者空間計画BMW賞受賞
大変嬉しいニュースが飛び込んできました。以前僕が担当していたバルセロナのグラシア地区歩行者空間計画がBMW賞を受賞しました!BMW賞というのは、優れた都市計画などに贈られる賞として、都市計画のメッカであるバルセロナは勿論の事、スペイン中の建築家や都市計画家達が「今年はどのプロジェクトが選ばれるんだろう?」と、固唾をのんで見守っている賞の事なんですね。この賞が何故これ程注目されるのかというと、その年の受賞プロジェクトが、ある種の「モデル」として、他の都市のお手本にされるという背景が少なからずあるからです。



グラシアの歩行者空間計画については今まで散々書いてきたのですが、手短に言うと、自動車の排気ガスや騒音に塗れまくっていた地区を歩行者中心で緑溢れる地区に変えちゃおうっていう、当時としては大変画期的な計画の事です(地中海ブログ:グラシア地区祭り:バルセロナの歩行者空間プロジェクトの責任者だったけど、何か質問ある?)。まあ、それが故に、当時は近隣住民からの反対が凄くって、毎週末の様にデモが行われたり、「バルセロナ市役所は何も分かってない」みたいなプラカードを乱立させられたりと、計画が終わる直前まで気が気で無いプロジェクトでした。

その後、アスファルトの舗装や信号機の調整、そして植栽など全ての計画が完了した後の歩行者の実態調査とその分析も引き続き僕が担当してたんだけど、その調査結果によると、このエリアを訪れる歩行者と自転車の数が劇的に増加して、更に個別インタビューを行った所、近隣住民を始め、商店の人達などの満足度が以前に比べて伸びている事などが分かってきました。当然と言えば当然で、と言うのも、歩行者が増えれば商店の前を通る人の数が増加し、それだけ売り上げに結び付く「可能性」が高まるからです。

この計画を皮切りに、バルセロナ市内では22@地区の歩行者計画(地中海ブログ:22@地域が生み出すシナジー:バルセロナ情報局(Institut Municipal d'Informatica (IMI))、バルセロナ・メディア財団(Fundacio Barcelona Media)とポンペウ・ファブラ大学(Universitat Pompeu Fabra)の新校舎)、そしてヨーロッパにおいて最もサステイナブルな都市の一つとして知られている(というか、日本ではさっぱり知られていない)バスク地方のビトリア市でも、次々とこの歩行者空間計画を採用し始め、僕もこれらの計画に駆り出される事となったんだけど、ビトリア市の計画なんかは今思い返してみても「結構良く出来てたなー」なんて思ったりしちゃいます(地中海ブログ:フランクフルト旅行その3:広告としての緑の都市計画)。



都市内を歩行者空間にするだけでなく、都市を取り巻く様に「緑の指輪」を創り出す事によって、都市の境界を明確にすると同時に、際限無いアーバニゼーションを抑制しつつ、更にはそのエリアを緑溢れる公園として解放するという計画を立案、そして実施したんですね。

これらの計画に見られるように、今、ヨーロッパの諸都市では明らかに自動車を都市から追い出し、そして歩行者中心の都市に移行していこうという意図が見られます。勿論これはそんなに簡単な話ではなくて、自動車というのは(ある意味)都市経済を回しているモーターでもある事から、それをあまりにも排除してしまうと、今度は都市の経済活動が停滞してしまうという、ある種の矛盾をも抱えているからです。

故に歩行者空間を計画する際に重要だと思われるのは、都市という大きな枠組みの中において、「どの地区をどういう位置付けにしたいのか?」という、都市全体から見た時の都市戦略だと思います。それが全てであり、今までのバルセロナの都市計画における成功の鍵はそこにあったと言っても過言では無いと思います。

何はともあれ、嬉しいニュースでした。

追記: バルセロナのレストラン情報で書こうかと思ったけど、書く程でもないのでココに書いちゃおう。昨日友達に連れて行ってもらったレストランで、生まれて初めてエスカルゴを食べました:



初めは、「ぎゃー」とか思ったんだけど、食べてみたらこれが意外に美味しかった。普通のエスカルゴみたいに大粒ではなくて、カタルーニャ特有の小さいサイズのカタツムリ。バルセロナに来られたら、一度試されてみるのも悪くはないかも。
| スペイン都市計画 | 07:48 | comments(10) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
Cruasanさん、おめでとうございます〜!!!
以前書かれていた記事でグラシア通りのお祭り、素敵だな〜と思っていたんですけど、すごい快挙ですね!!
都市中心部から自動車を減らす・・・というのは、今から20年ほど前、大学の卒業旅行でヨーロッパを回っていた際に知って「そんなことできるの?なぜ??」なんて思っていたんですが、実際に根付いて各地に普及しているんですね。
「ヨーロッパの観光地はどこも車で乗り付けられなくなっているから、若いうちに回りなさい」というのは、スペインの添乗員さんの弁。
都市の成り立ちや構成、建築材などから、ヨーロッパは車を減らすことで魅力を増す要素がたくさんありそうですね。
| いちごキッズ | 2011/11/06 10:47 AM |
いちごキッズさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

