地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ガウディ設計の世界遺産グエル館(Palau Guell)その1:この建築の地下に眠っている素晴らしい空間は馬の為のものだった!
毎月第一日曜日はバルセロナ市内にある沢山の美術館、博物館が無料公開される日となっていて、この機会を利用して美術館巡りをすると言うのが最近の僕の日課なのですが、昨日は、7年もの修復期間を終えて先日再オープンしたばかりのガウディ設計による世界遺産、グエル館に行ってきました。



「グエル館とは一体何か?」と言うとですね、まあ、簡単に言っちゃうと、ガウディのパトロンであった大金持ちのグエルさんの家、つまり邸館建築なんですね。「家」って言っても、世紀末にキューバとの貿易で財を築いた大金持ちの上に「超」が付く程の家族の家なので、そんじょそこらの家じゃありません。社会的ステータスを誇示する為の大理石の切石積みと言い、他を圧倒するかの様な高級感漂うファサードと言い、ランブラス通りから一本入った直ぐの所にあると言う立地の良さと言い、何処を見ても「お金持ちの家」って言う匂いがプンプンしてきます。



何を隠そう僕はバルセロナに着たばかりの頃(10年位前)、「このグエル邸は凄い!」と言う思いから、一時期、ずーっと通っていた事があったのですが、今から約7年程前の事、「建物の損傷が酷い」と言う理由から、長期の修復に入ると言う発表がありました。その時は、「あー、きっと2−3年で終わるんだろうなー」くらいに思ってたんだけど、気が付いてみれば、あれから7年も経ってるじゃないですか!

まあ、そんなこんなで、「久しぶりに名建築を見に行ってみようかな」と思ったんだけど、入場料を見てビックリ。何と、一般の入場料が10ユーロもするじゃないですか!確かに見所が多い名建築な事は間違いないんだけど、入場料10ユーロは高すぎでしょ?って言うか、最近バルセロナの観光名所の入場料ってうなぎ上りに上がってて、サグラダファミリアの入場料なんて12.5ユーロですからね(地中海ブログ:まるで森林の中に居るかの様な建築:サグラダファミリアの内部空間)。ちなみに2002年から一般公開され始めたカサ・バトリョは18.15ユーロ!(地中海ブログ:ガウディ建築の傑作、カサ・バトリョ(Casa Batllo)その1:カサ・バトリョに展開する物語を見ていて思う事、地中海ブログ:ガウディ建築の傑作、カサ・バトリョ(Casa Batllo)その2:カサ・バトリョを訪れる観光客の行動に見るグローバリゼーションの一側面、地中海ブログ:ガウディ建築の傑作、カサ・バトリョ(Casa Batllo)その3:この建築に流れる壮大な物語の全体像)。と言う訳で、入場料がタダになる今日まで待ってたって訳なんだけど、「混んでるかなー?」とか思いつつ、お昼ご飯食べた後にグエル館に着いてみてビックリ!入り口の前には長蛇の列!



うーん、やっぱりみんな考える事は一緒か(苦笑)。しかも聞こえてくるのはカタラン語ばかり。そりゃこんな事が無い限りガウディ建築なんてわざわざ見に来ないよなー、カタラン人。名古屋人が滅多に名古屋城に行かないのと一緒(笑)。そんなこんなで、結局1時間も待たされたんだけど、その隙に外観を堪能する事に:



2階に位置する横長の窓が大変印象的なファサードを構成し、大理石の石切積みが高級感を醸し出しています。そしてこのファサードの中でも最も印象的な部分がコチラ:



ファサード正面に開いた大きな大きな2つの穴。このファサードに採用されているパラボラ・アーチこそ、ガウディ初期の作品に見られる彼のトレードマークであり、彼の造詣要素であると同時に、装飾要素でもあるんですね。このパラボラ・アーチはガウディの初期作品には必ずと言って良い程登場するんだけど、以前行ったサンタテレサ学院の空間は、連続する無限空間の様な錯覚さえ引き起こさせる程の出来栄えだった事を覚えています(地中海ブログ:オープンハウスその4:ガウディのパラボラ空間が堪能出来る、サンタ・テレサ学院(Collegi de les Teresianes)):



このパラボラ・アーチについて、ガウディ研究の第一人者である鳥居徳敏さんはこんな風に書かれています:

“・・・しかしながら、1900年を境にしてガウディ建築が今日世界的に知られるガウディ建築に変貌するころから、グエル館、サンタ・テレサ学院、タンジール計画案の時とは異なり、パラボラ造形は唯一独占的な建築言語である特別席からはずされ、その他諸々の造形言語の一つと化し、その重要性を失っていった。例えば、グエル公園(1900−14)ではパラボラ・アーチは転び柱と曲面造形に主要な造形言語の席を奪われ、カサ・バトリョ(1904−06)とカサ・ミラ(1906−10)では建築空間としては第二次的な屋根裏階でしか見られない。”(P 59、ガウディ建築のルーツ―造形の源泉からガウディによる多変換後の最終造形まで、鳥居徳敏)

で、じゃあ、このパラボラ・アーチが何故このグエル館の正面玄関に2つもぽっかりと大きな穴を開けているのか?と言うとですね、これが又凄い話なんだけど、当時の貴族階級の人達って言うのは交通手段に馬車を使用していた事から、その馬車に乗ったまま家の中に入る為だった様です。だから中へ入ると先ず目に飛び込んでくるのがこの空間なんですね:



2つのパラボラ・アーチへと続いている路地の中央に、2階へと繋がる大階段が「でーん」と存在するって言うちょっと変わった空間構成。で、「何でこんな所に大階段があるのか?」と言うとですね、多分これって、機能的な面からここへ付けられたのだと思われるんですね。つまりランブラス通りから馬車に乗ってきた人達がこの馬車寄せに来た時、進行方向向かって右側から降りた時に丁度そこに上へと登っていく階段があると。そして帰る時は階段を降りて来てさっきとは反対側、つまり左手側に丁度馬車のドアが開く様に出来ていて、そこから直に馬車に乗れる様に設計されてるんじゃないのかな?で、人を降ろした後、馬達が何処へ行くのか?と言うとですね、地下に馬専用の空間が用意されているんだけど、実はここがこの建築の一つの見所となっています。それがコチラ:



巨大なレンガ造の円柱が林立する、ガウディの地下造形における特徴的な造形言語炸裂って感じの地下空間。大変印象的な厩舎空間です。



レンガ造薄版ヴォールトのアーチや天井も素晴らしい。



中央近くには、螺旋階段の構造を持つ、「馬がこっから降りてきたんだろうなー」と思われる螺旋通路が見られます。この様に大変特徴的な造形に溢れた素晴らしい空間なんだけど、その中でも特に目を惹くのはやっぱりこの太い円柱ですね:



この空間については鳥居さんが、「この不必要にど太い円柱の感覚は、ロマネスク初期の造型感覚に一致する」(同書P220)って書かれてるけど、全く同意します。それにしても、馬の為にこれだけ素晴らしい空間を用意するとは、さすが大金持ちのグエルさん。と言うか、明らかに僕の家なんかよりも質の高い空間であり、「お金持ちの馬達は扱いが違うのか?」って感じなんですけど(笑)。こんな所で待たされたなら馬も本望だろうなー。

ガウディ設計の世界遺産グエル館(Palau Guell)その2に続く。
| 建築 | 05:59 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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