地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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スペインの石川五右衛門こと、伝説的な大泥棒のインタビュー記事:サンティアゴ大聖堂から盗まれたカリクストゥス写本について
昨日からガリシア地方の首都、サンティアゴ・デ・コンポステーラに来ています。



今回ガリシア地方に来ているのは、昨日から3日間に渡って始まったカンファレンスとミーティングに参加するのが主目的で、その前後にちょっとずつ休暇をくっつけたって訳なんだけど、まさか、そのガリシア滞在中にサンティアゴ大聖堂からカリクストゥス写本が盗まれるなんて大事件に遭遇するとは思ってもみませんでした(地中海ブログ:サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂から12世紀に記されたカリクストゥスの写本(Codex Calixtinus)盗まれる!)。

市内を出入りする主要道路には今でも所々に検閲がかけられ、ガリシアの地方新聞は連日この話題で持ち切りです。そんな中、今週日曜日の新聞に、「元泥棒ちゃん」と言う人物による今回の盗難劇に関するインタビュー記事が載っていました(Voz de Galicia, 10 de Julio 2011)。



これを見た時、正直、「えっ?」って思いましたけどね。だって、元泥棒ちゃんによるインタビューですよ?考えられないでしょ普通(笑)。しかもどうやらこの元泥棒ちゃんって言う人、実はスペインでは伝説的な大泥棒だったらしく、日本で言う石川五右衛門の様な存在らしいんですね。で、このインタビュー記事が面白いの何のって。ちょっと抜粋してみると、

 「あなたが泥棒として働いていた時代に比べ、今の時代にはより多くのセキュリティシステムが完備されていると思いますか?」

という質問に対して:

 「勿論、今の時代の方がより優れたセキュリティシステムが整備されているとは思いますが、それらは未だに不十分だと思います。第一、セキュリティシステムがあろうがなかろうが、それらが如何に優れたものだろうが、この世に盗めないものなどないのです。」

とか答えてる(笑)。ス、スゲー!「この世に盗めないものなどない」って言い切ってるし(笑)。更にセキュリティは不十分だとか言ってる!伝説の泥棒ちゃんが言うと、何か妙に説得力がある。

更に、価値のある書籍の盗難などには仲介者の存在が必要不可欠であり、インタビュアーの「盗難の仲介者と言う特化した職業についてる人はいるのでしょうか?」

と言う質問に対しては、

 「私がそうでした。」

とか言ってる(笑)。更に注目すべきがこの発言:

「スペインには写本の購入者はいません。そんなに多くの書籍コレクターや、それ程の額を支払う事の出来るコレクターが存在しないのです。・・・思うのですが、もしかしたら、この写本の最終目的地は日本と言う可能性が高いのでは?と思います。日本は世界でも有数の書籍コレクターの所在地なので。」

えー!そうなの??盗まれた写本が日本にある可能性が・・・。
まあ、その是非はともかく、現代スペインが誇る伝説的な大泥棒、Erik el Belgaさんの貴重なインタビュー、とくとご覧あれ!

以下の訳文はLa Voz de Galicia紙(2011年7月10日)に載ったインタビュー記事の全訳です。

Q=インタビューアーの質問
R=元泥棒ちゃんの回答

Q:サンティアゴ大聖堂からカリクストゥス写本が盗まれた事をご存知でしたか?
Q:Esta al tanto del robo del Codice Calixtino en la cathedral de Santiago?

R:ハイ、この数日、新しい情報などに常に気を配っていました。この写本を盗難する事は大変難しい様に思われます。そしてこれを盗んだ泥棒は、写本の中に描かれている挿絵や様式といったものよりはむしろ、そこに書かれているテクストの内容に興味があったのではないか?と思います。勿論この事件の黒幕は、そこに書かれている内容を熟知していただろうし、経済的に多額の報酬を支払う能力があった者だと考えられます。もし依頼人がいなかったとしたら、この様な大変有名な芸術作品を盗んだりはしません。つまりこれは何者かが誰かに依頼した盗難だという事です。
R:Estoy al tanto. Me parece un robo muy dificil en el que la clave es el contenido del libro. Es evidente que alguien queria ese libro, que conocia su contenido y que estaba dispuesto a pagar por el. No se robaria esa pieza sin tener un cliente. Es un robo por encargo.

Q:この様な有名な作品を盗難する事が可能なのでしょうか?
Q:Como se puede robar una pieza asi?

