地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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エドゥアルド・ソウト・デ・モウラ(Eduardo Souto de Moura)、プリツカー賞(The Pritzker Architecture Prize)受賞
今週の水曜日の事だったのですが、今年のプリツカー賞がポルトガルの建築家、エドゥアルド・ソート・デ・モウラに授与されると言うニュースが飛び込んで来ました。エドゥアルド・ソート・デ・モウラと言えば、ポルトガルにおいてはシザに並ぶ2大巨匠として知られている建築家で、彼の代表作、ブラガ(Braga)のサッカースタジアムは日本人のAさんが担当してましたよね。



僕も彼の建築はポルトガルに行く度に幾つか見て回った事があって、4年程前にも印象記なんかを書いたんだけど、その記事を今見てみても、彼の建築に関する今の僕の印象とそれ程かけ離れてないかなと言うのが正直な所かと思います(地中海ブログ:ソウト・デ・モウラ(Eduardo Souto de Moura) )。

今回のプリツカー受賞に関して、スペインの主要紙は文化面で結構大きく取り上げてたんだけど、印象的だったのは、ノーベル賞級の受賞なのに、受賞者自身がそれ程楽観的な事を言って無かった事ですね。キーワードとしては、「経済危機」、「仕事が無い」、「良くなる見込みも無い」みたいな。普通だったら、「今、デカイ美術館やってて、ノリノリ(笑)」みたいな感想になるはずなんだけど、そうじゃない所が、コレ又、ポルトガル的と言うか、何と言うか、個人的には、彼のインタビューの行間から滲み出て見えてくるポルトガルの社会文化的背景の方に大変興味を惹かれました。


下記に
La Vanguardia紙に載ってた受賞インタビューを訳してみましたので、興味のある方はどうぞ:

La Vanguardia 30 de Marzo 2011


「建築はもっと単純で、客観的で、そして実用的なものに戻るべき」

エドゥアルド・ソート・デ・モウラ
:プリツカー賞受賞者インタビュー
“La arquitectura debe volver a ser simple, objetiva y pragmática”
Eduardo Souto de Moura, ganador del premio Pritzker

現代性と伝統の残像を調和させた
30年間に及ぶ建築活動、そして権力と謙虚さ、大胆さと繊細さと言った、相反する2つのものを融合する比類無い能力。ポルトガルの建築家、エドゥアルド・ソート・デ・モウラのその様な能力が評価され、建築界のノーベル賞に値するプリツカー賞が授与された。ちなみに彼の師匠であるアルヴァロ・シザは1992年にこの賞を受賞している。
Treinta año de arquitectura en los que se combinan “contemporaneidad y ecos de la tradición”,y una “habilidad única para conciliar opuestos(en sus obras) como el poder y la modestia, el arrojo y la sutileza”, le han valido al portugués Eduardo Souto de Moura(Oporto, 1952) el Pritzker, considerado el principal galardón arquitectónico mundial. Su maestro, Alvaro Siza Viera, lo ganó en 1992.


記者:最初はシザ、そして次はあなた。既にポルトガルの建築家が
2人プリツカー賞を採っているのに対して、スペイン人建築家はラファエロ・モネオ只一人。このような事実は、スペインとポルトガルの建築界の関係にどのような影響を与えるとお考えですか?
Primero Siza y ahora usted: dos portugueses ya en la lista del Pritzker y sólo un español (Moneo)en ella. ¿Cómo va a afectar esto a las relaciones arquitectónicas hispano-lusas?


エドゥアルド:ハ、ハ、ハ、特に悪い影響は無いと思いますけどね。建築は賞を採ったとか採らなかったとか、そんな事には影響を受けませんので。スペイン人の建築家の友達ともこれまでと同様の関係を保ち続けるつもりです。そして彼らも又、同じ様に接してくれると思います。

Ja,ja. No creo que les pasa nada malo a esas relaciones. La arquitectura no depende de los premios. Intentaré seguir siendo amigo de mis amigos españoles. Y ellos actuarán igual.


