地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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エドゥアルド・ソウト・デ・モウラの建築:ブラガ市立サッカー競技場(Estadio Municipal de Braga)
前回に引き続き、ソウト・デ・モウラの建築特集です(地中海ブログ:エドゥアルド・ソウト・デ・モウラの建築:ポウザーダ・サンタ・マリア・ド・ボウロ(Pousada de Santa Maria do Bouro)その2:必要なくなった建築を壊すのではなく、修復してもう一度蘇らせるという選択肢)。ポウザーダ・サンタ・マリア・ド・ボウロと並び、彼の代表作と名高いのがブラガにあるサッカー・スタジアムです。かつては本気で建築家を目指していたというオバマ大統領も絶賛してましたし(地中海ブログ:エドゥアルド・ソウト・デ・モウラ(Eduardo Souto de Moura)のインタビュー記事):



ちなみにこのスタジアムでは、観光客の人達の為に毎週火曜日、木曜日、土曜日の午前(10:30)と午後(15:00)(7月から9月までは毎日)に見学ツアーを組んでいるので、「内部空間をじっくり見たい」と言う人は、このツアーに参加する事をお勧めします(2011年8月現在の情報)。料金は一人5ユーロで、所要時間は約1時間30分。特に予約などは必要無いそうなんだけど、一応念の為に電話かメールで開始時間などを確認しておいた方が無難でしょうね。ポルトガルという国は本当に時間にルーズで、間違った情報があちらこちらに交錯してたりするので。

コンタクト
Tel: 253206860
Fax: 253612929
Email: visitas@scbraga.pt

一応少しだけ補足説明しておくとですね、この作品はソウト・デ・モウラが初期の頃から貫き続けてきた手法、「穴を掘って、そこに建築をカポっと嵌める」って言う系譜上に位置してる作品で、2つある観客席の内、片方の観客席が、正に岩と岩の間に隠れる様に配置されているのが建築的見所の一つとなっています。上の写真で見えているのは、駐車場側から見た観客席の方なんだけど、こちらもなかなかダイナミックな形態になっていますね。

で、てっきり見学ツアーはこの駐車場から始まるのかと思いきや、キヨスコのおばちゃん曰く、「道なりに5分くらい上っていった所に選手専用の入り口があるから、そこの警備員に事情を話しなさい」と。で、出たー!田舎にありがちな、ドラクエ式観光スタイル!!

 「酒屋の主人に事情を話しなさい」→→→「街角にある武器屋に行くと良いよ」→→→「王者の剣を手に入れた!」

みたいな(笑)。 で、その教え通りに坂道を上っていくと、確かにありました、それらしいのが!



言われなきゃ絶対に分からない様な、そんな思いっきり隠れた所にある、選手専用の入り口をくぐると、そこには確かに警備員のおばちゃんが居て、見学ツアーの受付をしてくれた。で、そのおばちゃん曰く、「この道を道なりに歩いていくと地下駐車場に出るから、その一番奥の右手側にあるドアを入ってそこで待ちなさい」だって!「またかよ!」とか思ったけど、渋々従う事に・・・。で、ちょっと歩いていくと、見えてきました、目指すべき建築が:



非常にゆったりと大きな弧を描いた屋根が大変印象的です。そして紙の模型で作られた様な「パタパタ」って感じの折り返し階段も全体のシルエットに非常に面白いアクセントを付けていますね。とか思ってもっと近付いていったら先ずは最初のビックリが!



何とこの階段、使用されているのかと思いきや、手すりも何も付いてない、単なる飾りじゃないですか!あ、あれ・・・飾りですか??プリツカー賞受賞者が???って感じかな・・・(苦笑)。そんな事を思いながら、目指すべき地下駐車場の最奥右側のドアをくぐると、そこは博物館になっていました:



歴代の選手達の写真や獲得したトロフィーなんかが所狭しと並べられ、否が応にも気持ちが盛り上がってきます。今やサッカーは世界的なビジネスにまで発展してしまったので、その辺の事情を視野に入れたマーケティングを行っているチームとか、非常に多いですよね。僕が以前訪れて大変感心したのが、何を隠そうバルサの本拠地カンプノウなんだけど、バルサのマーケティング手法とか見てると、正に「ゴールは偶然の産物ではない!」という事を思い知らされます。(地中海ブログ:FC Barcelona(バルサ)のマーケティングがスゴイ:バルサ・ミュージアムに見る正に「ゴールは偶然の産物ではない」)。さて、ここからが今日の本番。選手専用通路を通ってピッチに出るというサービスを味わいながら、目の前に現れる風景がコチラです:



