2011.02.08 Tuesday
チュニジアやエジプトのデモでSNS革命と言うイメージが捏造されていったのは一体何故なのか?
前回のエントリで書いた様に、先週バルセロナではレストランや映画館、美術館などが半額以下になるイベント、Barcelona Oportunity Weekを開催してたんだけど、各種メディアを独占していたのは先々週に引き続き、チュニジアを発端としたジャスミン革命、そしてエジプトのデモの動向でした。スペインのメディアでは連日連夜このニュースばかりで、時間が経つにつれ、周辺諸国を含めたかなり詳しいデータに加え、専門家達の分析なんかもそろそろ出揃いつつあります。新しいテクノロジーと市民運動なんかのエキスパートで、2004年に携帯メール(SMS)により組織された草の根的なネットワークが、当時のスペインの選挙に与えた影響(多分、SNSと直接民主主義関連の話としては世界初!)を分析したマニュエル・カステルは:
「Wiki革命は、デジタルネットワークと象徴的な(フィジカルな)広場の交差上に出現した新しいタイプの公共空間で行われる」
“La wikirevolucion tiene lugar en el Nuevo espacio public resultante de la conexion entre redes digitales y plazas simboicas” (Manuel Castells, Comunicacion y revolucion, La Vanguardia 5 de Febrero 2011)
なんて言葉を使って、今回の出来事を分析しています(地中海ブログ:東さんの「SNS直接民主制」とかマニュエル・カステル(Manuel Castells)のMovilizacionとか)。もしくは、つい先日発売になった「フェイスブック:若き天才の野望:5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた」の著者、David Kirkpatrickはスペインの新聞のインタビューに答えながら:
「ソーシャルネットワークは市民を活動家に変える」
“La red social convierte al ciudadano en activista” (David Kirkpatrick, La Vanguardia 3 de febrero 2011)
みたいな事言ってたりして、他の言論とか読んでても、どれもコレも今回の革命の根幹には、「近年広がりつつあるソーシャルネットワーク(SNS)の影響が多大にある」って言う、目新しく、そして魅力的なアイデアがチラチラ見え隠れしている様な気がするんですね。
確かに今回の出来事に決定的な役割を果たしたのはFacebookやTwitterなんかのSNSって言う事は間違い無くて、そのポイントは見逃せないと思うんだけど、でも、あたかもそれらだけで、今回の革命が成し遂げられたと言うのには、ちょっと誇張がある様な気がしてなりません。
先ずアラブ諸国が置かれている状況って言うものの背景をキッチリ読まなきゃいけないと思うんだけど、そもそもチュニジアやエジプトではここ数年間、かなりの数のデモなんかが行われていて、例えばエジプトの場合では、過去3年間で3000回以上のデモが行われ、去年の4月6日には、大規模なゼネストが決行されたりしてる訳ですよ。つまり今回の革命に至るまでにはそれなりの土壌があって、市民の怒りみたいなものが既に爆発寸前だった。その土壌自体がSNSで作られた訳では無いと言う、当たり前の事実を先ずは認識する必要があるかと思われるんですね。
更に「SNS革命論」に拍車をかけていると思われるのが、これらの国々における人口構成の特異性だと思うんだけど、これらの国々では、国民の平均年齢が驚く程若いんですよね。超高齢化社会とか言ってる日本とは全く逆の状況にあるとさえ言えるんじゃないのかな?
国名:平均年齢(平均寿命):29歳から14歳までの若者が全人口に占める割合
チュニジア:30歳(76): 27.2%
アルジェリア:27歳(74): 31.4%
モロッコ:27歳(76): 28.1%
エジプト:24歳(72): 28.6%
リビア:24歳(77): 27.9%
シリア:22歳(74): 30.7%
ヨルダン:22歳(80): 29.0%
イエメン:18歳(63): 29.8%
イエメンなんて、平均年齢18歳ですからね。今回問題になってるエジプトも平均年齢は24歳と言う驚くべき状況!そしてこれら14歳から29歳までの若者が全人口に占める割合は、どの国でも30%近くに上る事も特筆しておいて良いのかもしれません。更に、これらの国々における識字率なんだけど、モロッコとイエメンを除く他の国々は比較的高いと言っても良いかな:
国名:識字率
スペイン:97.9%
ヨルダン:89.9%
リビア:82.6%
シリア:79.6%
チュニジア:74.3%
エジプト:71.4%
アルジェリア:69.9%
モロッコ:52.3%
イエメン:50.2%
つまりは、若者が多くを占めるって言う事実と、若者=ネットを使いこなす世代って言うイメージ、そして最近弾頭してきた新しいタイプのネットワーク=ソーシャルネットワークが世界を変える事が出来るって言う人々の願望なんかが相まって、今回のSNS革命論が捏造されていったのでは無いのでしょうか?何故ならそういう説明が一番簡単で分かりやすいし、何よりこれこそ世界の人々が「見たかったもの」だからなんですね。丁度今、「Facebookがどの様に創られていったか?」って言う映画が世界的に流行ってる事も、このイメージの創出に一役買ったのかもしれません。
まあ、とは言っても、SNSが決定的な役割を果たしたって言う側面がある事に変わりは無いとは思うんですけどね。
それよりも何よりも、個人的に大変気になったのは、今回の事件が浮き彫りにしてしまった、「地中海におけるバルセロナの影響力の弱さ」と言う点の方ですね。