記者:建築界最高の栄誉を受賞した後で、どの様にプロジェクトに向かい合うおつもりなのでしょうか?

¿Cómo afronta el trabajo tras ganar el mayor premio arquitectónico?


エドゥアルド:何時もと変わらない喜び、責任感、そして今以上に自分自身に厳しくしたいと思っています。多分、他の人達は私の事を違う目で見るかもしれないし、作品に対する評価は手厳しくなるかもしれない。より成長すると言う事は、より多くの批判を受け取ると言う事なのだから。

Con el mismo entusiasmo de siempre, con la misma responsabilidad y con más autoexigencia, si cabe. Ahora quizás me miren todos con otros ojos, quizás el escrutinio será más severo. Cuanto más creces, más críticas recibes.


記者:今回の審査員の議事録には、権力と謙虚さ、大胆さと繊細さ、パブリックとプライベートと言った、相反する
2つのものを融合させるあなたの能力を賞賛していました。あなた自身は自身の作品をどの様に定義されますか?
El acta de jurado alaba su habilidad para conciliar expresiones opuestas, como el poder y la modestia, el arrojo y la sutileza, lo público y lo privado…¿Definiría así su obra?


エドゥアルド:矛盾と言うのは、建築において常に付きまとうものであり、それらを最も的確な方法で解決する事が我々建築家にとっての重要な責任だと思っています。それは機能的な観点からと言う事なのですが‥‥。美学的な観点から言うと、私は何時も
Santo Tomas de Aquinoの言葉を思い起こします:“美とは2つの違うものの間に存在する関係である”。
Las contradicciones se dan mucho en arquitectura y es nuestra responsabilidad como arquitectos resolverlas del modo más apropiado. Esto, desde el punto de vista funcional. Desde el punto de vista de la estética, me permitiré recordar unas palabras de Santo Tomás de Aquino: la belleza es la relación entre dos cosas diferentes.


記者:かなり昔の事になるのですが、ファーストフードを食べ飽きた人達が美味しい食事を再発見した様に、アイコン建築は質の良い建築を破壊する事は無いと仰っていましたね。あなたの予言は当たっているのでしょうか?もしくは、我々は同じ道筋を歩んでいるのでしょうか?

Hace años me dijo que la arquitectura icónica, espectacular, no iba a acabar con la buena arquitectura; que tras la comida rápida llegó el redescubrimiento de la gastronomía. ¿Se han cumplido sus predicciones o seguimos bajo la misma estrella?


エドゥアルド:ここ数年で何かが変わったと思います。私は4年前よりも太りましたが、建築界では物事はそんなにも速くは動きません。未だ我々はスター建築家の影響下にいるのです。しかしですね、遅かれ早かれ、そのような事態は収束すると思います。建築はもっと単純で、客観的で、そして実用的なものに戻るべきなのです。何故ならそれが唯一良い建築だからです。そして又、現在我々が直面している経済危機もアイコン建築の様な道に進む事を許しません。最後の数年間は、物語性ばかりが目立った建築が林立してきましたが、これは明らかに間違っています。建築とは語る事ではなく、建てる事にこそ意味があるのです

Algo ha cambiado: ahora estoy más gordo que hace cuatro años. En el terreno de la arquitectura las cosas no han evolucionado tan deprisa, seguimos bajo el influjo de la arquitectura estelar. Pero, tarde o temprano, eso se acabará. La arquitectura debe volver a ser más simple, objetiva y pragmática. Porque sólo así será buena arquitectura. Y también porque los problemas derivados de la crisis económica no permiten otra cosa. En los últimos años se ha prodigado una arquitectura demasiado narrativa. Esto ha sido un error. La arquitectura no sire para decir cosas sino para hacerlas.


記者:現在の経済危機によって、アイコン建築にとっては以前よりも遥かに予算が限られてくると思うのですが。経済危機によるポジティブな面とネガティブな面は一体何だと思われますか?