R:この盗難は非常にレベルが高いものであり、緻密な調査に基づいて十分に計画されたものだと思います。聖堂内の空間構成や人の出入りなどの情報、そして勿論、それらのデータを提供したり、盗難を実行する際には共犯者、つまりサンティアゴ大聖堂内部の協力者の存在が必要不可欠です。
R:Es un robo de alto nivel, planificado y estudiado. Un robo en el que hay que conocer los espacios, las costumbres y que, desde luego, requiere de la complicidad interior para los datos y para la ejecucion.

Q:どの様な人物がこの様な仕事を企てる事が可能なのでしょうか?
Q:Quien puede acometer el trabajo.

R:ごく少数者に限られると思います。先ず第一に、写本は絵画ではないという事を考える必要があります。何故なら絵画にはそれらを売り買いする市場があるからです。しかしですね、書籍の盗難は市場が限られ売却するのが非常に困難な為、依頼人がいない事には盗難が成立しないのです。
R:Poca gente. Hay que pensar que un libro no es una pintura. Para la pintura hay mas Mercado. En el caso de los libros nadie opera por su cuenta porque la venta es muy dificil. Y en este caso, tan conocido, mucho menos.

Q:この様な盗難で、一体幾らくらいの報酬を得る事が出来るのでしょうか?
Q:Cuanto se puede cobrar por un robo como este?

R:15万ユーロ(日本円で1600万円)くらいじゃないかと思われます。
R:Podriamos calcular que sobre 150.000 euros

Q:盗難後、どの様なプロセスを経るのでしょうか?
Q:Cuales son los pasos que se dan despues del robo?

R:今回の様な場合、泥棒達は盗難実行から、それをどうやってスペイン国外に流出させるかと言う全過程を盗難前に全て熟知している必要があります。写本はもう既に依頼人の元に辿り着いている可能性が高いと思います。繰り返しますが、依頼人がいなかったら誰もこの様な盗難を引き受ける事はありません。この写本の様な作品を売り捌く事は非常に難しいのです。更に言えば、今回の様なケースでは、泥棒達と依頼人に加えて、仲介人や交渉人の存在を考慮する必要があります。何故なら価値ある書籍のマーケットは、絵画や他の芸術品の市場に比べて非常に限られている為、盗難実行から売買に至る一連の過程は盗難前に全て計画されていなければ意味が無いからです。泥棒達はこの写本が何処へ行くのか?誰の元に届けられるのか?などは一切知らないと思います。
R:En este cso los ladrones tenian que tenerlo todo estudiado, desde el robo hasta la manera de sacarlo de Espana. Es probable que el codice ya este en su destino. Nadie asumiria el robo sin tener un destinatario. No es facil colocar una pieza como el codice. Ademas de los ladrones y del comprador hay que contar los intermediarios o negociadores porque el mundo de estos libros es mas reducido que el de otros objetos de valor o de la pintura.. Todo eso tiene que estar atado desde antes del robo. Los ladrones no conocen al destinatario ultimo del libro.

Q:写本の最終目的地としてスペインは除外しても良いのでしょうか?
Q:Descarta Espana?

R:スペインには写本の購入者はいません。そんなに多くの書籍コレクターや、それ程の額を支払う事の出来るコレクターが存在しないのです。それらスペインに存在するコレクターの大部分は私のクライアントでした。彼らの多くはもう既に亡くなっている方が多く、彼らの子供達はコレクターを続けてはいません。思うのですが、もしかしたら、この写本の最終目的地は日本と言う可能性が高いのでは?と思うんですね。日本は世界でも有数の書籍コレクターの所在地なので。
R:En Espana no hay compradores. No hay mucho coleccionismo de libros ni muchas fortunas dispuestas a pagar. Muchos de los coleccionistas fueron clients mios. Se murieron y sus hijos no siguieron con el coleccionismo. Yo diria que Japon es una posibilidad para este libro porque uno de los mayores compradores de piezas.

Q:闇市場におけるこの写本の価値は幾らくらいだと思われますか?
Q:Cuanto calcula que puede valer este libro en el mercado negro?

R:この場合、コレクターがどれくらい支払う事が出来るかによって変わってくると思います。多くの場合、依頼主が支払う金額は、一般に考えられているよりも低いのです。今回の場合、その金額は100万ユーロ(日本円で1億1千万円)かもしれないし、1,000万ユーロ(11億円)になるかもしれません。又、その金額は、交渉人の腕にもかかってきます。
R:En estos caos puede valer lo que el coleccionista este dispuesto a pagar por el. Muchas veces es mucho menos de lo que se piensa. Podrian ser un millon de euros o podrian ser diez. Tambien depende de lo buenos que sean los negociadores.

