地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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スペイン統一地方選挙2011その2:バルセロナ市内の詳細データと文化施設への影響について
先週日曜日(5月22日)にスペイン全土で行われた統一地方選挙なのですが、一夜明け、二夜明けと言う様に日が経つにつれ、現代スペインにおける歴史的とも言える政治的変化の様子が段々と明らかになってきました。前回のエントリで書いた様に(地中海ブログ:スペイン統一地方選挙2011:バルセロナに革命起こる)、バルセロナでは独裁政権後、現在まで32年間もの間、市政を掌握してきたカタルーニャ社会労働党(PSC)が負け、今回初めて、(カタルーニャでの)右寄りのカタルーニャ同盟(CiU)の勝利に終わったんだけど、市内の何処でどの様な票の入り方をしているかを見るにつけ、コレ又、大変興味深い事実が浮かび上がってきたんですね。とりあえず、バルセロナ市における選挙結果は以下の様になっています(カッコの中の数字は前回の選挙時の獲得議席数):

カタルーニャ同盟:CiU: 15 (12)
カタルーニャ社会労働党:PSC: 11(14)
民衆党:PP: 8(7)
ICV 5(4)
Unitat per Barcelona 2 (4)

繰り返しになっちゃうんだけど、驚くべき点は、カタルーニャ社会労働党が与党の座から落ちたと言う事。そしてもう一点は、民衆党(PP)が市内においてキー政党として伸し上がってきたと言う点だと思います。つまりは連立を組むに値する政党としてと言う事です。これは結構驚くべき事で、何故ならカタラン人達は、フランコ政権と関連がある民衆党の事を「これでもか!」と言うくらい嫌っているからなんですね。実は2008年の総選挙前、バルセロナ市内では大問題が勃発しまくっていて、例えば1週間近くに渡り市内の数箇所で大停電があったり、トンネル工事をしている地区で、急にその周辺の住宅の地盤が崩れたりと、信じられないくらいの問題が起こりまくってたんだけど、市民はその責任を当時の政権与党にあったカタルーニャ社会労働党に向け、大規模なデモが何日も続くと言う様な状況でした。そんな状況だったから、「次回の選挙ではカタルーニャ社会労働党危うし」みたいに言われていたんだけど、蓋を開けてみれば社会労働党の大勝利(驚)。では一体何故、この様な驚きの結果になったのか?と言う点については、以前のエントリで書いた通りなんだけど、その理由を掘り下げていくと、実はカタラン人達の中に根強く残っている民衆党嫌いに行き着くと言う訳なんです(地中海ブログ:スペイン総選挙その3:ジョセプ・ラモネーダ(Josep Ramoneda)の選挙分析、地中海ブログ:スペイン総選挙その2:カタルーニャのヒロイン、カルメ・チャコン(Carme Chacon)

“・・・この点について昨日、ジョセフ・ラモネーダが大変に鋭いコメントをしていました。それは「カタルーニャ人は民衆党が嫌いだから」だという事です。それだけ?とか思ってしまいますが、良く考えてみるとこれはかなり根の深い問題である事に気が付くはずです。

過去にフランコの手痛い仕打ちを受けた記憶からカタルーニャ人は民衆党にだけは絶対に政権を渡すまいと思っています。だから幾ら社会労働党がひどい舵取りで、市内の電気が消えたって、水道が出なくなったって、明日食料が尽きようとも、カタルーニャ人が民衆党に乗り換える事は無い訳です。何故なら「嫌いだから」なんですね。“

