地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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スペイン高速鉄道(AVE)開通3周年記念:高速鉄道と言うインフラが日常化している国としてない国の違い
先週日曜日220日はマドリッド−バルセロナ間の高速鉄道(AVE)開通3周年記念日でした。



日常生活には欠かせないインフラの一つであり、我々の生活の質の豊かさを測る一つの指標とも成り得る高速鉄道網については、それらが引き起こす社会文化的なインパクトの強さや、僕自身の乗車体験など、当ブログでは事ある毎にその状況などレポートしてきました(地中海ブログ:高速鉄道敷設に見る都市戦略、地中海ブログ:マドリッド旅行その1:高速鉄道(Alta Velocidad Espanola:AVE)に乗ってきました、地中海ブログ:スペイン高速鉄道(Alta Velocidad Espanola:AVE)バルセロナマドリッド間開通一周年記念、地中海ブログ:マドリッド出張:スペイン高速鉄道(AVE)、ファーストクラス初体験)。

今では大成功を収めているマドリッド−バルセロナ間の高速鉄道なのですが、実はスペインで初めて高速鉄道が敷設されたのは1992年のマドリッド−セビリア間だったと言う事はあまり知られてはいません。って言うか、経済発展を促進する為に、普通なら首都と第二都市を最初に結ぶって言うのが定石だとは思うんだけど、マドリッドとバルセロナにとっては経済発展なんかよりも、意地と意地の張り合いの方がよっぽど大事らしく、その後16年もの間、両都市が結ばれる事は無かったんですね(苦笑)。バルサ対レアルマドリッドの試合が代理戦争と言われている所以です。そんな両都市にようやく高速鉄道が引かれた当時、それが引き起こす社会的変化を大変巧く纏めていたのが、何時もお世話になってはいるんだけど、あんまりパッとしない記事ばかりを載せているLa Vanguardia紙:

「高速鉄道の効用は、ある利用者層の心を捉えた。以前はピストン空輸路線が 最も相応しかったビジネスマンである。その一方で、激安旅客機はバックパッカー達を運んでいる。以前は普通電車に乗っていた者達である。つまり、会社役員 AVE、バックパッカーは飛行機(という逆転現象が起こっているのである。)

" El impacto de la alta velocidad ha captado a un perfil de usuario- hombre de negocios-que era mas propio del puente aereo, mientras que los vuelos baratos se llevan a los que antes iban en tren. Ejecutivos al AVE, mochileros al avion"(La Vanguardia, p5, 25 de noviembre 2008)(地中海ブログ:スペイン高速鉄道に見る社会変化の兆しより)

「やれば出来るんだから、普段からちゃんとした記事書いてよね(笑)」って、それは、まあ冗談なんだけど、3周年記念を迎えた先週日曜日の新聞(La Vanguardia 20 de febrero 2011)には、「何故AVEがこれ程までに成功しているのか?」と言う事を分析した大変面白い記事が載っていました。

そこにはスペインの高速鉄道網は全人口の70%をカバーしている事、敷設距離で言ったらヨーロッパでは第一位、世界的に見ても3番手にランキングされている事など、「スペインは高速鉄道先進国」だって事が、「これでもか!」って強調されていたんだけど、それよりも何よりも、僕にとって大変面白かったのは、「何故にAVEがこれ程までに成功したのか?」って言う「利用者の声」みたいな情報でした。

それによると、利用者の皆さんが最も評価しているのは、AVEの出発/到着時間の正確さなんだそうです。この事は僕自身の体験からも既に証明済みで、今まで何十回と乗った中では、出発/到着共に1分も遅れる事は無かったんですね。って言うか、予定時刻よりも早く着くって事の方が多くって、魂消たと言うのが本音です。ちなみにAVEが時間通りに到着する確率は98.54%らしい。そしてこの数字は世界第二位の座を占めているらしく、第一位は当然の事ながら日本!その確率は99.0%!!恐るべし日本の技術。

さて、ここまで書いてくると、「電車が定刻通りに来るなんて当たり前じゃないか!」って言う日本の皆さんの声が聞こえてきそうなのですが、友達との待ち合わせは勿論、仕事の待ち合わせにだって平気で遅れてくるスペイン社会からしたら、電車が定刻通りに来るって言うのは、殆ど奇跡みたいなもんなんですよね。と言うか、グローバルスタンダードでは、電車が定刻通りに来る日本の方が「普通じゃない」と言う事は知っておいても良いと思います。

もう一つ僕が面白いなと思ったデータが、「各国の高速鉄道の車内でどんなサービスが利用可能か?」って言う比較データだったんだけど、それによると、スペインやフランス、イギリスの高速鉄道なんかでは、社内サービスが大変充実していて、それらの国々では新聞や雑誌、ビデオや音楽のサービスは勿論の事、駅でのパーキングなんかまで利用可能になっていると言う事でした。

逆にこの様なサービスが殆ど無いのが日本の新幹線‥‥って書かれてた(本当かどうかは不明。長い事乗ってないからなー)。

この記事のコンテクストからして、「日本の新幹線は定刻通りに着くし、運行スピードも半端無い。でもサービスがなってないんだよねー」みたいな感じで、批判的な意味合いを込めてるっぽいんだけど、でもコレって、日本では新幹線を利用するのが日常化していて、それはあたかもヨーロッパで言う所の地下鉄の利用とそう変わらない所まで浸透していると言う事なんじゃ無いのかな?つまりは日本人にとっては新幹線って言うのは、地下鉄の延長線上にあるものであって、そんな日常生活の一部となっている地下鉄に、映画や定食なんて言う特別なサービスを期待する人はいないって事なんじゃ無いのだろうか?


反対にヨーロッパではまだまだ高速鉄道って言うのは、一昔前の日本の飛行機の様に、「飛行機に乗って何処かへお出かけする」って言うくらいの特別な意味合いを持っていて、未だにそれが日常生活へ十分に浸透していないと言う事なのでは?とか思ったりする訳ですよ。つまりは両者の間には目には見えないけど、「これくらいの違いがあるのでは?」と言う事の現れだと思うんですよね。

新しい技術と言うのは開発されてからそれが市民の間に浸透する期間、そしてそれが日常生活の一部になるまでにはかなりの時間がかかります。そう考えると、やっぱり日本って言うのは、欧州と比べて、まだまだ一歩も二歩も先に行っているんだなーと思わざるを得ませんね。国内では「日本はダメだダメだ」とか言われてるけど、外から見てると、そんな事全然無い気がする。今の日本に必要なのは自信ですね。ガンバレ日本!!
| 都市戦略 | 05:08 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
新幹線内は飲み食いする空間なので映画をゆっくり静かにって感じじゃないですね(笑)音楽は既に自分のipodを持っているし。
車内販売で買う人よりやっぱり駅やデパ地下でちょっと、珍しい駅弁を買い持参ビールを飲む!
日本経済も個人もシビアな時代です。
最近グリーン車より一ランク上の3列席が出来ました!
今後はサービス含め差別化になるのかもしれませんね。

スペインで大成功のAVE乗ってみたかったです。
| yoco | 2011/02/24 1:48 PM |
yokoさん、こんにちは。
なるほど、新幹線に乗る人はデパ地下で駅弁を買って乗り込む訳ですか!それはヨーロッパには全く無い文化ですね。って言うか、お弁当の文化自体が無い気がする。電車と駅、そしてデパートが密接に繋がって一つの流れを作り出していると言うのは、大変興味深いです。
スペインのAVEはとっても快適ですよー。個人的にはかなり気に入ってます。
| cruasan | 2011/02/24 9:23 PM |
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