Q:盗難の仲介者という特化した職業についてる人はいるのでしょうか?
Q:Hay gente especializada en la intermediacion de robos?

R:私がそうでした。書籍の場合には仲介者は必要不可欠です。盗んだものが絵画なのならそれを市場に出し売却する事はそれ程難しい事ではありません。しかしですね、今回の写本の様に世界的に知られている作品となると話は別です。売買する事は非常に難しく仲介者が必要となります。自らすすんで牢屋に入りたがる人はいないだろうし、コレクターは泥棒との直接的なコンタクトを持っているとは思えません。その逆も又しかりです。
R:Yo fui uno de ellos. Y en el caso de los libros son imprescindibles. Porque si robas una pintura es mucho mas facil moverte por cuenta propia en el mercado y conseguir venderla. Pero en este caso, con una pieza tan conocida y dificil de mover, tiene que haber intermediarios porque nadie quiere ir a la carcel y los coleccionistas no conocen a los ladrones, ni los ladrones a los coleccionistas.

Q:カリクストゥス写本を盗む計画があると言う様な事を聞かれた事がありましたか?
Q:En alguna occasion escucho hablar de la intencion de robar el codice?

R:いいえ、写本を盗むと言った話は今まで一度も聞いた事がありません。
R:Nunca fue una pieza de la me hablaran en ese sentido.

Q:写本が戻ってくる可能性はあるとお考えですか?
Q:Cree que hay posibilidades de que el codice se recupere?

R:警察の運によると思います。もしも身代金を要求する為に写本が盗まれたのだとしたら、写本が戻ってくる可能性はもっと高かったと思うのですが、今回の盗難の場合、身代金目当てだとは思えません。スペイン警察はこの手の犯罪捜査には大変優れていて、過去に何度も盗まれた芸術作品の回収に成功しています。別のオプションとしては、スペイン政府が写本を取り戻す為、もしくは盗難された写本の情報提供の為に報奨金を用意するという手が考えられます。これは良い手だと思うし、その上、もしこの方法で写本が回収出来たとしたら、将来的な盗難に対する抑止力にもなると思います。
R:Depende de la suerte de la policia. Si lo hubieran robado para pedir un rescate seria mucho mas facil recuperarlo. Pero no lo creo. La policia espanola es muy buena en estos trabajos y ha recuperado buenas piezas. Otra opcion es que el Gobierno ofrezca una recompense por la recuperacion del libro, por datos que lleven a su localizacion. Puede funcionar y, ademas, si se localiza es una buena medida disuasoria para que no se cometan futuros robos.

Q:あなたが泥棒として働いていた時代に比べ、今の時代にはより多くのセキュリティシステムが完備されていると思いますか?
Q:Hay mas medidas de seguridad ahora que en su epoca?

R:勿論、今の時代の方がより優れたセキュリティシステムが整備されているとは思いますが、それらは未だに不十分だと思います。第一、セキュリティシステムがあろうがなかろうが、それらが如何に優れたものだろうが、この世に盗めないものなどないのです。
R:Si que hay mas, pero creo que siguen siendo insuficientes. En primer lugar porque no hay nada que no se pueda robar aunque se tengan los mayores y mejores medios.

Q:今の方が文化財盗難は少ないですよね?
Q:Pero hay menos robos de patrimonio ahora?

R:そうですね、昔に比べたら減ってきていると思います。何故なら以前よりも警察が有能になってきているし、芸術作品は以前よりもコントロール下に置かれているからです。そして最も大きな要因として、以前よりもコレクターの数が格段に減ってきたという事が挙げられます。価値ある全てのものは盗難の対象になり、盗難されうるのですが、それを誰が買うのか?誰が買う事が出来るのか?と言う事が重要なのです。
R:Ahora hay menos en parte porque la policia es mas efectiva porque las piezas estan mas controladas, pero sobre todo porque ahora hay muchos menos compradores. Todo lo que tiene valor puede ser robado, pero hace falta alguien que este dispuesto a comprarlo.

Q:あなたが泥棒として働いていた時、ガリシアで仕事をした事はありましたか?
Q:En sus tiempos en activo trabajo en Galicia?