さて、今回の選挙結果をもう少し詳しく地区別に見てみると、これ又面白い事実が浮かび上がってきます。バルセロナ市内は10の地区に分けられていて、その内PSCはCiutat Vella, Horta-Guinardo, Nou Barris, Sant Andreu, Sant Marti, Sants-Monjuicと言った、6つの地区で今まで圧倒的な票を獲得してきました。それが今回、Sants-MonjuicをCiUに僅差(CiUは24.5%、PSCは24.1%)で取られた他、今まで大差を付けてきたCiutat Vellaですら、殆ど肩を並べられるくらいに追い込まれているんですね(PSCが23.5%、CiUが22.7%)。2007年の時はGracia地区をCiUに取られたんだけど、今回は「労働者のお膝元」と言っても過言ではないSants-Monjuicを取られるまでになってしまいました。又、各地区でCiU票が伸びてるんだけど、元々の陣地だったSarria-Sant Gervasi(42.3%から48.5%へ)や、Les Corts(31.4%から37.5%へ)などで票の伸びが激しいのが見て取れます。PSCが辛うじて保持しているのは、Horta-Guinardo, Nou Barris, Sant Andreu, Sant Martiなどですね。

そして実はこっからがちょっと大事な所なんだけど、これらバルセロナ市でのPSCの転落が余りにも劇的だったが故に誰も注目してない事があって、それが今回、CiUはバルセロナ県(Diputacio de Barcelona)の主権も把握したと言う点なんですね。バルセロナ県ってバルセロナに住んでる人ですら知ってる人は少ないと思うんだけど、実は結構重要な機関で、ここが出資してる公共機関ってのが結構多くてですね、代表的な所なんかではバルセロナ現代文化センターが挙げられます(バルセロナ県75%、バルセロナ市25%)。

で、バルセロナ現代文化センターと言えば、その創設時から現在まで館長を務めているスペインの誇る知の巨人、ジョセップ・ラモネーダ氏なんだけど、彼が館長である事が出来るのは、出資者であるバルセロナ県とバルセロナ市に任命されてるからであって、今回その出資者の構成が激変する事によって、CiUに根深い人が館長に抜擢される可能性が大な訳ですよ。そうすると、コレまで彼が15年くらいかけてバルセロナに根付かせてきた各種の大変魅力的な文化イベント、SONARやらCOSMOPOLISやらと言った、世界的にも知られる所となっている文化行事が消える恐れが出てくるんですよね(まあ、そう簡単にはなくならないとは思うけど、予算が削られ規模縮小するのは間違い無し)。唯一の救いは、と言うか希望は、昨年11月に突然PSCを抜け、カタルーニャ州政府文化大臣になったFerran Mascalleさんなんだけど、彼が何処まで影響力を発揮する事が出来るのかは不明。

これは一例に過ぎず、バルセロナ県やバルセロナ市関連の施設や機関では今後、かなりの人の動きと組織改変が予想されます。そして勿論、それとは別に、スペインを襲っている経済危機の影響から、文化行事には殆ど予算が付かないと言う状況が変わる訳ではありません。もっと言っちゃうと、CiUの政策の方向としては「文化は二の次」って言う方向性だから、バルセロナ市内での文化的ランドスケープは激変すると考えた方が良いと思います。

とか思ってたら、今度はPSOE内で後継者争いが又勃発したとかニュースで言ってるし・・・。ホント、激動の毎日です。
| スペイン政治 | 07:29 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
Sarria-Sant GervasiやLes Cortsといった「山の手」では保守が強く、Ciutat Vella Sant Marti, Sants-Monjuicといった港湾・商業地域は労働者が強いんですね。何となく納得です。EixampleやGraciaもハイソなエリアなんで保守が強いんでしょうね。

CiUも緊縮財政で行くんですか?
| Gen | 2011/05/27 7:40 AM |
Genさん、こんにちは。

CiUはもう、バリバリ緊縮財政まっしぐらって感じです。CiUが主権を握っている州政府では、そのメスがとうとう、教育や医療にも入って来てしまって、本当に「これからどうなるんだろう」と思わざるをえない状況にまでなって来てる感じがします。

今回の地方選でCiUが大勝利してしまった事から、CiU側は、「今までの緊縮財政が市民に受け入れられている(まあ、そういう事になるのですが)」と受け取っている様子で、これからもっとどんどん厳しくなっていくだろうと思います。

| cruasan | 2011/05/28 5:20 AM |
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