地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂から12世紀に記されたカリクストゥスの写本(Codex Calixtinus)盗まれる!
昨日の夕方(7月7日)の事だったのですが、サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂に保管されている、12世紀にローマ教皇カリクストゥス2世によって記されたとされる「カリクストゥスの写本(Codex Calixtinus)」が消失したと言うニュースが飛び込んできました。



カリクストゥスの写本とか一体何か?と言うとですね、簡単に言えば、フランス各地からピレネー山脈を経由しサンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂まで続く巡礼の道、「サンティアゴの道」をどうやって歩くか?と言う事が示されたマニュアル本であり、世界で始めて書かれた旅のガイドブックの事なんですね。



現在でもサンティアゴの道を巡礼に訪れる人は後を絶たず、特に去年2010年はサンティアゴ大聖堂建立800周年記念と言う事で、世界中からカトリック教信者や観光客の人達を数多く惹き付けた事が頻繁にニュースになってたりしたんだけど、それら巡礼者が道中でどの様に振舞わなければならないのか?現地の地理や風俗などはどうなっているのか?など、サンティアゴの道、その全ての基礎となる事柄が記された本、それが今回消失した「カリクストゥスの写本」と言う本なのです。

そんな、全人類の宝とも言える写本が突然消失したと言う事で、日本を除く世界中が大騒ぎしてるんだけど(苦笑)、時間が経つにつれて今回の事件の驚くべき真相が段々と明らかになってきました。

今日の新聞によると、昨日の段階では「消失した」と報道されていたのですが、どうやらカリクストゥスの写本は「何者かに盗まれた可能性が高い」と言う報道に切り替わっていました。更に犯人はこの写本を私的なコレクションに加える事を目的にした億万長者のアートコレクターでは?と考えられ、実際に犯行に及んだのは、彼もしくは彼女に雇われたマフィアが絡んでいるのでは?と言う推測もなされています。何故こんな事が言えるのかというと、今回盗まれた写本の価値は計り知れず、市場に出れば日本円で11億円は下らないだろうと見られる為、直ぐに足が付き、その可能性は低いと言う事がその一番の理由だそうです。

そして今回の事件で露呈してしまったもう一つの非常に重要な側面、実はそれがサンティアゴ大聖堂が保管している最重要書籍の大変ずさんな管理体制でした。

今日の新聞(La Voz de Galicia:これはガリシア版のLa Vanguardia)は一面から5ページぶち抜きで大聖堂のセキュリティ体制と、考えられうる犯行ルートを詳細に検討していたんだけど、それによると、この写本が保管されている場所まで辿り着く為には、少なくとも4段階のセキュリティを潜り抜けなければならないのだとか。

先ず第一段階はチケットを買って聖堂内に入り、古文書館へと続く扉まで辿り着く事。ここには観光客を含め、入り口でチケットを買った全ての人がアクセスする事が出来ます。

第二段階は聖堂の一角を占めている2階建てになってる古文書館への入り口なんだけど、ここに入る為には入場許可証が必要で、入り口にあるブザーを押して、中から鍵を開けてもらう必要があるそうです。入り口には5台の監視カメラが備え付けられています。

第三段階は写本が保管されている2階部分への古文書館へのアクセスなんだけど、その為には、古文書館長を含めた3人の内の一人に許可を得る必要があり、彼らのオフィスの前を通過する必要があるそうです。

最終段階は古文書館の中でも最も大切な書籍などが集められている特別室に入らなければならないんだけど、ここの鍵を持っているのは先程の館長を含めた3人だけ。つまりこの3人の内の誰かに鍵を開けてもらわない事には入る事は出来ないんだとか。

この様な、結構ハードルが高い4段階のセキュリティを潜り抜けなければ写本には辿り着けず、普通に考えたら無理っぽいんだけど、では何故今回の様な犯行が可能になったのか?

どうやら警察の調べによると、驚くべき事が判明しちゃって、実は特別室の鍵は通常開けっ放しになってて、2階の古文書館へ入る事さえ出来れば、誰でも特別室に保管されているどんな書籍でも閲覧可能な状態だったそうなんですね。そしてその2階へのアクセスも、それ程コントロールされている訳ではなかったのだとか。その証拠に、今回の盗難が発覚しサンティアゴ大聖堂が警察へ盗難届けを出したのは火曜日の午後の事だったそうなんだけど、古文書館員が写本の存在を最後に確認したのは木曜日か金曜日の事だったそうなんですね。つまり少なくとも金曜日(もしくは木曜日)から火曜日の午前中に盗難に気が付くまで、4日間もの間、誰もそれをチャックしてなかったと言う事なんですよ!

今回の犯行は、この様な大聖堂側の大変ずさんな管理体制を利用した犯行だと考えられています。

・・・大聖堂側は勿論、新聞さえ書いてないけど、これってどう考えても内部事情に詳しい人物の可能性が強いですよね。少なくとも特別室へアクセスするには館長の許可が必要なのですから・・・。まあ、幸いにも、木曜日から火曜日の午前中までに特別室にアクセスした人の全ての記録は残っているそうなので、警察が真面目に調べ、そして大聖堂側が捜査に協力すれば、直ぐに怪しい人物の特定ぐらいは出来るでしょうけどね。大聖堂側が捜査に協力すればね。

一日も早く人類の遺産であるカリクストゥスの写本が戻ってくる事を願っています。

追記:
今日の新聞(7月9日)に、各国の新聞が今回の事件をどう報じているのか?と言う事が載っていました。概ねどの新聞も「大事件」として報じているのですが、その中でもワシントンポストはカリクストゥス写本をプラド美術館のラス・メニーナスと比べていて興味深かった。以下にその部分を訳してみました。

計り知れない価値を持つカリクストゥス写本を警察が捜索

Busqueda policial de la obra de valor incalculable


ワシントンポストは、今回起こってしまった盗難の原因の捜索と、既に写本がスペインの国境を超えた場合を想定して、警察が国際的な警報を発した事を大々的に報じている。アメリカ合衆国の新聞は、今回の盗難はプラド美術館からベラスケスの代表作ラス・メニーナスが盗まれるのと同等に値する事件であり、写本に値段を付ける事は不可能であると説明している。
El Washington Post resalto la investigacion policial a raiz del robo y la alerta internacional para tratar de localizerlo fuera de Espana, en el caso de que haya cruzado la frontera. El periodic norteamericano explica a sus lectores que la sustraccion equivale al hurto de Las meninas del Museo del Prado y que es imposible ponerle precio al codice.

| スペイン美術 | 21:15 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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