地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ガウディ設計の世界遺産グエル館(Palau Guell)その2:グエル館に展開する空間構成に見る、ガウディと言う建築家の卓越した空間センスについて
前回エントリ、ガウディ設計の世界遺産グエル館(Palau Guell)その1:この建築の地下に眠っている素晴らしい空間は馬の為のものだった!の続きです。馬の為とは思えない程素晴らしい地下空間(笑)から一階に戻って、イヨイヨ中へ入って行こうと思います。



で、この「でーん」と構えた大階段なんだけど、よく見るとその突き当りにはカタルーニャの旗をモチーフにしたと思われるステンドグラスが、「これでもか!」と燦燦と輝いているのが見えます。



で、近くに寄って見てみるとこのディテール:



鉄がまるで飴の様です(「何処かで聞いた事のある台詞だなー」と思った人はコチラ:地中海ブログ:ベルニーニ(Bernini)の彫刻その1:サン・フランチェスコ・ア・リーバ教会(San Francesco a Ripa)にあるルドヴィーカ・アルベルトーニ(Beata Ludovica Albertoni)、地中海ブログ:ベルニーニ(Bernini)の彫刻その2:ボルゲーゼ美術館(Museo e Galleria Borghese)にあるアポロとダフネ(Apollo e Dafne)の彫刻、地中海ブログ:ベルニーニ(Bernini)の彫刻その3:サンタンドレア・アル・クィリナーレ教会(Sant'Andrea al Quirinale):彫刻と建築の見事なアンサンブル、地中海ブログ:彫刻と建築と:忘れられないワンシーンを巡る2つの表象行為:ベルニーニ(Bernini)の彫刻とローマという都市を見ていて)。で、この階段を上り切った所で遭遇するのがコチラの空間:



主要階へと上って行く前に、ここで「ホッ」と一息つく為の空間だと思うんだけど、この空間に入った瞬間にガウディの卓越した「空間的センス」に驚かされる事だろうと思います。先ずはこの階段の扱い方なんだけど、先程一階にあった大階段、そしてその大階段に直角方向(90度左手に折れる所にある)に付いてるドアを入ったその視線の先に、「斜に構える」様に別の階段が付いているんですね。この階段同士の位置関係の絶妙さ、そしてそれらの関係性が創り出している空間的緊張感!まるで我々を「おいで、おいで」と誘っているかの様です。



しかも五段程上った所で階段の方向を変えている事から、行き着く先が見えなくなっている&上方から光が零れ落ちてくる事によって、上階に対する興味を否が応にも引き起こされる様に出来ているんですね。この辺の空間操作はかなり絶妙。って言うか、まだ主要階へと上っても無いのに、「如何にこの建築が特別か」、そしてガウディと言う人が「如何に空間センスに溢れた人だったか」が十分に分かるかと思います。そんな事を思いつつワクワクしながら上へと登っていくと、これまた絶妙な仕掛けがありました:



彼の十八番、天井操作です。ガウディの絶妙な天井デザインとその効果については以前のエントリで書いた通りなんだけど(地中海ブログ:ガウディ建築の傑作、カサ・バトリョ(Casa Batllo)その1:カサ・バトリョに展開する物語を見ていて思う事、地中海ブログ:マドリッドの都市戦略その2:アルヴァロ・シザ(Alvaro Siza)について)、彼は既にこの初期の作品であるグエル邸でもその力量を発揮しているんですね。仕掛けとしては至極単純なんだけど、階段を上っていく度に天井の高さを微妙に変える事によって、「階段を上る」と言う行為をドラマチックに仕立て上げています:



そしてここからがこの建築の本質的な所だと思うんだけど、この階段を登り切った所から90度左手に折れると、天井が高く3部屋程連続する大変気持ちの良い空間に遭遇します:



引き込まれる様に一部屋進み、上を見上げると、ガラスを通して何やら大空間がチラチラ見え隠れしている・・・それに導かれる様に、真っ直ぐで強い軸線を持つ空間に直角に左手に曲がった所にある扉を入るとこの空間:



圧巻の大吹き抜け空間の登場!コレは凄い!!ちょっと驚異的ですらあります。何層吹き抜けかさえ分からない程、高―い天井の空間。そう、間違いなく、ここがこの建築のクライマックス的な空間になっているのですが、何と言っても圧巻なのがこの天井です:



パラボラ・アーチに支えられ、そこに幾つもの穴が空けられた、まるで夜空に輝く星空、この空間に展開する小宇宙を見上げているかの様な気持ちになります。いやー、こりゃ、凄いわ!