空を走る何本ものケーブルと、それらによって吊られている大屋根が大変印象的です。そして今回彼がやりたかったのがコレかな:



「建築(コンクリート)と自然の対比」みたいなー。山に穴を掘った後の岩肌が非常にワイルドです。



その岩の上には巨大な電光掲示板が備え付けられていたりして、なかなかカッコイイ。そして、この大自然との対比をテーマにした、もう一つのデザインポイントがコチラ:



岩の上からヘンテコな形の棒みたいなのが出てるんだけど、あれ、何かって言うとですね、どうやら屋根の上に溜まった水を流す為の巨大な樋らしい。つまり屋根の上に溜まった水が、先ずは傾斜した軒先まで流れてきて、その軒先がこのヘンテコな棒に水を受け渡すっていうシステムになってるらしいです:



なかなか面白い形をしてるし、それが屋根部分との間に見せる緊張感もなかなかですね。何よりこの一歩間違えばダサイ形態に陥りがちな、でも紙一重の所でカッコイイ形に踏み止まっている、そのギリギリの所の鬩ぎ合いが良いなー。この観客席の裏側には階段や売店、トイレなどといった各種インフラが入ってるんだけど、そこにも「岩を掘ったぞー」っていう痕跡と、それを強調したかの様なデザインがなされていました。



さて、ここまで見てきた僕の感想なんだけど、正直言って、この競技場は非常に評価の難しい建築だと思う。何故かと言うとですね、彼のやりたい事は良く分かり、そしてそれが良く見える事は見えるんだけど、そのアイデアが実現し切れて無い様な気がするからなんですね。例えば、山を掘ってそこに建築をはめ込むって言うアイデアは非常に斬新だし素晴らしいとは思うんだけど、実際の建築が、そう見える様にはなっていません。



そしてこのスタジアムの最大の欠点、それは競技場としての機能に致命的な欠陥がある事だと思います。

僕はそれ程サッカーの熱烈なファンと言う訳ではないんだけど、それでもバルサの試合がある日にはテレビをつけてみたり、友達とバルに行って観戦したり、年に数回はカンプノウに試合を見に行ったりもします。



スタジアムで試合を直に見るって言うのは、テレビで観戦するのとは根本的に違う体験で、それを生み出しているのはやはり、スタジアムおいて大波となって押し寄せてくるかの様な観客の熱気だと思うんですね。そしてその様な熱気を作り出し、僕達を興奮させるのに一役買っているものこそ、何を隠そう、スタジアムの構造に他なりません。



カンプノウが典型的だと思うんだけど、サッカーのスタジアムというのは、ピッチが真ん中にあって、それを取り囲む様に観客席が配置されています。四方を観客が埋め尽くす事で、あの独特の熱気が生まれ、そしてそのエネルギーが保持されているんだと思います。ここまで書けばもう何が言いたいか分かるかと思うんだけど、そう、このソウト・デ・モウラのスタジアムは、そういう構造になっていない為、果たして実際の試合において、あれ程の熱気が生まれるのかどうか、大変疑問な訳ですよ。と言うか、絶対生まれないと思います。

そしてもう一つの問題は、やはりこの建築にはその背後に流れる「空間の物語」が不在である事、そして何よりも、彼がポウザーダで見せた様な、細部への気配り、空間への気配りがさっぱり見られないと言う点が挙げられるかな。

今回はソウト・デ・モウラに対してちょっと辛口になっちゃったかもしれないんだけど、僕の5感がそう言ってるんだからしょうがない。例え、ポルトガルの雑誌がどう言おうと、世界的な建築批評家がどう書こうと、天下のオバマ大統領が何と言おうと、僕は自分の5感を信じます。そしてこれからも、自分の目で見たものを、自分の中の評価軸に沿って評価していきたいと思っています。
| 旅行記:建築 | 06:25 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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