地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
<< 建築家、坂茂さんのインタビュー、スペインの新聞に取り上げられる | TOP | エドゥアルド・ソウト・デ・モウラ(Eduardo Souto de Moura)、プリツカー賞(The Pritzker Architecture Prize)受賞 >>
UFOが飛来したかの様な闘牛場を改修したショッピングセンター
一昨日(金曜日)の事だったのですが、バルセロナのスペイン広場にある闘牛場が、8年にも渡る大工事を終え、巨大ショッピングセンターとして市民の前にようやくその姿を現しました。



改修を手がけたのはイギリス建築界の巨匠リチャード・ロジャース。ロジャースって「アーバン・ルネッサンスへ向けて(Towards an urban renaissance)」
って言うサステイナブルシティのお手本みたいな小冊子の中で:

「都市デザインと都市戦略の質という点において、我々(ロンドン)は多分、アムステルダムやバルセロナに
20年は遅れている」。

" in the quality of our urban design and strategic planning, we are probably 20 years behind places like Amsterdam and Barcelona" ("Introduction", in Towards an urban renaissance, Great britain urban task force (ed.), London, E&FN Spon)


みたいな発言をしてて、実はそれが世界的な「バルセロナモデルブーム」の火付け役になったと思うんだけど、意外にも彼がバルセロナに作品を建てるのは今回が初めてなんですね。(注意:下記参照




って言っても、今回の作品はバルセロナの一等地、しかもこの改修に関連して近くの美術館(
Caixa Forum)で「リチャード・ロジャースの軌跡展」みたいな展覧会まで企画されたって言うんだから、やっぱりリチャード・ロジャース様々って扱いに変わりはないか(地中海ブログ:リチャード・ロジャース展覧会(Richard Rogers + Arquitectes: De la casa a la ciudad))。



で、今回の闘牛場なのですが、これが建設されたのがざっと
110年前の1900年の事。それ以来ここでは毎週の様に闘牛が開かれてたそうなんだけど、1977年には閉鎖され、それ以来、殆ど廃墟として残されていました。そんな遺構に「何とか新しい機能を与え、周辺を再活性化させよう」と言う動きが出て来たのが8年前の事。それ以来計画が右往左往したり、経済危機の影響で工事がストップしたりと、様々な障害があったみたいなんだけど、ようやく今回の開業にこぎつけたと言う訳なんです。僕も長い間ずーっとこの改修を見守ってきたんだけど、僕が見た感じ、今回の改修で最も困難だったと思われるのは、今回の作品の目玉である、「闘牛場の外壁をどうやって残すか?」と言う点だったと思います。



ネオムデハル様式に彩られた美しいファサードを残す為に、下と上にサンドイッチの様な頑強な構造を取り付ける事によって、ファサードを吊り上げると言う手法を採っています。多分コレがこの建築の胆であり、この建築の質を決定している要因であると言っても過言では無いと思うんだけど、逆に言えば、この建築の見所はココだけと言えない事も無いか(苦笑)。




ちなみにコレが夜の風景。まるで
UFOか何かが不時着したかの様な、大変印象的な姿を醸し出しています。



これが元闘牛場だったとはちょっと信じがたい外観ですね。そんな事を思いながら外側をグルグルと回ってみたいんだけど、基本的にはリチャード・ロジャースの建築言語満載な事に変わりはありません。そして所々に巨匠のデザインセンスを感じさせるものがチラホラ見えます。例えばコチラ:




丸っこくて、一見「どーん」と重苦しく見える外観に対して、この塔がくっ付いてる事によって、ある種の軽やかさを醸し出しています。もう一つはこの階段:




こちらも丸っこい本体に対して、ある種のアクセントになってる気がします。この言語は勿論、ロイズ銀行で見せた見事な階段とほぼ同じかな(地中海ブログ:
ロンドン旅行その5:Richard Rogers( リチャード・ロジャース)の建築:Lloyd's of London)。そしてイヨイヨ中へ:



