地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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バルセロナのドッグレース場(CANODROMO MERIDIANA):人間が機械に勝てるとしたら、それは創造力じゃないの?って事
ここ数週間、目が回る程忙しくて、ゆっくりとコーヒーを飲んでる暇も無かったくらいだったんだけど、先週末は久しぶりに時間が取れたので、以前から行きたかったバルセロナ市内にある「ドッグレース場(CANODROMO MERIDIANA)」を見に行ってきました。



「え、ドッグレースって何?」って思う人も多いと思うんだけど、簡単に言うとですね、競馬場の様に犬がグランドをグルグルと走って競争する施設の事なんですね。個人的には競馬とか競輪とか全く興味が無くって、更に犬と言えば「流れ星銀」くらいしか思い付かないんだけど()、この間日本に帰って驚いたのが、「ウィード」とか言う銀の息子の漫画が始まってて、その中では、あんなに小さかった銀が隠居して、赤目やジョンと一緒に全国の悪者(犬)共を水戸黄門の様に退治して回ってるって言う物語にはちょっと笑った。

まあ、それは良いんだけど、今日僕が主題にしたいのは、そんな犬達が走って競争をしていたと言う、50年程前(1962)にAntoni Bonet i CastellanaJosep Puig i Torneによってデザインされた建築です。この建築の事は写真集なんかで見てて、かなり良い印象を持ってたんだけど、今まで纏まった時間がナカナカ取れなかったと言う事と、この建築がある場所が市内の外れで、ハッキリ言って余り近寄りたく無い場所にあるって言う理由から、今まで行く機会に恵まれませんでした。

さて、バルセロナを横切る大通り、メリディアナ通り(Av.MERIDIANA)を一本入ると、真っ黒な鉄骨に覆われた、その異様な姿が現れてきます:



現在この施設は使われて無いので、以前はくっ付いてたと思われる余計な飾り物が全く無くて、その骨組みだけが残ってる状態。荒々しい鉄骨が林立している工事現場が魅力的な様に、この建築の佇まいは文句無くカッコイイ!特に、大半の人達が大通りからアプローチする事を考えて、建築の第一印象を決める正面を、半円を描きながら斜に構える様にしているその姿が大変印象的です。



この建築の特徴は明らかにこのカーブを描きながら続いている長―い半円だと思うんだけど、その特徴を最大限に生かす様な様々な仕掛けがしてあるんですね。例えばこの階段:



斜に構えている建物に対して、大通りからのアプローチの軸線上に位置する大階段が我々を迎えてくれます。この様な直線軸がしっかりと出来ているからこそ、逆にこの建物の特徴であるカーブが際立っている様に思えるんですよね。そしてもう一点がコチラ:



横長の建物の全ての部分を壁で覆ってしまうのではなくて、少しずつ透明性を高める様なマテリアルで外壁を覆っていき、最後は建物の短部を鉄骨で終わらせる事によって、建物自体が大変軽い感じになっているのが分かるかと思います。そして見上げるとこの風景:



鉄骨が「空」を切り取り、更に、これらの骨組みを支えている斜めに走っている一本の鉄骨が、重くなりがちな骨組みに、ある種の「軽さ」を演出しています。

建築って沢山の要素が様々に絡み合って出来る、その時代の表象文化だと思うんだけど、それって、建築家の「創造力」は勿論の事、その時代に利用可能な「技術力」って言うのが物凄く影響してくるんですよね。現代の技術を使えば、例えば妹島さんが金沢現代美術館でやったみたいに、継ぎ目の無い完璧に近い円形を創り出す事とかも出来ちゃうんだけど、この建築が創られた時代にはそんな事は勿論無理。でも何とかそれを実現したいから、「技術力の限界」を補う為に、「創造力」をフルに働かせる訳ですよ。そしてこの創造力こそ、全てのものが機械に置き換えられていく時代における、人間に残された唯一の武器だと思うんですね。そんな事を思いながら表側へと回ってみます:



半円の屋根が斜め上に半分開いた様な、まるで「眼」の様な形をしている、大変美しいシルエットです。そう言えば昔、樺山紘一さんが、フランコ政権などによる検閲の背景を指して「カタルーニャは眼の国だ」とか言われてたけど、この建築が建てられたのが50年代と言う事を考えると、案外この建築も、「眼」の隠喩が隠されていたり・・・と思うのは、勿論考えすぎですね()



印象的なのは、観客席の丁度上の所くらいにデザインされている白くて薄い日除けみたいなものの存在です。



真っ黒の鉄骨の塊の中に、プロポーションの良い細長い白い形態が存在する事によって、良いアクセントになりつつ、建物全体を引き締める役割を果たしています。更にこの細長い日よけの左側5分の1くらいの所に、四角い箱の様な空間をアクセントに持ってきているのは、非常に上手い!

この様な質の良い近代建築が、この様な形であれ、残っているのは非常に嬉しい事だと思います。
| 建築 | 22:17 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
この題と全く関係なくて申し訳ないのですが
以前大学の記事を見てそのことについて質問させてください

スペインの大学を希望しているのですが」心理学で有名な大学ってわかりますか?
それとスペイン以外でいいところなんかあったら教えてください
ほんと関係なくて申し訳ないです
| jay | 2011/04/11 2:26 PM |
Jayさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

心理学ですかー、心理学の知り合いはいるのですが、どの大学が良いか?と言う事はちょっと分かりかねます。というか、多分、何処でも同じなのでは?とも思います。もしスペインで心理学を学ばれたいと言う事であれば、都市で選ばれたら良いのでは?と思います。つまり、海があるバルセロナか、首都のマドリッド、歴史のあるサラマンカなど。

スペイン以外も門外漢なので、ちょっと分かりかねます。以前、環境心理学と言う分野を少しだけ調べていた時期があって、その時はアメリカの大学が数校出てきた覚えがありますが、詳しくは分かりません。

お役に立てず申し訳ないです。
| cruasan | 2011/04/15 7:35 AM |
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