Ahora, con la crisis, hay menos dinero para la arquitectura espectacular. ¿Cuáles son las consecuencias positivas y las negativas de la crisis?


エドゥアルド:勿論、ポジティブな面は存在します。経済危機、特に予算の削減は我々にある種の変化を強制します。そしてそれは良い事だと信じています。経済危機は、その変化が必要だと言う事を示し、そしてその道が間違っていたと言う事をも示してくれました。未来の建築はここ数年間の建築よりももっと正直であるべきでしょう。

Hay consecuencias positivas, claro que sí. La crisis económica, y en particular la crisis de ingresos, nos obliga a cambiar, espero que para bien. La crisis demuestra que era necesario eso cambio, que no se avanzaba en la dirección correcta. Creo que la arquitectura del futuro debe ser más verdadera que la de los últimos años.


記者:今回の経済危機を喜ばれているかの様に思うのですが、ご自身の仕事などに影響は無かったのでしょうか?

Casi parece que se alegre de la crisis. ¿Es que no le ha afectado?


エドゥアルド:勿論影響はありました。しかもかなりね。リスボンに事務所を開設したのですが、私の都市、オポルトでは今は何も仕事がありません。ポルトガル南部では、何らかの仕事がまだあるのですが、私の国では公共の仕事が殆ど無いのです。全てがストップしているのです。だから最近では例えばスイスなどに設計競技を応募する事に専念しています。

Me ha afectado. Y mucho. En Oporto, mi ciudad, no tengo trabajo. He abierto oficina en Lisboa. Tengo algo de trabajo en el sur de Portugal. Pero la verdad es que en mi país hay ahora muy poco encargo público. Está todo parado. Me dedico a concursar en el extranjero; en Suiza, por ejemplo.


記者:危機や繁栄に直面した時の、あなたの作品における揺るぎなさを教えてくださ
い。Dígame una constante de sus obras, en era de crisis o de bonanza.

エドゥアルド:建築の向こう側にある努力でしょうか。私の仕事の結果としての作品は、良くもなるし、悪くもなる。しかし努力無しでは何も生まれません。

Quizás la constante es el esfuerzo que hay tras ellas. El resultado de mi labor podrá ser mejor o peor. Pero nunca llegué a nada sin esfuerzo.


記者:もしあなたが今プリツカー賞を与えるとしたら、どなたに与えますか?

¿A quien le daría usted el Pritzker?


エドゥアルド:イギリスの建築家、デイヴィッド・チッパーフィールドですね。

Al británico David Chipperfield.


記者:バルセロナの郊外(サンタコロマ)に建設中の建築は今どんな状況なのでしょうか?

¿En qué fase está su edificio Cúbics, en Santa Coloma de Gramenet?


エドゥアルド:その計画とはもう何も関係ありません。一年前程、プロモーターが、私と私のスペインの恊働者との関係を断ち切ったのです。

Ya no tengo relación con ese proyecto. El promotor prescindió de mi y de mis socios españoles hace un año.


記者:スペインでは他に何かプロジェクトをお持ちなのでしょうか?

¿Tiene más proyectos en España?


エドゥアルド:ちょっと前にバルセロナの北の方(エンポルダ)で小さな家を完成させてから、他には何もありません。スペインも経済危機ですからね。

No. Hace poco acabé una casa en el Empordá. Pero ya no tengo nada entre manos. También en España hay crisis.


記者:現在はどんなプロジェクトをされているのでしょうか?

¿Cuál es ahora la principal ocupación del nuevo premio Pritzker?


エドゥアルド:中東のとある国に大きな計画が進行中ですが、それ以上は言えません。又、オポルトの地下鉄駅の仕事もありましたが、今は止まっています。経済危機なのです。

Tengo en marcha un gran proyecto para un país de Oriente Medio. Pero no me pregunte nada más porque no puedo contestarle. Estaba trabajando también en el metro de Oporto. Pero ahora el proyecto está detenido. De nuevo, la crisis.
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