中央玄関みたいな所を入ると、そこには天井高の非常に高い気持ちの良い空間が広がっています。黄色い構造がダイナミックに天井を支えるデザインは、マドリッドのバラハス空港のデザインそのものですね(地中海ブログ:
リカルド・ボフィール(Ricardo Bofill)の新バルセロナ空港(T1)とリチャード・ロジャース(Richard Rogers)のマドリッド・バラハス国際空港(Aeropuerto de Madrid-Barajas):やっぱりロジャースは巨匠だった!その2)。そこから少し歩くと中央の空間に出るのですが、それがコチラ:



丸い吹き抜けを斜めに走るエスカレーターが非常にダイナミックに横切ると言うデザイン。



更にエレベーターなども、彼お得意のダクト丸出し風で、近未来的な感じかな。そして面白かったのがコチラ:




今回保存されたファサードとそれを支える構造、そして内側のガラスなどの構造がはっきりと分かる部分です。




上の写真は夜に撮ったものなんだけど、こちらでは、外壁と主構造の間にダクトや電気系統などが収まっている所が見えるかと思います。そしてエスカレーターを使って更に上へ行くと、その先にはガラスを通して空が見える工夫がしてあるんですね:




この天井、木で出来てるんだけど、鉄骨&ガラス満載の建物の中において、ココにこの材料の選択は非常に面白く、そして上手いですね。そしてそこを抜けるとこの風景:




目の前にはモンジュイックの丘に聳える居城、現在のカタルーニャ博物館が「でーん」と居座る様子が見える絶景。コレは凄い!と言うか、バルセロナの新しい風景の一面を垣間見る事が出来ます。しかも、このテラスは
360度なので、ぐるっと回ってみる事が出来る様になってて非常に楽しい!!



最近ハッキリ言ってバルセロナには魅力的な現代建築がなかなか建ってなかったんだけど、その中でも今回の建築の完成度はナカナカのモノだと思いますね。バルセロナに又一つ新しい観光名所が増えました!


追記:
コメント欄で教えてもらったのですが、リチャードロジャースはバルセロナのちょっと郊外に円盤を乗っけたホテルを建てています。そういう意味において、彼がバルセロナで作品を創るのは初めてでは無く、上記の記述はあやまりでした。
| 建築 | 19:35 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
こないだ、この浮遊感漂うテラスでお会いしましたね(笑)微妙にこわいところが欧州らしい。あと、どうしても噴水ショーのとき、一方向に人が集まりそうなんだけど、ちゃんとエンジニアの方それも計算してるんでしょうね。アラップだと思うけど。ミレニアムブリッジは何度も不具合があったからちょっとだけ心配です。ロジャースはもう一つオスピタレットにあの円盤が屋上にのってるようなホテルをデザインしてたと思うけれど、違った?いずれにしても、こちらのほうがすごいなあ〜と思います。
| kyoko | 2011/03/27 8:42 PM |
kyokoさん、こんにちは。この間はどうも。かなりビックリしました!

あれから、Kyokoさんお勧めのガラス張りのタワーの方に行ってみたのですが、本当に色んな意味で迫力満点でした(笑)。あそこのショッピングセンターが何時まで開店するのか知らないけど、モンジュイックの噴水は確かにあそこから見ると奇麗でしょうね。と言う意味において、観光名所の一つになる事間違い無し!で、問題はやはり、設計者がその辺を考慮しているのかどうか?なのですが、怪しいですよね‥‥。そうである事を祈るばかりです。

ロジャースはあの円盤ホテル、確かに建ててますね。ご指摘ありがとうございました。
| cruasan | 2011/03/28 4:48 PM |
記事と写真、楽しませていただきました。
またひとつ、バルセロナに話題の建築誕生ですか。今度行きますね。

ところで、、
昨年の5月にそちらに行った時は、オスピタレットの円盤ホテル(Hesperia Tower)に試しに3泊しましたよ。
率直な感想は、う〜んって感じです(笑)

| Aki | 2011/04/01 4:54 PM |
Akiさん、こんにちは、コメントありがとうございます。
あの、円盤ホテルお泊りになったんですね!
でも、感想は「うーん」ですか(笑)。
確か、円盤部分には星付きレストランが入ってるとか、入ってないとか。

まあ、とにかく、バルセロナに新しい観光名所が出来た事は間違いありません。今度来られた時にでも、是非行かれる事をお勧めします!
| cruasan | 2011/04/08 5:38 AM |
コメントする