地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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デザイン系出版社の老舗、グスタボ・ジリ(Editorial Gustavo Gili)社屋のオープンハウスその1:バルセロナってデザインのレベルが本当に高いと思う
バルセロナという都市の特徴を切り取る視点は様々にあると思うんだけど、その一つに街中を埋め尽くすデザインとそのレベルの高さが挙げられると思います。



上の写真は市内を走っているバスの座席のデザインなんだけど、これ、一体何をモチーフにしているかって言うとですね、バルセロナを上空から見た時に一目瞭然となる、133メートル×133メートルの四角形が整然と並んだ風景、かの有名なセルダブロックなんですよね(セルダブロックについてはコチラ:地中海ブログ:エンサンチェ(Ensanche:新市街地)セルダブロック中庭開放計画その1: Jardins de Maria Merce Marcal)。



まあ通常、バスの座席のデザインなんて上の様な平凡極まりないものになるのが普通だと思うんだけど(ちなみに上の写真はバレンシア市内を走っているバスの座席)、何故かバルセロナでは街中の至る所にまで異様な程レベルが高いデザインが溢れ返ってて、実はその事が、知らず知らずの内に一般市民の無意識に働きかけ、この地に住む人々のデザイン力の底上げをしているんじゃないのかな?と、そう思ってしまう程なんです。逆に言えば、曲がりなりにもデザインを縄張りとしている僕にそう思わせる程、この街には質の高いデザインが溢れていると、そう言えるかとも思うんですね。

更に、バルセロナと言う都市は、その様な質の高いデザインを巧みに用いながら都市を売り込んでいく、「都市マーケティング」が非常に上手い都市でもあると思います。特に視覚的インパクトをベースにした「出版」を用いた都市の戦術には舌を巻く程です。昔、ベネディクト・アンダーソンが都市のマーケティング(想像の共同体を創り出す為)には言語、新聞、映画なんかがよく使われるって言ってた(というか、彼の著作はそういう風にも読める)んだけど、バルセロナの市役所の戦略なんて、正にその良い例だと言っても過言ではありません。

その一翼を担っているのが、今日のテーマである出版業界で、実はスペインという国は出版熱が非常に高いエリアとして世界的に知られています。それらを挙げていくと切りが無いんだけど、例えば建築関係者なら誰でも知ってるEl Croquies(マドリッド)を始め、カタルーニャ建築家協会の会員誌であるQuaderns、はたまた、その編集力とデザイン力で今や世界的な出版社にまで急成長を遂げたACTAR出版社など、スペインを取り巻く出版の状況は非常にダイナミックに見えます(昨今の経済危機やペーパーレスなどの影響から、スペインの出版界が潤っているかどうか?は又別の話)。

ちなみに、バルセロナの大先輩であるTさんが勤められているACTAR社の前身は1991年にQuaderns誌の編集権を勝ち取った若手建築家グループで、正式な設立は1993年だったかな(確か)。元々、Quadernsという雑誌は一地方の建築家協会の会員誌でしかなかったのに、それを世界的な雑誌にまで押し上げたのは明らかに彼らの功績です。



もう一つちなみにACTARって言う名前は、1931に地元の建築家、Nocolau Maria Rubio i Tuduriが創ったマニフェスト、ACTAR = ACTivity + ARchitectureと一緒。ACTAR出版社の名前が、このマニフェストに由来しているのか、それとも偶然の一致なのかは不明。ACTARのパートナーの一人、Albert Ferreさんは、ACTARを立ち上げる前、バルセロナ現代文化センターに勤めてて、もう一人のAlbertoさんと展覧会の企画やカタログなんかを創っていました(と聞いています)。その時期の出版の質の高い事、高い事!その時期の事を考えると、最近はちょっとパワー不足かな。又、最近ACTAR社はドイツの大手出版社Birkhauserを買収してその勢いは増すばかりなんだけど、合併後の名前を「ハイパー・アクタール」とか何とかにするって話があった様な気がするのですが、それがどうなったのかも謎。



そんな中、今月3日、建築やデザイン関連の出版で世界的に有名なグスタボ・ジリ社屋が建立50周年記念を向かえ、それに関連する記念イベントが行われました。

出版界の大手、グスタボ・ジリ(Editorial Gustavo Gili)社屋のオープンハウスその2:カタルーニャにおける近代建築の傑作に続く。
| 建築 | 05:23 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
なんだか宣伝してくださってありがとう(そして手厳しい批評も感謝です)!もちろん私たちの会社名はそのRubio i TuduriのACTARから来ています。Manuel Gausa率いる同名の建築事務所もあり、もともとGausa氏はQuadernのActar時代の編集長だったので、そちらも語源を同じくしています。建築を「モノ」でなく、出来事として捉えるという意味のVERBという出版物の名前もACTARと同じコンセプトから来ているんですよ。つまりACTARは動詞なのです。ちなみにBirkhauserとの合併後は、ActarBirkhauserという名前になりました(そのまま)。出版社に関してはそれぞれのレーベルもオフィスもそのまま残して、生産や流通を一緒にやっています。ちなみに、端から見るとActarとGGはライバル会社ということになるのかもしれませんが、実はお互いの出版物を尊敬するとてもいい関係を築いています。ActarのブックショップであるRASにもGGの本が沢山置いてあるって知ってましたか?今後ともよろしくお願いします!
| tmk | 2011/11/15 11:34 PM |
tmkさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

バルセロナに住み、一応まがいなりにも建築という分野に足を踏み入れている以上、アクタールの事は勿論避けて通れず、「何時かブログに書きたいなー、書かなければ」と思いつつも、大先輩のtmkさんの手前、「僕が出しゃばるのもどうかな?」‥‥というか、付け焼き刃の知識をひけらかす事が恥ずかしくて、今まで書けなかったというのが実情です。でも、グスタボ・ジリの話題が出たこの機会を期に、思い切って書いてみる事にしました。

本文には書かなかったのですが、実は数年前(8年くらい前)、グスタボ・ジリの現ディレクターをされてるモニカさんに会った際、同じ日本人であるという事からtmkさんの話題になり、「知ってるか知らないか分からないけど、アクタールには日本人の女の子が働いてるのよ。彼女はとっても小さくて可愛らしいんだけど、彼女の仕事は本当に凄い。正に小さな巨人だわ」って言われてました。

又、僕が未だこちらへ来て間もない頃の事、tmkさんが編集された本の出版展覧会に少しだけ顔を出す機会があったのですが、そこで堂々とお話されている姿がとても印象的であり、僕にとっては新鮮な驚きですらありました。バルセロナへ来たばっかという事もあったのですが、それ以上に、同じ世代の日本人の方が異国の地で、もう既にこんなにも活躍されているという事に心の底から感動した事を昨日の事のように覚えています。

これからもtmkさんのお仕事には大注目しています!
| cruasan | 2011/11/19 10:40 PM |
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