さて、鋭い人はもう既に気が付かれてるかと思うのですが、この建築に入ってからココまで来るまでに展開していた空間とその構成が、あたかも渦を巻くかの様になっているんですね。それは、次の空間に移るのに、進行方向に対して必ず90度直角に左手に折れる事によって移動してきた事からも分かるかと思います。そしてこの螺旋状の空間構成は、2年前のパリ旅行の際に見たコルビジェのサヴォア邸の空間構成に酷似しています(地中海ブログ:パリ旅行その6:大小2つの螺旋状空間が展開する見事な住宅建築:サヴォワ邸(Villa Savoye, Le Corbusier)その1:全体の空間構成について、地中海ブログ:パリ旅行その7:環境型権力装置としてのサヴォワ邸:各部屋に展開する螺旋空間について)。って言うか、この場合、サヴォア邸の方がこのグエル館に酷似していると言う方が正しいと思うんですけどね。凄い、素晴らしすぎる!!ガウディって、その異様で突飛なデザインばかりが注目されるんだけど、実は彼ほど空間構成や空間デザインが上手い建築家ってそうはいないんじゃないのかな?とすら思います。

ガウディ設計の世界遺産グエル館(Palau Guell)その3に続く。
| 建築 | 05:19 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
たった今、こちらのブログを見つけさせて頂きました。
マドリードに住むテラと申します。

バルセロナの濃厚な雰囲気が出ていて、ご専門の建築のコメントがとても参考になります。

「空間的センス」という言葉、いいですね。

ガウディとも縁のあるモンセラートに行きたいと思ってなかなかいけていませんが、機会を見つけて行きたいと思っています。

これからもこちらに寄らせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
| テラ | 2011/06/10 2:54 PM |
テラさん、こんにちは、コメントありがとうございます。

マドリッドご在住なんですね。仕事の関係で時々行きますが、バルセロナから行くと、道路とか凄く広くて、「都会に来た」とか思って、緊張しちゃいます(笑)。

モンセラート、ここ何年も行ってないですが、凄く魅力的な所ですよー。何か最近、モンセラートの守護神、黒いマリア像がモナリザのモデルだった!みたいな議論もわき上がってる様ですし。僕的には結構おすすめスポットです。

これからもヨロシクお願いします!
| cruasan | 2011/06/12 8:12 PM |
今年はバルセロナに行く予定にしていたのですが、cruasanさんの1月初旬のブログでサグラダファミリアの輝く姿を見て、がぜん行く気まんまんになっていました(コメントさせていただきました)
6月20日出発でマドリッドからスペインに入ります。。
1週間後です!
こちらのブログで予習をしていたのですが、またまた美しい写真とそそられる文章で、「グエル館行かねば!!!」
美味しい記事もたくさんあったので、参考にさせていただきます。
バルセロナでは、お勧めの場所でお食事できればと思っています。
色々読むにつけ、バルセロナの滞在をもっと長くとれば良かったと、既に後悔しています。

村上さんのインタヴュー記事も翻訳ありがとうございます。
彼の作品はほぼ読んでいる地道なファンなので、ありがたく拝読しました。
講演の内容は、日本人として納得し共感し感動しました。
原発0はまだ難しいですが、『非現実的な夢想家』はいつの時代にも必要かと。。。
| Keiko | 2011/06/14 1:07 AM |
Keikoさん、こんにちは、コメントありがとうございます。

実はバルセロナは先週までお天気が悪かったのですが、今週に入り急に良くなって来て、夏本番って感じです。グエル館、本当に良い建築でしたよー。あとは、やはり、サグラダファミリアの内部は必見かなと思います。賛否両論分かれてるみたいですが、僕は結構好きですけどね。

今から夏にかけては、段々と暑くなって来て、夕方頃、涼みながら公共空間でワインなどを飲むのが大変美味しい季節となってきます。山あり海あり、芸術ありサッカーありの地中海都市バルセロナ、是非楽しんでくださいね。
| cruasan | 2011/06/16 5:02 AM |
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