R:ガリシアは最も多くの仕事があった地ではなかったのですが、それでも何度かは仕事をした事がありました。一般的に、あの時代の仕事は非常に簡単だったと言う事が出来ます。何故ならセキュリティが殆ど無かったのですから。
R:No fue donde mas trabaje, pero si hice algunos trabajos en Galicia. En general, eran trabajos faciles porque en aquel entonces, en la practica, no habia medidas de seguridad.
| インタビュー集 | 17:09 | comments(5) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
始めまして、偶然このBlogを発見し楽しみ興味シンシンで読んでますー。が全部の興味深いBlig`sをよみきれません。マア これは 段々と読んでいこう。。。。
 このサンティアゴ デ コンポステラのColixtinas写本の盗難について
確かのvanguardiaにもかなり詳しく記事がでていた、、けど La voz de Galiciaの「もと盗賊のインタビュー記事」には感心すると共に、大いに笑ってしまった。顔入りで新聞のインタビューに答えているけど、、刑期済みなのかしら???
 以前 日本のボウ会社の会長?が10年以上ゴッホのヒマワリの絵を会社に飾るわけでもなく どこかに展示させるわけでの無く自宅のお蔵に入れたまま。。」と言う記事を読んだことがある。アア言う御仁は そのものの歴史的、内容の価値より、有名,希少価値感だけで 自分のエゴを満たすため
に盗む????内容に興味がある?それとも 希少価値、ゆえ自分だけの家宝にしたい??人間とは なんと愚かな者か!
そんな 大金があるなら もっと 他に有意義な使い道があるだろうが。。。それにしても教会のセキュリティーのお粗末さ。。。と内部の共犯者が居たんじゃあないでしょうか???
| ゆみ | 2011/07/16 8:03 PM |
こんにちは。
先日は、私のブログにコメントを残して下さってありがとうございました。
サンティアゴ市内へのは入り口で連日行われている検問は、雰囲気が物々しいというかちょっと怖い雰囲気ですよ。
1度車を止められたら、社内をすみずみまで調べられるし、まず警察官がライフルを手にしているのが・・・。
聖ヤコブの日を目前にして写本が盗難にあってしまったのだから、当たり前の雰囲気なんですが。
無事に見つかってくれるといいですよね。
| pochitoconejo | 2011/07/16 8:44 PM |
今ごろ 警察がいちいち車を止めて調べても もう遅いんじゃないのかしら??何時でした?盗まれたのは??とっくにサンティアゴから脱出したに決まっているのに、、と思いますが。

 昨日は Barcelonaでし試食された ”Restaurante"の記事を全て読ませていただくました。
今はほとんど、NavarraのPamplon〜Irunの道筋にある村住まいですが、時にBCNのPisoにも来ます。BCNに長く住んでいるのに、主婦だった悲しさか??住んでいながらRestauranteのことを殆ど知らない!
 ですから 本当に参考しなります。有難う!!
住んでる我々より、旅行で来る日本人の方達のほうが レストラン事情に
詳しかったりしてね。。BCNに居る間に 数軒 試してみる予定です。。
| ゆみ | 2011/07/18 1:15 AM |
ゆみさん、はじめまして、こんにちは。
コメントありがとうございます。

どうやらこの元盗賊さん、スペインではかなり有名人らしく、しかも、周りのスペイン人に聞いてみた所、あまり彼の事を悪く言う人はいませんでした。彼の事を好意的に捉えているとか、もしくはヒーローの様な存在と言う訳ではなさそうなのですが、全くの悪者であるという事も無さそうな、ちょっと不思議な存在です。

今回の事件に関しては、スペインの新聞はあまり書きたがりませんが、やっぱり内部に共犯者がいたというのが、多くの見方でしょうね。まあ、そうじゃないと歴史的写本なんて言うものを盗み出す事自体、不可能だと思いますから。

ゆみさん、スペインに住んでいらっしゃるのですね!じゃあ、大先輩じゃないですか!ホント、最近の旅行者の方々って言うのは、驚くほど情報持ってますからね。どっから探してくるんだー?みたいな(笑)。僕も彼らに教えられる事、しばしばです(苦笑)。

これからもよろしくお願いします!
| cruasan | 2011/07/18 4:15 AM |
Pochitoconejoさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

ホント、一日も早く無事に見つかってくれる事を願うばかりです。

今回ガリシア地方に来たのは人生で2回目、実に10年ぶりくらいなのですが、ゆっくりと内陸部を中心に見て回るにつけ、ガリシア地方の良さが今更ながらにちょっとずつ分かってきた気がします。今回はスケジュールの都合でアコルーニャに寄ってる時間は取れないのですが、是非一度、ゆっくりと行ってみたいと思うようになりました!
| cruasan | 2011/07/18 4:22 AM |
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