当ブログでは数年前からバルセロナが地中海の首都になっていく動きをずっと追って来ました(地中海ブログ:地中海連合(Union pour la Mediterranee)の常設事務局はバルセロナに)。元々スペインと言う国は、モロッコとの外交上、アフリカ周辺諸国の動きには敏感と言う事もあって、地中海諸国の情報と言うのは日頃から結構入ってくるんだけど、逆に言うと、そういう情報を得ていながら、地中海のリーダーとして、今回の混乱に対して何も発言出来ていないのはちょっと頂けないかな。
そんな点、誰も気が付いてはいないだろうけど、今回の一連の出来事の副産物と言っても良い様なこの点が、僕にとっては一番の収穫だったのかもしれません(苦笑)。
「Wiki革命は、デジタルネットワークと象徴的な(フィジカルな)広場の交差上に出現した新しいタイプの公共空間で行われる」
“La wikirevolucion tiene lugar en el Nuevo espacio public resultante de la conexion entre redes digitales y plazas simboicas” (Manuel Castells, Comunicacion y revolucion, La Vanguardia 5 de Febrero 2011)
なんて言葉を使って、今回の出来事を分析しています(地中海ブログ:東さんの「SNS直接民主制」とかマニュエル・カステル(Manuel Castells)のMovilizacionとか)。もしくは、つい先日発売になった「フェイスブック:若き天才の野望:5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた」の著者、David Kirkpatrickはスペインの新聞のインタビューに答えながら:
「ソーシャルネットワークは市民を活動家に変える」
“La red social convierte al ciudadano en activista” (David Kirkpatrick, La Vanguardia 3 de febrero 2011)
みたいな事言ってたりして、他の言論とか読んでても、どれもコレも今回の革命の根幹には、「近年広がりつつあるソーシャルネットワーク(SNS)の影響が多大にある」って言う、目新しく、そして魅力的なアイデアがチラチラ見え隠れしている様な気がするんですね。
確かに今回の出来事に決定的な役割を果たしたのはFacebookやTwitterなんかのSNSって言う事は間違い無くて、そのポイントは見逃せないと思うんだけど、でも、あたかもそれらだけで、今回の革命が成し遂げられたと言うのには、ちょっと誇張がある様な気がしてなりません。
先ずアラブ諸国が置かれている状況って言うものの背景をキッチリ読まなきゃいけないと思うんだけど、そもそもチュニジアやエジプトではここ数年間、かなりの数のデモなんかが行われていて、例えばエジプトの場合では、過去3年間で3000回以上のデモが行われ、去年の4月6日には、大規模なゼネストが決行されたりしてる訳ですよ。つまり今回の革命に至るまでにはそれなりの土壌があって、市民の怒りみたいなものが既に爆発寸前だった。その土壌自体がSNSで作られた訳では無いと言う、当たり前の事実を先ずは認識する必要があるかと思われるんですね。
更に「SNS革命論」に拍車をかけていると思われるのが、これらの国々における人口構成の特異性だと思うんだけど、これらの国々では、国民の平均年齢が驚く程若いんですよね。超高齢化社会とか言ってる日本とは全く逆の状況にあるとさえ言えるんじゃないのかな?
国名:平均年齢(平均寿命):29歳から14歳までの若者が全人口に占める割合
チュニジア:30歳(76): 27.2%
アルジェリア:27歳(74): 31.4%
モロッコ:27歳(76): 28.1%
エジプト:24歳(72): 28.6%
リビア:24歳(77): 27.9%
シリア:22歳(74): 30.7%
ヨルダン:22歳(80): 29.0%
イエメン:18歳(63): 29.8%
イエメンなんて、平均年齢18歳ですからね。今回問題になってるエジプトも平均年齢は24歳と言う驚くべき状況!そしてこれら14歳から29歳までの若者が全人口に占める割合は、どの国でも30%近くに上る事も特筆しておいて良いのかもしれません。更に、これらの国々における識字率なんだけど、モロッコとイエメンを除く他の国々は比較的高いと言っても良いかな:
国名:識字率
スペイン:97.9%
ヨルダン:89.9%
リビア:82.6%
シリア:79.6%
チュニジア:74.3%
エジプト:71.4%
アルジェリア:69.9%
モロッコ:52.3%
イエメン:50.2%
つまりは、若者が多くを占めるって言う事実と、若者=ネットを使いこなす世代って言うイメージ、そして最近弾頭してきた新しいタイプのネットワーク=ソーシャルネットワークが世界を変える事が出来るって言う人々の願望なんかが相まって、今回のSNS革命論が捏造されていったのでは無いのでしょうか?何故ならそういう説明が一番簡単で分かりやすいし、何よりこれこそ世界の人々が「見たかったもの」だからなんですね。丁度今、「Facebookがどの様に創られていったか?」って言う映画が世界的に流行ってる事も、このイメージの創出に一役買ったのかもしれません。
まあ、とは言っても、SNSが決定的な役割を果たしたって言う側面がある事に変わりは無いとは思うんですけどね。
それよりも何よりも、個人的に大変気になったのは、今回の事件が浮き彫りにしてしまった、「地中海におけるバルセロナの影響力の弱さ」と言う点の方ですね。
当ブログでは数年前からバルセロナが地中海の首都になっていく動きをずっと追って来ました(地中海ブログ:地中海連合(Union pour la Mediterranee)の常設事務局はバルセロナに)。元々スペインと言う国は、モロッコとの外交上、アフリカ周辺諸国の動きには敏感と言う事もあって、地中海諸国の情報と言うのは日頃から結構入ってくるんだけど、逆に言うと、そういう情報を得ていながら、地中海のリーダーとして、今回の混乱に対して何も発言出来ていないのはちょっと頂けないかな。
そんな点、誰も気が付いてはいないだろうけど、今回の一連の出来事の副産物と言っても良い様なこの点が、僕にとっては一番の収穫だったのかもしれません(苦笑)。