賞、もらっちゃいました!結構苦労した計画だったので、それが評価されるのは何かとても感慨深いものがあります。

自動車を都市部から排除する事に関しては、バルセロナはかなり進んでいると思います。ヨーロッパ都市は何処でも歴史的中心地区では歩行者空間を実現しているのですが、それ以外の地区で歩行者を推進しているのは、なかなか無いと思います。まあ、それを実現する為には、先ずはテクニカルな部分で、かなりの分析をしなくてはならず、それが出来る所が少ないんですけどね。

これを機に、ヨーロッパでより一層、歩行者空間が広がって行く事を願っています。
| cruasan | 2011/11/06 9:11 PM |
歩行者空間が増えるっていうのは、バルセロナ在住者にとっては魅力ですが、短期で滞在する観光客には不便だと思うのですが実際のところどうなのでしょうか?NIEとかないとbicingは使えないし、地理がわからないとバスや地下鉄も使いにくいし。定番コースだけではバルセロナって面白い街だとは個人的に思えないのですが、ガイドもなしにひたすら徒歩で街歩きを楽しむには大きすぎると思うのです、
| Hocus Pocus | 2011/11/06 10:08 PM |
おめでとうございます。車を排除するだけでは歩行者が増えるという単純な計算ではなく、その土地の(エリアの)機能とかみ合うことでヒューマンレベルの都市計画ができていくのですね。グラシアの計画はまさにそこだと思います。日本の郊外でつぶれていく旧商店街の立て直しなどに応用できるのではと思っています。
| Hide@KOBFUJI | 2011/11/07 6:22 PM |
すばらしい!おめでとうございます。
なぜこのようなスキームが出来るのか、先日伺ったお話でなんとなくですが納得できました。
暗いニュースばかりの近年ですが、才能を十分に生かしてバルセロナの街をもっと魅了的なものにしてください。
| Aki | 2011/11/12 6:40 PM |
Hocus Pocusさん、KOBFUJIさん、そしてAkiさん、皆さんどうもありがとうございます。これからも精進していきたいと思っていますので、どうぞヨロシク御願いします!
| cruasan | 2011/11/13 9:18 PM |
たまたまこちらを発見しました。
バルセロナに2年連続で行ってきました。
最初に訪問した時は感じませんでしたが、2回目の訪問で
バルセロナという街にすこしづつ魅了されてきました。
現地に友人(スペイン人カップルで奥さんはカタラン)がいるので、
観光スポット以外の場所に行ったり、説明を聞いているうちに
バルセロナの事を「興味深い都市」、と思ったのでした。
日本人の建築家の名前も良く知っていました。
実際にご活躍中の方のブログを発見し、
又、グラシア地区歩行者空間計画に日本人が携わっていたことを
知り驚いています。
BMW賞受賞おめでとうございました。
| ちえみん | 2011/11/14 8:51 AM |
BMW賞、おめでとう!デザインが優れていることももちろんですが、歩行者空間の推進という方向そのものに大きな一票が投じられたようで嬉しいです。同時に上記のコメントにもあるように、公共バスをもうちょっと旅行者にも分かりやすくしたり、Bicingを旅行者へ開放したりして、住民も旅行者も徹底的にマイカー(あるいはレンタカー)なしでも便利に動けるようになるといいですね。1時間15分以内ならどの交通機関も乗り放題というスゴい切符の制度があるのですから、すぐにでも実現できそうな気がしています。
| tmk | 2011/11/15 11:49 PM |
ちえみんさん、初めまして、こんにちは。コメントありがとうございます。

バルセロナ、知れば知る程、興味深く、そして魅了される街ですよね。かくいう僕も、来た当初は1年だけの滞在のはずが、気が付いてみれば10年を超す程になってしまいました。その昔、地元の有名な詩人が「偉大なるバルセロナよ、お前は魔女だ!」という様な詩を詠っていたのですが、人を魅了するバルセロナという街は本当に「魔女の様な存在だなー」と思う事しばしばです。

一人でも多くの人がこの街を好きになってくれる事がとっても嬉しいです!

| cruasan | 2011/11/19 10:29 PM |
tmkさん、こんにちは。ありがとうございます!

バルセロナの魅力って、やっぱり歩いて何処にでも行けるという点だと思います。この計画、実はセルダブロック全体に適応するっていう結構壮大な計画だったのですが、今の所、グラシアで実験という所で止まっている状態です。

現在バルセロナ市はバスの路線を劇的に変更するっていう計画を推進中なのですが、その計画にも関わっていた事があって、その延長線上で、新しいバスストップのデザインもやっていました。その時に、「市民に情報をどうやって分かり易く伝えるか?」っていうのが大問題の一つで、結構尽力したのですが、利害関係などから結局実現出来ませんでした。残念!

Bicingの旅行者への開放はホント、そう思います。っていうか、何故やらない?という意見の方がむしろ普通ですよね。

個人的に、僕は都市というのは歩行者ありきだと思っている方なので、これからも歩行者推進には全力で取り組んで行きたいと思っています!
| cruasan | 2011/11/19 10:29 PM |
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